軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15-4 ギゴショク共和国 森の外のエルフ

エルフっていうのは基本的に森に生きる者である。

森を出て生きるエルフは稀なのだが、意外と見る機会があるのは人と比べて寿命が長いからだろう。

アインズヘイルにもエルフエ・ロフのお店や冒険者、旅人などのエルフがそれなりにいるんだよなあ。

……で、それなりにいるエルフさん達は森を出ても精霊樹にはなんらかの想いがあるらしい。

森を出てきた理由も様々だそうだが、そんな精霊樹が街中にあるとなるとどうなるかというと……目の前の光景という訳ですねえ。

「びゃあああ! 精霊樹だ! 小さいけれど立派な精霊樹だあああ!」

「ご立派! ご立派よう! ああ、森を出てから意地を張っちゃって帰れないまま数十年……また精霊樹を拝める日が来るなんて!」

「はぁぁ……はぁぁ……しぇ、しぇいれいじゅぅ……本物ぉ……はぁぁ……ふへへへ……」

…… 混沌(ケイオス) !

いやあエルフってさ美男美女が多くて、クールな人が多い印象なんだけどさあ。

小さい精霊樹に向かって膝を突き触れはしないものの手を伸ばしたり組んだりしつつ、瞳孔を大きく開いて口を開けっ放しではあはあしてる姿はまさしく混沌だよなあ。

「いやあ……美男もああなると残念ですねえ」

「美女も変わんないよ」

まあその傾向はエルフの森のイエロさんで垣間見えていたんだけどさあ……。

俺の幻想異世界妄想がまた一つ崩れてしまった……。

そんな精霊樹を拝み? に来たエルフ達を遠目に見ながらまったりお茶をすする俺とシオン。

今日は日差しと風のバランスが気持ちよくてだらーっとしちゃってますねえ。

こんなだらしない姿を他人に見られたらきっと「うわあ……」と思われ、ウェンディが見たら注意されること間違いなしなんだが、今はこれが気持ちよすぎて直す気になれない。

そしてそんな時のお相手はシオンがとても合う。

「あ。そういえばなんだけどさ」

「はいはいなんですか~?」

シオンもティーカップを持ったままぐでーっと机に体を預けていてだらしないのだが、今日は注意しないよ。

しかしその状態でティーカップは綺麗に水平を保っているのだから大したもんだよなあ。

「エルフって寿命長いんだよな?」

「そうですね。長命種ですから私達の数倍はありますよ~」

「でも全体数は人の方が多いんだよな?」

「ですね~。エルフの総人口はあまり多くないかと~」

だよなあ。

イグドラ大森林はかなりの広さだったが、3000人くらいとの事だったしなあ。

「それがどうかしましたか~?」

「あーいや。寿命が長いなら、兄弟姉妹が沢山になるんじゃないのかな~って思ってさ」

単純に寿命が長いと夫婦な時間も長い訳だし、兄弟姉妹が沢山生まれて大家族になるのではないかと思ったんだが、違うのだろうか?

「……お館様。皆が皆お館様のように年中発情している訳ではないんですよ~」

「知ってるかシオン。人に発情期はないんだぞ~」

「ええ知っていますよ~。だからびっくりしています~」

「……」

「……だからびっくりしています~」

「二回言うなよ……」

「てっきり聞こえていないのかと思いまして」

聞こえてるよ。

聞こえた上でスルーしたんだよ。

「まあ冗談は置いといて、実際の所エルフには発情期があるんですよ。その期間がとても短く元々性欲も弱い方なので、子孫をあまり多く残さないんです。更に発情期と言っても誰でも良い訳ではなく、自身が気になっている相手がいない場合は自分で処理しますからね」

「処理……」

「お館様が喜ぶ言い方をするのであればオ――」

「せんでよろしい!」

危な! 何を言おうとしているんだよこの子は。

びっくりした! まったりしていたら油断も隙も無い!

俺が大きな声を出したからエルフの人達が驚いてこっちを振り向いたじゃないか。

どうぞお気にせずあの……続けてください。

「……しくしくしく。私はお館様が喜ぶことを常に考えているだけなのに」

「お前の中で俺が喜ぶ事ってそういうことしかないのかな?」

「……………あ、エルフの皆さんがお帰りになるみたいですね」

「話を逸らすな。あとエルフの方々は次のグループがすぐ来るよ」

うちに精霊樹があるといつの間にかエルフ達の中で噂になっているらしく、エルフの方々から参拝させて欲しいと懇願されたからな。

しかも周辺都市にいるエルフにまで話が届いているらしく、かなりの数になってしまったので日や時間を分けているんだよ。

「まるで観光スポットですねえ。あ、参拝料を取るとかどうですか? あの様子ならかなりぼれますよ?」

「やめなさいな……」

「欲がないですねえお館様は。世にも珍しい小さい精霊樹ですよ? エルフだけじゃなくて、アインズヘイルを訪れる方々からも取れると思いますし、そうなると相当な資産になりますのに」

「その場合、俺の新しい相棒であるあの精霊樹は常に地面に埋めてなくちゃいけないから、陰陽刀は俺が――」

「やめましょうか! 故郷の精霊樹を懐かしむエルフ達からお金を取るとか、精霊樹を見せ物にするとかそういうの良くないと思いますし!」

……現金だなあ。

まあそういうところも嫌いじゃないんだけどさあ。

「ほぁぁ……このお茶美味しいですねえ。共和国の物ですか?」

「ああ。アイアンカノンっていう面白い名前のお茶だな」

この世界の名称の共通点を考えると一番近いのは鉄観音茶だとは思うんだが、元の世界でもあまり飲んだことはなかったのでどういった味かはわからなかったけど、香ばしさと甘みを感じる美味しいお茶だな。

「共和国なー……あんまり詳しく知らないんだよなあ」

「共和国は面白い国ですよー。ギ・ゴ・ショクの三国があるんですけど」

「……それぞれが覇権を争っているとか?」

「覇権? いえいえそんな殺伐としていませんよ。確かに競い合ってはいますけど仲が悪いわけではないですし、それはお互いを高め合うといったところが大きいですからね」

「そうなのか……」

名前からして三国志のようだなと感じていたし、ギ・ゴ・ショクの三国と聞いて尚更確信めいていたんだが、統一されていないのに争っているというわけではないのか。

それどころか良い関係だとは予想外だな。

「王国や帝国といった大国に対抗するために手を組んだようで、外交的なものは三国のトップが会談を開いて話し合って決めているらしいですよ。アインズヘイルとの同盟もそれで決まったみたいです。共和国としては街道の整備も順調なアインズヘイルを中継地として他国へ輸出が行えるのは利点だったんでしょうねえ」

「街道ね。結構延びてるよなあ」

俺が帝国に行った時は途中までだったけど、今ではさらに延びているそうだしなあ。

「実際商人や旅人からしたら助かりますよね。整備された道は馬も進みやすいですし、周囲は切り開かれているので魔物の接近にも気づきやすいですしね」

「なるほどなあ」

同盟を結びやすくするために最優先で街道の整備を進めていたんだろうな。

同盟を結べなくとも進みやすい道が続く先にアインズヘイルがあれば商人は集まるし、そこでの税に差をつけるなどすれば商人から要望が国へと上がると踏んだのかもしれないな。

「いやあ、そのおかげでこんな美味しいお茶をアインズヘイルでも飲めるんですから有能な方ですよねえ領主様は。あ、今は代表でしたっけ?」

「そうだな。まあ残念なところもあるけど、出来る女だよなあ。ちょっとシオンに似てるな」

「有能なところがですか?」

「残念なところもかな」

「え? 私にそんなところありましたっけ?」

「そういうところがな。この前買っておいた共和国のお菓子食べるか? 多分このお茶に合うと思うぞ」

「わーい! ちょうど口寂しかったところです。あーん、でお願いしますね」

と、切り替えの早い所は時と場合によるけどまあ良い所だよな。

んんーお茶もお菓子も美味しくて、今日も一日平穏で良い日だったなあ。

ところで……森を出たエルフにとっての精霊樹って猫にまたたびみたいな効果でもあるんだろうか。

エルフエ・ロフのエルフ達と数人を除いて、次から次へと来るエルフ達が大体あんな感じだったんだけども……。

エルフに対しての幻想が無くなっていく代わりに疑問がどんどん増えていくなあ……。