軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

46  何をうだうだ考えていたのかしら

「王太子殿下のことだって、ルイティーが彼に助けを求めたことが始まりだろう。それに王太子殿下がルイティーの要求を拒否していればこんなことにならなかった」

「それはそうかもしれません」

マーベリックに見つめられ、熱くなった頬を押さえながら、急にミアーナは冷静になる。

(相変わらずマーベリック様は顔がいいわ! ……それはさておき、冷静に考えてみたら、先に首を突っ込んだのは王太子殿下じゃないの。ルイティー様の肩を持ち、スココ男爵に私を紹介しなければ、ロマ様に嫌われることはなかったわよね。しかも、ロマ様が嫌だと言っているのに、自分が我慢できないからって女子会に割り込んでくるから悪いんじゃないの)

「納得できたか?」

「そうよ。そうですよね。私ったら何をうだうだ考えていたのかしら」

急に冷静になったミアーナは、満面の笑みを浮かべてマーベリックに礼を言った。

「マーベリック様、本当にありがとうございます」

「一応、婚約者だから気にするな」

にやりと笑って、マーベリックはミアーナの頬にかかっていた髪を払った。

「一応ではないでしょう」

「そうか。婚約者だと認めてくれているのか」

「マーベリック様はそんな意地悪を言う方だったのですね」

ミアーナは少し拗ねたように言った。今までの彼女なら家族ではない異性に対して、こんな態度をとることなどなかった。

(私も変わってしまったものね)

しみじみそう思ったあと、ぽつりと頭に浮かんだことを口にする。

「婚約者というのは、こういうものなのでしょうか」

「こういうもの?」

「上手く言えないのですが、貴族の婚約は政略的なものが多々あるでしょう。何もわからない子供の頃に決められた婚約者であっても、物心がついて将来を共にするとわかっているのだから、いつしか心を通わせていくものだと思うんです」

「中には俺とルイティーのような例外もいるがな」

苦笑するマーベリックの話を聞いて、ミアーナは眉を顰める。

「マーベリック様とルイティー様は婚約の期間はそう長くないのでしょう? それに、それを言い出したら、私とロコッド様もそうですわ」

(もし、ロコッド様がルイティー様を愛していなければ、私とロコッド様はどうなっていたのか……と思ったけれど駄目ね。愛していなかったら、私が彼の婚約者になることはなかったし、彼も違う人生を歩んでいたでしょう)

「君たちは政略というよりかは、利害が一致していただけだろう」

「浮気の片棒を担がせるつもりだと知っていたら、嫁にはきていません」

「普通はそうだよな」

マーベリックは苦笑したが、すぐに眉尻を下げた。

「君は食事中だったな。食べながら聞いてくれと言っていたのに、その暇を与えなくて悪い」

「いえ。マーベリック様が話し終えるまで聞いているだけで良かったのに、反応して色々と話してしまったのは私です。マーベリック様も食事の途中でしたでしょう。気が利かず申し訳ございません」

二人は謝罪しあったあと、まずは食事に集中することにした。しばらく無言の時間が続いたあと、先に食べ終えたマーベリックが立ち上がる。

「君はゆっくり食べていればいい。俺は王城にでかけてくる」

「あ、はい。お気をつけて」

もう少し話がしたいという気持ちもあったが引き留めるわけにもいかない。

微笑んで一礼すると、マーベリックは扉に向かって歩き出した。彼の背中を見つめながら、さあ、これからどうしようかと考えた時、マーベリックが立ち止まった。

「どうかされましたか?」

「伝え忘れていたことがあった」

マーベリックは振り返って優しい笑みを浮かべる。

「少なくとも俺は君に感謝している。君が来てくれたから二人の本当の姿を知れたからな」

「そう言っていただけると嬉しいですが、マーベリック様ですもの。きっと気づいていたと思います。それに、私が話しにいった時には感づいていらっしゃったじゃないですか」

「側近たちまで裏切っているとは思っていなかったから、あの時は半信半疑だった。まあ、ロコッドたちのことだから上手く隠しきれたとも思えないか」

「そうですわね」

(私もマーベリック様も結婚相手と長い付き合いじゃなかったから、こうして笑えているのでしょう)

今回、浮気をされた側に立ち、ミアーナも色々と勉強することがあった。

今までのミアーナは若かったということもあるが、客観的に人を見過ぎていた。もちろん、浮気を推奨などしていないし、平然と浮気を語る人間は最低だと思っている。しかし、浮気という秘密を墓場まで持っていき、浮気された側が浮気されていたことに気づかず、幸せな人生を送れるならばそれでいいと思っていたところがあった。

でも、それは違うのだと、浮気される側になってわかった気がした。

「どうかしたのか?」

黙り込んでしまったミアーナを心配して、マーベリックが戻ってきてしまった。小さな優しささえもミアーナは幸せを感じて微笑む。

「何でもありません。あの、王城に向かわれるのですよね? 今日は王都に買い物に行こうかと思いますので、途中までご一緒させていただいてもいいでしょうか」

「かまわないが、帰りはどうする?」

「迎えに来てもらえるよう頼んでおきます」

微笑んで答えると、マーベリックは少し考えて口を開いた。

「買い物は長くかかりそうか?」

「そうですわね。色々と見て回りたいのと、カフェで休憩するかもしれません」

「俺の用事も三時間もかからないうちに終わると思う。どこかで合流して、そのまま出かけようか」

「それはとても嬉しいですが、今日はお仕事の日ですわよね?」

王城に向かうのは仕事の一環になるだろうが、ミアーナとのデートは確実にプライベートになる。気になって尋ねたミアーナに、マーベリックは微笑む。

「王城には行くが、父上に話をして今日は休みだということにしてもらう。こんな機会は中々ないからな」

「ありがとうございます。では、すぐに出かける用意をいたします」

「食事はゆっくりとれよ。準備ができたらエントランスホールまで来てくれ」

「承知いたしました」

ミアーナが頷くと、マーベリックは微笑んで部屋を出ていった。