軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

スノウデーン王国、二度目の冬⑥/温泉トラブル

さて、食事の前に男女別れて大浴場……なんだが、みんな女性なので男湯は俺だけだった。

うう、シュバンとかマイルズさん、リヒターとかアベルとか来て欲しい……まあしゃあねえや。

さっそく、本殿の大浴場へ。

離れの通路から直接大浴場に行けるみたいだが、俺はあえて本殿を通って行くことにした。

階段を上り、本殿へ出る……するとそこは。

「すっげ……ひっろ」

超広いエントランスホールだ。入り口の幅はかなり広く、土足のまま入れるようだ。

二十メートルくらいある受付カウンターで受付をし、そこで浴衣をレンタルする。そして専用のロッカーの鍵をもらう。

ちなみに、この浴衣のレンタル、専用のロッカーのカギは俺のアイデアだ。受付して、下足入れの鍵を受付に渡してロッカーのカギをもらうシステムってよくあるよね。この世界は土足が基本だから下足入れはないけど。

そして、滅茶苦茶デカい暖簾がある大浴場入口。

「のれん、でっけえ……超特注品だな」

普通の暖簾の十倍くらい大きい。

異世界文字で『男』と『女』に分かれてる。ちなみに男湯は青、女湯は赤……これも俺のアイデアだ。

さっそく俺は男湯の方へ……うわ、入口も広い。入口の横幅だけで十メートルはあるぞ。

通路を通り、脱衣所へ。

「うん、ここも広い……体育館レベルだな」

そう、脱衣所の広さは分かりやすく言えば体育館だ。

そこに、ロッカーがいくつも設置されている。番号ごとに案内板がある。

「えーと……俺のはっと。おおお、さすがVIP待遇」

俺のロッカーは、五番……シングルナンバーだ。

畳三枚分くらいの専用スペースであり、椅子や小さいテーブルもある。

ロッカーも大きいし、こりゃありがたい。

俺はササッと服を脱ぎ、腰にタオルを巻いて大浴場へ向かうのだった。

◇◇◇◇◇◇

さて、大浴場は……いやまあ、知ってたけど驚いたわ。

「で、でっか……プール……いや、湖かよ」

小さい湖、と言っていいレベルの広さだ。

たぶん、縦横幅が百メートル以上ある。あり得ねえ広さだ。

洗い場も百か所以上あるし、マジで千人以上入ること想定してる。そりゃ『デカい風呂』って言ったけど、限度あるだろ……地球じゃあり得ない広さ、ファンタジースーパー銭湯だ。

とりあえず、俺は身体を洗ってクソデカ内湯へ。

「はぁぁぉぉぉおおおおおおお……」

ややぬるめ……ああ、これ永遠に入れるわ。

気持ちよさに少しとろけ、周りを確認する。

入ってる人は……うん、百人以上いるのは間違いない。下手したら千人いるかも。

それでも、大浴場はガラガラ……っていうか、反対側が見えないくらい広い。

「そういや、泡風呂……あるんだよな」

俺が作った『泡発生装置』が湯舟に埋め込まれているはずだ。そういや、どうなってるのかな……最後に見た時は八星の魔石使ってたけど、ちゃんと検証していないからわからないんだよな。

俺は湯舟から上がり、案内板を見る。

「泡風呂があっち、サウナ、水風呂に薬草湯……お、あっちが露天風呂か。とりあえず、泡風呂へ」

さて、泡風呂の元へ向かうのだが……いや、遠い。

五分歩いても到着しない。マジでどうなってんだここ。

看板があったので確認すると。

「は!? に、二キロ!? 泡風呂、二キロ先!? 遠っ!?」

なんと、泡風呂は二キロ先にあった。いや、マジで、なんで?

「離れから見た建物はデカかったけど……二キロもあるような大きさじゃなかった。そうか、ここは地下か……なるほどな。地下ならいくらでも広くできる」

看板をじっくり見る。

「泡風呂まで二キロ、露天風呂まで一キロ、サウナまで五キロ……いや、デカけりゃいいってもんじゃねえだろ!! 移動手段のこと考えろって!! 誰もツッコまなかったのかよ!?」

アレキサンドライト商会が中心となって作ったはずだけど……設計したの誰だよここ。体力のある獣人とかならともかく、俺みたいな一般人にはキツすぎる。

「いや、泡風呂行って帰りも歩きとなると、往復四キロ……? 嫌すぎる」

泡風呂を諦めた俺……これは問題点の一つだろ。

比較的に近いサウナに向かうことにした……それでも一キロ歩きだけど。

そして、腰にタオルを巻いただけの状態で、石畳の上を歩くこと一キロ。

『しばらくお休みします』

露天風呂の入口に、そんな看板があった。

「あああああああああああああああ!! この野郎おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

これキレていいだろ。

てか!! しばらく休みなら!! 暖簾の前に!! 注意喚起の看板置いとけ!!

「……もういいや」

俺は、がっくり肩を落として浴場から出るのだった……なんかもう大浴場じゃなくて離れの温泉にすればよかったぜ。

◇◇◇◇◇◇

大浴場から出ると、どこか疲れたようなサンドローネがエントランスに座っていた。

「よう、サンドローネ」

「……なんだか疲れたわ。というか、泡風呂まで三キロもあるのおかしいわ」

ああ、こいつも疑問に思ってる……よかった。

「他の連中は?」

「みんな体力ある人たちばかりよ」

「ああ、みんな歩いて行ったのか……てかサンドローネ、ここ、アレキサンドライト主導で作ったんじゃないのかよ。なんだよこのクソ広い風呂は」

「……確かに主導で行ったけど、設計も開発も外部にお任せだったのよ。お風呂づくりのノウハウなんて、当時のアレキサンドライト商会になかったからね。あなたの作った魔道具と、スノウデーン王国でも一番のお風呂に、って要望は出したけど……まさか、ここまでなんて」

「これ、問題の一つだな……広すぎる。あと、苦労して歩いたのに露天風呂が『しばらくお休み』ってなんだよ」

「そうなの? お休み、って……何かあったのかしら」

考える俺とサンドローネ。すると、若女将……じゃなくて、エアリーズがやって来た。

「スーパー銭湯の問題の一つ、『スライム問題』だ」

「おおエアリーズ。って……スライム問題?」

「ああ」

するとエアリーズは、半纏のポケットから小瓶を取り出した。

色は薄紫で、蓋を開けるとヘドロみたいなニオイがした。くっせえ!!

「な、なんだこれ!?」

「『ヘドロスライム』というスライムでな、現在、こいつが露天風呂の源泉に住み着いてしまって、出てくる湯が汚染されている状態なんだ」

「汚染って……源泉が!? おいおい、まずいんじゃ」

「言っておくが、『露天風呂の源泉』だ。ここはスノウデーン王国でも最大級の源泉地帯だが、地下にある超巨大な『大源泉』が大本で、そこからいくつか分岐して『源泉』となっている。設計の際に、内湯、露天風呂、泡風呂、薬草風呂と、それぞれの源泉を一つずつ利用して湯を張っているんだ。今回、ヘドロスライムは露天風呂の源泉に住み着き、露天風呂の湯を汚染している」

なるほどね。

地下深くにある『大源泉』……ここからさらに枝分かれして『源泉』になってるのか。一つの温泉に対して一つの湯舟とか贅沢だな。

サンドローネが言う。

「そのヘドロスライム……倒せないのですか?」

「無理だ。強さ云々ではない、源泉全てを汚染したヘドロスライムは、源泉を枯渇でもさせない限り死なない。それと……今は露天風呂の源泉のみだが、ヘドロスライムが大源泉を汚染したら、全ての温泉が使えなくなる」

「……おいエアリーズ、まさか」

「ああ。ゲントク……お前の力で、ヘドロスライムの汚染をなんとかできないか? それが問題の一つだ」

「……えええ~」

いやそれ、魔道具技師の範疇超えてるだろ……俺にどうしろってのよ。

「ゲントク、なんとかならない?」

「頼むゲントク。スノウデーン王国は、このスーパー銭湯を失いたくない」

「うぐう……」

ああもう、俺にどうしろっての……でもまあ、考えてみるしかねぇか。

「ってあれ? 問題の一つって……他にもあるのか?」

「ああ。今、説明するか?」

「いや待った!! うおお……なんかもう、マジで忙しくなる予感しかねえ!!」

こうして俺は、スーパー銭湯の問題の一つに取り掛かるのだった。