軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第一回ザナドゥ・マリンスポーツ大会⑦

さて、俺たちの番号は「151番」だ。

砂浜にデカい杭が刺さっており、そこからワイヤーが伸び、沖に浮かんでいる船のマストにワイヤーが固定され、ワイヤーには番号が吊り下げられている。

151番の札の真下に移動し、俺はサスケに言う。

「サスケ、作戦通りにいくぞ」

「ああ、やっべえ……今まで暗殺とか機密書類の奪取とか失敗できない仕事は多くあったけど、今はそんなの比じゃねえくらいドキドキしてるぜ」

あ、暗殺? 忍者って暗殺もするの……? ま、まあいい。

サスケは手を合わせてゴシゴシ擦っては顔をパンパン叩く。

すると、何隻も後部に浮かんでいる船から、魔道具による拡声した声が聞こえて来た。

『さあ、いよいよ始まります!! 第一回・ザナドゥ・マリンスポーツ大会最後の種目!! 何でもありの『自由競争』です!! 初の大会で王者に輝くのはどのチーム、どの商会でしょうか!! さて、改めてルールの確認です!!』

すごいな、一つの拡声魔道具から、いくつも設置した拡声器に同時に声を送ってる。たぶんポワソンかラスラヌフの魔導具かな……十二星座の魔女ってやっぱすごいぞ。

おっと、ルールの確認だ。

『えー、ルールは単純明快!! スタートして一キロは通常走行で走っていただきます。そして、一キロラインを越えたら、あとは何をしてもOK!! 攻撃あり、防御あり、敵船に乗り込んでバトルあり、ひたすら進むのもあり!! とにかく、百五十キロ先のゴールを潜り抜けたチームが優勝です!!』

わかりやすくていいな。

百五十キロ……時速六十キロでも二時間以上かかるな。

『さあ、全チーム、準備はできたかな? ではこれより、第一回ザナドゥ・マリンスポーツ大会最後の種目、自由競争を開始します!! スタートの合図は……ザナドゥの国王、ハボリム様ァァァァァッ!!』

『いよっしゃあああああああああああ!!』

ハボリムの絶叫……こんなノリのいい王様、異世界モノであんまいないぞ。

『全員、正々堂々は最初の一キロだけ!! 死亡同意書にサインした以上、死んで文句言うんじゃねぇぞ!! 国民が死ぬのは悲しいけどよ……覚悟キメてんなら話は別!! レースに命賭けるお前らを、王として誇りに思うぜェェェェ!!』

『『『『『ウォォォォォォォ!!』』』』』

すっげえ絶叫。

俺も『サンディエゴ!! ニューヨーク!!』って叫びたくなった。

俺は魔石に魔力を送る専用ハンドルに触れる。サスケはアクセルに足を乗せハンドルを握る。

「サスケ、勝つぞ」

「ああ、作戦通りいくぜ」

最後にもう一度、軽く拳を合わせる。

そして。

『さあ行くぜ……3、2、1、ゴォォォォォォッ!!』

ボートが一斉に走り出す。

いよいよ始まる。第一回ザナドゥ・マリンスポーツ大会、最後のレースだ!!

◇◇◇◇◇◇

一方その頃、サンドローネ。

◇◇◇◇◇◇

サンドローネは、ゴール地点でキセルを吸い、煙を吐き出す。

公の場なので、ただ紙煙草を吸うのではなく、見栄えを気にして専用の煙管を吸っていた。

現在、ゴール地点の観客席には、サンドローネとリヒター、イェランがいる。

そして、サンドローネが喧嘩を売った古参商会の商会長たち……その中の一人、ボンバが言う。

「始まりましたな。ククク……」

「そうですわね」

サンドローネの隣に立ち、ニヤニヤしながら言う。

「我らが誇る最高の設計士がデザインしたボートには攻撃用の魔導武器が大量に搭載されていましてな、さらにA級の冒険者を四名雇い一か月前から船上での訓練を行いました。魔道具に使用している魔石も、全て八つ星以上のモノを使っている。ククク……結果が楽しみですなあ」

「そうですわね」

サンドローネは前を向いたまま煙を吐き出す。

それが面白くないのか、ボンバは舌打ちした。

「チッ……小娘、約束を忘れてはいないだろうな」

「もちろん。ザナドゥに関わる全ての権利を、あなた方に差しだします。そちらも、お忘れではなくて?」

「もちろん。我々の商会の一つを完全に解体する……」

ボンバ以外に、四人の老人がウンウン頷く。

どの商会を解体するのかは言わなかった。

サンドローネは煙管を吸い、煙を吐き出す。

そんな時だった。

『おーっと!? ボートのトラブルか!? スタート地点から動かないボートが一隻!! 151番……これは、アレキサンドライト商会、アレキサンドライト商会のボートだ!!』

実況の解説が聞こえて来た。

サンドローネの眉がピクリと動き、ボンバはグチャッと笑みを浮かべる。

「くははははは!! これはこれは、楽しいことになりましたな」

「……」

サンドローネは煙を吐き出す。

その表情は変わらない。リヒターはサンドローネをチラッと見る。

サンドローネの表情は、やはり変わらない。

「はーっはっはっは!! ボートのトラブルとは、ついてませんなあ!!」

「そうですわね」

「ククク、小娘……何度でも言う。もう、取り返しは付かないからな」

「ええ、そうですわね」

サンドローネの表情は、最初から変わることはなかった。

だが、一人だけ。

「ふふん……」

イェランは、何かを確信するかのように笑っていた。

◇◇◇◇◇◇

レース場スタート地点、玄徳とサスケ。

◇◇◇◇◇◇

さてさて、ボートがほとんどスタートし、俺とサスケはビリッけつにいた。

左右を見るが、スタート地点には俺たちしかいない。

『さあさあ、アレキサンドライト商会!! トラブル回復なるか!!』

「いや、トラブルじゃないし。さて、そろそろ解説いくぜ!!」

「え、解説?」

すまんサスケ、脳内解説させてくれ。

さて……俺とサスケの乗るボートは、独特な形状をしていた。

ドラム缶のような形状で、乗り込む部分を改造して蓋のようにしてあり、後部にはスクリューが二門ある。正直、デザインはかなり微妙だ。

ドラム缶と言っても、先端は尖っているので水の抵抗はない。勘のいい人はわかったかな?

「よし、サスケ、スタートだ」

「了解。予定通りいくぜ」

俺が魔力を流すと、スクリューが回転して進みだす。

『アレキサンドライト商会、スタートだ!! かなり出遅れたが、巻き返せるか!?』

「いや、予定通りだ。最後部だと目立つしな……ここからの『仕込み』で何をするか、よーく見てしっかり解説してくれよ」

「オッサン、このままの速度を維持。障害物がないから安心して進めるぜ」

ボートはゆっくり進む。

そして、一キロ地点には赤いロープが頭上に貼られ、『一キロ地点』と書かれていた。

「サスケ、一キロ地点を超えたらやるぜ」

「おう。へへへ、オッサン、オレ本当に楽しいぜ」

「俺も俺も。勝ったら祝杯だぜ」

「おう!!」

そして、一キロ地点を超えた。

『さあ、アレキサンドライト商会も一キロ地点を超えた。急がないと巻き返しキツイぜ!!』

「くっくっく。ここからが本領発揮よ……いくぜ!!」

俺は魔力を流し、船の底部に設置した魔石を発動させる。

すると……きたきた。

『お、お!? なんだなんだ!? アレキサンドライト商会のボートが、沈んでいく!! なんだなんだ、トラブルかぁ!?』

そう、俺たちのボートはゆっくりと沈んでいく。

底部に『展開』の魔石を設置したおかげで、底部のスライドが開いて海水が侵入していく。だが、もちろん仕様であって事故じゃない。

海水は、専用のタンクに入る……つまり、船の重量が増す。

もうわかっただろ?

「サスケ、いけるか?」

「ああ。視界良好、さっすがだぜ、オッサンの作った『潜水艇』は」

そう、俺が作ったのは『潜水艇』だ。

そして、スクリューに搭載した魔石は『超回転』である。

「サスケ、魔力は二割程度でいく。それでもけっこうな速度出るぞ」

「操縦は任せておけ。ザナドゥの海は澄んでるし、オッサンの『不壊』だっけ? その魔石もあるから岩に激突しても大丈夫だろ?」

「ああ。じゃあ、魔力いくぜ」

魔力を込めると、後部に設置したスクリューが高速回転。

普通のボートでは爆発したような速度が出たが……水中では、そこまで派手ではない。

だが、水中で発動した『超回転』の魔石は、時速百キロ以上の速度で水中を走る……おいおい、これで二割かよ。

サスケは、ハンドル操作で小さな岩や魚の群れを回避。

「オッサン、まだ余裕だ。魔力増やしてもいいぜ」

「じゃあ……四割」

時速百五十キロ以上出てる。

いちおう、ボートには『光』の魔石を搭載してライトをつけているが……海底を楽しむどころじゃない。新幹線みたいな速度なので景色を楽しむ余裕もない。

「オッサンの言った通りだな。海上で派手な攻撃とかであっても、海中なら無視してガンガン進めるぜ」

そう、これが俺の作戦だ。

派手な攻撃用ボートとか、重装甲ボート、速度重視のボートとかが海上で大暴れしても……海中じゃ関係ない。誰にも邪魔されず、『超回転』の魔石でどんどん先に行ける。

すると、ボートの残骸が目立つようになってきた。

「オッサン、どうやら海上で戦いが起きてるみたいだぜ」

「関係なし!! だっはっは!! 無視してガンガン進むぜ!!」

「おう!!」

どうやら海上では、攻撃用ボートによる戦いが始まってるらしい。

それから一時間ほど、時速百五十キロで走行。速度を落とし、周囲や頭上を見たが、ボートの気配がなくなった。

サスケが言う。

「どうやらぶっちぎりの一位っぽいな」

「ああ。とりあえず、俺らが一位ってことを教えるために浮上するか」

海水を輩出すると、ボートが浮上……そして、海上に出た。

『お? おおおおお!? なんだなんだ、ボートがいきなり現れた!! えーと……151番、アレキサンドライト商会、アレキサンドライト商会だ!!』

実況の声が違う……ああそうか、百五十キロのレースだし、地点地点で状況違うのか。

ビーチを見ると、多くの人たちが絶叫しているようだ。

『一体全体どうやって? ボードにはやけに速度のある船が表示されていたが、船が進んでいる形跡がないから魔道具の不具合と思われていたが……ん? ああそうか、アレキサンドライト商会のボートは、海上ではなく海中を進んでいたようだ!! これは驚いた!! 海上での戦いを避け、優勝を目指すために海中を進む!! さあさあ、アレキサンドライト商会!! 再び……』

さて、潜るか。

『もぐったぁぁぁ~!! アレキサンドライト商会の船は、海中も走行できる!! さすがアレキサンドライト商会!! 新型です!! 船外機を生み出した商会の魔道具は伊達じゃない~!!』

実況、うまいな。

感心しているとサスケが言う。

「ビーチにある魔導具で確認したけど、オレらに追いつけるボートはしばらく来ないぜ。どうする?」

「余裕見せて行くのもなあ。よし、二位争い頑張ってもらおうぜ。俺らはさっさとゴールして、サンドローネを安心させてやるか」

「了解。魔力よろしくな」

「おう」

魔力を込めると、ボートは海中を再び進む。

潜水艇……これは面白い船だ。二人乗りだし、終わったらサンドローネやハボリムを乗せてやるのも悪くないな。

たぶん、今頃イェランあたりがボートの解説してるだろう。近くには古参商会の爺さんたちもいるだろうし、サンドローネの勝ち誇った顔が見える気がする。

◇◇◇◇◇◇

さて、二時間かかると思ったが、一時間ちょいが経過……浮上すると、ゴールテープが見えた。

『さあ、アレキサンドライト商会、アレキサンドライト商会です!! 速すぎる、速すぎるぞアレキサンドライト商会!! 今、今、一着、一着で……ゴォォォォォォォォォル!!』

というわけで、一着ゴール。

俺とサスケはボートのハッチを開けてガッツポーズ、互いに抱き合って喜んだ。

「よっしゃあああああああ!!」

「勝ったぜオッサン!! まあ勝てると思ったけどよ、嬉しいぜ!!」

「おう!! だっはっは!!」

こうして、俺とサスケ、アレキサンドライト商会のボートがぶっちぎりで優勝した。

ちなみに……古参商会の自慢ボートは、半分も行かずに撃沈されたとかなんとか。