軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百五話 最後のあがき

「あらあら。せっかちな男は嫌われるわよ?」

ジャックの早撃ちに対して、真っ先に行動したのはリナレスだった。

というか、あれは予想していて同時に行動してなきゃ間に合わない。

リナレスは前方に飛ぶと、ジャックの放った矢を土台にしてさらに空へ跳んだ。

「はぁっ!?」

土台にされた矢は軌道がずらされて、核とは違う場所に命中してしまう。

ジャックの矢ならば滅多に軌道は変わらないだろうが、リナレスの土台にされては仕方ないだろう。蹴りを食らったようなもんだ。

「おい! シルバー! あれありか!?」

「直接の妨害ではないからな」

「ちっ! ざけんな!」

悪態をつくジャックを尻目に、リナレスは攻撃体勢に移る。

それに対してエヴォリューション・スライムは棘雀の姿のまま、体中の棘を伸ばしてリナレスを迎撃しようとする。

しかし。

「あら? 良い足場」

リナレスは苦も無く棘を足場にして接近していく。

手加減が苦手といっても、こういうところでは圧倒的な実力差が出る。

エヴォリューション・スライムの攻撃でSS級冒険者たちにダメージは与えられない。

リナレスは一気に棘を駆け、エヴォリューション・スライムに一撃を浴びせようとする。本命の攻撃はノーネームだろうが、その前に反撃できないようにしようという考えだろう。

だが。

「ひどいわ! エゴール翁!」

「おっと? お主の足場もあったか? うっかり、うっかり」

笑いながらエゴールは城壁に佇んでいる。

動いた様子はないが、エヴォリューション・スライムの棘はすべて斬り落とされていた。

抜いた瞬間すら見せない早業だ。

わざわざ構えて斬ってしまうと地形が変わってしまうということだろう。

リナレスは足場を失い、一度地面に着地する。

それでリナレスの動きは一時止めたが、本命のノーネームはすでに動き出している。

SS級冒険者で空を飛べるのはノーネームと俺だけ。

そんなノーネームは空からエヴォリューション・スライムの核を狙って、降下していく。

すでに反撃はない。再生している間に核は斬られてしまうだろう。

直接の妨害は不可能。

ジャックも矢を撃つが、ノーネームのほうが早い。

「終わりです」

そう言ってノーネームは冥神を振るう。

しかし、その瞬間。

核が無数に増殖した。

一個は確実に斬ったが、エヴォリューション・スライムの崩壊は始まらない。

「どういうことですか?」

「全部本物のようだな。全部斬れ」

俺が結界で調べると、すべての核の反応は一致していた。

ダミーはなく、すべて本物。

さきほどまでの行動で、防御よりも分裂のほうが有効と学んだか。

しかし、そうなると危険なのは。

「はっ! 俺の勝ちだな!」

ジャックはすべての核を射抜くために弓を構える。

それに対してエヴォリューション・スライムは巨大な棘雀の分身を生み出す。

無数の核に対して放たれたジャックの矢は、その棘雀によって防がれる。

「ちっ!」

分散させた攻撃は一つ一つの破壊力はそうでもない。

それに耐えられる強力な分身を一つ生み出すというのは良い手だっただろう。

だが、そうなると違う奴が活躍する。

「あら? 一体だけでいいの?」

地上から地面を蹴って跳躍したリナレスが、そのまま棘雀を思いっきり空へ蹴り上げた。

強力な蹴りを食らった棘雀は空高く飛ばされ、空中で爆ぜる。

「ナイスアシストだぜ、オカマ野郎!」

「失礼ねぇ」

ジャックが無数の核を射抜きにかかる。

しかし、リナレスは一本に狙いをつけて、再度足場にした。

「おい!?」

「ご苦労様。やってちょーだい。ノーネーム」

「協力に感謝します」

ジャックの矢は見事に核を射抜いたが、リナレスが一本軌道をずらしたため、その一個だけは残ってしまっていた。

それをノーネームが今度は外さないとばかりに斬りにかかる。

棘による攻撃に、核の分裂、そして巨大な分身の生成。エヴォリューション・スライムもさすがに疲弊するのか、さきほどのように分裂する様子は見られない。

終わった。

そう思った瞬間。

エゴールが刀を振るう。

「やらせんわい」

エゴールの斬撃はがっつりエヴォリューション・スライムを真っ二つにした。

上下に断たれ、下半分を失ったエヴォリューション・スライムは形を失いながら落下する。

そのせいで核の位置もずれ、ノーネームはまた攻撃のチャンスを失ってしまう。

問題なのは今の斬撃。

全力とは程遠いが、俺がエヴォリューション・スライムの後方に結界を張っていなければ、周りに被害を出していただろう。

「次はないぞ。エゴール翁」

「お茶目じゃ、お茶目。それに次はやってこんよ」

「もちろんだ」

すでにジャックが構えていた。

さすがにこれは終わりだろ。

しかし、エヴォリューション・スライムは最後の抵抗とばかりに多数の棘雀を生み出す。

その棘雀はカレリアの街へと向かっていく。

核を抜いてもあれがすぐに消滅する保証はない。

俺が迎撃するかと、準備したとき。

「ちっ!」

舌打ちと共にジャックがその棘雀たちを撃墜した。

「な、何しとるんじゃー!!??」

エゴールが叫んだとき、ノーネームが悠々とエヴォリューション・スライムの核を切り捨てる。

そしてあっさりとエヴォリューション・スライムはその体を崩壊させていったのだった。