軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

独身おじさん、ウェディングプランナーになる③

翌日、俺の職場にサンドローネが一人で来た。

「……あれ、お前だけ? リヒターたちは?」

「昨日の案を元に、すでに準備を始めているわ」

「いや自信あるプランだけど……仕事早すぎだろ。まあいいか」

今日は、パルテノスに『ウェディングプラン』について説明をする。

職場の一階を開け、テーブルには俺が用意した資料、灰皿、コーヒーのポットを置いた。

煙草を咥え、マッチで火を着けて吸う……サンドローネも。あれ?

「珍しいな、紙巻き煙草か」

「ええ。家では基本、こっちを吸うわ。今日は……」

「煙管、忘れたんだろ」

「うるさいわね」

どうやら図星。サンドローネじゃ煙草を咥え、マッチで火を着ける。

俺はコーヒーを注ぐが、サンドローネは「水、ちょうだい」というので水を出した。何度か勧めたけど、こいつコーヒーはダメっぽい……リヒターは「おいしいですね」って飲んでくれるのにな。

サンドローネは、俺の用意した資料を手に取る。

「あなた、意外にも字は上手いのよね」

「意外は余計だっつーの。こう見えて書道三段だぞ」

「……しょどう?」

「説明めんどくせい。ゲントクさんは字がうまい、達筆でステキ!って思っておけ」

「気持ち悪いわね……」

そういや、こいつとこんな風に二人で喋るの久しぶりだな……でも、どこまでいってもコイツとは仕事仲間、恋愛関係になることは絶対にない。

まあ、美人だし巨乳だし、足を組んで座ってるからスリットからのぞく足がすらっとしてヤベーとかだし、煙草吸ってるだけなのになんか絵になるし、巨乳だし、美人だとは思う。

「なに」

「いや、お前ってホント絵になるな」

「あっそ」

超、そっけない。赤面すらしねえ……こいつも俺のこと男だなんて思ってないな。まあ全然いいけど。

俺はコーヒーを飲みながら、バニラが運んで来た朝刊を読む。いつの間にか、テーブルの下には大福がいて香箱座りしていた。きなこは……事務所かな。

すると、一階の作業場ドアが開く。

「おはようございま~す」

「にゃあー」

お、パルテノスだ。それと……なぜかユキちゃん。

サンドローネは立ち上がり、ぺこりと一礼する。

「おはようございます。パルテノス様」

「おはよ~」

「にゃうー」

「おっす。なんでユキちゃんが?」

「うふふ。隣の公園で一人遊びしててねぇ。今日は一人だっていうから、連れて来ちゃいました~」

「にゃああ」

いや、連れてきたって……人攫いかよ。

ユキちゃんを抱っこしたまま、サンドローネの出した椅子に座るパルテノス。ユキちゃんは足元にいる大福に気付き、パルテノスから逃れそのまま大福を抱っこ。近くにソファに座った……まあいいか。

サンドローネは、俺の作った資料を渡す。

「こちら、アレキサンドライト商会が提案する『ウェディング・プラン』の詳細です。現在行われている結婚式に、ゲントクの知識を肉付けしたものとなります」

「ありがと~……どれどれ」

パルテノスは、真面目な顔で資料をめくる……なんか、ちょっと緊張する。

「にゃあ、おじちゃん……のどかわいたー」

「おっと。じゃあ、果実水を出そうか。あと、お菓子も食うか?」

「たべる」

とりあえず、ジロジロ見てると緊張するので、ユキちゃんのためにジュースとお菓子を用意。

事務所に行くときなこがいた。お菓子、ジュースを持ってユキちゃんのところに戻ると、パルテノスが読み終えたのか、満足して微笑んでいた。

俺はパルテノスにも果実水を出し、椅子に座る。

「どうだった?」

「素晴らしいわ~!! 結婚式がこんな素敵になるなんて!!」

「すでに準備は始めています。テストケースですので、うちの社員がまずは実際に結婚式を挙げます。結婚式には、この国の貴族を中心に招待し、大手商会の役員もご招待し、存在を認知してもらおうと考えています」

「ふむ……結婚式は、貴族中心の商売になるの?」

「いえ、料金体系を設定します。もちろん、この式はお金がかかるので……」

「お手軽にはできないわねぇ」

パルテノス、ちょっと難色を示している。

だからこそ、俺はニヤリと笑って別の資料を出した。

「そこで、俺が提案するのは……『互助会』だ」

「……ごじょ、かい?」

「ああ」

資料をパルテノスに見せる。

簡単に説明すると……「結婚式のためのサブスク貯金」みたいなもんかな。

将来、結婚するかもな〜って思ってるうちから、毎月ちょっとずつお金を出していく仕組み。

「なるほど、毎月の積立……ってことね」

「ああ。将来、結婚式を挙げたいとするだろ? それにはいくら必要って前もって提示しておくんだ。そのための貯金制度だ」

互助会に入ると、毎月数千円くらいをコツコツ払う。で、その積み立てた分を、あとで結婚式代として使える感じ。

「互助会に加入すると、毎月の積立貯金はある。もちろん、料金設定はムリのない範囲でやるし、もし結婚式を挙げるとして金が足りない場合は支援もする……当然、ちゃんと支払いはしてもらうからな」

「ふむ……」

「互助会に加入すると、毎月の会誌とか、プレゼントとか、特典を付ける。ただ貯金するだけじゃ途中でやめちまうかもしれないからな。実際に結婚した人の体験談とか、プランの説明とか、商会長サンドローネのインタビューとか」

「最後は余計よ。ともかく……そういう制度です」

まあ、互助会なんて使ったことないし、うろ覚えだけど……間違ってないとは、思う。

悪いな、細かいツッコミなしだぜ。だって俺、未婚だし!! 互助会制度なんて言葉でしか知らねえ!! アイデアだけ出して、あとはブン投げるぜゲヘヘヘヘ!!

パルテノスは、うんと頷いた。

「いいわ。このプランでやってみましょう!! んふふ、ワクワクするわね~」

「準備は、こちらに全てお任せください。意見などあれば、その都度お願いします」

「ええ。ありがとうね、サンドローネちゃん。かかった費用は全て、わたしに請求してね」

「いえ、しかし」

「ダメ。全部、いいわね」

「は……はい」

パルテノスは、サンドローネにぐいっと顔を近付け、有無を言わさぬ顔で言った……な、なんか怖い。

というか、アレキサンドライト商会の持ち出しなしで結婚式プランができるのか。

「さて、俺は俺の仕事……魔道具作成か」

「ええ。ゲントク、頼むわよ」

「おう。少し派手にしたいから、ロッソたちに素材の調達頼むか……くっくっく、面白くなりそうだ」

「……やる気あるのはいいけど、失敗しないように」

サンドローネは立ち上がる。

「パルテノス様、このあとお時間があるようでしたら、詳細について詳しく説明致します」

「ええ、お願いね。ふふ、その前に……お茶でもしない? いいお店があるの」

「は、はい……ぜひ」

「ふふふ。サンドローネちゃん、わたしあなたのこと気に入ったわぁ~、仲良くしましょうね」

「こ、光栄です」

おお、サンドローネがタジタジだ。

俺は百合の気配を感じ、ソファにいるユキちゃんの元へ退避。

二人が出て行ったのを確認し、息を吐いた。

「ふう、百合の間に挟まる男は死ぬってジンクスあるしな……回避成功!!」

「にゃあ、おじちゃん。あそんでー」

「ん、そうだな。ちょっと買い物行きたいし、ユキちゃんも一緒に行こうか」

「いく!!」

さて、冒険者ギルドに行って、商業ギルドをチェックして……やることいっぱいありそうだ!!