軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15-28 ギゴショク共和国 都合の良いタイミング

無事にヴォルメテウスの加護をアイナが受け取ったことで、これからもヴォルメテウス達が魔力球を食べにくることが確定した訳だが……。

「分かってると思うけど、街に来る時は龍の姿では来るなよ? あと対価は貰うからな?」

「おう。分かってるって。尻尾や血、爪が再生して馴染んだらまた行くぜ!」

「まあそれだけじゃなくて何か困った事が起こった時に手助けしてくれてもいいぞ」

レアガイアは魔力球で釣って色々やってくれたからなあ。

隼人の攻撃を受けてくれたり、エルフの精霊樹は……あいつの自業自得だったな。

まあ手助けが必要な展開自体が来ないで欲しいけどな。

「ほーう。そんなんでもいいのか。まあ、国に関係がなけりゃあ手助けしてやるよ。街1つ燃やし尽くすくらいならお安い御用だ」

出来れば街1つ燃やし尽くすような事態は来ないで欲しいし、それは国に関係があることなんじゃなかろうか?

まあ火龍の手助けを得られるのであれば、いきなり突撃隣の魔力球をされても元は十分取れる事だろう。

「それじゃあ、俺様達は帰るとするか。サラちゅわんも帰りゅんだよね?」

「うん。帰りゅわ。帰って……ちゃんと鍛えなおす」

「サ、サラちゅわんが鍛える!? ただでさえ天才のサラちゅわんが!? お、お父ちゃまがおちえりゅよ! お父ちゃまの戦い方もスキルも全部おちえちゃうからね! うおおおおん! 嬉ちいよおお! お父ちゃま感激!」

号泣……というか、噴水みたいに涙が噴出しているのだがその涙すら高温なのか湯気が出てるんだが……。

「うん。甘やかさないでちっかりおちえてね。もっともっと強くなりたいの。もっと……」

何か決意をしたような表情でぐっと拳を握り、シロへと真っすぐに視線を向けるサラグリム。

シロはきょとんとしたままだが、そこへサラクリムが歩いて近づいていく。

「……ねえ」

「ん?」

「また戦ってくれりゅ?」

「ん。いいよ」

「そう。ありがとう……チロ」

「チロじゃない。シロ」

「チ、チロ……チィルォ、チィうううチィ……シィ、シロ! 次は絶対負けないから!」

「ん。楽しみにしてる。シロももっと強くなる」

おお……ライバル関係ってやつなのかな?

微笑ましいやり取りに見えるが、二人の戦いはド迫力で微笑ましい内容ではないんだよなあ。

「はああ……娘の成長が嬉じいなあ……」

「サラちゃんはまだまだ伸びそうだねえ。うちのカサンドラちゃんのライバルにもなってくれそうだし、次代も安心かなあ」

「あ、レアガイア。そういえばカサンドラは?」

「え? あー……」

「ん? あいつなら俺の所にこの前来たぞ。律儀に挨拶周りしてたな。今頃はアルスカイのところかレヴィアの所にでもいるんじゃねえか?」

そういえば長が変わったからその挨拶に行ってるってイグドラ大森林付近の平原でレアガイアが言ってたな。

他の所に行っているって事は、今日はここには来ない――。

「いや? 戻ってきているよ?」

っ! びっくりしたあ!

背中に感じたことのある柔らかい感触がと思ったら、耳元で声がして思わずその場で飛び跳ねる程驚いてしまった!

だが後ろから抱き着かれていたので飛び跳ねた際に背中の感触は無くなるどころかより押し付けられてはっきりと分かるようになった。

この大きさと柔らかさは……いや、この声の主は――。

「カ、カサンドラちゃん!?」

「うん。ただいま母様。それに盟友も久しぶり」

頬と頬をむにっと合わせて俺の横で返答したのはカサンドラで間違いないだろう。

疲れたのかだらんとしていて、体を俺に預けてはいるものの俺が潰れないように配慮はしてくれているようだ。

「はあー疲れたよ。長が変わったから挨拶に行かないといけないって母様に言われたから行って来たよ」

「う、うん。ご苦労様! 暫くゆっくり休むといいんじゃないかな!」

「そうだね。母様が伝え忘れていた上に『絶対必要! 長が変わったんだからすぐ行かないと! ほら早く! 今からダッシュで!』って言うから慌てて皆に挨拶に行って来たよ」

「……」

なにやらだらだらと汗を流しているレアガイア。

そういえば俺にも挨拶に『行かなきゃいけない』って言っていたが……。

「ん? そりゃあした方がいいけど、そんな重要なもんでもないだろう。適当なタイミングで教えてくれりゃあ良かっただけだし、最悪配下に命じて伝達だっていい訳だし、慌てるようなもんじゃ――」

「わーわー! ヴォルちゃんメッ! しぃー! しぃー! だよ!」

しぃーもなにももう全部聞かれちゃったと思うよ。

だってカサンドラが抱きしめる力が強くなっており、背中に感じた柔らかさは面積が最大級になっているからね!

「……母様」

「ひゃい!」

「らしいね。聞いたよアルスカイに。わざわざご丁寧にって笑われながら褒められちゃった」

カサンドラの顔は見えないのだが、多分きっと笑っているのだろう。

目だけは笑ってはいないのだろうけども……。

「あは、あはは……ア、アルちゃんは元気だったカナ?」

「うん。真面目で丁寧で尊敬できるお方だったよ」

「そ、そっか! いやあ……あはははは……」

「で……母様は何をしているのかな?」

「それはその……」

いつも通りの光景がこれから繰り広げられるんだろうなって予想はまず当たるとして、とりあえず……カサンドラの怒気が最短距離で伝わってくるので放して欲しい!

くっつけられたほっぺがピリピリする気がするから巻き込まないで欲しいです!

「えっと……あのう……はっ! ヴォルちゃんがね! お婿さんを食べようとしていたから止めに入ったんだよ! いやあ危なかったね!」

「ふーん……ヴォルメテウス? 本当? 盟友には私の加護があったはずなんだけど……」

「え!? いや、それは、あのー……激昂していて気づかなかったというか……あ、俺様達はもう帰るから! それじゃあな! 行くぞサラちゅわん!」

サラクリムの手を掴み、あっという間に空へと消えていく火龍の二人。

サラクリムはシロを中心に俺達へ手を振っていたので、シロ達は手を振り返し、俺も可能な限り手は振って見送ったのだが……。

「ちょ、逃げるなよ! 一人にしないで! 怒られるなら二人で怒られようよー! 薄情者! あとでボコボコにしにいってやるからな!」

手を伸ばすも届く訳もなく、地団太を踏んで床を踏み砕くレアガイア。

そして未だに抱き着かれたままの俺!

ぴりぴりを通り越して耳鳴りがする気がしてきたんだけど、まだ解放してくれないのかな?

俺の顔を向けられる所にいるのがリュービさん達だけなんだが、目線で助けを求めたけれど手をクロスされ、首を横に振られてしまったんだが……薄情者ぉ!

「……まあヴォルメテウスには後で詳しく話を聞きに行くとして……母様?」

「ひゃいいい!」

「なんで……私が出発した前よりも太っているのかな?」

「そ、それはああ…………お婿さんが魔力球をくれたから……」

「ちょ!?」

巻き込んでんじゃねえええ!

おま、お前ええ! それは無しだろう!

こっちは既に補足されてるんだぞ!

「盟友?」

「ち、違うぞ? ただであげたりはしないからな! 助けてもらったからお礼はしたけど……」

「ふうん……助けてって、ヴォルメテウスに襲われそうなところを助けてもらったの?」

「そうだな……今回は戦いが始まる……って、タイミングで助けに来てくれたからおかげで戦わずに済んだし、そのお礼って事で……」

煽ったりなどはあったものの、レアガイアが来てくれなかったら危なかったのは事実だし、そのお礼に魔力球を食べさせてやるのはしょうがないよな? な!?

「ふーん……随分と都合がいいタイミングだったんだねえ」

「え?」

「ギクッ!」

いや、ギクッて分かりやすすぎじゃないか?

隠す気も何もないというか、タイミングを指摘されてギクッて事は……。

「母様。盟友の近くに潜んでたでしょ。私が課したトレーニングメニューをほっぽりだして、盟友の傍で盟友がピンチになるのを待ってたんだろう?」

「ギクギクッ!」

あー……なるほど。

どうりで都合よく良いタイミングで来てくれた訳だ。

サラクリムが相手の時は、シロが圧勝だったから出て来ても魔力球は貰えないと踏んだわけか。

「あは……あははは……こうなったら逃げ――」

「逃げたら……もう甘い顔は一切しないけどそれでいいんだね。魔力球も暫く食べられなくなるけどそれで良いんだね?」

「…………はい。ずびばぜんでじだ……」

水泳のスタートの様に地面へと潜ろうとしたポーズのまま固まり、諦めて涙を流すレアガイア。

そういえば龍の涙も素材になるのだろうか?

ヴォルメテウスも大量に流していたが、せっかくだし頂いておくとしようかな。

俺を売ろうとしたんだから、慈悲など無くて当然だよなあ!

「それじゃあ、俺達も帰るか」

「え!? ゴに来ないのか!? 来たら歓迎するぜ?」

「ギにも来ていないでしょう。盛大にもてなすので是非きて欲しいと知りなさい」

ギやゴにも行きたいのだが今回は使者として、仕事としてやってきているからな。

同盟問題も無事解決した事だし、アインズヘイルでやきもきしているあいつらを早く安心させてやらないと。

まあギとゴはミゼラを連れてまた訪れさせていただく事にしよう。と、もう一度来る旨を説明して帰ろうと思ったのだが……。

『ショクにも! ショクにももう一度来てくださいね! 私が直接ご案内しますから!』プルルルルン!!

と、あまりにも必死な勢いでお願いされたので空間魔法の事を教え、いつでも来れるようにこのカンチューに一室を用意してもらったのだが……空間魔法について教えるのは早まっただろうか。

俺を見る目がもう一段階上がった気がする。

まあミゼラを連れて訪れるとなると転移じゃないと体力的につらいだろうし仕方ないよなと思いつつ、なんとかミゼラ達の待つアインズヘイルへと俺達も帰るのであった。