軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3-10 マイホームマイライフ 重罪

冒険者ギルドにつくとヤーシスはずかずかと中へ入り、受付の女の子にギルドマスターを呼んでくるように頼む。

その間に俺は顔見知りとなった冒険者の一人に話しかけられていた。

「旦那、今日は一体どうしたんだ? なんでヤーシスと一緒なんだよ」

「いやさ、面倒な事になってんだよ……」

「面倒って……。そこでふらふらしてるのは 紅い戦線(レッドライン) のレンゲさんか?」

「まあソレが原因なんだけどな……」

チラッとわき腹を見せると、既に痣になっていた。

うわ、結構酷いなこれ。

「あー……。その、こんな事を言うのは駄目なんだろうが、できれば穏便に済ませてくれないか?」

「わかってるよ。俺だってこんなめんどう事はごめんなんだよ。だけどヤーシスが済ませられないって……」

「旦那としては穏便に考えてくれてるんだろ? なら俺はそれを信じるさ」

「ただヤーシスが真面目な顔してたからな……。正直最悪を避けるようにはするが、それ以上は無理だと思うぞ……」

冒険者からの注目は俺ではなくレンゲとヤーシスに向いている。

あの事件以降俺は冒険者ギルドを訪れる事も増えて、ある程度の信用はもらえるようになっておりこうして知り合いの冒険者と話すこともできるようになっていたのだが……。

まあ普段からアイナやソルテへの命令も材料収集だけだし、その点も踏まえて悪い奴じゃないとは思われているんだろうけど。

「お待たせした。これはこれはヤーシス殿。本日はいかがなされたか?」

「ええ。本日はこちらの現在私の奴隷であるレンゲ殿なのですが、このたび犯罪奴隷になる罪を犯しましたのでご報告に参りました。つきましては同PTであるソルテ様にも殺人教唆の嫌疑がかけられております」

「っな……」

淡々と言うヤーシスにギルドマスターは驚きを隠せないでいる。

「……こっちで話をしたほうがいいか?」

「いえ他の冒険者の方にも聞いてもらわねば結果次第ではお客様が恨まれてしまう可能性がございますので」

ギルドマスターは一室を指差すが、ヤーシスは断りを入れる。

俺が恨まれるって……。ああ、そうか。

前回の二の舞みたいになるのは確かにゴメンだな。

「……わかった。悪いが席を空けてくれ」

ギルドマスターが冒険者たちに席を空けさせ、俺、ヤーシス、レンゲ、ギルドマスターで椅子に座り、ウェンディとシロは俺の後ろに控えていた。

「それで、レンゲがどうして犯罪奴隷になるんだ? 今は確か借金を返せばすぐに解放される軽微な罪で奴隷になったはずだが。それにソルテが殺人示唆だなんて……」

「まず、アイナ様、ソルテ様がお客様の奴隷であることはここにいる皆様はご存知だと思います。そしてお客様は不当な行いをするような方ではないとご存知ですね?」

「ああ勿論。二人からも良くしてもらっていると聞いている」

「それではレンゲ殿がなぜ、奴隷になっているかは聞いておられますか?」

「確か無理矢理関所を通ったんだろ? 順番待ちをすっ飛ばして金を支払わず通ろうとしたとかだったな」

「その理由はご存知ですか?」

「さあ……」

そういってギルドマスターは冒険者にも顔を向けて聞いてみるが、全員知らないようである。

「レンゲ殿はソルテ様から手紙を貰い、お客様に不当に扱われていると思い強行したようです」

「馬鹿な……」

「事実とは異なる内容を送り、それがお客様を危険に晒す内容であり、それを実行できる力を持った方が実際に暴行を振るったのです。一歩間違えばお客様は亡くなるところでした。幸いにもシロ様がお守りしてくださったようですが、もし亡くなっていればPT全員が極刑のうえ、晒し首は免れなかったことでしょう」

「……」

「それにお客様がお二人を奴隷にしたお話はそもそも冒険者ギルドの責任です。冒険者ギルドの責任でお客様に奴隷として彼女達二名をつけたのに、その片方が裏切りを行いました。もし仮に殺人が成っていれば冒険者ギルドの名声は失墜。おそらく相当な罰が王国から下されると思われます」

ギルドマスターも俺も声が出ない。

いや待て。本当にただの勘違いのはずだぞ。

当初にソルテがどんな内容で送ったにせよ、今はあいつも同じ気持ちではないだろうし俺としてもあいつには感謝しているところもあるのだ。

流石に極刑って……。

「明らかに奴隷による殺人教唆と殺人未遂です。おまけにお客様には一切の落ち度がありません。ですので領主の下に連れて行き、沙汰を得るところだったのですが一応確認の為冒険者ギルドにお集まりいただきました」

「ちょっと待て。一応誤解は解けてるんだし、もういいんじゃないか?」

「重罪は相手が許せばいいという訳ではないのです。法の力を示さねば、これからも同じことをする輩を止めることが出来ません。彼女を許せば、次も同じような者が現れた時許さねばなりません。被害者がどれほど許せなくてもです」

元の世界で言う判例というやつだろうか。

過去に同じような裁判があればそれが適用されやすいという感じだったかな?

だけど、被害届を出したわけでもないのだからどうにかならないのだろうか。

「ちなみにヤーシスはどの程度と考えている」

「私個人としては死刑が妥当かと。ですが、被害者であるお客様が減刑を求めていらっしゃるのでおそらく未開発地域での最前線任務で死ぬまでこき使われるかと、それと彼女達は美しいですからね、当然奴隷以外の冒険者から下の処理をさせられる可能性もあると思われます」

「はぁ……」

「ギルマスすまねっす……」

「いやいい。いや、まったくよくないが」

「当然俺からは軽くしてくれと頼むが、レンゲ男嫌いだろ? 結局地獄だぞ……」

「あー。ご主人、無理はしなくていっすよ。自分がした責任っすから」

力なく答えるレンゲだが、その声には生気を感じられない。

目もうつろで、泣きそうではあるんだろうが絶望が大きすぎて涙もでてこないようだ。

「まあまあまだお待ちください。つきましてはソルテ様に事実確認を行わなければいけません」

「わかった……。ゲイルのPTで二人を迎えに行ってくれ。そろそろ城門付近に来ているはずだ。くれぐれも、変な気は起こすなよ。二人が逃げれば弁明の余地すらないのだからな」

「わかってる。なあ旦那。紅い戦線は俺らの憧れなんだ。だから、頼む」

「当然だろ……」

だが頼まれたところで俺にどこまで出来るのだろうか。

死刑または強制労働。

どちらも正直重過ぎると思う。

殺されかけたのは事実だが、誤解がなければそれもなかったはずだ。

だからといってソルテに全てを押し付けるのも俺個人としてだが嫌だ。

あいつには助けられてるしな。

「んー……」

暫く待つとゲイルのPTがアイナとソルテを後ろ手に縛り、暗い顔で戻ってくる。

二人の顔も何が起こっているのかわからないような神妙な顔であった。

「ギルドマスターどういうこと? 何で私達が縛られて……。って、レンゲ?」

「おいレンゲ。大丈夫か?」

ソルテは生気を放っていないレンゲに驚き、アイナも心配そうな顔をしている。

「どういうことは俺のセリフだ。お前なんでこんな馬鹿なことをしたんだ……」

「え、私? 馬鹿なことって何? それにどうしてレンゲが奴隷の首輪を……あんたまさかレンゲまで奴隷にしたんじゃないでしょうね!」

「いい加減にしろ!」

ドン!っとギルドマスターが机を叩き、立ち上がる。

「お前、なんで自分の主人を不当に貶める手紙をレンゲに送ったんだ」

「手紙……? あ……」

「そのせいでレンゲは死刑か強制労働を免れない。 レンゲだけじゃない。お前ら二人もだ……」

「ちょ、ちょっと待って! ちゃんと説明してよ!」

「説明が欲しいのは私共なのですけどね。ソルテ様? お客様はレンゲに殺されかけました。この意味がわからないとは言わせませんよ。一先ずご説明をお願いいたします」

事情聴取の為に、レンゲ、ソルテ、ギルドマスター、ヤーシスが別の机に移動して調書を取り始める。

その間に俺はアイナに事情を話すと、ぽろぽろと泣き始めてしまった。

「主君本当にすまない! ……私は、私はどうすればいいのだろうか……」

「俺にもわからん……。だができれば穏便に済ませたい」

「それは無理だ……。罪には厳しいこの国だが、奴隷が犯した罪には更に厳しくなっている。たとえ被害者である主君が弁明をしても難しいだろう……」

「いやでも俺は二人には感謝してるしな。どうにか守ってやるさ」

「その……あつかましいお願いなのだが、できればでいい、できれば……」

「分かってる。レンゲも勿論守るよ。お前達の大切な仲間なんだろう」

とは言ってもどうするべきか。

領主に沙汰を貰いに行くとのことだが、どう考えてもそこまで行ってしまったら俺には止められない。

それにこの三人が最前線で慰み者にされるというのも我慢できない。

二人には本当に助けてもらった。

レンゲも誤解からこんなことにまでなるなんてのは流石に罪が重すぎると思うし、可哀想だ。

「お客様。言質が取れました。こちらの手紙は間違いなくソルテ嬢が送った物のようです」

「違、奴隷になった初日に書いたから、まだあんたのこと全然信用してなくて、今は全然違うもん」

ヤーシスから手紙を受け取ると、ソルテがすがるように膝をついて俺の服を掴んで泣いている。

「わかってるから泣くな……」

「本当だもん……。今は違うもん……」

「あーもうほら。大丈夫だから……」

ぎゅっと抱きしめてぽんぽんと背中を撫でる。

あーくそ。

どうすりゃいいのさ。

「ご主人本当にすまなかったっす」

「レンゲも、もういいからお前も泣くな」

「泣いてないっす……」

じゃあその流れ落ちる液体はなんだよ……。

顔も鼻水と涙でぐしゃぐしゃだぞ。

来い来いっと手振りやると、レンゲも自分の顔を俺の胸に押し付けて泣きつく。

んんー……いや、顔を拭いてやろうとしただけなんだが……。

仕方ないと背中をぽんぽんする。

っていうか男嫌いじゃなかったかお前?

「なあヤーシス。これどうにもなんないのか?」

「そうですね。お客様のお気持ちもわかりますがこればかりは領主様の沙汰を得てしまえばどうにもなりません」

やっぱりそこがデッドラインか。

しかもヤーシスの言葉だからな。

この意味は変えられない事実なのだろう。

「なあ、何も無かったってことには出来ないのか?」

「それをするには余りにも目撃者が多すぎました。内々に済ませては王国としては示しがつかないのです」

「んー……例えばこれが、俺に怪我も何も無かったらどうだ?」

「証拠の手紙がございますし、お客様にはしっかりと痣も残っておられるのでしょう? 何もないのであれば相当罪は軽くはなりますが、それでもゼロという訳にはいかないでしょう」

「そういえば何で俺回復ポーション飲んだのに痣が治らないし、痛みも引かなかったんだ?」

「それは自分のスキルっす。『痛打』っていうスキルなんすけど、傷が残りやすく回復しづらい攻撃なん……すけど……」

ああ、冒険者だと役に立つんだろうな。

だがそれがどうやら今回は最悪な証拠として残っていると……。

ああ、もうわかったから改めて泣くなよ……。

「なあウェンディ、どうすればいいと思う?」

「私は決して許せません」

「いやそんな怒らないで頼むよ……」

「……傷痕も手紙も残っていなければどうにでもなるのですが、手紙はともかく傷痕はどうしようもないと思います」

だよなあ。

傷痕ねえ。

っていうか痣か。

痣って皮膚の内出血とかだよな……。

あー…………一つ思いついたけど嫌だなあ。

でもこれしかないのかなあ……。

「なあヤーシス。ところで今俺はどうして冒険者ギルドに来ているんだっけ?」

そういって俺はヤーシスから受け取った手紙を、燃やし始めた。

「お客様!?」

「そうだギルドマスター。本日の納品を忘れていたんだった」

「そんなこと言っている場合じゃ……」

「あー。しまった。今日は物がないんだった。材料もらえるか? そこで作ってくる」

でもこれ以外思いつかないんだ。

ウェンディには言えないな。絶対止められると思う。

立ち上がろうとすると、服をぎゅっと握られ身体を寄せて頭を押し付けられる、誰だかわかってはいるんだが心配そうな顔をしているだろうから安心させるように頭をぽんぽんと叩いてやる。

「ソルテ。心配すんなって」

「でも……。でもぉ……顔が違うもん。何するの?」

「大丈夫だから。レンゲと大人しく待ってろよ」

そういって服から手を放させる。

何をしたかなんて知られたらこの先の付き合い方が変わっちまうだろうしな。

まあいいさ。

決意は固まった。

ソルテの泣き顔なんて珍しいものも見れたしな。

ただやっぱり女の子は泣いてる顔より笑った顔が素敵だと思う。

これから先、二度とソルテの笑った顔が見れないのは俺にとって辛いだけだ。

だから俺は、ちょっと無理してみようと思う。