軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26  もちろんです

ミアーナがロコッドと話をしていた頃、他の二組も離婚の話が進められていた。だが、ルイティーもヨーカもヒステリックに泣きわめくため、ミアーナたちのようにスムーズには進んでいなかった。

マーベリックのほうは浮気の証言だけでなく自白も得られた上に、国王からも許可を得ているため、離婚を強行することが可能だが、一つ問題があった。

それは離婚したからといって、彼女を外に放り出すわけにはいかないことだった。ルイティーはマーベリックに嫁いだ時点で降嫁したことになるが、国王の娘であることに変わりはない。彼女が誘拐されれば、王家にとって一大事となる。

マーベリックは国王からルイティーを王城まで無事に送り届けるように命じられていた。マーベリック自身がという指定ではないので、騎士に送らせようとしたのだが、ルイティーは部屋から出ることを拒んだ。

「近づいたら死ぬから!」

ルイティーはそう叫んで、自分の首に羽根ペンの尖ったペン先を突きつけた。ルイティーが本気で自分自身を傷つけるとは思えなかったが、さすがのマーベリックも強気に出られなかった。

(厄介なことになったな)

マーベリックは自分の判断の甘さを反省しつつ、ルイティーをなだめにかかることにした。

「冷静になって話そう」

「嫌よ! どうせ別れ話しかしないんでしょう!」

「浮気したのは君だ。ロコッドと一緒になりたいのなら、俺と別れて彼と一緒になればいいだろう」

「違う! そんなことをしたくないから、あなたたちに隠れて浮気していたんじゃないの! 私は別にロコッドが好きなわけじゃないのよ!」

(好きじゃないのに浮気をしたというのはどういうことなんだ?)

マーベリックにはルイティーが何を考え、何を望んでいるのか、さっぱりわからなかった。

考えても答えは出ないので、本人に聞いてみる。

「それならなぜ浮気したんだ」

「あなたがかまってくれなかったからよ!」

「また、その話に戻るのか」

「だってそうでしょう⁉」

「一体、俺はどうすれば良かったんだ」

「妻のことくらい、もっと真剣に考えなさいよ!」

(真剣に考えていたし、仲良くしていきたいと思ったから、ずっとプレゼントを贈っていたんだが……。一体、どうすれば良かったんだ)

女性嫌いというわけではないが、戦地に行っていたこともあり、プライベートなことを相談できる相手がいなかった。マーベリックが困り果てた時、部屋の扉がノックされた。

******

やって来たのはミアーナで、部屋に入るなり状況を確認して目を丸くした。なぜ、ルイティーがペンを首に押し当てているのか。状況がさっぱりわからない。不思議そうな顔をしてマーベリックに話しかける。

「お取込み中でしたでしょうか」

「見ればわかるでしょう!」

マーベリックが答える前にルイティーが答えた。

「これはまた面倒なことになっていらっしゃるようですけれど、一体何を揉めているんですか?」

「別れたくないとごねるんだ」

眉尻を下げるマーベリックにミアーナは微笑む。

「ロコッド様も同じでしたわ」

「その表情だと何とかしたんだろう?」

「もちろんです」

二人のやり取りを黙って聞いていたルイティーが、必死の形相で叫んだ。

「ミアーナさん、説得しようとしたって無駄ですからね! 私はロコッドのように甘くないわよ!」

「私がルイティー様を説得、ですか?」

「そうよ! どうせあなたも別れろと言うのでしょう? 私は絶対にマーベリックと別れない! ロコッドと結婚するのも嫌よ!」

「いい大人が自分のやったことに対して責任を取れと言われ、あれも嫌、これも嫌とおっしゃるのですか」

ミアーナはルイティーに 憐(あわ) れんだような視線を送る。自分のやったことを悪いと思っていないルイティーはそんな視線など気にもせず訴えた。

「私たちは割り切った関係だったのよ。寂しさを紛らわすために少し悪い遊びをしていただけなの」

「……ロコッド様とは遊びの関係だったわけですか」

ミアーナは納得したように頷き、笑顔でルイティーに話しかける。

「少しでも悪い遊びをしていたことは自覚しているのでしょう? やってはいけないことをしてしまった時に責任を取らなければいけないことくらい、子供でもわかりますわよ」

「そ、それが何よ。私だってわかるわ」

「わかっているのであれば、責任を取るべきです」

「謝ったじゃないの!」

「謝られて許す人もいらっしゃいますが、マーベリック様は許さないと言っているのです」

ルイティーは助けを求めてマーベリックを見たが、彼は首を横に振っただけだった。

「ルイティー様、今、あなたがすべきことは離婚を認めることではないのでしょうか?」

「嫌だって言っているじゃないの! ロコッドとのことはマーベリックを傷つけることになって本当に申し訳ないと思っているわ。だけどね、私も本当に寂しかったのよ」

「その言い訳は何度も聞きましたので、お腹がいっぱいですわ」

ふふふとミアーナは笑うと、マーベリックに話しかける。

「いつまでも同じ状態でいるのは疲れるでしょうから、お話ししながら待つのはいかがでしょうか」

暗にルイティーが、いつまでもペン先を首に当てている今の状態を続けられるわけがないと伝えた。マーベリックも瞬時にその意味を理解して頷く。

「そうだな。立ち話でもいいか?」

「かまいませんわ。ルイティー様のお部屋ですからね」

ミアーナたちの会話を聞いたルイティーは、この二人は何を言っているのだろうと言わんばかりに眉間に皺を寄せた。その様子を確認したマーベリックはミアーナに話しかける。

「ロコッドとの話し合いは上手くいったようだな」

「ええ、おかげさまで」

「ところでロコッドの姿が見えないが、大人しく部屋にいるのか?」

「いいえ。ロコッド様があまりにも鬱陶しいので、身動きが取れないようにしています」

「……どういうことだ?」

マーベリックが聞き返したと同時に、庭のほうから誰かが叫ぶ声が微かに聞こえてきた。

「準備ができたようですわね。ロコッド様が今どうしているかは、説明するよりも見ていただいたほうが早いかもしれません」

「意味がわからないんだが」

ミアーナは「ラゲク様には許可は取ってあります」と前置きしてから、マーベリックに窓の外を見るように言った。彼が窓辺に近づくと、ロコッドの声が聞こえてきた。

「おい! 頼むよ! 降ろしてくれ! 助けてください、母上ぇ!」

視線を声は聞こえてきた方向に向けると、顔以外の部分がロープでぐるぐる巻きにされたロコッドが木にぶら下げられていた。