軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

雨の日、独身おじさんの休日

さて、仕事再開の準備……なんて思ってたある日。

「うわぁ……大雨だな」

そう、大雨である。

外はとんでもない豪雨。天の底が抜けたんじゃないかってくらいの大雨だ……俺がこっちの世界に来て、こんな大雨は初めてかもしれない。

この世界、というかエーデルシュタイン王国、下水や排水関係が驚くほどしっかりしているので、雨水とかはちゃんと流れていくので安心だ。まあ、近くの川とかは氾濫しているだろうけど。

俺は、こんな土砂降りなのに新聞を運んで来たバニラを撫でる。

「ありがとうな。雨の中、新聞運んでくれて」

『ほるるるる』

というかこいつ……雨が気持ちいいのか、新聞運んでずぶ濡れになったあと、しばらく外を飛んで帰って来たんだよな。すっげえタフなフクロウだ。

大福、きなこは窓際の座布団で香箱座り。スヤスヤと気持ちよさそうに寝てる。

俺はソファに座り、大きく欠伸をする。

「ふぁぁぁ……今日は外出できないな。買い物は昨日いっぱいしたし……せっかくだ、いろいろ料理でもしてみようかな」

というわけで、今日は料理をして過ごすことに決めた。

◇◇◇◇◇◇

さて、まずは家の地下にある魔道具作成部屋へ。

「まだまだ暑いし……アイスとか作ってみるかな。必要なのはなんだっけ……昔、漫画で見たんだよな。牛乳と、卵黄と、生クリームと、砂糖だっけ……生クリームって牛乳だよな? メチャクチャかき混ぜて作る……んだよな? ハンドミキサー……おなじみ『回転』の魔石あればなんとかなるな」

とりあえず、泡立て器みたいなのを、素材置き場にあったメタルオークの骨を使って作る。

溶かし、針金状に加工して曲げ、それを重ね合わせて泡立て器の形状へ。それに取っ手を付けるのではなく、『回転』の魔石を組み合わせた魔道具の持ち手と合わせた。

スイッチを入れると、泡立て器が回転する。

「うっし。じゃあこれを使って、ボウルに入れた牛乳を混ぜる……混ぜる」

ギュイイイイイイン!! と泡立て魔道具が回転。

いいね。牛乳をまぜまぜすると……おお、いい感じにとろみが付いてきた。

「……あれ? 砂糖って入れるんだっけ? いやでも、牛乳って甘いよな……くっそわかんねえ。とりあえず少し入れちゃおう」

うろ覚えなのでわからん。とりあえず砂糖を少し入れて混ぜる。

いい感じにトロトロのクリームになった。

「……甘い。たぶん、これでいい、のか? 砂糖いらなかった……かな」

ああもう、異世界転生者が都合よくマヨネーズとか作るような知識ねえよ!! んだよマヨネーズって!! 市販のしか買ったこと……って、待てよ?

「ちょっと待て。漫画……? そういや、スマホ!!」

スマホ。一応、この世界に来てからずっとポケットに入れている。

ダウンロードしたジャズとか、電子書籍とか入れてある。何度も読んだから読み返すことはないし、最近はずっと音楽しか流していない。

ふと、漫画で思った。

「以前、ダウンロードした漫画……異世界開拓系の漫画の中に、マヨネーズの作りかたあったような……ええと、どれだっけ? あ、これだ!! うおおおおおおおおおあった!!」

俺が買った漫画の中にあった。

異世界転生した主人公が、マヨネーズを作ってハーレムヒロインたちを驚かせるシーン。ご都合主義でマヨネーズの作り方を知ってる元会社員の社畜に冷ややかな感情を向けていたが、今は感謝しかない。

「マヨネーズ……卵黄、レモン汁、酢、塩、サラダ油か。酢はあるし、レモン……異世界のレモンもある。油もあるし……なんとかなりそうだ!! 分量とかはわからんけど……よし、よし!!」

マヨネーズ……まさか、異世界転生した主人公の漫画から得るとは思わなかった。というか、自分で買った漫画なんだし気付けよ俺!! もうこの世界に来て二年くらい経つのによ!!

と、マヨネーズに感動して忘れていた。

「おっと。アイスクリーム……生クリームはできたし、あとは……」

確か、爺ちゃんが作った方法は。

卵黄をかき混ぜて、砂糖を加えてさらに混ぜる。

生クリーム、牛乳を混ぜて鍋で温める。そして、温まってきたら、混ぜた卵黄を少しずつ入れる。

全て混ぜ合わせたら冷まして、冷凍庫へ入れる。

「と……こんな感じか」

冷凍庫にアイスの元を入れる。あとは冷やし固まれば完成だ。

「おっと。大事なモンを忘れてた……えーと、作れるかな」

俺は素材を漁り、いい感じの鉄板を見つけたので加工する。

うちにあった『アレ』を作らないとな。くくく、勘のいい人ならわかるよね。

◇◇◇◇◇◇

さて、『アレ』が完成したのでアイスはひとまず置く。

次に作るのはマヨネーズ。くっくっく、漫画で見た異世界転生無自覚ハーレム元社畜主人公くんに感謝だぜ。

材料を用意し、ボウルに全て適当に投入した。

「卵黄……二個くらいで試すか。レモン汁……とりあえず、半分絞る。塩はまあ……大匙一杯かな。酢……も、同じくらいでいいや」

分量がわからんのでマジ適当。

ボウルに入れ、ハンドミキサーで混ぜ合わせる。

「……うーん、ほんとにこれでいいのかね? ご都合主義の異世界転生漫画じゃ、マヨネーズとか普通に作るけど……」

混ぜて気付いた。

「あ、やべ……油入れ忘れた。ま、まあ後入れでも問題ないよな。うん」

油を少し入れる……なんかダメな気がする。

だが、油を入れて混ぜると、とろみが出てきた。

「おおお? なんかいい感じ……油の後入れがよかったのか?」

そのまましばらく混ぜると、俺の知ってるマヨネーズが完成した。

舐めてみると……あれ、ちょっとしょっぱ酸っぱい。

「いきなりは無理か。でも……マヨネーズになってる。あとは分量を調整すればいける」

それから試行錯誤すること数時間、マヨネーズが完成した。

黄色いトロっとしたマヨネーズ。舐めると、これはもうマヨネーズ!!

「いいね、これでタコ焼きに付けれるし、唐揚げにも付けられる。自家製マヨネーズ……完成だぜ!!」

さて、そろそろアイスクリームも完成したかな?

冷凍庫を開けると……おうおう、ちゃんと固まってる。

やや黄色いバニラアイスだ。バニラエッセンスとかないから匂いはそんなにしないけどね。

「さて、取り出したるは……『アイスクリームを掬うカシャカシャ』だ!!」

アイスクリーム屋さんが使う、アイスを丸くくりぬく『カシャカシャ』を俺は手にする……なんだっけ、アイスクリーム……でぃ、でぃ、なんだっけ……ああもう『アイスくり抜くカシャカシャ』でいいや。

俺は、固まったアイスをくりぬき、小皿の上にカシャっと落とす。

「おおおおおお……できてんじゃん!! 異世界あるある!! 『社畜サラリーマンが異世界転生すると何故か調理方法を知っている料理の一つアイスクリーム』だ!! まあ普通にアイスクリームで」

さっそくソファに座り、アイスを食べる。

「……あ、あまっ」

クッッッソ甘かった。

砂糖の配分間違えたのか。激甘すぎる。

俺は急いでコーヒーを濃く淹れて、飲みながら食べる。

「うん、甘いけど美味い……アイスクリーム。これ、もっとデカい容器に何個も作って、果肉とか入れて、ガラスケースから見えるようにして、お客に選んでもらう……まあ普通のアイス屋っぽくできるかも」

『なぁご』

『ニャアア』

と、ブツブツ言ってると大福、きなこが俺の傍に来た。

二匹を交互に撫でて考える。

「……猫ってアイス大丈夫かな。いやでも、冷たいし内臓に負担かかるかな?」

『なああ』

『うにゃあ』

「うーん、やめておくか。お前たちは普通のごはんな」

いつものパターンなら、サンドローネやロッソたちが来るんだが……今日は大雨なので来客ナシ。

アイスを食べ終え、俺は大きく欠伸をしてソファに横になる。

「ふぁああ……なんか眠い。昼寝しますかぁ」

『ニャア』

『なーお』

俺は、傍に来た大福ときなこを撫でながら、そのまま目を閉じるのだった。

たまには、こんな休日も悪くないね。