軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20  本気でそう思っていらっしゃるのですか?

ラゲクが戻って来るまでに、見られてはならないものは全て処分したつもりのヨーカは、ミアーナが突然やって来ても、最初は余裕の笑みを見せていた。

ミアーナも爽やかな笑みを浮かべたまま、ヨーカに頭を下げる。

「本日からよろしくお願いいたします!」

「あなたに教えても無駄になると思うけれど、旦那様のお望みなら仕方がないわね」

「無駄になるというのはどういうことでしょう? お義母様が教えてくださる内容がよっぽど役に立たないということでしょうか?」

「違うわよ!」

苛立ったヨーカは強い口調で言葉を返したが、すぐに冷静になって考えた。今、ミアーナとの関係を悪くするわけにはいかない。油断させておいて、いつか実現するであろうマーベリック殺しの犯人に仕立て上げてやろう。そう思いながら、ミアーナに笑顔で話しかける。

「ミアーナさん、私はあなたと仲良くしたいの。あなたには色々とお世話になっているし、申し訳ないとも思っているのよ」

「お世話をしたつもりはないのですが、なんのことを言っておられるのでしょうか?」

「わかるでしょう。ロコッドたちのことよ」

ミアーナは不思議そうに目を瞬かせた。

「お世話なんてしていませんが、何のことをおっしゃっているのでしょうか」

「二人の関係を許してくれているでしょう?」

「いいえ」

ミアーナがきっぱりと否定すると、ヨーカは眉をひそめる。

「まだ認めてくれていないの?」

「認める理由があるのなら教えていただけませんか?」

「夫のためだと思えば……」

「お義母様はお義父様のためなら、何でも許せるのですか?」

ヨーカはミアーナのことを改めて嫌な嫁だと思いながら、首を横に振る。

「いいえ。何でもというのは無理だわ」

「では、お義父様の浮気は許せますか?」

「……許せるわ」

ヨーカは悔しそうに唇を噛んだあと、口を開いて答えた。自分がされたならば絶対に許さない。だが、息子の浮気を許している以上、そう答えるしかなかった。

「では、お義父様が浮気相手と同居したいと言い出したら許せますか?」

「それとこれとは別よ。ねえ、ミアーナさん。この話はもういいでしょう? ロコッドのことは本当に悪いと思っているの」

ヨーカはこれ以上、自分にとって都合の悪い話をしたくなかった。無理やり話を打ち切ろうとすると、ミアーナは冷笑する。

「そう思ってくださっているのであれば、お義父様とお義兄様に真実を話してくださいませ」

「む、無理よ」

(本当に自分勝手な人ね。それにしても、次期当主の座を息子に、と思っているくせに、どうして浮気なんて馬鹿なことをさせるのかしら)

行動が矛盾している気がしたミアーナは、呆れた顔でヨーカに尋ねる。

「お義母様はどうしてロコッド様たちの浮気を許すのですか?」

「浮気されるほうが悪いからよ」

「本気でそう思っていらっしゃるのですか?」

「私の考えはそうよ」

ルイティーの婚約者が決まる前、国王がルイティーの婚約者は公爵家の息子から選ぶと宣言していた。その頃、ラゲクは妻を亡くし、ヨーカは当時の夫から離婚を言い渡され、ロコッドと共に実家に戻っていた。

離婚理由は侯爵の浮気であり、この時、ヨーカに大した非はなかった。ただ、この時に『浮気されるほうが悪い』と思い込まされ、ロコッドとルイティーの浮気も、ミアーナとマーベリックが悪いと思い込んでいる。

侯爵令息時代にルイティーと知り合ったロコッドは、彼女に夢中だった。ロコッドの思いを成就させてやりたいと、ヨーカは目的を隠してラゲクに近づいた。もし、自分が他の男と浮気したくなっても、ラゲクが悪いという考えもあったことや、公爵夫人という肩書もほしかった。

『亡くなった妻しか愛せない』とラゲクは断ったが『お飾りの妻でかまいません。幼いマーベリック様には母が必要です。ロコッドと差をつけることなくマーベリック様を愛します』と言って、幼かったマーベリックを懐柔した。

その時のマーベリックはまだ5歳で母親が恋しかった。ヨーカに怪しさを感じていたものの、亡き妻から『あなたとマーベリックには幸せになってほしい。だから、再婚を拒まないで』と言われていたラゲクは、マーベリックに尋ねた。

『母がほしいか?』

『……はい。ほしいか、といわれれば、ほしいです。ともだちみんな、ははうえがいるのに、ぼくにはいません。それは、はずかしいことではないです。でも、やっぱりさみしい。だから、いてくれたらうれしいです』

マーベリックが生まれてすぐに母が亡くなったため、マーベリックは母親の顔を知らなかった。母との思い出があれば葛藤していただろうが、幼いマーベリックには迷う理由がなかった。

マーベリックの願いを聞き、ラゲクはヨーカを彼の母として受け入れた。

この時のラゲクはヨーカを信用していなかった。彼女に明らかな非がある場合は、無条件での離婚を認めるように一筆書かせているが、ヨーカは内容に目を通していないため気づいていない。マーベリックとロコッドは同じ年であるが、血の繋がりということで、マーベリックが兄とされた。

夫婦の間にお互いに愛情はなかったが、うまくやれていた。ルイティーとマーベリックの婚約が決まるまでは――。

「浮気されるほうが悪い。……ということは、私とお義兄様が悪いということですわね」

メモ帳とペンを手に、ミアーナはヨーカを射るような目で見つめた。