軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22  それは命令ですか?

「助けてもらえなかったら、僕は大変なことになってしまうし、君だって困ることになるんだぞ!」

「助けなければどうなるのです?」

自分が困るという意味が分からず、ミアーナは首を傾げた。

「ルイティーとの件で、僕はここを追い出されるかもしれない。そうなったら、君も追い出されるぞ!」

「追い出されて当然のことをしたのです。それなのに、何を今さら焦っておられるのですか? 私はそうなると思っていましたから、ちゃんと今後のことは考えておりますが」

笑みを浮かべて話すミアーナに、ロコッドは「バレると思っていなかったんだよ」と言うと、へなへなとその場に崩れ落ちた。そんな彼の背中を撫でながら、ヨーカが叫ぶ。

「ミアーナさん! ロコッドは繊細なのよ! 言葉には気を付けて頂戴!」

「正論を言っただけなんですが、それも駄目なのですね」

「今、ロコッドが必要としているのは正論じゃないの! 優しい言葉なのよ! ああ、もういいわ! あなたに期待した私が馬鹿だったわ! ロコッド! 旦那様はどこにいるの⁉ 私が話をつけるわ!」

「僕と兄上とルイティーの三人で話をしていたんです。たぶん、父上も今頃はルイティーの部屋にいると思います」

「では、ルイティーの部屋に行きましょう!」

ロコッドを立ち上がらせ、彼と共に大股で歩き出したヨーカの後に、ミアーナも付いて歩く。ロコッドはルイティーの部屋に向かう道中で、何があったかを簡単に話し始めた。

「ルイティーの所に兄上が様子を見に行ったんですが、その時に僕との仲を問い 質(ただ) したそうなんです。それで、ルイティーは僕との仲を否定したみたいなんですけど、父上の命令で正直に話せと言われたメイドが、僕たちの関係を暴露してしまったんです!」

「なんてことなの! 内緒にしておけと言ったことを話すなんて! メイドとして失格だわ!」

「あら、お義母様。それはおかしいですわ。この家の使用人の主はお義父様です。使用人たちにとってお義父様の命令は絶対ですから、話さざるを得ないでしょう」

「ロコッドが話すなと命令したのよ⁉」

ヒステリックな口調で言い返してきたヨーカに、ミアーナは冷めた表情で答える。

「先ほどもお伝えしましたが、使用人の主はお義父様です。大体、なぜ使用人が悪事に加担しなければならないのです? 使用人を責めるのはおかしいと思いますが」

「う、うるさいわね! とにかくあなたは、私たちにとって都合の悪いことを言わないようにしなさい!」

「それは命令ですか?」

「そうよ! 私はあなたの夫の母ですからね!」

「お義母様たちにとって都合の悪いことを話さないでもよろしいでしょうか?」

「……? 別にいいわよ」

意味が分かっていないヨーカは不思議そうにしながらも頷いた。

******

ミアーナたちが二階にある、ルイティーの部屋に着くと、ロコッドの予想通り、ラゲクも部屋にやってきていた。ルイティーの部屋は、ミアーナの部屋の近くにあり、間取りはそう変わらない。調度品は白とピンクで統一されており、とても可愛らしい部屋だ。キングサイズの 天蓋(てんがい) 付きベッドで、横になっているルイティーを囲むように右側にラゲクとヨーカが、左側ロコッドとマーベリック。そして、足元にミアーナが立った。一同が介した部屋を見回し、ミアーナはワクワクする胸を押さえる。

(私とお義兄様たちが顔を合わせたことを知らせるのかしら)

ミアーナの顔に笑みが浮かんでいるのを見たロコッドは、彼女に抗議する。

「ミアーナ、何を笑っているんだよ⁉ そんな場合じゃないだろう?」

「申し訳ございません。来るべき時が来たのかと思いまして」

「ううっ。本当に君は優しいと言われていた人物なのか?」

「どうなのでしょう。私自身は自分のことを優しい人物だと思ったことはありません」

否定すると、ロコッドは涙目でミアーナを見つめた。

(浮気だなんて馬鹿なことをする度胸はあるくせに追い出される覚悟はできていないの?)

ベッドに寝巻き姿で横になっているルイティーが、ミアーナに訴える。

「ミアーナさん! 私とロコッドが疑われているの! お願いだから違うと言って! マーベリックに離婚なんてされたら王城に戻らなくちゃいけなくなるわ!」

「その言い方ですと、王城に戻りたくないから離婚したくないというように聞こえるのですが?」

「……えっ? あ、いいえ。そういうわけではないわ」

「それに、王城に戻ることの何が駄目なのですか? 贅沢な暮らしをすることに変わりはないですわよね?」

「私はマーベリックの妻でありたいのよ! それに離婚なんてみっともないでしょう?」

(そう思うのなら、最初から浮気なんて考えないでほしい)

作り笑顔が引きつりそうになったので、ミアーナは眉尻を下げて悲しんでいるふりに切り替える。

「個人的な意見になりますが、離婚することがみっともないなんて思いません」

「貴族の間では良く思われていないじゃないの! 普通の人がすることではないわ!」

「私にどうこう言っても無駄です。離婚するかしないかを決めるのはお義兄様とお義姉様ですわ。それに、お二人のことについての話はするなとお義母様から言われていますの」

ほほほほ、とミアーナはわざとらしい笑い声を上げた。