軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

クラーケン退治・前編

さて、いきなり『クラーケン』だ。

わけがわからずロッソを見ている。そういや、ブランシュとアオがいない。

俺は新聞を閉じ、ロッソに聞いた。

「なんだなんだ、朝っぱらから穏やかじゃないな」

「聞いてよ。昨日、漁に出た帆船が二つ、沈められたの。で、命からがら戻って来た残りの漁船が、クラーケンに沈められたって……」

「クラーケン、って……イカか?」

「いか? いかって何?」

やっぱこの世界、イカはいないのか……クラーケンってイカじゃないのか?

まあいいか。それより大事なこともある。

「アオ、ブランシュは?」

「冒険者ギルド。今、冒険者ギルドはクラーケンの対策考えてる」

「……クラーケンって、海の魔獣だよな? 海に近づかなきゃいいんじゃ」

「そうだけど、漁に出ないとザナドゥでお魚食べられないよ」

「……確かに」

新鮮な魚介が食えない……これは死活問題だ。

「厄介なのは、クラーケンは『留まる』んだ。人間の味を覚えて、人間を喰らった付近に長く居座る……冒険者ギルドのマスターが言ってたけど、最低でも三十年くらいは留まるって」

「さ、三十年!?」

「うん。ザナドゥ、その間は魚が食べられなくて、地獄の三十年だったって……」

「つまり……国の一大事、ってやつか」

「うん。実は、ザナドゥって王政だけど、観光に力入れまくってるから、兵士とか軍隊はかなり少ないの。軍の船とかより観光船とかに力入れちゃうし、兵士も騎士も少ないの」

「……平和で何より」

「うん。それで、おっさんに頼みがあるの」

う、なんだろ……かなり嫌な予感。

「おっさんの船、かなり速度出るし、小回りも利くんでしょ? それで、アタシたち『 鮮血の赤椿(スカーレット・カメリア) 』を沖に連れてって欲しい。そこでアタシらがクラーケンをブチ殺すから!!」

女の子がブチ殺すとか……でも、それしかないか。

でもなあ、問題もある。

「時間、あんまりないかも。クラーケン、毒も持ってるから、早く討伐しないと、海が汚染される」

「…………」

「おっさん、お願い……アタシら、この国が好きなんだ。お魚美味しいし、ユキやスノウさんとも出会えたし、おっさんの別荘で遊んだり、水中スクーターで遊んだり……みんないい思い出。だから、この国も、思い出も守りたいんだ!!」

「…………」

「おっさん、船を貸して。アタシ、なんでもするから」

「…………はぁ~」

俺は、ジリジリと近づいて来るロッソの頭をポンと撫でた。

「ロッソ、お前はカッコいいな。本当に」

「……え?」

「あの船は、魔力の流し方にコツがあってな……時間がないなら、俺が操縦した方が早い」

「……お、おっさん」

「俺が操船して、クラーケンのところまで送ってやる。俺が操船すれば、ロッソ、アオ、ブランシュの三人が思いっきり攻撃できるだろ?」

「……おっさん!! ありがとう!!」

「おう。すぐにでも出発するのか?」

「できれば、今日中にケリ付けたい。冒険者ギルドは『クラーケンが毒を出した後の対応』とか、ザナドゥ王家は『各国へ支援の要請』とか、クラーケンが討伐できないことを前提で動いてるけどね。でも……アタシら『 鮮血の赤椿(スカーレット・カメリア) 』は諦めてないよ」

「よし。じゃあ、アオたちのところに行くぞ。二人はどこへ?」

「ビーチで待ってる。戦闘準備してたんだ」

「わかった。じゃあ行くか」

「うん!!」

俺は、いざという時のために作った『ライフジャケット』を着用する。魔獣の皮で作った水を弾く素材で、『空気膨張』の魔石を仕込んであるので、魔力を流すと一気に膨らんで浮力を得る。

そして……俺の『武器』を手にする。

「なにそれ、銛?」

「ああ。素潜りで魚突きでもやろうと思ってな。いちおう、念のため持っていく」

まあ、武器なんて言い方したが『銛』だ。ないよりマシだろう。

ロッソにボートを押してもらい、俺とロッソが乗り込む。

ロッソは深紅の大剣を背中に差していた。

「いくぞ、掴まってろ」

「うん!! ──……って、おおお!!」

俺は舵に魔力を大目に流すと、モーターボート並みの速度で一気に走り出した。

「うわっほー!! 楽しいぃぃぃっ!!」

「おい、アオたちはどこだ!?」

「あっち!!」

ロッソの案内で、俺はボートを爆走させるのだった。

◇◇◇◇◇◇

「おじさん!!」

「おじさま!!」

「よう、朝から大変だな」

ビーチに来て船を止めた……が、朝から賑わっているはずのビーチに誰もいない。

そういや初めて来たが……出店もあるし、ビーチチェアや日よけのタープもある。いつもはかなり賑わっているのがわかった。

ボートから降り、俺は言う。

「ロッソから話は聞いた。クラーケン退治、付き合うぜ」

「い、いいの? 危険だけど……」

「おじさま……」

「このボート、操作は俺のが慣れている。任せておけ」

「「……」」

二人は顔を見合わせ、俺を見て頷いた。

そしてロッソが言う。

「二人とも、準備は?」

「できてる。弓矢、久しぶり」

「わたくしもですわ。ロッソ、あなたは?」

「当然。さあ、『 鮮血の赤椿(スカーレット・カメリア) 』の出番。クラーケンを血祭りにあげるわよ!!」

三人はボートに乗り込む。

あとは俺だけ。俺は煙草に火を着け、心を落ち着かせた。

「セーブポイント……あるわけないか。なんか俺、不思議と怖くないな」

煙を吐き出し、携帯灰皿に吸殻を入れる。

そして、顔をパンと叩き、船に乗り込んだ。

「よし!! クラーケンのいるポイントまで案内してくれ」

「わかった、私に任せて」

さて、クラーケン退治……これやったら、今度こそバカンスだ!!