軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

靴泥棒と常闇の魔物

その日、ネアはぱちりと夜中に目を覚ました。

この強欲な人間は、大事な資産を損なう不審者の訪れには予言者並みの能力を発揮するのである。

むくりと起き上がり小さく唸ると、まずは巣の中で眠っているディノの安全を確保する。

こちらの魔物はすやすや眠っており、誰かに虐められたり連れ去られたりはしていないようだ。

「うむ」

こちらは問題なしと凛々しく頷き、ネアは次なる管理地の見回りに出かける。

まずは室内をうろつき、どこにも侵入者がいないということを確かめると、いよいよこちらの棟に住まう大事な未来の弟の安否確認だ。

ノアは冬毛の時にはふかふかもふもふにもなるので、これからの季節はより大切に守らなければならない。

「…………ネア?」

戦闘靴を履こうとしてもそもそしていると、気配もなく立ち上がっていつの間にか隣に立っていた魔物が静かに問いかける。

ひたりとこちらを見下ろした魔物の瞳は暗く鮮やかな夜の色で、ネアは眉を下げてそんな魔物を見上げる。

「ディノ、起こしてしまいました?…………確証はないのですが、私の財産が脅かされているような気がするのです。ノアが心配なので調べに行こうと……」

「一人でかい?」

「……………むぐ。屋内でも、すやすや眠っているディノを大事にしたくても?」

「勿論だよ。ましてや君は、あまり良くない予感で目を覚ましたのだろう?」

そう問いかけた魔物はどこか静謐な微笑みを浮かべ、老獪な魔物の眼差しでどこか呆れたようにこちらを見る。

微かに寝乱れた真珠色の髪が複雑な光を揺らして、えもいわれぬ艶やかさにどきりとする。

ふうっと吐いた吐息の温度に指先で触れてみたくなり、ネアはそんな考えにひそかに動揺した。

「その、…………暗殺者がいるというよりは、このリーエンベルクに元々いる小さな生き物や不思議な生き物が、私の大事なものに触れている感じなのです。例えば狐さんだったら、バケツ怪人さんがびしゃびしゃに濡らしているとか、そんな感じでしょうか…………」

「…………だとしても、眠りを妨げる程の異変は、噛み合わない魔術の足音のようなものだ。軽視してはいけないよ」

「ふぁい…………。ディノ、ではせっかく気持ちよく眠っていたところなのに、ノアのお部屋を見に行ってくれますか?」

「うん。…………困った顔をしないでおくれ。君の勘は鋭いと思うよ。気になるのなら調べてみよう」

先程まで確信に近い予感に支配されていたのに、誰かを巻き込んで動くとなると、気のせいだったのかもしれないと急に不安になってきたネアは、迷惑ではないだろうかとしゅんとしたが、ディノは深く微笑むと優しく頭を撫でてくれた。

「…………だが、ノアは………起きているようだね。部屋にはいないし、…………おや?」

そこで首を傾げたディノにじっと見られ、ネアは困惑して首を傾げた。

ノアに何かがあったのだろうかとどきどきする胸を押さえると、そうではないよと抱き締められる。

「………………なぜだろう。君の衣装部屋にいるようだ」

「……………犯人はノアなのでしょうか?」

二人は首を傾げて顔を見合わせると、まずは衣装部屋に行ってみようということになった。

何をしているのかが分からないので、警戒は怠らないようにとディノはネアを持ち上げた。

「でも、ノアはもう家族のようなひとなのです」

「うん。悪さをしているのではないと思うよ。我々に秘密で何かをしているのだとしても、それは彼が私達に必要だと思った事だろう」

「はい!なので、ノアがしてくれていることが損なわれてしまわないようにしましょうね」

ふわりと、魔術の風が薫る。

その不思議な香りは夜の匂いで、遠くにふくよかな森の香りがした。

ディノが短い転移を踏む爪先は室内履のままだ。

そんな寛いだ様子にまた不思議な驚きを覚えながら、ネアは見慣れた衣装部屋に降り立った。

「ありゃ…………」

すると、そこには床の上に屈み込んでいたノアがいて、すぐにこちらを振り向いた。

特にノア自身が何かをしている様子はなく、その手元にはネアの秋告げの舞踏会用の靴が置かれている。

「ノア…………どうしたのですか?」

「ごめんよ、ネア、シル。起こさないように気配を消してたんだけどなぁ」

「ネアの靴を調整していたのかい?」

「そうなんだよね。アルテアがさ、リーエンベルクにいるならやっておけって言うから」

「アルテアさんが?」

首を傾げてノアの手元を覗き込んだネアは、そこにきゅっと体を丸めたお馴染みの生き物の姿を見付けてしまった。

「まぁ、…………ちびふわが。靴泥棒ちびふわでしょうか…………」

「おや、君が仕掛けた術符に触れたかな…………」

「あれは狐さん用だったのですが………」

「えっ、何でさ?!っていうか、それ何?!」

「狐さんは、ひらひらしたものをばりばりするのが大好きなので、万が一悪さをしに来たら、そのような生態ではないちびふわにしてしまうようにしたのです」

「…………わーお、ちびふわに…………」

「なのに、まさかのアルテアさんがかかってしまったのですね?」

そう呟いたネアに、ノアは、リーエンベルクに入れるとしたらアルテアばかりではないのに、このちびふわがすぐにアルテアだって分かるんだねと苦笑した。

「ええ、表情で分かるような気がします。その、実際にはそこそこ落ち込んでいるのに、つんとして見せる感じがアルテアさんなのですよね。ウィリアムさんならもっとどんより落ち込んでいる筈ですから…………」

「ウィリアムは落ち込むんだね…………」

「………ありゃ。分かるってよ」

「フキュフ……………」

ちびふわは、体を丸めていても見付かってしまったのなら致し方ないと、もそもそと出てくるとぴゃっと後ろ足立ちをした。

ネアに向かってちびこい手を伸ばして、この状態をどうにかしろと訴えてくる。

(か、かわいい!!)

あまりのあざとさにネアは胸が苦しくなり、ここで悪い人間は、その可愛さを少しでも長く楽しむ為にあえて鈍感になってみた。

「まぁ、ちびふわは抱っこして欲しいのですか?」

「フキュフ?!」

とんでもない誤解を受けたちびふわは、びくりと体を揺らした。

みっとなってけばけばすると、ちびふわは、小さな体を震わせて、ふるふると首を振っている。

しかし、そうやって小さな生き物が必死に間違いを伝えようとじたばたすると、またしても可愛さが爆発しているので、ネアはもう少しだけ意地悪をしてみたくなった。

「あらあら、照れなくてもいいのですよ?」

「フキュフ!!」

「ネア、違うようだよ…………」

「むむ、楽しい時間が終わってしまいました」

「わーお、ネアはやっぱり会があるだけあるなぁ…………」

「かいなどありません…………」

「フキュフ…………」

ネアは魔物な乗り物から床に降ろして貰い、ご主人様に弄ばれて床の上でぷいっとそっぽを向いているちびふわの横に並んだ。

こうして床に座り込んでも、この衣装部屋には、洋服についてしまうようなほこりを生まない特別な絨毯が敷かれていて、床の冷たさは伝わってこなかった。

「…………ちびふわがここに居るとなると、まずは、アルテアさんがこちらにやって来たのですね」

「フキュフ…………」

「そうそう。夜になってから、ダリル経由でリーエンベルクに泊まるって連絡は入れたみたいで、ヒルドが対応して入ったみたいだよ。シルも知っていたんだよね?」

「アルテアが遅い時間から泊まりに来ることはね。この子の秋告げのドレスを見に来たのか、寂しくなったのかなと思っていたのだけど、違ったようだ」

「………フキュフ?!」

寂しくて泊まりに来たと思われていたのかと、ちびふわは驚いたようだ。

目を丸くしてぶるぶる震えており、ネアと目が合うと誤解だと言わんばかりに首を振った。

ネアは微笑んで首を傾げてみせ、またしてもちびふわはけばけばになる。

「…………それで、アルテアがこっちの棟に来る途中に僕が見付けて、理由を聞いてじゃあネアの衣装部屋かなって話しながら部屋の扉を開けて、最初の一歩でこの通りになったってとこかな…………。いや、びっくりしたよね」

「フキュフ…………」

「そこでノアより先頭を歩いてしまうのが、アルテアさんですよね…………」

ネアがそう言うと、ちびふわはぷりぷりしながら小さな足で足踏みした。

しかしながら、手を伸ばしたネアが背中をもふもふ撫でてあげると、すぐさまふきゅんとなってしまう。

(でも、そろそろ白けものさんに会いたかったのだけど、ちびふわが先に来ちゃったな…………)

ネアはとても聡明な使い魔のご主人様なので、白けものとちびふわの運用には、少し時間を開けようと考えていた。

あまりにもくたくたになってしまう毛皮生物の時間が続くと、この野生暮らしの長かった森の魔物は、またしても心の迷路に迷い込み荒ぶってしまうに違いない。

なので、次は白けものだと企んでいたネアは、少しだけ予定が狂ってがっかりした。

しかしながら、こうしてもふもふすれば、小さな生き物らしい可愛いだけの力が全てを振り切ってくるちびふわの姿に、あっさり心が蕩けてしまう。

ネアがそんな風にちびふわを堪能していると、ディノが指先でその場の空気を撫でるような仕草を見せた。

「それで君達は、………その靴に守護の強化を施していたのかい?」

「うーん、ここで見付かっちゃったとなると白状するしかないけどさ…」

「フキュフ!」

「いや、言った方がいいと思うよ。ネアはとっかかりがあると踏み込むからね」

「むむ…………」

事故率の話であれば、こちらも飛び込みたくて飛び込むのではないと言いたいネアだったが、大事な話をしているところなので会話を遮らないように我慢した。

表情を窺ったディノの横顔には、淡い思案の色が見える。

頬に落ちた睫毛の影と、この角度だと少しだけ色味を変える水紺色の瞳。

そんなディノの眼差しを受けて、青紫色の瞳に問いかけを浮かべたノアに、ネアに撫でられながらちびふわがじたばたする。

「…………知ると言うことは、縁の魔術の入り口となる。知らせずにいるとその縁に引かれた時に危ういだろう」

「……………フキュフ」

ちびふわからじっとりとした目で見られたネアは、また手を伸ばしてその尻尾の付け根を指先で撫でてやった。

「…………フッキュウ」

「えっと、アルテアがこの状態だから言うけどさ、簡単に言えば蝕対策だよ。今回の蝕は、思ってたよりも下位の系譜の備えが厚いみたいなんだ。アルテアは慎重だからさ、軽微な反応が得られやすいところには、蝕の影響が出始めていると考えたみたいだよ」

「それで、そんな下位の者達の様子から、蝕の効果が強く出るかもしれないという情報を得られた系譜の魔術の強化を、二人で図ったのかな?」

そう言ってディノは、ちびふわが何かを訴えるように手をかけている、ネアの靴に触れた。

触れるなりおやっと眉を上げて、ディノはネアの靴を持ち上げる。

「フキュフ!」

ぴょいっと飛び乗ったちびふわが靴の中に入り、どうやら靴底を指し示そうとしているらしいが、手が短くて届かない。

手が届かないのだと知ったちびふわは、苦渋の選択を強いられた者の目をして、長い尻尾で靴底を指し示した。

「…………フキュフ」

「…………ああ、それで君はあのインクを抽出していたのか。………災厄の魔術の反転で、損なわれそうな守護を描き直すのだね」

ネアにはさっぱり分からなかったが、ディノにはその魔術がどういうものなのか解析出来たようだ。

「そうそう。ネアの守護は頑強過ぎて、特にネアに使いやすいように靴に添付した祝福は、通常の状態保全だと逆に壊れちゃうんだよね。だからここで、災厄級の呪いを術式で仕込んで、靴底に触れる魔術の影響を跳ね返すんだ」

「…………そうか。季節の舞踏会は、踏みしめて整える魔術だったからね」

(災厄級の呪い…………)

ネアはそんなものを仕込まれた靴を履いても、踊っていて大丈夫なのだろうかと気になった。

踏みしめた途端に、どかんと吹き飛ばされては堪らない。

「この靴を履いていて、もし悪さをしたアルテアさんの爪先を踏んだらどうなるのでしょう?」

「アルテアは、舞踏会で悪さをするのかい?」

「なかなかお料理のテーブルに連れて行ってくれなかったりするのですよ!美味しそうなものは戦争なのです!!気を抜かずに、早めに回収せねばならないのに、困った魔物さんですよね…………」

ネアがそう言えば、ディノは困った顔をしてちびふわを見下ろした。

ちびふわはディノが持ち上げたままのネアの靴の中で、ちびちびふわふわしながら暗い目をしている。

「えーと、ネア。それで言うと、今の状態で踏むとアルテアは、足が欠けるかな」

「………ほわ、アルテアさんの足がなくなってしまうのです?足技を鍛えて来た私としては、ひとまず踏むという技を封じられると困ってしまうのですが…………」

「だから、ここからアルテアの魔術で、反応が出る条件指定を重ねて覚えさせるところだったんだ。………でも、このちびふわの呪いが解けなくてさ」

「うむ。これは、私の許可の下にしか解術出来ないのです。何しろ、私のお洋服に悪さをした狐さん用のものでしたからね」

「…………わーお」

「ただし、有事などにはその行動を妨げないように、その状態に危険が伴う場合は勝手に解けるようになって…………あら」

その言葉にこれならどうだと、ちびふわは靴の中からとうっと飛び降りた。

しかし大した高さではなかったのと、ちびふわはなかなかに身体能力が高かったので、普通にたしんと着地しただけで終わった。

「ちびふわ、もしかして…」

「フキュフ!」

「言わせないようにしていますが、一目瞭然なのです……………」

「アルテア、そんなことをしなくても解いてあげるよ」

「……………フキュフ」

ディノが魔術を解いてしまうと言うので、ネアは慌てて三分待っていただき、せっかくのちびふわを撫で回した。

「フキュ?!…………フッ、フッキュウ…………」

いきなり撫で回されてしまい、ちびふわはへろへろになって最終的には匍匐前進で前に逃げようとした姿のまま力尽きた。

ぴくぴくしてしいるちびふわに、ノアがなぜか、残酷だなぁと呟いているがなぜだろうか。

そして、絨毯の上に伸びたままのちびふわを案じた魔物達の手によって、ネアは解術の前に衣装部屋から連れ出されてしまい、引き続きネアの靴に特製の魔術を施してくれるというノアとアルテアはそこに残ることになった。

「ディノ、何だか申し訳ないので、二人にあたたかなスープでも作りましょうか………」

「ネア、もうこんな時間だから、今日はもうお休み。二人にお礼をしたいのなら、明日でも出来るだろう」

「では、明日の朝に体が温まるようなスープを作ります!今夜の調査に付き合ってくれたディノも一緒に飲んで下さいね」

ネアは、羽織っていたカーディガンを脱いでもう一度寝台に戻り、枕にもふんと頭を乗せた。

(蝕が来たら、どうなるのかしら…………)

眠ろうとして目を閉じてから、そんなことを考えてしまった。

魔物達が警戒し、まだ手が足りないとあのように守りを重ねてくれるからには、決して油断出来ないようなことも起こるのだろう。

ぞわりと肌が泡立ち、瞼の裏側の暗闇が知らないからこそ生まれてくる稚拙な不安を膨らませる。

(何かが失われてしまったり、綺麗なものや大切なものが壊れてしまいませんように…………)

ぞわりぞわりと肌を震わせる不安を遠ざけようと、ネアは頑張ってちびふわの撫で心地を思い出した。

しどけなくお腹を出してしまった白けものや、ボールを追いかけてしゃかしゃか走ってゆく銀狐でもいい。

「眠れないのかい?」

ぐぬぬと頑張っていると、巣に戻った筈の魔物がそう髪を撫でてくれた。

ネアは無理に洗脳型の安眠を得ようとすることを諦め、眉を下げて目を開く。

「……………蝕は、怖いものなのですね」

「ごめんね、私があの二人の目的に気付いていれば、彼らの気遣いを無駄にしてしまうこともなかったろうに…………」

「いえ、最初に目を覚まして捜索を始めてしまったのは私なのです。そして、勝手に不安になってきました………」

「不安になるのは当然だよ。君が蝕に出会うのは初めてだからね。………多くのものが変化を強いられるけれど、私はその影響を受けても変化にはならないから、安心していいよ」

「…………そうなのですか?」

目を瞬いたネアに、ディノは微笑んだ。

「私は、多くの相反する資質を元々持っているから。選択を司るアルテアにとってもそこまでの脅威ではない。ウィリアムはいつも困っていたような気がするな。その日ばかりは、修復に近しい魔術を編むようになる。彼の変化が最も大きいかもね」

「まぁ、…………それなら、ウィリアムさんにとっては、少しだけ嬉しい変化になるのでは?」

「そうだね。その日は戦場に出たりする必要はないから、彼自身は楽だと思うよ。…………とは言え、蝕の影響で被害が出た場所では、死ぬべき者が死ねずにいたりと終焉が得られないことでの弊害も出ると聞いている。厭われることが多くとも、終焉は生き物が安らかに生きる為にもとても大切な要素なんだ」

だからこそ、蝕の影響をまざまざと感じなければいけないその後の仕事は苦しいだろうとディノは言い、ネアは姿も変わってしまうという蝕の間のウィリアムを想像してみた。

(髪の毛の色はそのままでも、漆黒の軍服に、瞳の色は今は微かに見えるくらいの葡萄酒色が主体になって、金色がかったような不思議な色に見えるのだとか…………)

そんな姿の終焉の魔物は、漆黒の軍服から常闇の魔物と呼ばれて、実はその日ばかりは治癒能力などに特化されると言うのに、人々からはより恐ろしい終焉を齎すと恐れられているのだそうだ。

ウィリアムには白い軍服がとてもよく似合うが、きっと漆黒の軍服も素晴らしく格好いいだろう。

絶望の魔物が希望を司るようになるという訳でもないのに、ウィリアムにだけそこまで影響が現れるのは、終焉というものへの印象がそこまで偏ったものだからだろうとディノは考えているようだ。

感情や認知は魔術の力となる。

死を司る終焉の魔物は、もっともそんな干渉を受け易いのだった。

(だから、ディノは蝕では変わらないんだ…………)

万象とは、美しく醜く、残酷で優しい。

優しくて厳しく、老獪で無垢で。

見る者の瞳のフィルターを通し、それは万華鏡のように姿を変える。

だからこそ万象は、反転の影響が出る蝕でもその殆どの資質を失わない数少ない存在なのだ。

今は、寝台に腰掛けて優しく頭を撫でくれるディノが変わらないと知って、ネアはなぜかとても安心した。

「ディノ、お隣で寝ます?」

「…………いいのかい?」

「ふぎゅ。今日は特別仕様です」

「うん」

嬉しそうに目を細め、巣から持ってきた毛布に包まり、ディノはネアの隣に横になった。

そちらを見たネアに柔らかな口付けを落とし、ネアはその唇の温度にほにゃりと心を緩める。

(…………明日は早く起きて、ノアとアルテアさんにスープを作ってあげて…………)

あれこれ考えている内に眠気が戻って来たのか、ネアは目を閉じた。

そっと抱き寄せられた気がして個別包装について考えたが、じわりと伝わって来た温もりが心地よかったのでこのままで良しとした。

翌朝、そう言えばノアは朝食の時間には起きないのだと思い出し、靴を強化してくれた魔物達へのお礼はスコーンにした。

表面をざくざくかりっとさせて、中をしっとりふかふかに焼いたブルーベリーのスコーンをディノにも焼いてあげたので、ディノにはまた一つ好物が出来たようだ。