軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百二十六話 荒っぽい客

帝国南部のとある地下施設。

俺はその施設で書類を漁っていた。

そこには聖女レティシア関連の書類が多数あった。どうやらレティシアを捕らえた時のデータを元に研究を続けていたらしい。

懲りない奴ら。

「おの、れ……シルバー……」

後ろから聞こえてきたかすれた声に振り向くと、そこには黒いローブを纏った魔導師が立っていた。

とはいえ、立っていただけだ。

全身血だらけで、今にも倒れそうな様子だった。

「まだ生き残りがいたか?」

この地下施設を襲撃したときに抵抗した相手は一人残らず壁に叩きつけた。

下手に戦闘を起こして資料が紛失したり、施設が壊れても困るからだ。

俺は資料を転移門に投げ込んだあと、ゆっくりとその魔導師へと近づく。

魔導師は俺に向かってなけなしの力で魔法を放つが、俺の結界を破ることはできない。

「なぜだ……そこまでの力を持ちながら……なぜ我々の探求を理解しない……!?」

「理解したくもない……自分たちの探求心のために一体、どれほどの人間を犠牲にするつもりだ!?」

結界を魔導師に向かって押し出す。

魔導師は結界に押され、そのまま壁に挟まれて潰れた。

「次にいくか」

この拠点は外れだった。

もちろんいまだにレティシア関連の研究を行っているのは収穫だが、それは予想できたことだ。

俺が知りたいのはそんなことじゃない。

魔奥公団(グリモワール) が一体、何を目的としているのか。それが知りたい。

探求心は奴らの原動力。

魔導師としてその姿勢は正しい。やり方は大いに間違っているが。

だが、興味がなければ探求はない。

その興味は一体、何に向けられているのか?

「ろくなことじゃないだろうな……」

ある程度、推察はできる。

だが、確証はない。

俺は確証を求めて転移したのだった。

■■■

次にやってきたのは西部辺境にある廃城。

俺はその廃城を空から見下ろしていた。

この地下深くに奴らの拠点がある。

ここの防備は固い。明らかに。

ほかとは雲泥の差だ。

何重もの結界と地下という物理的な防御。

ザンドラ姉上によれば魔奥公団のリーダーは〝大公〟と名乗っているらしい。

姿を見せない人物らしく、幹部くらいしか会うことはないそうだ。

そしてこの拠点はその幹部の拠点。

名は〝ハーゲンティ〟。

ズーザンとはよく接触していたらしい。

帝国の拠点にいる者の中では、おそらく最高位。

「多少乱暴でも問題ないか……」

呟きながら俺は右手を廃城へと向ける。

さすがに詠唱ありで古代魔法をぶつけたら、貴重な資料に影響があるかもしれない。

だから。

「質より量といくか」

俺の周囲に魔力の弾丸が浮かび上がる。

その数は千を超える。

質より量といっても、一発一発が一般的な魔導師が全力で放つ魔法を凌駕している。

それを俺は高速で廃城へと放った。

衝撃で廃城が消し飛び、その下の施設がむき出しになる。

何重にも張られた結界が一気に消し飛び、施設の上部が破壊された。

そこで魔力の弾丸も尽きてしまう。

「加減しすぎたか」

ゆっくりと降下するとあちこちに人が倒れていた。

ほとんどが息をしていない。

施設が壊れるほどの衝撃だ。中にいた者は無事には済まなかっただろう。

だが、施設にはまだ地下があった。

階段をみつけ、ゆっくりと降りていく。

あれほどの結界を張った以上、魔奥公団には警戒すべきレベルの魔導師がいる。

下へ下へと下りていくと広い空間にたどり着いた。

何らかの実験室のようだ。

「荒っぽい客が来たと思ったら……SS級冒険者殿だったか」

その広い実験室の奥から白衣を纏った妙齢の女が現れた。

眼鏡がよく似合う、いかにも研究者という女だ。

しかし、俺の本能が告げている。

こいつは危険だ、と。

「お前がハーゲンティか?」

「いかにも。魔奥公団の幹部をやらしてもらっているよ。まぁ、ここに来たということはそのくらい知っているだろうけど」

「聞きたいことがある」

「我々の拠点を再起不能なまでに破壊しておいて、聞きたいこと? さすがに礼儀がなっていないんじゃないか?」

「人のことは言えんだろう」

俺は右足で床を叩く。

周囲に潜んでいた水の蛇がそれだけではじけ飛んだ。

ハーゲンティが俺を襲わせようと作ったものだろう。

「やれやれ……半端に強いというのは罪だね」

「半端かどうか試してみるか?」

「いや、いいよ。もう必要ない」

そう言ってハーゲンティが指を弾いた。

瞬間。

俺の視界は水に包まれた。

設置型の水の結界といったところか。

「私が開発した特製の檻だ。君はここで力尽きるまで暮らしておいてくれ」

ハーゲンティは投げやり気味に告げる。

俺への関心が薄れたようだった。

さきほどの攻撃から算出して、この檻は破れないと判断したんだろうな。

だが。

「甘く見られたものだ。SS級の肩書きは伊達ではないのだがな?」

俺は結界で自分を守りながら水の檻を無理やりすり抜ける。

結界がなければ今頃、体がミンチになっていただろう。

だが、俺を閉じ込めるには威力が不足していたな。

「な、に……?」

「どうした? 余裕の表情が消えているぞ?」

「……予定変更だ。素晴らしい……君はここで確保する」

「サンプル扱いか……まぁ人のことを言えんがな」

俺は俺で情報源程度にしか見ていない。

互いに互いを人として扱っていないのだから、どちらも似たようなものだ。

「ほかの拠点を襲撃したんだが……手ごたえがなくて困っていたんだ……俺の怒りをぶつけるには脆すぎたのでな!」

魔力を開放しながら俺はハーゲンティに向かっていく。

それに恐れることもなく、ハーゲンティは俺を迎え撃つ。

「まだ魔力の底が見えないとは……規格外も規格外……ぜひ研究材料になってくれ!」

「お前こそ俺の情報源になってもらう。洗いざらい喋ってもらうぞ!」

ハーゲンティも魔力を開放し、互いの力が周囲に干渉し始めて、まるで地震のように壁が震えていく。

そして互いに右手を相手に向けたのだった。