軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百五十八話 繰り出される一手

レオたちの先鋒隊を率いていたのはハーニッシュ将軍だった。

しかし、貴族軍を抜いたあとは勢いを止められてしまった。

「盾隊を左に集中させろ! とにかく山側の防備を厚くするぞ!」

ハイナ山を取っていたウィリアム軍の援護射撃。

ゴードンがいる本陣に近づけば近づくほどそれは激しくなっていく。

さらに貴族軍の後ろにいたのはゴードン側についた帝国兵。

練度という点ではハーニッシュ率いる帝国軍と同等。

無理に突撃すれば被害が増えるため、ハーニッシュは前線を維持することに腐心していた。

「まったく……! 最初から説明されていたとはいえ、大変な役回りだな!」

言いながらハーニッシュは自らも槍を振るう。

レオの軍師であるヴィンからハーニッシュは先鋒隊の役割を説明されていた。

敵軍は山中から援護射撃をかけてくる。ほぼ間違いなく先鋒隊は動きを止められることになる。ゆえに潰れ役が先鋒隊の役割となる。

本命は第二陣以降。

本来、先鋒とは名誉ある役割のはずだが、今回は泥臭い役割になる。すべて承知で引き受けた。

ハーニッシュは軍人だからだ。

軍人は騎士ではない。

戦場において指揮官が考えることは目の前の軍にどう勝利するかのみ。

副官時代、敬愛するエストマン将軍にそう叩き込まれた。

だからハーニッシュは最も辛い役割を引き受けた。

敵の反撃を受け止め、その場で耐え続ける盾。

いつ味方がやってくるのか?

そんな焦燥との戦いでもある。

それでもハーニッシュはやり遂げた。

「将軍! 角笛です!」

「来たか!!」

角笛を吹くのは騎士のみ。

ハーニッシュたちから見て右側。

川沿いに展開していた敵軍に対して、レオの軍の第二陣が襲い掛かる。

同時に敵軍に雷が落ちた。

それを見てハーニッシュは笑う。

「はっはっはっ!! 雷神が二人もいるとは敵も思わなかっただろうな! よーし! こっちも押し返せ! 盛大に騒いで敵の狙いをこちらに向けろ!!」

笑いながらハーニッシュは槍を掲げ、第二陣の援護に徹したのだった。

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≪天空を駆ける雷よ・荒ぶる姿を大地に示せ・輝く閃光・集いて一条となれ・大地を焦がし照らし尽くさんがために――サンダー・フォール≫

雷が敵の陣形を破壊する。

シャルはそのまま敵軍に突入して、手あたり次第に雷を放っていく。

その姿を見て、貴族軍は士気を高め、敵は恐れ戦く。

「ら、雷神だぁぁぁ!!??」

「退け! 退くんだ!!」

シャルの雷の脅威に晒された一部の部隊が悲鳴をあげて撤退を開始する。

それを見てシャルはさらに中に切り込もうとするが、撤退しようとした部隊長が蹴り飛ばされたのを見て動きを止めた。

「退くな! 退いてどうする!? 後方には本物の雷神がいる! 逃げ道などない! 小娘に怖気づくのはやめろ!! 活路は前にある! 敵を跳ね返せ!!」

そう号令をかけたのはフィデッサー将軍だった。

前線崩壊の危機を察知して、本陣より出てきたのだ。

フィデッサーは槍を構えてシャルの動きを牽制する。

それを見てシャルは右手に雷を纏わせた。

「小娘! ローエンシュタイン公爵家に連なる者とみた! 名を名乗れ!」

「北部四十七家門が一つ、ツヴァイク侯爵家のシャルロッテ。あなたが私の相手をしてくれるのかしら? 将軍」

「雷神の孫娘か! 相手にとって不足はない!」

そう言うとフィデッサーは馬を走らせ、シャルに槍を突き出した。

しかし、それは雷を纏ったシャルの腕によって阻まれる。

「その程度の腕で……北部の雷を止められるとでも思ったのかしら!?」

「ぐっ!!??」

槍を止められたフィデッサーに対して、シャルは左手で雷を放つ。

魔導師と戦うときは両手に気をつけなければいけない。武器を持っていなくても攻撃できるからだ。

咄嗟に右腕で雷を受けるが、激しい痛みが腕を襲う。

しばらく動かすこともできないだろう。

だが、フィデッサーは顔をしかめながら槍を構えなおす。

まだ子供といってもいい年齢の頃から、フィデッサーは戦場に立っていた。家督も継げない貴族の子息にとって、もっとも簡単な出世の道が戦場で武功を上げることだったからだ。

幾度も死にそうな目に遭いながら、将軍まで上り詰めた。

その過程で腕が使えなくなったことなどいくらでもある。

そんなフィデッサーにとって、ここでやせ我慢をするなど造作もないことだった。

「見よ! 兵士たちよ! 私の腕は健在だ! 本物の雷神ならば私は腕ごと体を焼かれていただろう! 雷神などと恐れるな! 北部の神は一人のみ! その一人もウィリアム王子が食い止めている! 他国の王子が前線で戦っているのに、我らが怖気づいてどうする!? 厳しい訓練を思い出せ! 今こそ奮い立つときだ!!」

重度の火傷だ。

籠手をつけているため、目立たないが右腕を掲げるなどどうかしている怪我だった。

それでもフィデッサーは自らの無事を誇示した。

雷神という幻想を打ち砕くために。

「行くぞ!! 反撃だ!!」

そう言ってフィデッサーはまた槍をシャルに突き出す。

片手でありながら先ほどよりも鋭い突きに対して、シャルは防御することしかできなかった。

その姿にゴードン軍の士気が上がる。

そしてフィデッサーは槍を掲げた。

それを合図として、フィデッサーの後ろから五人の兵士が飛び出てきた。

彼らが構えるのはクロスボウ。

ただのクロスボウではない。

帝国軍の最新鋭兵器。〝試製回転式魔導連弩〟だ。

数が少ないため、本陣に配備されていたが、フィデッサーは前線に出るときに連れてきていた。

強力な魔導師を仕留めるには生半可な攻撃では足りないからだ。

「くっ!」

シャルは危険を察知して雷の防壁を張った。

だが、お構いなしにフィデッサーは槍を振り下ろした。

「撃て!!」

短い矢がシャルの雷の防壁に幾度も襲い掛かる。

とんでもない連射速度にシャルはさらに魔力を防壁に込めた。

だが、そうなると周りへの警戒が疎かになってしまう。

矢が撃ち尽くされたとき。

シャルの防壁は何とか健在だった。

だが、シャルは気づかなかった。

空から迫る脅威に。

「良く立て直した。フィデッサー将軍」

そう言って空から急降下してきたのは、ローエンシュタイン公爵と対峙していたはずのウィリアムだった。

その槍が無防備なシャルに向けられる。

咄嗟にシャルは槍をそらそうとするが、ウィリアムの突きはフィデッサーの突きとはわけが違う。

一瞬だけ受け止めることはできたが、勢いに押されて腕が弾かれた。

そして槍はシャルの胸に吸い込まれていく。

だが。

「レディへの礼儀がなっていないのでは? ウィリアム王子」

その槍は横から剣によって弾かれた。

そこにいたのはノワールに跨ったレオだった。

「まずは自己紹介から始めないと嫌われますよ?」

「やはりお前とは決着をつけねばならんようだな! レオナルト!!」

ニヤリと笑うレオに対して、ウィリアムも笑みを浮かべて槍を構える。

そして二人は空に上がって激突したのだった。