軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゲントクのミキサー

さて、現在俺はアレキサンドライト丼屋……この名前ダサいので、俺が運営する店舗だけ『オダ屋』にした。まあ牛丼チェーン店とか『~屋』とか言うのあるし、こっちのが言いやすいし。

そして店長は美獣人、オセロット獣人のトレセーナ。ボンキュッボンの色っぽいお姉さん。

店が定休日。俺は、アズマで買った各種調味料で割り下を作り、すき焼き鍋を作った。

それをトレセーナが味見。

「……美味しいね、これ」

「だろ? アズマで作った『すき焼き』だ。これ、どう思う?」

「そうだね……日中は厳しいね。知っての通り、日中はドンブリがメインで、来る客もお昼にがっつり食べたい人たちばかりだし。これ、時間かかるし……夜営業の居酒屋の時出すしかないね」

「それでいい。それと、雑酒も揃えてくれよ。エールやウイスキーも悪くないけど、すき焼きには雑酒がよく合うんだ」

この店、店長はトレセーナだが、運営は俺に一任されている。

なので、俺好みの店にしていいとの許しが出ているのだ。まあ、だからといって横暴なことするつもりはないし、トレセーナの意見をちゃんと聞いて判断してもらっているが。

トレセーナはウンと頷いた。

「いいよ。で、そう言うからには仕入先あるんでしょ?」

「ああ。サスケ……アズマ人の友達がいろいろ教えてくれた」

俺は地図を渡す。

そこには、アズマの食材を仕入れることができる卸売業者の店がマークしてあった。ちなみにこれ、全部サスケの息が掛かっている店なので、俺の名前を出せばすぐ取引できるそうだ。

「そうだ。なあトレセーナ、このすき焼きだけど、ドンブリにも合うぞ。すき焼き丼……試して美味かったらメニューに追加してみてくれよ」

「ふふ、アタシも同じこと考えてた。試作作ってみるよ」

この日は、お昼にすき焼き丼を食べた……うん、絶品でした!!

◇◇◇◇◇◇

トレセーナは、「じゃ、卸売業者と話つけてくる」と店を出て行った。

あとは任せれば、数日後には美味いすき焼き丼ができる。夜に行けば美味いすき焼き鍋も食えるだろう……ふふふ、オダ屋を俺好みにしてやるぜ。

家に帰る前、俺はちょっと作ってみたい物があったので職場へ。

職場の地下で素材を漁り、作業開始。

「ふふふ……ミキサーを作るぜ」

まあ、簡単に作れる。

まず、『回転』の魔石とミキサー下部に設置するカッターを連動させる。魔石が回転すればカッターも回転するようにする。

そして、スライムを加工してボトルを作り、本体と魔石とカッターを合わせる。

本体にスイッチを作り、ボトルと合わせ、ボトルに合う蓋を付ける。

「完成。これまでいろいろ魔道具作ったし、これくらいの物ならすぐできるわ」

カッターは回転と野菜や果物のカットに耐えられるよう、ミスリルを加工して作った。魔石は四つ星くらいにする……あまり等級の高い魔石だと回転がエグイことになるからな。

スライム製のボトルは加工したあとに煮沸消毒したし、溝を彫ったので大体の量も測れる。

「だいたい、二リットルくらいの量ができるかな……」

正直に言う……最近、野菜が足りてない気がした。

そりゃまあ、アズマではいろいろ食ったけど……純粋に野菜のみ、果物のみを接種していない。はっきり言って栄養バランスが悪い。

なので、野菜を使ってスムージーでも作ろうと思ったのだ。

「さて、野菜か……ってか、この世界の野菜って、日本で買えるような見た目のが多いんだよな。栄養価とかわからんけど……身体に悪いってことはないだろ」

と、考えつつ二階の冷蔵庫に入れてある野菜を取りに行くと。

「……おい、いるか」

一階から声。

しまった。『本日定休日』の看板は出てるけど、一階のシャッター開けっ放しだ。

慌てて一階へ。

「すんません。今日は定休日……って、ウング?」

「おう」

やって来たのはウングだった。

一人で来たのか。他には誰もいない……珍しいな。

「今日は仕事休みだ。バレンは貴族の用事、リーンドゥは第七区でやってる大食い大会に行った」

「大食い大会……そんなのやってんのか。ちょっと興味あるんだが」

「三日間の開催で今日が初日だ。明日もやってるぞ」

「……よし、明日行ってみるか」

アズマから戻ってきて三日目だし、まだ仕事再開しなくていいや。

大食い大会……いや別に俺が出るわけじゃないけど、催し物とか興味ある……じゃなくて。

「ウング、俺に何か用事か?」

「ああ。オヤジ、ミニクラーケンのシオカラ……まだあるか?」

「塩辛? ああ、あるけど……なんだ、気に入ったのか?」

「……フン」

ウングはそっぽ向いてしまった。

「ははは、待ってろ。ちょうどよかった……仕事の合間、お茶請けでつまもうと冷蔵庫に入れておいたやつがある。やるよ」

「……悪いな」

俺は冷蔵庫から、お茶請け用に買ったミニクラーケンのシオカラの瓶を取り、ウングに渡す。

「いくらだ?」

「いいよ別に。というか……お前さ、アオと同じくらい情報通なんだろ? アズマの商品を扱ってる店とか、すぐに調べられるんじゃないか?」

「……さあな。それより、それなんだ?」

ウングは、テーブルにあったミキサーを指差す。

なんとなくわかった……ウング、俺のところに遊びに来たのかもしれない。

ミニクラーケンの塩辛は確かに気に入ったんだろう。それが本命で、ついでに俺のところに遊びに来た、なーんて……まあいいか別に。

俺はミキサーを手に取って見せる。

「こいつはミキサーって言う魔道具でな。野菜とか果物を細かく砕いて液状にして飲み物にするんだ」

まあ、スムージー以外にも、肉とかミンチにしてハンバーグ……ハンバーグ!! そうだ、ハンバーグとかも作ってみるか。この世界、肉はシンプルに焼く調理がメインなんだよな。

と、今はハンバーグよりスムージーだ。

「そうだ、なあウング……少し付き合ってくれないか?」

「……その魔道具の実験か?」

「ああ。野菜と果物をいっぱい買って、スムージーを作ろう」

「……野菜と果物か。わかった、シオカラの礼にオレが買って来てやるよ」

「いいのか? じゃあついでに……」

俺はウングに買い物を任せ、キッチンで食事の支度をするのだった。

◇◇◇◇◇◇

ウングが買い物から戻ると、大量の食材……そして、なぜかブランシュがいた。

「あれ、ブランシュ? 私服で……」

「うふふ。おじさま、ウングと面白いことをするようですわね」

「一人か? アオやロッソは?」

「大食い大会に行きましたわ。わたくし、小食なので……あんな大きな肉、見ただけで胃もたれしますわ」

で、デカい肉があるのか……明日絶対行こう。

ウングは面倒くさそうに言う。

「チッ……」

「うふふ。ウング、今日だけは仲良くしましょう。それに、あなたとわたくしの間に、個人的な因縁はありませんし」

「……まあいい。怪力がいればメシの支度も多少は捗るだろ」

「……うふふ。もう一度怪力と言ったら、握り潰しますわよ?」

「ま、待った!! 喧嘩なし、よーしスムージー作ろう!! それと、ハンバーグも!!」

「「ハンバーグ?」」

喧嘩になる前に、俺は話を変える。

「今日はスムージーとハンバーグを作る。このミキサーでの実験だ」

「まあ、新しい魔導具……うふふ、こっちにきて正解でしたわ」

「で、スムージー……どうやるんだ?」

まず、ウングの買って来た果物を見る。

「ふむふむ……お、これは何だ?」

「センゴの実。森で採れる果物だ。甘酸っぱい味がする」

「へえ……じゃあ、こっちは?」

「それはペインナッポウですわ。表皮は硬いですけど、皮を剥くと瑞々しい、甘い果肉が出てきますわね」

「ほほう……」

二つを実食。

ふむ、センゴの実はマンゴーっぽい。ペインナッポウは……パイナップルだな。

あとは、リモンの実……って、これ見た目完全にレモン。すっぺえ!!

「よし、これ使ってみるか」

「センゴ、ペインナッポウ、リモンか。これをどうすんだ?」

「とりあえず、大体の量でいいからカットして……」

「あ、わたくしがやりますわ」

ブランシュは、硬いペインナッポウの皮を素手でベリベリ剥ぐ。そして、ウングが細かくカット。

俺はそれをミキサーに入れ、水とミルク、氷を入れ、隠し味に絞ったリモンを少し入れる。

そして、蓋をして押さえ……。

「じゃ、見てろ……スイッチオン!!」

ミキサーのスイッチを入れると、思った以上に高速回転。

最初は果物、氷が砕ける音がしたが……すぐに滑らかな回転になる。

ブランシュ、ウングが覗きこむ。

「へえ、こういう調理法が……」

「驚きですわ。刃が回転して粉々に……」

「ふむ。回転は十分だな……よし、完成」

蓋を開けると、甘酸っぱい香り、フワフワとろとろのスムージーが完成した。

それをコップに注ぎ、二人へ渡す。

「さ、飲んでみるか」

「「……」」

さっそく一口。

「───……っ!!」

甘い、やや酸っぱいが……フワフワとろとろ、ミルクと合わさった砕けた果物と、やや小粒に残った果肉がなんともいえないアクセント。

「うまい!! はは、ちゃんとしたスムージーだ!!」

「おいしい……!! おじさま、これは美味しいですわ!!」

「……すげえな」

ブランシュ、ウングも驚いていた。

異世界果物を使ったスムージーは好評だ。

「基本的に、野菜にも合わせられる。果物と野菜を合わせたスムージーも作ってみたいな……」

「これなら、苦手な野菜も食べ……いいえ、飲めますわね。最近、スノウさんが言ってましたの。ユキちゃんが野菜を残すと……」

「オヤジ、もっと試そうぜ」

「おう。ふふふ、さーて、次はどんな果物、野菜にするかな?」

この日、ハンバーグのことを忘れ、俺とブランシュとウングはスムージー開発で盛り上がるのだった。