軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第24話 商人たちと華やかな行商旅

「いや~、本当に助かったよ! お陰様で商品も商人も全員無事だ!」

ロックは僕の手を握ると、何度も感謝した。

商人たちは全員、 猫被(ねこかぶ) りモードになっていてケガはなさそうだ。

「僕の作った『デブネコセーフティクッション』をみなさんが気に入って着けていてくれたおかげですよ」

「こんなに小さなキャラバンを襲う盗賊団がいるとはな……ギルネも凄かったな、あんな凄い魔法見たことがないぞ!」

「いや、私もいつの間にかティムをケガさせてしまったんだ……次からはもっと気を張って戦わねば……」

「あ、あはは。ご心配なく~」

僕はギルネ様に"洗浄"を使ってギルネ様の服に付いてしまった僕の鼻血を消した。

ギルネ様は「あっ……ティムの血が……」となんだか切なそうな声を上げる。

「リンハール王国へ向かう道中の丁度真ん中で馬車がダメになっちまったな。ここから徒歩となると3日はかかる……」

「そうか、頑張ってみんなで歩くしかないな。私は強いから魔物に襲われても大丈夫だぞ!」

「それしかねぇな! 商品は流石に運んでいけねぇし、ここに置いていくしかねぇか。俺たちの生活がかかってたんだが、命があるだけで最高だ!」

これだけの災難があったにも関わらず大声で笑い飛ばすロックに僕は声をかけた。

「あっ、商品や馬車の車は"僕が運ぶ"ので大丈夫ですよ」

僕は"整理整頓スキル”を発動すると、商品の入った袋などを異空間に"収納"していった。

思えば、最初からこうしておけば良かった。

重い荷物を運ばせてしまったお馬さんたちには悪いことをしたなぁ。

「……に、荷物が一瞬で消えちまった?」

「ご安心ください、僕がしまっただけです。またいつでも取り出せますよ」

僕は再びしまった荷物を出現させて商人の皆さんを安心させた。

みなさんは呆然とした表情でその様子を見つめている。

「おいおい……最高かよ。お嬢ちゃんより、お前の方が凄い気がしてきたぜ」

「うむ、やっぱりティムのこのスキルはいつ見てもヤバいな。異常だ」

「あはは、ただの雑用スキルですよ」

褒め上手の二人の言葉に僕は照れてしまう。

もうロックとギルネ様が励まし続けてくれれば僕は一生頑張れる気がしてきた。

「あとの問題は"食料"か……、商品に食べ物は無いからな。最悪、3日間飲まず食わずでリンハール王国まで歩かないと――」

「それなら丁度良かったです、1000人分の食料を余らせていたので! せっかくなのでこのままお昼にしましょう!」

僕は分厚い巨大な布を生成してレジャーシートの代わりに草原に敷いた。

その中心に、しまってあったテーブルと食材を出現させる。

このキャラバンは30人位しか居ないはずだ。

むしろ皆さんには体力をつけるためにいっぱい食べてもらいたい。

「…………」

「私は何を食べようかな~。う~ん、今度はおにぎりが良さそうだな。ティムが素手で握ってくれたら最高の旨味が――」

キャラバンの商人達が再び呆然と食材を見つめる中、ギルネ様はもう注文を考えていた。

おにぎりをチョイスするなんて、僕の料理技術への期待値が凄く低いみたいだけど……。

「あはは……何だこりゃ。最高な夢でも見てるってのか? もしかして、風呂に入れたりベッドで寝たりも出来るんじゃねぇか?」

「ごめんなさい、お風呂はご用意できません。でも、夜は布でテントを張ってベッドをご用意しますよ」

「じ、冗談だよ――というかベッドは用意出来るのかよっ!?」

ロックは若干引きつった笑顔でため息を吐いた。

「サンドウィッチは頼めるか? 出来れば食べ応えのあるやつを」

「はい! 他の皆さんも、お好きな物を注文してください!」

僕はロックの注文を聞いて『食べ応えのあるサンドウィッチ』を考えた。

僕の料理のレパートリーにある、“バーガー”が良さそうだ。

少し厚めのパンに薄い焼いたハンバーグを二枚挟む。

さらに中には三種類のチーズ、新鮮なレタス、刻んだ玉ねぎとたっぷりのケチャップをかき混ぜて入れる。

味のアクセントとしてお酢に漬けたキュウリも輪切りにして挟んだ。

少し大きいけど、ロックなら両手で掴んで口いっぱいに頬張れるはず、食べ応えは十分だ。

料理をお皿に乗せた所で僕はロックをチラリと見た。

ロックは身体が大きい、“バーガー”だけじゃ少し足りないかもしれない。

僕は少し考えた後、このサンドの中にたっぷり入ったケチャップと相性の良い付け合わせをつくる事にした。

ジャガイモをスティック状に切って油で揚げ、軽く塩を振った。

“ポタト”の完成だ。

これならケチャップとの相性も抜群だ。

僕は出来たての“ポタト”を同じお皿に乗っける。

飲み物は清涼感がありつつ、この塩味に対しては甘い飲み物が合いそうだ。

僕はとある灰白色の鉱石(名前は知らない)を取り出して細かく削り粉末状にした。

それをレモン果汁と共に水に混ぜ、反応させた。

シュワシュワと気泡があふれ出る“ソーダ水”の完成だ。

この“ソーダ水”というのは、僕が発明した物で、飲むと軽く焼けるような刺激が口の中に広がるのだが、甘い味付けをすると何とも言えない美味しさになる。

僕がこの事に気がついたのは"料理スキル"の“ 味見(テイスティング) ”によるおかげだ。

僕がこのスキルで味わった物は鉱物だろうが何だろうがその成分や性質を理解する事が出来る。

もちろん、毒があってもすぐに“洗浄”で消す事ができるから安全だ。

ちなみにこの“灰白色の鉱石”は僕が市場で見かけて、『持っているだけで強くなれる魔石』と言われて騙されて購入したものだ。

そんな事はともかく、僕はこの“ソーダ水”に潰したパクチー、ライムを皮ごと絞って香り付けをする。

最後に蜂蜜を焦がしたカラメルを入れたら黒いソーダ水から華やかな香りが炭酸の気泡と共に立ち上る。

“コーダ”の完成だ。

僕が見慣れない料理“バーガー”と“ポタト”、“コーダ”を差し出すと、ロックは一歩足を引いて身構えた。

「何だ、その料理は……というか、もう作ったのかよ! 速すぎるだろ!」

「安心してください、手は抜いてませんよ!」

「あぁ、めちゃくちゃ良い匂いがするな。この黒い飲み物はブクブクしてて少し恐いが……」

ロックはため息を吐いて警戒を解くと、僕の手から料理と飲み物を受け取った。

「まぁ、ここまでのやり取りでもう信頼はしてる。きっと味わった事がないくらいに美味しいんだろう? 期待してるぜ」

そう言うと、ロックは笑ってレジャーシートに腰をおろした。

「さて、喉も渇いてるし、まずはこの黒い飲み物から──」

「あっ、ロックさんその飲み物は少し特殊で──」

僕が“コーダ”の注意を促す前にロックは口に入れると盛大に吹き出した。

口の中がシュワシュワしますよって注意しようとしたんだけど……。

「口の中が焼けるっ! ティム、お前やりやがったな!」

「や、やってないです! その飲み物は少し慣れが必要なんですっ!」

何とか誤解を解いて僕は“コーダ”の説明をした。

吹き出してしまった周辺を“洗浄”で綺麗にすると、ロックは再び“コーダ”に挑戦する。

最初は難しそうな表情でチビチビと飲んでいたが、すぐにグラスを傾けてグビグビと飲み始めた。

そして、ご満悦の表情で大きなゲップをする。

「何だこりゃ、美味ぇ! けど、喉が痛ぇ、痺れるぜ! ティム、これは身体に害はないのか!?」

「飲み過ぎなければ大丈夫です! 僕の“洗浄”で体内から消す事もできますし──というか、食事と合うように作ったんですから“コーダ”だけで飲まないでくださいよ!」

僕はそんな事を言いつつも美味しく飲んでくれた事に安心した。

そして、二杯目の“コーダ”を作って渡す。

ロックは“コーダ”と共に“バーガー”や“ポタト”も「うめぇうめぇ」と言いながら美味しそうに食べ始めた。

その様子を見た他の商人の皆さんからお腹の音が鳴った。

近くの男性商人さんが堪らず口を開く。

「お、俺も似たようなやつをくれ! 濃い味付けが好きなんだが──」

「では、“テリソースバーガー”を作りますね! 目玉焼きも挟んで……出来ました! はい、どうぞ!」

今度はマヨネーズと胡椒、鶏肉も挟んだ甘いソースのバーガーを渡すと「こっちの方が美味そうだ!」と声を出して嬉しそうに受け取った。

そして、他の皆さんも次々に口を開く。

「わ、私……あまり料理とか分からなくて、何を注文したら良いのか……」

「お、俺たちもだ……とにかくロックのみたいに美味しそうなのを食べてぇ」

残りの商人の皆さんは困ったような表情でそう言って僕を見た。

「では、僕が皆さんの好きそうな物を作っていきますね!」

僕はそう言って、頭の中のレシピから皆さんの料理を選ぶ。

3年間の間、1000人の冒険者達に料理を作り続けた僕の料理のレパートリーは無限大だ。

一人ずつ好みを聞いて、それに対応した料理を作っていけば良いだろう。

「──はい! 皆さん大丈夫ですよ! おかわりもいくらでもありますからね!」

僕は商人のみなさんの好みを聞きながら完成した料理を渡していく。

たったの30人、いつもに比べたら随分と楽だ。

しかも、僕が料理を渡すとみんな頭を下げてお礼をしてくれる。

皆さんの優しい心遣いに思わず泣きそうになったが、僕は男らしいので耐えた。

しかし、料理の味に感動した商人さんが僕に握手を求めてきたところで少し泣いてしまった。

「──ギルネ様はまだお決まりでないですか?」

僕が商人さん達の料理を全員分作り終わっても、腕を組んで考え込んでいるご様子のギルネ様に僕は尋ねる。

「"ワイン"を頼めば、ティムがぶどうを素足で踏んで作ってくれるんじゃ……舐めたい。――ん? あぁ、すまん! まだ迷っていてな、もう少しだけ待ってくれ!」

「そうですか? お決まりになりましたらすぐにお作りいたしますね!」

ギルネ様はブツブツと小声で何かを呟いてかなり迷っておられるようだった。