軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔導武器

さて、今日も平和な一日がやってきた。

持ち込まれる修理案件がけっこう増えてきた。まあ、アレキサンドライト商会からいろいろ出てるし、他の商会も負けじと新製品を出している。

おかげで修理依頼も多く、最近は新製品を開発する暇がない。

そろそろ車の製作にも取り掛かってみたいんだが。

「はい、完成。タイヤに刺さってた釘抜いたぞ」

「ありがたい!!」

最近、最も多いのが自転車のパンク修理だった。

チェーン脱着とかフレームに亀裂とかも多いけど……なんというか、魔道具職人じゃなく、自転車屋にでもなった気分。

まあ、魔道具の修理もけっこうあるけど。

俺は一階の壁に設置したボードにある修理依頼書を確認する。

「えーっと、エアコンの掃除と魔石交換が二件、掃除機修理が二件か。まとめて行っちまうかな」

俺はバイク用車庫からバイク……ではなく、バイク制作の過程で作った原チャリを出す。

実は、この原チャリ……俺の足としてめちゃくちゃ便利なのだ。

荷台にデカい箱をくっつけ荷物入れにして、足回りや外装を改造して乗りやすくしてる。

立派なバイクはあるんだが、こっちはツーリング用なので普段は乗らない。

原チャリ。まだ仕様書は渡していない。まずは自転車を普及させてからだ。急激な技術の進歩に、この世界の人間が適応できるとも限らんしな……それに、原チャリが出たら出したばかりの自転車が売れなくなる。少なくとも十年以上はこのままだ。

それに、法整備とかもあるし……免許制度とかも必要になるかも。

「ん?」

楽しそうな声。

俺が懐かしさから勢いで作った公園で、子供たちが遊んでいた。

「にゃあー!!」

「がるる、まてー」

「きゅう、こっちだよー」

「きゃーっ♪」

ユキちゃん、クロハちゃん、リーサちゃん。と……なんか『魚座の魔女』ポワソン・ピスケスが一緒になってアスレチックで遊んでいた。まあ子供だし別に……あれ、あいつって二千歳超えてるんだっけ。

ま、まあいいや……それに。

「増えたなあ、人」

俺の作った公園は出入り自由にした。すると、近くで遊んでいた子供たちが集まったり、老人たちが東屋でお茶のみを始めたり、憩いの場となっていた。

まあ、職場の隣が賑わうのはいいな。通る人も俺の店を見てるし、家にある魔道具が壊れたら俺のこと思い出してくれるかもしれないし。

「よし、午後の出張修理の前に、昼飯食うか」

昼飯は、トレセーナのところですき焼き丼でも食おうかね。

◇◇◇◇◇◇

昼飯を食べ、出張修理へ。

エアコン清掃。こっちはフィルター清掃に排水パイプの掃除、あとは劣化した魔石の交換だ。

今まで言ってなかったけど、魔道具職人は魔石を見れば、どのくらいで魔石が壊れるかわかるのだ。

寿命が近い魔石を交換し、エアコン関係は終了。

掃除機修理は、アメジスト清掃傘下の清掃商会からだ。

こっちも魔石交換と、フィルターの目詰まり、そして魔石の力を掃除機に流す『ライン』の破損だ。

魔石の力を魔道具本体に送るためには『ライン』という道を作る必要があるんだが……これは一般人には手が出せない。魔道具技師が魔力で、その流れを調整する必要がある。

その辺はまあ割愛。仕事を終え、俺は事務所へ戻っていた。

その途中、ホランドの魔導武器屋の前を通りかかると、見知った顔があった。

「お? リーンドゥじゃないか」

原チャリを止め、店に入ろうとしていたリーンドゥがこっちを見る。

「あれ? おっちゃんじゃん」

「よう、ホランドの店に用事か?」

「うん。武器のお手入れと改造お願いしてたんだ」

喋っていると、ドアが開いて弟子のビンカちゃんが出てきた。

「いらっしゃー……って、ゲントクさん。お喋りが聞こえたんで来てみたら」

「悪い悪い。リーンドゥがいたからつい。ホランドは元気か?」

「はい!! 師匠ならそこに」

と、ドアが完全に開きホランドが出てきた。

タオルを頭に巻き、煙草を吸いながら俺を見る。

「おーう。ゲントク、ちょうどいい……少し意見聞いていいか?」

「俺、魔導武器職人じゃねぇぞ」

「いいんだよ。茶ぁくらい出すぜ。さ、リーンドゥも入れ」

「はーい!! ね、おっちゃんも早く」

「仕方ねぇなあ。アドバイス代として今夜奢れよ」

「はは、それくらいならな」

俺は店の中へ。

相変わらず小綺麗な店だ。ホランドに案内されカウンターから店の奥へ。

そこは工房だった。

鍛冶職人が剣を打つような工房と、細工職人が作業するようなテーブルがあり、棚には武器素材や魔石、床には大量の設計図がある。

いかにもな職人の部屋……俺もこんな感じだからわかる。

「いい部屋だな」

「うるせ。それより、これ見てくれ」

ゴトッとテーブルに置いたのは、ゴツイ黄土色のガントレット。

「わあ、これウチの?」

「ああ。素材はミスリルとアストラス鉱石の合金で、拳に『腕力強化』の魔石を仕込んである。さらにガントレットの補強に『硬化』の魔石を仕込んである」

「……あー」

「やっぱりダメか」

「うん。ウチの魔力だと、『硬化』でも素材が耐えられない時があるんだよね。半月も使わないうちに、魔石が劣化しちゃう」

「そうかあ……」

ってか、リーンドゥが規格外なんだよな。

ミスリルとアストラス鉱石の合金って、オリハルコンよりも硬いはずなんだが。

「で、ホランド。何が問題なんだ?」

「お前、魔石と魔石を組み合わせ、どのくらいまでできる?」

「は?」

「……あー、無自覚なのか」

「どういう意味だ?」

「いいか。一つの魔道具に対し使える魔石は、最大でも三つが限度なんだよ。それ以上組み合わせるのには独自の構築式が必要になる。お前、あの魔導アーマー、いくつの魔石を仕込んでる?」

「あー……」

わんさと積んでます……とは言いにくい。

ってか、そんなのイェランから聞いたことないぞ。

「ああ、魔道具職人と魔導武器職人は毛色が違うからな……習うことも剣と槍くらい違う。それに、大抵の魔道具は魔石を一つか二つしか使わねぇからな」

「あー確かに……」

でも洗濯機にめちゃくちゃ魔石仕込んだけど……未だに商品化されない理由って、魔石の数のせいなのかもしれん。

ホランドは言う。

「頼む!! アドバイスが欲しい。せめて、二か月は壊れないように調整するアイデアないか?」

「あー……そうだなあ」

俺はガントレットを見る。

手の甲に『腕力強化』と彫られた魔石があり、手首あたりに『硬化』と彫られた魔石が組み込んである。なるほど……魔石はそのままで、ガントレットの素材を硬くすることで長持ちしようとしてるのか。

でも、ちょっと違和感。

「……ホランド、これ、『硬化』にもう一文字加えないか?」

「もう一文字?」

「ああ。『超』って字だ。わかるか?」

「『超』? 悪い、図鑑、図鑑……」

ホランドは『魔導文字図鑑(最新版)』を開き、「ちょう、ちょう……」と言いながらページをめくる。この世界の人たちには漢字になじみがなく探すのに苦労している。

図鑑には『超』が登録されていた。効果は『文字に加えることで一部の魔導文字を強化することが可能になる可能性がある』とある。

「こんな文字が……でもこれ、実例がないぞ?」

「ああ、『超水』とか『超炎』とかじゃ意味が通じないってか、イメージできずに発動しないんだろうな。でも『超硬化』だったら何となく意味わかるだろ?」

「……わからん」

ピンとこないのかね。俺はきたけど。

とりあえず、ものは試しで『超硬化』と彫り、リーンドゥに試してもらう。

「じゃ、魔力流すよ」

魔力を流すと、魔力のラインが黄色く輝き『超硬化』が発動する。

「あとは実戦してみないとなあ」

「じゃあリーンドゥ、こいつを殴れ。同じ『超硬化』の魔石を付けてある」

ホランドは、鉄板に『超硬化』の魔石を付け、壁に貼った。

するとビンカが言う。

「お、親方。以前はそれでリーンドゥさんが壁をブチ抜いて、奥様がブチ切れたんじゃ……」

「今回はゲントクの魔石もある。『硬化』じゃダメだったが、『超硬化』なら……気になるよな」

「気になります!!」

この師弟、いいコンビかもしれん。

リーンドゥは腕をグルグル回し、そのまま全力で壁をぶん殴る。

ズドン!! と激しい音がし、建物が揺れた……が、鉄板は少しだけ亀裂が入っただけで無事だった。

そして、ガントレットも。

「おお、すっごい!! 明らかに前より硬いよ~!!」

「成功か!! すげえな。『超』!!」

「わああ、あのあの、親方これって、新しい魔導文字なんじゃ!!」

「ああ!! ありがとよゲントク、お前の名前で登録しておくわ」

「あ~……おう、頼むぜ」

別にいい、というのはダメなんだっけ。

まあ、ホランドもビンカちゃんもリーンドゥも喜んでるし、別にいいか。

「『超』か。戦闘用の魔導文字と組み合わせれば、いろいろな効果を出せるかもしれんな!!」

「わあ、すごいですね親方!!」

「ねね、ウチも協力させて、おもしろそう!!」

三人とも喜んでいる。なんか俺も嬉しいわ。

「硬化なだけに、『効果』を試せてよかったな、ってか? はっはっは」

「「「…………」」」

三人は無言になった。

ああ悪かったよ、そんな目で見んなチクショウ!!