軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第22話 冒険者のティム=シンシア

東門に着くと、行商人たちのキャラバン隊があった。

僕とギルネ様はキャラバンのリーダーさんに宿屋でもらった紹介状を見せに行く。

「ほう! クリスの紹介か! あいつに気に入られるとは珍しい、今度またあのボロボロの宿で寝泊まりさせてもらうか!」

キャラバンのリーダーはテンガロンハットを指で回しながら豪快に笑った。

「もちろん、乗っていって良いぞ! ただし、俺達が運んでるのは頑丈な商材と商人だけだ。乗り心地は保証しないがな」

「ありがとうございます! 馬車は結構揺れてしまうんですね……」

僕がギルネ様を心配して視線を向けると、ギルネ様は了承するように頷いた。

「まぁ、それは仕方がないだろう。も、もしも私がよろけてティムに抱きついてしまっても許してくれよ」

「もちろんです! 頼りがないかもしれませんが僕にお掴まりください!」

ギルネ様が右手で小さく謎のガッツポーズをすると、キャラバンのリーダーは自己紹介を始めた。

「俺の名前はロックだ。リンハール王国までよろしくな。そっちのお嬢ちゃんはまさかどこぞのお姫様ってわけじゃないよな……?」

「私はギルネリ――いや、ギルネだ。安心してくれ、服装を見て分かる通りただの冒険者だ。よろしく頼む」

「僕はティムと言います。隣のリンハール王国までよろしくお願いいたします!」

ギルネ様は素性を隠しつつ自己紹介をする。

確かに、お姫様と疑われても仕方がない 美貌(びぼう) だ。

「車輪を厚い布で包んでも良いですか? 馬車の揺れがかなりマシになるかもしれません」

「おっと、車輪には手を加えないでくれ。疑うわけじゃないが、こいつが破損して道中で動けなくなっちまったら大問題だからな。想定されていない使用方法は避けたい」

「そうですか……ではせめて」

僕は"裁縫"でフカフカのクッションを大量に作り出した。

「これをお尻の下に敷けば長時間の乗車も苦にならないと思います。良かったら商人の皆さんで使ってください」

「お、驚いた! 生成まで使えるって事はティムは"裁縫"スキルがかなり高いんだな! どれ、一つかりるぞ」

ロックは僕のクッションを一つ掴んだ。

「おぉ、こいつはめちゃくちゃやわらけぇ! 肌触りも最高だ! 馬車移動はストレスも多いからな、こういうクッションは助かると思うぜ!」

「ふむ、そうか……ストレス解消か。ティム、こういうのはどうだろうか」

僕はギルネ様の手招きに応じると、ギルネ様は僕の耳元でアイデアを提案してくれた。

言われた通りにクッションに手を加える。

クッションに手や足と猫の顔を刺繍した。

大きなネコをかたどったクッションの完成だ。

完成品にギルネ様は瞳を輝かせる。

「おぉ、可愛いぞ! 名付けて『デブネコセーフティクッション』だ!」

ギルネ様は満足顔でクッションに抱きついた。

そして、僕の作った作品の説明を始める。

「『猫は癒やし』、これは世界共通の普遍の原理だからな。これにはみんなほっこりしてストレスも無くなるだろう」

「あっはっはっ! 太ったネコか、こりゃユニークで面白いな! その名前なら略して『D・S・C』だな!」

「あと、腕を引っ張ると伸びるんだ! これで、腰に巻き付けてお尻に敷いて使うぞ!」

「あっはっはっ! ネコなのに何で腕が伸びるんだ、意味がわかんねぇ! 最高だな!」

良くわからないが、ロックにはウケたようだ。

腹を抱えて笑っている。

やっぱりギルネ様の発想力は凄いなぁ。

「はぁ~、笑った笑った。こんなに良い物を俺たち商人の人数分もらっちまって良いのか?」

「どうぞ、お使いください! 僕たちは乗せてもらうんですから、これくらいはさせていただきます!」

「ありがとう、お前たちは最高だ。仲間たちにはコレを配らせてもらう。一晩も走り続ければリンハール王国には着くはずだ、揺れて頭をぶつけないように注意しながら乗ってくれ」

ロックはにこやかに親指で馬車の荷台を指差した。

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こうして、この国を出る事にした。

僕はこの故郷を出て、新しい国で冒険者を始める。

「僕、最高の冒険者になるよっ!」

そう言って"実家"を飛び出した頃が今や懐かしい。

僕がこの約束をした時。

妹のアイリは泣きそうな顔をしていた。

でも今はもう"姫"として立派な淑女に成長していることだろう。

兄弟やお父様たちは僕の事を忘れているはずだ。

王子の一人、"落ちこぼれのティム"の事なんて。

彼らは僕に愛情どころか、軽蔑や悪意しか向けてこなかった。

だけど僕が"落ちこぼれ"の烙印を押されてから、兄弟である他の王子達の雑用をずっとやらされてたのは役に立ったかな。

後にも先にも、あれほど傲慢でうぬぼれた人達はいない。

召使いを、身の回りのお世話をしてくれている人たちをまるで人間として見ていなかった。

"雑用"を 蔑(さげす) んでいた、"雑用"など人間のやることではないと口にしていた事もある。

だから僕は決めたんだ。

家を飛び出し、最高クラスの冒険者になる。

――僕はギルネ様と共に馬車に乗り込んだ。

ギルネ様と共に始める冒険者生活。

2人でならきっとどんな困難も乗り越えられる。

ギルネ様と僕は父の国、"シンシア帝国"を出発した。