軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

スノウデーン王国、二度目の冬④/ミカエラの車両

さて、スノウデーンまでは時間かかる。

連結馬車の紹介は何度かやったし……みんな個々の時間を過ごしている。

マイルズさんのケーキを食べたあと、俺は一人で煙草を吸っていた。

「ふぁ……はぁぁぁ」

至福……甘いモン食ったあとの煙草、かなり好き。

俺が好きなのは、寝起きで家の窓を開けて、窓際で吸う朝一番の煙草、その次は食後にコーヒー飲みながらの一本。晩酌しながら、油モン食ったあとに吸う一本が大好きだ。

異世界の煙草、薬効成分が豊富で吸えば吸うほど身体にいい……満足度も、日本で吸っていた煙草とそう変わらないのがすごい。

「にゃああ」

「ん? おお、ユキちゃんか」

「おじちゃん、あそんでー」

と、ユキちゃんがやってきて、ロングソファに座る俺の太ももを枕に転がった。

可愛いので頭を撫でると、喉がゴロゴロ鳴る。

「ごろごろ……おじちゃん、たいくつー」

「スノウさんはいないのかい?」

「にゃうー、おかあさん、めがねのおじさんとおしゃべりしてるの」

「そうだなあ。じゃあ、車内の散歩でもしようか」

眼鏡のおじさん……リヒターだな。マイルズさんってことはないだろ。

俺はユキちゃんを抱っこし、一階のリビングルームへ。

リビングにはサンドローネとイェランがボードゲームをやっていた。大福、白玉もクッションで寝そべって親子お昼寝している。

熱中してるし、声かけないで行くか。

一号車の外に出ると、外部通路があった。ガラス張りで、柵もしっかりしてるから外に落ちることはない。子供たちが走り回っても安心だ。

「二号車は……いいか別に」

二号車は食堂車。

細かい改良はしたようだけど、まあ特筆すべきことはない。

三号車は男子車両、四号車は女子車両で、五号車は大浴場車両……六号車は『鮮血の赤椿』車両で、七号車は『殲滅の薔薇』車両。八号車は物資車両……そして九号車。

「にゃあ。ここ、すごくおおきいね」

「ああ。ここはミカエラの車両なんだ」

九号車は、ミカエラが後付けした改良連結馬車だ。

というか……でかい。二階建てで、普通の連結馬車を二台くっつけたような広さだ。馬車というか電車を一両持って来たような大きさだ。

というか……今更すぎるけど、ヒコロクとヤタロウ、よくこんなの引けるな。数トンどころの重さじゃないぞ。

「にゃうう、ここであそびたい」

「いやー……さすがにここはダメだよ」

「にゃあ……」

しょんぼりするユキちゃん。すると、ドアが開いてウングが現れた。

「……なんだ、オヤジか。なんか用事か?」

「ウング? なんでここに」

「護衛だ。つっても、入口で待機するだけだがな。後部にはリーンドゥもいるぜ」

ああ、護衛ね……そういやそうだった。

するとユキちゃん、ウングの足にしがみつく。

「にゃうう、ここであそばせてー」

「…………チッ」

「にゃ」

ウングはユキちゃんを振りほどくと中へ消えた……そして一分後。

「入っていいってよ」

「え、マジで」

「ああ。ミカエラが、茶でも飲んでけとさ」

「にゃああ」

こうして、俺とユキちゃんはミカエラの車両へとお邪魔するのだった。

◇◇◇◇◇◇

さて、ミカエラの車両は入口からすごかった。

「すっげぇな……シャンデリアかよ」

玄関にはシャンデリアがあり、横開きのドアを開けて中へ。

最初はリビングルームだ。豪華な椅子テーブルが並び、本棚やティーセット、窓際にはテラス席っぽいのもある。

豪華な椅子にはミカエラが座り、紅茶カップを静かに傾けていた。

カップを置くと、俺たちに向かって微笑む。

「ようこそ、ゲントクさん、ユキちゃん。さぁ、座ってくださいな、お茶の用意をしますので」

「にゃあー」

「お、おお」

言われた通り座る。横長のソファ……すっげえフッカフカ、手触りめちゃくちゃいいし、沈む沈む。

ユキちゃんは沈むソファが楽しいのか、身体を揺らして沈むのを楽しんでいた。

すると、奥のドアが開いてアベルがティーカートを押してくる。

「ゲントクさん、ユキちゃん。いらっしゃい、今お茶を淹れますね」

「お茶……って、お前が淹れるのか?」

「ふふ。アベルの紅茶は絶品ですのよ」

アベルは、マイルズさんに負けない手際で紅茶を淹れ、俺の前へ。

ユキちゃんには果実水。そして、フルーツクッキーを出してくれた。

「にゃああ、おいしい」

「確かに美味い……紅茶もクッキーもすげえな。クッキー、手作りか?」

「さっき焼いたんです。うまく焼けたと思うんだけど……」

なんとアベルの手作りだった。イケメン、料理上手と完璧じゃねぇか!! こんちきしょうめ!! って……ふん、俺だって料理負けてないもんね!! 男の一人暮らし丼飯だったら負けねぇぞチキショー!! って、俺は何を考えてるんだ。

俺は室内を見回し、ミカエラに聞く。

「すごい設備だな……どうなってんだ?」

「あら、興味がおありで?」

「まあ、連結馬車を考案したの俺だしな。他の技師がどういうアプローチで改良したのか気になる」

「ふふふ、なら説明しますわね」

さて、ミカエラのありがたい説明だ。

まず、この連結馬車は二階建て。一階は今いるリビングルーム、アベルが出てきたドアの先はキッチンになっており、設備を見せてもらったけど、マイルズさんとシュバンがいる食堂車よりも広かった。

リビングから別のドアに入ると風呂……さすがに風呂の大きさは大浴場車両のがデカいけど、こっちは浴槽とかシャワーとか、一つ一つの設備が立派だった。

そしてトイレ……花柄の便器とか初めて見た。最後に、外へ通じるドアを開けるとウッドデッキみたいな空間があった。そこにソファが並び、外を見ながらお茶が飲める……でも新幹線みたいな速度で走ってるし、なんか怖い。

「すっげぇなあ。一つ一つにしっかり金かけて作ってる。デザインもいいし、大したもんだ」

「ありがとうございます。ゲントクさんに褒められると、照れますね」

「え、アベル……まさか」

「ええ。この車両は、ボクが設計、デザインしたんです」

「マジか!!」

なんとこの車両、アベルのデザインだった。

ミカエラはいつの間にかユキちゃんを膝に乗せ、頭を撫でながら言う。

「ふふ。私は魔道具技師ですけど、アベルは王都でも指折りのデザイナーで、自身のブランドをお持ちなの。『フリーダム』というブランド、ご存じ?」

「えーと……不殺の、青い死神じゃないよな」

ごめん、戦場に突如現れてメインカメラと武装だけ壊す、ある意味最悪の死神を想像しちまった。ミカエラとアベルは首を傾げたので慌てて訂正。

「わ、悪いな。見ての通り、ファッションとは縁遠いオッサンだからわからん」

「ふふ。大丈夫です。でも、アベルのブランドは、エーデルシュタイン王都だけじゃなく、国外でも有名なんですよ」

「へぇ、こんなおっさんでも似合うファッションあるかな」

現在、俺は飾り気のないシャツにズボン、ジャケットだ。ポケットに財布を突っ込んでおり、靴ではなくサンダルを履いてる……なんかもう『おっさん』を隠さないスタイルだ。

するとアベル、俺に顔を寄せ、上から下までじっくり見る。

「……ゲントクさん。かなり鍛えてますね。肉付きもいいし、着飾るよりはシンプル系のコーデが似合いそうだ。ゲントクさんさえよければ、スノウデーン王国にあるボクの店でコーデしますよ」

「あ、あはは……今回はいいかな。あ、それより二階、二階はどうなってる?」

ちょっとアベル。イケメンだからなんて言うかこう……色っぽいんだよ。顔立ちも『カッコいい』が十割じゃなくて、『カッコいい』が七割で三割が『可愛い』系というか……俺は何を言ってんだ。

ああ、二階、二階ね。

「二階は寝室と、ボクとミカエラの部屋、あとはシャワールームに、クローゼットと物資くらいですよ。さすがに寝室はちょっと……」

「にゃあ。おにかいに、シャワーあるの?」

と、ユキちゃんの疑問。

ミカエラは頬を染め、アベルは「あー、いや」と困ったような顔……ピンときたね。まあ、いろいろ運動したあとはシャワー浴びたくなるよな。これ以上はナシで!!

俺はササッとミカエラからユキちゃんを奪い抱っこする。

「さ、ユキちゃん。お腹いっぱいになったし、そろそろお昼寝しような」

「にゃうう」

「というわけで、ここらで失礼するぜ」

「は、はい」

「す、すみません、ゲントクさん」

「いいって。それより、ここでメシ食うのもいいけど、俺らの食堂車にも来いよ。あと、よかったらアベルの料理も食べてみたいな」

そう言うと、アベルとミカエラは微笑んだ。

俺はユキちゃんを抱っこし、部屋の外へ出るのだった。

さて、スーパー銭湯まではまだまだかかる。甘いモンばっかり食ったし、イェランでも誘って軽く飲むとしますかね。