軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

もわもわとちびふわ

それは、とても悲しい事件だった。

おまんじゅう祭りを堪能してリーエンベルクに帰還したネアだったが、帰るなり、門の近くで茶色い首なし馬に襲われたのだ。

あっという間にもわもわ妖精まみれにされたのだが、その時にネアの肩の上に乗っていたちびふわがそんなもわもわ妖精の中に落下してしまったのである。

「ち、ちびふわ!!!」

伸ばした手をすり抜け、ミントグリーンのもわもわの中に消えていった愛くるしいちびふわに、ネアは悲痛な声を上げる。

そんな悲鳴を聞いて駆けつけてくれたのは、今日はリーエンベルクの警備をしていたグラストだ。

「ネア殿ご無事ですか?!」

驚いた様子のグラストだが、ネアは、彼が呆れていないことに密かに安堵していた。

ネアがもわもわ妖精に埋められるのは、この数日の内に数回目なのだ。

それなのに何回も嫌な顔せずに掘り出してくれるグラストの面倒見の良さには、ネアとてほろりときてしまう。

しかし、今はそれよりももわもわ妖精に埋まってしまったちびふわの救出が最優先だ。

取り乱したネアは、グラストにがしっと取り縋り、ちびふわが落下したことを訴える。

「グラストさん、私よりもちびふわを!ちびふわなアルテアさんが、もわもわ妖精の中に落ちてしまったのです!!」

「アルテア殿が…………」

愕然とネアを見返したグラストは、再び視線をランランと虚ろな目で歌っているもわもわ妖精の山に戻し、珍しくごくりと息を飲みこむ。

ネア達の前には、もわもわの山がある。

山の高さはネアの身体くらいで、一般的な身長なので決して低くはないネアを埋めるとなると、この山はそれなりのボリュームなのだ。

そこに落ちたちびふわは、可哀想なことに、ネアの拳くらいの大きさだった。

「あの首なし馬さんは、グラストさんが来るのが見えたのかさっと逃げたのですが、私のお顔の方に崩れ落ちてきたもわもわ妖精を、肩の上に乗っていたちびふわがふーっと威嚇したのです。そして、そんな風に前のめりになっているところに、崩れ落ちてきたもわもわ妖精が流れ込んできまして、もわもわ妖精の中に滑り落ちてゆきました…………」

「と言うことは、この中のどこかにいるのですね…………」

「ええ。確か、ゼベルさんは今日はおまんじゅう祭りの会場に行かれているのですよね…………」

「……………その、アルテア殿は元の姿には戻れないのですか?」

「はい。最低でも二時間はちびふわのままなので、今は…………」

「分かりました。掘り起こしましょう」

「ごめんなさい、手伝っていただけると助かります」

「任せて下さい。一刻も早く、早く助けて差し上げましょう」

「はい!」

凛々しく頷き、グラストは腕まくりをしてくれる。

ネアもきりりと頷き、苦手なもわもわ妖精に向かい合った。

こんな時、ディノがどうしているのかと疑問に思うだろうが、ディノはリーエンベルクに入ってすぐに、門の隙間をくぐろうとしてお尻の挟まった銀狐の救出の為に、アメリアに呼ばれて通用門の方に駆り出されていた。

(狐さんは、どうもおまんじゅう祭りに一緒に出掛けた女性と険悪になって、狐さん姿で森を抜けてこっちに逃げ帰ってきたようだけど…………)

急ぐあまりに自分が通れない方の通用門の下をくぐろうとしてしまい、挟まったことで慌ててしまい、いっそうに抜けなくなったという悲しい事件だ。

つまり、現在のリーエンベルクでは、悲しい事件が二か所で勃発しているのである。

よって、ディノの助けは期待出来ない。

そもそも、ディノがいたとして、ディノは、巣の中に入って震えてしまうくらいにこのもわもわ妖精が怖いのだ。

「ちびふわ!今助けますね!!」

そうして、もわもわ妖精の中で行方不明になったちびふわの大捜索が始まった。

なお、捜索は序盤からかなり難航した。

その日は少しだけ風があり、まずはもわもわ妖精の山を崩しながら中のちびふわを探していたのだが、なぜだかどかしてもどかしても、もわもわ妖精の山が減らない。

なぜだろうと恐怖を募らせていると、どうやらせっかくどかしたもわもわ妖精が、風で元の山に再び合流しているらしい。

そのことに二人が気付いたときには、だいぶ時間をロスしていた。

「ネア殿、一度どかした脱脂綿妖精を隔離しましょう。………申し訳ありません。俺の持っている魔術でこの山をどかすと、属性がはっきりしないちびふわのアルテア殿を傷つけてしまう可能性があるので、慎重に作業させていただきます」

そう言ってグラストが作ってくれたのは、もわもわを収納する魔術の檻のようなものだ。

ネアにも見える仕様で、大きな木箱のように見える。

そこに、家事妖精が持って来てくれたちりとりで、掬ったもわもわ妖精を入れてゆくのだ。

「はい!このちりとりで掬い上げたもわもわ妖精は、そちらに投げ込みますね!」

それでも、もわもわ妖精の山を掻き分けるのはとても難しい作業だった。

何しろ生き物であるだけでなく、脱脂綿という柔らかな素材なので、掬い上げて運ぶ時の動きでふわっとちりとりから飛んでしまう。

そうすると、静電気的な何かか、魔術的に仲間を呼びあうのか、元の場所に戻って行ってしまうのだ。

「ち、ちびふわ!!ちびふわ、どこにいますか?!」

ネアは、たくさん呼びかけた。

もわもわ妖精の山の中で、誰も助けてくれないとちびふわが泣いていたらどうしよう。

そう思うと胸が苦しくなり、ネアはこんなにも苦手なもわもわ妖精を、素手で必死に掻き分ける。

「は!」

そうして暫く奮闘した後、ネアはミントグリーンの中に大事なちびふわの白い毛並みを発見した。

ぼすっと手を突っ込んで引っ張り出すと、じっとりした眼差しでお座りしているちびふわが無事に発掘される。

やっとの救出に、一緒に戦ってくれたグラストも、ぱっと顔を輝かせて喜んでくれた。

「おお、無事でしたか!」

「はい!無事に発掘出来ました!!ちびふわ、怖くなかったですか?思っていたより、このもわもわ妖精を掘るのに苦労してしまい、助け出すのが遅くなってしまいました…………」

ネアは、じっとりした目のままだが、尻尾がけばけばになっているちびふわの頭を、そっと指先で撫でてみた。

するとちびふわは、つんと澄ました顔でネアの腕をててっと走って肩の上に戻ると、グラスト曰く、大したことではなかったと言いたいのでしょうという表情でそこに落ち着く。

(良かった。さすがアルテアさんだわ。泣いてしまっていたりはしなかったみたい………)

ネアは、ディノのようにトラウマになっていないことに安堵しつつ、もわもわ妖精の除去を手伝ってくれたグラストにお礼を言い、ちびふわを連れて部屋に戻ることになる。

これは、門の下に挟まった銀狐を救助したディノが戻ってきたので、ディノにこのもわもわ妖精の山を見せないようにというグラストの配慮で、すぐにその場から立ち去ることにしたのだ。

なお、もう埋まっていたちびふわが救出されたので、もわもわ妖精の山は、グラストが魔術でさっと片付けてしまえるらしい。

森に振り撒くのは、お祭りから帰ってきたゼベルに頼むそうなので、ネアは、後でその二人にはお礼をしようと考えた。

「ネア、またあの馬が来たのかい………?」

「ディノ、…………その、ちびふわがもわもわ妖精に埋まりました………」

「アルテアが…………」

「ええ。グラストさんと協力して掘り出したのですが、幸いにも泣いてしまっていたりは………ディノ?」

合流した魔物が何があったのだろうと心配したのでそう打ち明けると、するりと頬を撫でられ、ネアは魔物を見上げる。

心配そうな顔をしたディノが、思わしげにネアを見つめていた。

「…………君も、あの脱脂綿妖精が怖かったのだろう?それなのに、その作業をしたのかい?」

「…………ふぁい。ちびふわは、もわもわから私を守ってくれようとして威嚇していたので、肩から落ちてしまったのです」

「そうなんだね。………アルテア、有難う。……それとネア、ほら、君はこっちにおいで」

そう言うと、ディノはふわりとネアを持ち上げてすぐに部屋に運んでくれた。

これでもうもわもわ妖精に埋まる危険はないので、ネアはほっとして持ち上げてくれた魔物に掴まる。

ディノももわもわ妖精には弱いのだが、こうして頼もしい魔物にくっつくと安心出来た。

(……………お部屋に戻ったら、洗面台の簡易浴槽でちびふわを綺麗にしてあげて……)

そう考えていたのだが、ちびふわはなぜか、その日は入浴を嫌がった。

洗面台に置いてもててっとネアに駆け上ってしまうことを繰り返し、よほど入浴が嫌なのだろうと、ネアはほかほか濡れタオルで拭くだけに留めることにする。

「これで綺麗になりましたね」

「うん。どうして入浴を嫌がったのかな……」

「いつもは、アヒルさん浮き輪で遊ぶので、洗面台では嫌だったのかもしれません」

「アルテアは、あの浮き輪が気に入ったんだね…………」

「あら、どうしてディノがしょんぼりしてしまうのでしょう…………」

地面に落ち、もわもわ妖精まみれになったちびふわがすっきりしたところで、ネアも顔を洗うことにした。

ネア自身ももわもわ妖精に落ちたので、ディノに魔術で綺麗にして貰ったのだが、それでも気分的には顔を洗っておきたい。

そして、その為にちびふわは長椅子に下ろし、浴室の方に歩いて行こうとすると、なぜかまた、ちびふわがててっと走ってくるではないか。

「…………ちびふわ?」

ネアの肩によじ登り、定位置で丸くなる。

顔を洗う際に落としてしまうのでもう一度引っ剥がすと、爪を立てて抵抗する有様だ。

寂しいのかなと思い、そっとディノの膝の上に設置したのだが、そうすると何と、ちびこい手を伸ばしてくる。

「……………フキュフ」

「むむ、ちびふわが甘えたになりました」

「脱脂綿妖精が怖かったのかな………」

「その可能性もありますね………。ちびふわ、私は顔を洗ってくるだけなので、すぐに戻ってきますよ?」

「フキュフ…………」

それでも頑なに手を伸ばしてくるちびふわに、ネアは洗顔で落ちてしまいそうな肩にではなく、その時だけポケットでの待機をお願いしてみた。

すると、ポケットでも大人しく待てるようなのでそこにいていただくことになる。

しかし、ばしゃばしゃと顔を洗いタオルで拭いて化粧水をつけていると、そのまま立ち去ろうとしたネアをじっとりとした目で見上げ、何やら尻尾をぱすぱすして訴えかけてくる。

「むぐぅ。…………クリームをつけろと言われている気がします………」

「フキュフ!」

「むぐぐぐ…………」

ネアは渋々クリームを塗り塗りし、厳しいちびふわのチェックをクリアした。

「アルテアはどうだい?」

部屋に戻ると、ディノがいつもとは様子の違うちびふわを心配してくれる。

擬態を解いて柔らかな真珠色の髪が午後の陽に煌めき、色合い的にはちびふわのご主人様のようだ。

「お顔を洗った後にクリームをつけないことを叱られました。もしかしたら、それで付いてきてしまったのかもしれませんね」

「そうなんだね。…………おや、違うようだよ?」

「むむぅ。やはり、降りないようです。………ちびふわ、これから私は着替えるので、一度ディノのところに、………てやっ!」

ここでまたしてもちびふわの反乱があり、ネアはここは同情していても仕方ないので、べりっと引っ剥がしてディノの手に預ける。

じっとりとした眼差しのままだが、尻尾をけばけばにしたちびふわがディノの手の中でこちらを見ていることに胸を痛めつつ、手早く着替えて、もわもわ妖精に埋もれた服はその旨をメモして洗濯妖精に預けてきた。

今日着ていたドレスがということはなく、こちらの世界の洗濯は魔術仕掛けなので、装飾の少ないドレスは割と気軽に洗えるのだ。

「あら…………、落ち着きましたね」

部屋に戻ってくると、長椅子に座っているディノと、長椅子の隅っこに陣地を作って丸くなっているちびふわがいる。

暗い目をしてはいるが、どうやら甘えたな時間は無事に終わったようだ。

「君が着替えに行って少ししたら、自分でそちらに移動したよ。落ち着いたようだね」

「良かったです。もわもわ妖精が怖くて混乱していたら可哀想だと思って心配したのですが、…………むむ」

しかし、ネアが長椅子に座ると、小さなタオルハンカチを巻き込み自分の巣を作っていたちびふわが、ててっと走ってくると、ネアの膝の上に丸くなる。

試しにどかしてみようとするも、尻尾がけばけばになるではないか。

ふーっと威嚇され、ネアはそっと手をどかして首を傾げた。

「…………ちびふわ、離れたくないのですか?」

「…………フキュフ?!」

そう尋ねてみたところ、本人も無自覚であったらしい。

はっと目をまん丸にし、しゅばっと元来たところへ戻って行ってしまい、その後はどれだけ呼んでも戻って来なかった。

「無自覚であったのなら、一人になりたくないという魂の叫びだったのかもしれません。指摘せずに抱っこしていてあげれば良かったですね…………」

「アルテアも、あの妖精は苦手なのかもしれないね」

「ボラボラが苦手なので、少しだけよく分からない生き物感が似ているのかもしれません………。体格比的には、人型アルテアさんとボラボラ、ちびふわともわもわで同じくらいですしね」

「…………眠ったようだね。何か飲むかい?」

「む。………杏水をお願いしてもいいですか?」

「うん。持ってくるから、君はそこにいておあげ」

「はい」

ディノが飲み物を取りに行ってくれたので、ネアは長椅子の隅っこでタオルハンカチの敷物をくしゃくしゃにして上手く枕的な塊を作って丸まっているちびふわを覗き込んでみた。

眠ってくれたので今度こそやっと落ち着いたようだが、怖い夢などは見ていないだろうか。

そっと指を伸ばして頭を撫でてやっても、目を覚ます様子はない。

疲れきっているのかなと思えば、何だか胸が苦しくなった。

「ちびふわ、…………今日のおまんじゅう祭りは楽しかったですね」

丸まって眠っている小さなふわふわを撫でてやりながら、ネアはそう話しかける。

何だか無防備で稚いその生き物に、聞いていなくてもいいからと話しかけたくなったのだ。

「ちびふわが…………いえ、アルテアさんが、こうして何でもない日に一緒にお出かけしてくれて、楽しかったです。……………ああして、途中で別行動になっても」

あたたかな毛皮の頭を撫でてやり、ネアはほろりと微笑む。

もしきちんと起きている時にそう言われても、アルテアにはネアの真意は分からないだろう。

これは、ネアだけの心の動きなのだ。

理解させようとも思わない、我儘に自分の内側だけで抱える本音である。

「………アルテアさんはアルテアさんのままで、そして時々悪さをする魔物さんでも良いのです。………上手く言えませんが、私は使い魔なアルテアさんに私を守って貰いたいのではなく、………こうしてみんなで一緒に過ごせるようなアルテアさんを、失いたくないだけなのでしょう」

すやすやと眠っているちびふわに、ネアは身勝手な人間の本音を零しつつ、小さな生き物が寛いでいる姿の持つ安らかさを堪能した。

窓の外の光はゆっくりと翳り落ちてゆき、夕刻の少し手前の色でちらちらとカーテンの隙間で揺れている。

「私は強欲で身勝手で、きっとこの世界にある使い魔というものの仕組みや尊さをちっとも分かっていないのだと思います。…………でも、これからもお友達でいて欲しいです。悪さをしたら懲らしめるので、どうかまた一緒にみんなでご飯を食べれるくらいのところで踏み止まって欲しいです………。その為に私は、アルテアさんと、これからの約束をしたのだと思います…………」

身勝手な言葉を重ねた後、少しだけ息を吸い、小さく謝った。

「だから、………今日は、もわもわ妖精さんの山からなかなか救出出来なかった私を、どうか許して下さいね」

そう伝え終えて顔を上げると、飲み物を持って帰って来たディノが、困ったようにこちらを見ていた。

ネアが眉を下げたままふすんと鼻を鳴らすと、静かに隣に座って頭を撫でてくれる。

テーブルに置いてくれたグラスの中で、からんと氷が鳴った。

「大丈夫だよ、ネア。アルテアは、君に怒っているのではないと思うよ」

「…………ふぎゅ。みんなでバルバが出来ます?」

「うん。彼が元の姿に戻ったら、私からも頼んであげよう」

「…………ふぁい。すっかり怯えてしまっているちびふわを見ていたら、何だか怖くなったのです。………もし私なら、あの恐ろしいもわもわ妖精の中から近くにいるのになかなか助けてくれない人を、心の底から呪うと思うのです」

「ご主人様…………」

「悲しみのあまり、嫌いになってしまうかもしれません。だから………、ほわ?!ディノ………?」

そこでネアは、もわもわ妖精から守るから捨てないで欲しいとへばりつく魔物と格闘する羽目になった。

ディノは同じもわもわ妖精を苦手とする仲間なので、その限りではないと説明したのだが、こちらの魔物まですっかり怯えてしまい、たいへんなことになる。

なお、ちびふわは、夕刻には無事に人型の魔物に戻った。

少し草臥れているが、特に深刻な心的外傷を抱えている様子もなく、ネアはほっとする。

そしてなぜか、じっとそんなアルテアを見上げていたネアの頭を、こつんと指の背で叩いた。

「むぐる………」

「馬鹿だな、お前は」

「なぬ。なぜに貶されたのだ。ゆるすまじ」

「それと、バルバはお前に言われなくても決行するぞ。毎日、ダナエからどれだけ連絡が来ると思う?」

「ほわ、毎日…………」

(もしかして、私がちびふわに話したことを、聞いていたのかしら…………?)

ほんの少し、そう思ったが、ネアは何も言わなかった。

アルテアも何も言わないだろうし、きっとまた、悪さをしてくるだろう。

でもそれでいいのだ。

密にではなくとも、いつも助けてくれなくとも、この先もずっと共に過ごす時間を取り上げないでいてくれるなら。

(たくさんパイを焼いてくれて、次のお誕生日に上物をくれて、ちびふわと白けものをいっぱい撫でられるなら!)

そう思って、立ち去るアルテアを見送ろうと思ったのだが、なぜかアルテアは、出て行こうとしていた筈なのにパタンと扉を閉めて戻ってくる。

「アルテア………?」

一緒にいたディノも不思議そうに首を傾げたくらい、顔色が悪い。

「今日はここに泊まるぞ」

「なぬ。私達の部屋です。せめて客間に行って下さい」

「食事もここに運ばせろ」

「解せぬ」

ネアはその後、すっかり居座ってしまった使い魔に困惑して部屋の扉を開けてみた。

すると、廊下の絨毯の上に、銀狐の落し物だと思われるもわもわ毛玉が一つ落ちているではないか。

恐らくアルテアは、これを見て部屋に閉じこもってしまったのだろう。

晩餐の際には、廊下は怖くないよと手を広げて呼んでやらねばいけなくなった。

もわもわ妖精は、みんな怖いのだ。