軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 『特製』ハンバーグ

アインズヘイルに帰ってきて、何時もの食卓で何時ものように朝ご飯を美味しくいただいていたんだが……。

「シロ? よく聞いてくださいね?」

「ん」

「シロはご主人様の為に強くなる為、ククリ様の元に通っているのですよね?」

「ん」

「強くなるためには体の成長も大事だと分かってますよね?」

「ん」

「それではバランスのとれた食事が大切であり、お野菜も食べないと大きくなれないという事も分かりますよね?」

「……」

「分かりますよね?」

「……や」

「や、じゃありません! またお野菜ばかり残して! お肉のおかわりはお野菜を食べてからです!」

「やー!」

「我儘言うんじゃありません! 今日のお野菜はエルフの村からいただいたとっても美味しいお野菜なんですよ。お残しは許しませんからね!」

と、これもまたいつものようにやってますなあ。

こうしてみると若いお母さんと小さな子供のやり取りのようで、さながら俺はお父さんポジションといったところなのだろうか?

となると、そろそろ俺へと二人から意見を求められ困る展開になりそうだなあ。

「どう思いますかご主人様!」

「ん。主。シロはお肉が食べたいの!」

そら来た。

さて、どちらかに付かねばならない訳なんだが……いや、悩む必要もないか。

「あー……野菜は食べた方が良いと思うぞ?」

「ガーン! 主ぃ……」

「ほら見なさいシロ。ご主人様もこう言っているのですし、シロの分はちょっとだけにしているんですから食べてくださいな」

「だってそれ苦いぃぃ……」

バランスのとれた食事は大切。

特にエルフの村で採れた野菜は栄養も豊富であり、普段食べている野菜を食べるよりも少量で済むようにウェンディもしてくれているんだがなあ。

あれか。お肉だけを食べて肉肉しさを堪能したい気分なのだろうか。

焼き肉などであえて米を食べずに肉だけを貪りたいという日はあるので、分からないという訳ではないんだがなあ……。

「仕方ないな。シロそれ食べたらお昼は特製ハンバーグを作ってあげるぞ。特大のな」

ハンバーグはこの世界に来てから何度か作ってあげた事はあるんだが、ステーキのような噛み応えはないものの柔らかくて肉汁が豊富なハンバーグはシロの大好物だからな。

「っ! 主のハンバーグ……分かった! 頑張る。……けど、後味を消すためにお肉もちょうだい」

と、勢いで野菜を食べた後すぐさま肉をカッ喰らうシロ。

口いっぱいに野菜と肉を詰めたせいかほっぺが大変な事になっており、野菜を先に食べたせいか大好きなお肉を頬張っているのに何とも言えない表情である。

「もうご主人様はシロに甘いですねえ」

「そうか? 今だってシロに野菜を食べさせているけど……まあ、シロは可愛いからつい甘やかしたくなるんだよなあ」

今日は特に用事もないし、普段はウェンディとミゼラに任せきりだから久々に凝った料理を作るのも悪くない。

エルフの村でもらった新鮮な野菜もある事だし、シアンさんのお母さんからもらった『アレ』も試してみたかったしなあ。

という事で、お昼は俺特製特大ハンバーグを作った訳なんだが……。

「こんなのってない……こんなの……酷すぎる」

心の底から出てきたような悲痛な声をあげるシロ。

いや、まあなんだ。

嘘はついてないんだが……。

「詐欺ぃ……」

いやあシロから物凄いジト目で見られているなあ。

「詐欺じゃないぞ? ちゃんと特製ハンバーグだぞ?」

「っ……! ハンバーグの色じゃない! 緑色!」

一拍溜めて机を叩き、渾身の訴えを起こすシロ。

緑色なのはそりゃあ『野菜』ハンバーグだからなあ。

エルフの村の美味しい美味しいお野菜をたっぷり使った牛豚鳥肉不使用の特製ハンバーグだからな!

「うふふ。シロ。ご主人様がせっかくあなたの為に作ったのですから、ちゃんと残さず食べるんですよ?」

「ぐぬぬぬ……主の作ったご飯んん……」

シロは普段からよく食べるが、俺が作ると嬉しい事に普段よりも嬉しそうに沢山食べてくれるからなあ。

作り手側としては嬉しいことなんだが、流石に今回は涙目になって俺に訴えかけて来るなあ。

まあ、ウェンディ達は普通のハンバーグを食べているからそりゃあそうか……。

いやでも、そのハンバーグは特製だぞ?

「騙されたと思って食べてみな。きっと驚くぞ?」

「騙されると分かってて騙される訳がないの……」

「いやいや。分かってないぜシロは」

確かに中身は緑色だし、どう考えても野菜だと分かるだろう。

だがしかし! 味まで野菜だとは言っていない。

そして俺はやはりシロに甘いのだ!

「うううー……柔らかい……でも緑色……肉汁でてこない……」

悲しそうに耳を垂らしながらハンバーグを切り、ゆっくりと期待をしない眼差しのままに口へとハンバーグを運ぶシロ。

心なしか普段よりも咀嚼がゆっくりなのだが、数回噛み締めた後に耳がピンっと立ち上がり驚いた表情を俺へと向けてきたので、笑顔で答えてやった。

「美味しい……お肉の味がする……」

「ふっふーん。でもお肉使ってないんだぜ?」

ドヤァ! 見事に騙されただろう?

本来お肉のハンバーグが野菜ハンバーグになっていたと思ったら味はお肉のハンバーグという訳だ!

「凄い。凄い凄い! 本当にお肉の味がする。噛むと肉汁も感じる!」

パクパクと次から次へと野菜ハンバーグを口へと運ぶシロと、それを驚いた表情で見るミゼラやウェンディ。

「ご主人様? どういうことですか?」

「普通に野菜でハンバーグを作っていたわよね?」

「ああ。見てた通り野菜しか使ってないぞ。ただし、マゼッタさんから頂いた魔法の素材を使ってるけどな」

そう。

野菜から肉の味を感じ、あまつさえ肉汁までも感じる事が出来るのは全てマゼッタさん特製の『乾燥ミートオイルツリーの粉末』のおかげなのだ。

肉の脂? いやいや、実はこれ樹なんですなのだ。

エルフの村でシロの野菜嫌いは露呈していたからな。

貴重だけど面白い物があると教えて貰い、頂いたという訳よ。

「主! これなら食べられる! いっぱい食べる!」

と、普段肉を食べている時の様なペースで野菜ハンバーグを食べ進めるシロ。

「凄いですご主人様! これならシロがちゃんとお野菜を食べてくれますー!」

「あー……そうだなあ……」

「主様?」

「いや、まあ万能な食材はないってやつでなあ……」

「んぐっ……主ぃ……苦ぁい……」

ぴたっとシロが食べる手を止めたかと思うと、野菜を飲み込んだ後に眉根を寄せて綺麗になっている舌を出し悲しそうに俺を見つめるシロ。

「量を食べ過ぎると、野菜の苦味が目立つんだよなあ……」

ある程度、一般的な人が食べられる量くらいなら問題ないそうなんだが、シロは一般的には収まらない程に食べるからなあ。

「それは……ですが、少量であれば問題ないという事ですよね!」

「そうだな。ただ、割と貴重らしくてなあ……今日使った量で樹木一本分に値するそうだから量は正直あまり取れないらしいからなあ……」

エルフの村に頼めば融通はしてもらえるとは思うが……あれはあれでエルフでも使うらしいんだよなあ。

シアンさんみたいに肉を好む子や、肉の味を知りたいという子の為に確保しているそうだからあまり無理も言えないだろう。

「主ぃ……お腹空いた……」

「……野菜沢山食べたし、今日は野菜はこれくらいにして普通のハンバーグを食べるか」

「ん! やたー!」

ウェンディはせっかくシロに沢山野菜を食べてもらえると喜んでいたようだが、残念だったな。

まあでもあれがある時はシロも野菜を食べてくれるのだし良しとしようじゃないか。

それにほら。

「んー! 主のハンバ-グー! 美味しーっ!」

やっぱり肉を食べている時が一番幸せそうなんだよなあ。

これを見てしまうと……なあ?

甘やかすなと言う方が無理というものだろうさ。

さて、俺も食べるかな。

余ってしまった野菜ハンバーグの方をだけど。