軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

異世界バイク。

「はぁ~……」

原付の試走から数日。

データは集まり、いよいよ本格的にバイク制作に入ろうと思うのだが……なんか気分が乗らない。

まず、ロッソたち……バレンたちと仲良くしているのが気に食わないのか、俺のところに来なくなった。

ユキちゃんたちは三輪車に乗って遊びに来るんだが……嫌われたのかなあ。

そして現在、俺は一人で立ち飲み屋で飲んでいた。

「…………まあ、しょうがねぇよなあ」

エールを飲みつつ、煮物を食う。

立ち飲み屋。異世界でもけっこうあることに驚きつつも喜んだ。もしかしたらと思って聞いてみたが、出汁割りはやってなかった。今度、おでん作って出汁を日本酒で割って飲んでみるか。

エールを呑んでいると、俺のテーブルにジョッキがドンと置かれた。

「お邪魔するわね」

「ん? おう、ヴェルデ。なんだ一人か?」

「ええ。ロッソたち、顔合わせにくいみたいだから」

ヴェルデはエールをクイッと飲み、ジョッキをドンと置く。

「ゲントク。今日は、ロッソたちのこと話に来たの」

「……ロッソたちのこと?」

「ええ。あの子たちの過去ね」

ヴェルデは、エールを飲みながら話し始めた。

ロッソ、バレンの因縁。アオとウングの確執。ブランシュとリーンドゥの関係。

話を聞き、俺は納得する。

「ああ……まあ確かに、仲良くはできないよなあ」

「そういうこと。で、心許していたあんたが、因縁のある三人と仲良くしていたら、それはもう複雑な気分よ」

「……俺、嫌われたかなあ」

「それはない。というか、ロッソたちもどうしていいのかわかんないのよ。あんたに謝りたい気持ちはあるけど、バレンたちとは仲良くできないし……だから、今日もモヤモヤしたまま討伐依頼を受けたわ。おかげで、私は苦労だらけ」

「そ、それはご苦労さん……」

「はあ……あんたはどうせ、あの子たちが自分を嫌ってるって思って、そのまま関係を終わらせちゃおうとか思いそうだしね」

否定できん。

お涙ちょうだいの和解とか俺の趣味じゃないしな。ロッソたちが俺を嫌って離れるなら、俺はそれでもいいと思っていた。

どんなに仲良しでも、ふとしたきっかけで会うこともなくなり、そのまま疎遠になるなんて、大人じゃよくあることだ。高校とか中学の同級生なんて、もう顔も名前も思い出せないし。

まあ、少しは寂しい気持ちもある……でも、俺は大人でおっさんだし、和解のために奔走しようなんて気は起きなかった。

「そこまで薄情じゃないけど、無理して仲直しようとは考えてないな……喧嘩したわけじゃないけど」

「ロッソたちはそれじゃ嫌なんだって。でも、こういう気持ちが初めてで、困惑してる」

「……だからといって、バレンたちと距離を取るつもりはないぞ。俺は別に因縁があるわけじゃないし、俺からすれば、バレンたちもお前らと変わらんからな」

「そうなのよね……」

「俺は、俺だ。俺自身が嫌な相手とは関係を持つつもりはないし、そうじゃないなら友好的な態度を取るぞ」

「わかってる。でも……ロッソたちのこと、忘れないであげて。あの子たち、ちゃんとあなたに謝って、またいつも通りになりたいって思ってるから」

「……ああ」

俺とヴェルデはエールをおかわり、乾杯をする。

「お前でよかったよ。お前、因縁の相手とかいないしな」

「……それは嫌だけど、今回はよかったって思うしかないわね」

ロッソたち、また来るなら、しっかりおもてなししないとな。

◇◇◇◇◇◇

さて、数日が経過した。

俺はたまに持ち込まれる魔道具の修理をしながら、バイク用の部品を作っていた。

フレーム、エンジンのガワ、タンク、魔石、タイヤ……一つ一つの部品をしっかりと作り込む。

魔石は十つ星の物を使った。出し惜しみはしないぞ。

そして、全ての部品製作を終え、俺は汗をぬぐう。

「……よし」

「にゃあ。おじちゃん、ボール割れたー」

気が抜けそうになった。

いよいよ組み上げって思ったところで、ユキちゃんが割れたボールを持って来た。

職場の隣にある小さな空き地、子供たちの遊び場になったんだよな。元々は資材とか積み上げてあったんだけど、綺麗にしたのか空き地になっている。

三輪車が三台停車し、ヒコロクがユキちゃんたちと遊んでいる。

「どれどれ、見せてごらん……あらら、完全に穴空いてるな。ヒコロクが噛んだのか?」

「にゃう。ヒコロクが引っ掻いたら割れた」

「そうか。そうだ、ちょっと待っててな」

俺は、余った素材を使って加工を始める。

メタルオークの骨を焼いて柔らかくして曲げ、余ったラバーコブラの皮を細く糸状に切り、メタルオークの骨に通して編んでいく。

そして、コカトリスの羽とラバーコブラの皮を加工して『球』を作った。

「はい完成。さ、空き地に行こうか」

「にゃ……それ、なにー?」

空き地に移動。

俺は二本のラケット、そして『球』こと『シャトル』を子供たちに見せた。

「がるる……これ、なに?」

「バトミントンだ。これがラケットで、こっちがシャトル。ユキちゃん、これ持って」

「にゃ」

俺はシャトルを軽くラケットで打つと、ラバーコブラの皮同士が反発しけっこうな高さまで飛ぶ。

「ユキちゃん、俺がやったみたいに打って」

「にゃ、にゃあ」

ぽこんと、ユキちゃんはシャトルを打つ。

俺は再びユキちゃんに向かって軽く打ち、ユキちゃんも打ち返す。

すると、楽しくなってきたのか、ユキちゃんの動きが良くなってきた。

「にゃうう!!」

「はは、うまいぞ。ほれっ」

パコンとシャトルと打ち返すと、ユキちゃんは空振りし、シャトルが落ちた。

「こんな感じで遊ぶんだ。はい、クロハちゃん」

「がうー!! おもしろそう!!」

「きゅうう、わたしもやりたいー」

「ははは。交代でな、シャトルを落としたら交代で遊ぶといいよ」

「にゃー、じゃあリーサ、こうたい」

子供たちは、バトミントンで遊びだした。

ヒコロクもいるし、あとは大丈夫だろう。

俺は職場に戻り、さっそくフレームにパーツを組み込み始めた。

◇◇◇◇◇◇

全てのパーツを組み込み、微調整を加え……ついに、完成した。

「……できた」

外見はネイキッドバイク。だが、いくつかの部分にカウルを追加し、俺のオリジナルのスタイルになっている。

スピードメーターもないし、ガソリンも入れる必要がない。でも、それっぽい部品はくっついている。スピードメーター……さすがに作れない。

俺は、サスペンション部分をチェックし、ステアリングのアクセルを捻り、ブレーキレバーを握ってチェック。

「……できた」

もう一度言う。

やばい、顔がにやける。ついに完成したぞ俺のバイク。

入念なデータ収集から始まり、いろいろな検証、そして何度も図面を書き直し、ようやく完成した。

俺のバイク。完全オリジナル、部品一つから作った俺のバイク。

「……よぉし!!」

ガッツポーズ。

やばい。異世界に来て一番嬉しいかも。

「よし、よし落ち着け……エンジン、エンジンかけるか」

俺はエンジンキーを差し捻る。

残念ながらエンジン音はしない。このキーは、魔石に指示を送るコード部分の蓋を開閉するスイッチだ。蓋が閉まれば魔力の通り道がシャットアウトされ、魔石は起動しない仕組み。

そして跨る……あ、あああ。

「バイク……俺のバイク!! うおお……って、あれ」

今、気付いた。

「……し、しまったあああああああああ!!」

「にゃ」「がうー」「きゅう」『わう?』

俺の絶叫に反応し、ユキちゃんたちが顔を覗かせた。

「にゃあ。おじちゃん、どうしたの?」

「……メット、ジャケット、グローブ、ブーツを忘れた」

そう、バイクに夢中になりすぎ、ヘルメットなど作るのを完全に忘れていた。

言っておくが、このまま作業着で乗るなんて愚かな真似しないぞ。

「……仕方ない。試乗はお預けだ」

メットは自分で作る。ジャケット、グローブ、ブーツは特注で作ってもらおう。

ジャケットはプロテクター兼用。胸や肘部分を守る素材入れてもらうか。

ああ、ズボンも……うう、早く乗りたいのに。

「にゃあ、おじちゃん、おきゃくさまー」

「がるる、おんなのこ!!」

「きゅう、こども」

「……え?」

ちょいテンションダウンしていると、ユキちゃんたちのところに、女の子がいた。

ユキちゃんたちと同世代だろうか。白いサイドテール、肩剥き出しのワンピース……そして、耳がとがっている女の子だ。

「ふふ。面白そうな魔道具を作っているのね」

「……え? ああ、どうした? 迷子かな?」

「にゃあ、あそぼう」

「がうー、バトミントン」

「きゅうう、四人であそぶ」

「あなたたち、ごめんなさいね。わたし、この方に用事があるの」

なんとも丁寧な女の子だ。ユキちゃんが差し出したラケットを申し訳なさそうに拒否してる。

見た目は六歳くらいかな。耳がとがって……ん? なんだ、この感じ。

女の子は、俺をジッと見ている。

「ふふ。わたしが何者か、わかったかしら?」

「…………いや、まさか」

「ふふふん。あなたの予想は、間違っていないわ」

女の子は胸に手を当て、にっこり微笑む。

「はじめまして。わたしは十二星座の魔女の一人、『魚座の魔女』ポワソン・ピスケスよ。よろしく、異世界の住人、アツコの同郷人」

「…………マジで?」

どう見ても幼女……俺の前に、十二星座の魔女が現れた。