軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最終話 ギルド追放された雑用係の下剋上

商人の皆さん達と昼食を食べ終えて、日が暮れるまで歩いた。

夜は皆さんを"手もみ洗い"して汚れと疲労を取る。

「夜の見張りは俺たちが交代でやるから、2人は寝ていてくれ。と言っても、モンスターが襲って来たら起こしちまうが」

「ありがとうございます! ギルネ様、お言葉に甘えて寝させてもらいましょう!」

「うむ! ティムは一人で寝られるか? 大丈夫か? 心細かったりしないか?」

「ギルネ様、僕だってもう冒険者ですよ! 野宿は初めてですが、大丈夫です!」

「普通、野宿はベッドで寝ないけどな……」

僕が作り上げた、まるで遊牧民族のゲルのような大きなテントを前にしてロックは呆れた笑いでため息を吐いた。

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「ギルネ様! あの"スライム"くらいなら僕でも倒せそうです!」

「いいや、ダメだティム! もし、ティムがスライムの粘液で身体中をドロドロにされたら私の理性が保たん。ティムに襲いかかってしまうだろう」

「す、スライムの粘液には 錯乱(さくらん) 効果があるんですか!?」

「ギルネ様! 今度はあの"スモールルーパー"はどうでしょうか!? レベルも低そうですし!」

「とんでもないぞ、ティム! もし、ティムがあの触手に絡みつかれてみろ! 私はティムに視線を奪われて、もう動けなくなってしまう!」

「身体が動かなくっ!? 麻痺させる効果があるなんて……」

翌朝になり、僕たちはリンハール王国に向けて歩を進めていた。

僕は魔物を見つける度に戦いたいとギルネ様に進言した。

だが、どうやら僕は魔物を甘く見すぎていたらしい。

弱いと思っていた魔物たちですらギルネ様を状態異常にさせかねないほどの力があるようだ。

「うぅ……すみません。結局全てギルネ様に戦闘をお願いしてしまい……」

「大丈夫だ! 先程の2匹はティムが装備を作って挑んでも(私への)対応が難しい種だったからな! それにしても、ティムはなんだかモンスターによく狙われるな?」

ギルネ様は腕を組んで首をひねった。

「そうですね、どのモンスターも何故か僕に一直線に向かってきていました。なぜでしょう?」

「おそらく、ティムが美味しそうだからだな……気持ちは分かる」

「そ、そんな!? 僕も、早く強くなって返り討ちにできるようにならないと……」

「ティム、何も焦る事はないんだ。最初は採集クエストからでいい」

「で、でも! ギルネ様がいないと何も出来ないようじゃ――」

「『私が居ないと』……? ティム、私はずっといるぞ?」

ギルネ様は小首をかしげて不思議そうに僕に答えた。

僕は思わず赤面してしまう。

このままじゃギルネ様にずっと面倒をみてもらう事になる。

そ、それは……凄く嬉しいけど……

いや、そもそもギルネ様にご迷惑だし……

何より全然男らしくない……

「あ、歩き通しですけど、みなさん疲れていませんか?」

僕は商人の皆さんに問いかけた。

すると、代表するようにロックが口を開く。

「ティムが俺たちに作ってくれたこの『行商人の靴』のおかげで全然疲れねぇ! 最高だ! この調子なら明日の朝には着いちまうだろうな!」

そう言ってロックは僕に履いている緑色の靴を見せた。

僕が商人の皆さんにお作りした足への負担を軽減する靴だ。

靴の内側には裁縫スキルで生成したとても柔らかい衝撃吸収のコットンを詰め込んでいる。

「辛くなったらすぐに教えて下さいね! 僕が何とかしますから!」

「ティムは大丈夫か? わ、私がおんぶしても良いぞ! いや、抱っこでも良いぞ!」

ギルネ様のご提案に僕は顔が熱くなる。

「ぎ、ギルネ様……流石にもう勘弁してください。恥ずかしかったんですから」

「じ、じゃあ! 逆にティムが私をおんぶするのはどうだっ?」

「いや、何でだよっ! 最高に意味がわかんねぇ!」

ロックは笑いながら冷静に突っ込んだ。

ギルネ様、実はお疲れなのだろうか。

こんな時こそ、男の見せ所だ。

僕が、ギルネ様をおんぶ……

ギルネ様が僕の背中に密着して……

「ギルネ様、すみません。僕のような最低な男にはギルネ様を背に乗せる権利なんて――」

「わわっ! ティム、血が! また鼻から血が出てるぞ! ヒールっ!」

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いくらかトラブルはあったものの、何とか無事にリンハール王国へ到着した。

「うぅ……着いちまったか……」

「もっと、ティムの料理が食べたかった」

「あの、信じられないくらいフカフカのベッドでもう一度寝たかった……」

到着したとたん、商人たちが悲しみだした。

ロックが「しっかりしろ!」と商人達を叱る。

そして、商人たち全員が一列に並んで僕たちに頭を下げて感謝した。

一人ずつ、僕と握手をして何度も感謝の言葉を聞く。

また僕の涙腺が緩んでしまいそうになった。

僕が"収納"していた商品や馬車の荷台を取り出すと、ロックが提案した。

「命を救ってもらった代金としては安すぎるが、もし欲しい物があったら持ってってくれ。お金が必要なら、今俺たちの中でかき集めて全て渡すぞ」

「――い、いえっ! 皆さんは馬を失ってしまってこれから大変なはずです! いただくことなんて出来ません!」

「全く、お前らほど最高な奴らにはもう後にも先にも出会う事はないだろうな!」

ロックはテンガロンハットを脱ぐと胸に当てて、深くお辞儀をした。

僕にしてみればロックも凄い人だった。

商人達の長として、みんなを精神的に引っ張り続けていた。

ロックはずっと笑顔だった。

盗賊に襲われた直後、本当は絶望していたはずだ。

馬もない、食料もない、もしかしたら全員無事でリンハールに到着するのはもう無理かもしれない。

それが分かった上で、すぐに「命があるだけで最高だ!」とみんなの前で笑い飛ばしてみせた。

後ろ向きな僕とは大違いだ。

「あ、あのっ! ティム君!」

今度は僕のもとに女性の商人のみなさんが集まってきた。

「す、凄く頼りになって、カッコよかったよ!」

「服とかがほつれてもすぐに直してくれて、助かっちゃった!」

「最初はヒョロヒョロした子だなぁなんて思ってたんだけど……」

「おかげで、命拾いしただけでなくて凄く楽しくて裕福な旅行になっちゃった!」

「そ、それにティム君って可愛いし……。ねぇ、良かったらこの後私達と――」

「ティム、さっさと行こう。休んでばかりもいられないぞ」

「わわっ! ぎ、ギルネ様!?」

ギルネ様は僕の腕を引っ張った。

頬を膨らませている。

僕がなかなか動こうとしないので怒らせてしまったのだろうか。

「――お、おい、2人ともっ! まだ行かないでくれ、せめてもの礼をさせて欲しいんだ!」

急いでこの場を離れようと僕を引っ張るギルネ様にロックは呼びかけた。

「2人とも、これから冒険者になるんだろう? なら、この国の『デフレア』っていう冒険者ギルドに行けば魔装置で"ステータス判定"を受けられるはずだ。ステータス判定は意外と高額で8000ソルかかっちまうんだが、俺は商売でたまたまもらったフリーパスチケットを持ってる。良かったら全部持ってってくれ」

ロックは2枚のチケットを僕たちに差し出した。

「ティム、ステータス判定は有用だ。商人にはあまり必要のない物だしここはありがたく頂いておこう」

「は、はい! ありがとうございます! 僕がみなさんに作った『 D・S・C(デブネコクッション) 』と『行商人の靴』はお好きに使ってください!」

チケットを取ろうと出した僕の手を、ロックは固く握って握手をした。

「ティム、今回の件はいくら感謝しても感謝しきれない。今はまだ俺は小さなキャラバンの長でしかないが、いつかは国々を股にかける"最高の商人"になってみせる。そして、ティムとギルネの2人を助けたい。もしも何かで困ったら俺を頼ってくれ」

「ロックさん……」

そして、他の商人のみなさんも手を振って僕たちを見送る。

「ありがとうな~! 困ったらいつでも頼ってくれよ~!」

「リンハール王国で受けるクエストは難しいのも多いぞ! 気をつけてな!」

「頑張れよ! 小さな冒険者たち!」

僕たちを『冒険者』として見てくれている声援を聞いて、我慢できずに声を上げた。

「ギルネ様! 僕、ついになれたんですね! 冒険者に!」

「あぁ、シンシア帝国ではギルドマスターだった私もこの国では私もティムと同じ『新参者の駆け出し冒険者』だ。私と一緒にまたゼロから頑張ろう!」

「はい! ギルネ様! まずはステータス判定からですね!」

僕の返事を聞いて、ギルネ様は満足そうな表情で僕の一歩前に歩き、振り返ると微笑みかけてきた。

「さぁ、行こうかティム。そして、世界中を驚かせてやろう! まだ誰も知らない、ティムの『真の実力』でな。冒険者として成り上がっていくんだ」

「そ、そうですね! あはは!」

僕なんかの身の丈には合わないような過大な期待を受けつつ、ギルネ様の隣に並ぶ。

どうしてかギルネ様の僕への期待は凄く大きいみたいだけど、少しでも応えたい。

――といっても、僕は剣も魔法も使えなくて『雑用スキル』しかないんだけど……。

レベルもまだ1だし……。

(それでも、やるんだ……!)

僕は強く拳を握る。

成り上がるんだ、力が全てのこの世界で。

冒険者として、そして雑用係として……!

さぁ、始めよう! 雑用係の下剋上だ!

――こうして、僕は冒険者として旅立った。