軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14-35 イグドラ大森林 一樹に懐いた精霊樹

手を開く。

離れない。

そのまま手を振ってみる。

離れない……。

俺の手にくっついたまま小さな精霊樹の分体が離れないの……。

「どういうことなんだよう……」

なんですかこれぇ……。

もしかしてずっと手のひらから離れないんですかね?

俺はこれから先、左手に様々な柔らかさを感じる事が出来なくなったんですかね!?

そんなあ……。

「見事なまでに懐かれてるね」

「レアガイア……お前何か知ってる口ぶりだったよな? なんなんだよこれぇ……」

「んーっとねえ……全部がわかる訳じゃあないんだけど、まあ簡潔に言うと精霊樹に気に入られちゃったみたいだね」

「えええ……」

精霊樹に気に入られるような事した覚えはないんですが……。

もしかして助けられたと思っているのであれば、精霊樹を助けたのはエルフの方々やレンゲ達もいますし、俺限定という事ではないかと思うのですが……。

「よく考えれば必然なんだよねえ。こんなに小さくても分体をもう1つ用意できるとは思わなかったけどさ」

「どういうことだ?」

何か知っているようなら教えてください。

出来れば俺の手を……柔らかいものに触れる俺の手を返していただける方法を教えてくださいお願いします。

「んんーとねえ。まず、私は君の魔力を大量に注いだ魔力球から魔力を得て、魔力や霊体の力を精霊樹へと渡してたよね?」

「そうだな……」

「それで、村のエルフ達は魔力が切れたら君が作った魔力回復ポーションで回復してたよね?」

「そう……だな」

「君自体もかなりの魔力を注いでいたし、全体のバランスを考えると君の魔力が元になっているものに偏ったという訳だ」

「お、おう……? いやでも、人を介して練られた魔力ならその人の魔力になるんじゃないのか?」

「んんー……微妙に違うんだよねえ。まあ私達みたいに魔力が最重要な種族じゃないと分からないと思うけどね」

そんなもんなんすか……。

こんなでもレアガイアは長生きな龍なのだし、そんなレアガイアが言うのであればそうなんだろうけど……。

「で、最初は君の魔力が気に入ったからおかわりをいつでも出来るように……と思ったんだけど、今は魔力吸われてないよね?」

「ああ。ただくっついて離れないけど……」

見てほら。

ぶんぶん振るっても全く落ちないの。

裏返すと空中浮遊マジックをタネも仕掛けも無く出来ちゃってるの。

「じゃあやっぱりアレか。今回の件の中心人物が君だと思っているんだろうね。それで、恩返しの為にくっついている……かな?」

「え、恩返し……?」

「それか、生まれたばかりだし君の事を親とでも思っているかだね。あの子が生まれるために君の魔力が大量に使われているのだからその可能性もあるよねえ」

「お、親っすか……」

まさか自分の子よりも先に樹の子が出来るとは思わなんだ……。

「……ん? んんっ!?」

あ、あれえ? さっきまで木刀みたいになっていたはずなんだけど、にょろにょろしてます?

というか、動いてます?

俺の腕に巻き付きだしてます?

「なにこれぇ!?」

まるで生きているように腕に優しく巻き付いてきているんだけど、このまま絞め殺されたりしないか凄く不安なんだけど!?

「あー……こんな小さくても精霊樹だからねえ。元々所有してる魔力の量はかなり多いし、元々意志を持って動けるには動ける精霊樹だから動けるんだけど、小さいサイズだから動かしやすいみたいだね」

「だ、大丈夫なのかこれ?」

「大丈夫じゃない? 懐いてるだけだしね。ただ、動くのにも魔力は必要みたいで、動いた分は吸われてるみたいだねえ……私の魔力なのに……」

あ、だからお前大きな声を出したのか。

私のだぞって俺の魔力の事で、この子に言ってたのね。

はっ!!! そう言えば腕に巻き付いたから左掌から離れているうううう!

これで……これで俺はまたおっぱいやお尻や太ももや尻尾なんかを撫でられる……。

愛しい恋人達を存分に抱きしめられるようになったんだあああああ!

とはいえ、腕に巻き付かれたままってのも困る。

「えっと、懐かれたってのは分かったんだが結局離れはしないんだろうか?」

腕に巻き付かれたままというのはちょっと……。

さっきまでと比べて邪魔ではないんだが……このままでは腕に木を巻き付ける人になってしまうからな。

とにかく紐状のものを巻きつけたくなっている人というのは、ちょっとよろしくないかと……。

「んー? じゃあ引き剥がしてあげるよ!」

「え? いや、待て待て待て。お前にやられたら腕がもげる気がするんだが……」

「大丈夫大丈夫。おら。さっさと離れろー! これは! 私の! 魔力なんだようー!」

「痛い痛い痛い!!! 指! 指食い込んでる! 爪じゃなくて指が食い込んでるからあああ!」

俺の腕と精霊樹の間に指を入れ……っていうか食いこんでるの!

痕が残っちゃう! 赤くとかじゃなくて、お前の指の形が俺の腕に永久に残っちゃいそうだからやめえええ!

「ぐぬぬぬ! っいぎゃ!」

は、離れた……腕は……くっついてる……良かった。

どうやら精霊樹はまだくっついたままのようだが、何周も巻き付いていた枝が一周となっており、残った部分が以前のように木刀のような形となっていて、どうやらレアガイアの頭を叩いたようだ。

あれ? っていうか不意打ちだとは思うがレアガイアのあの硬い鱗……肌と脂質の上から声をあげる程の威力で叩いて折れないって凄い木だな。

あ。精霊樹は凄いのか。

「反撃だと!? 上等だあああ!」

怒ったのかレアガイアが精霊樹を掴み、物凄い力で引っ張ると俺も一瞬引っ張られたのだがするんと精霊樹がまとわりつくのをやめてくれたおかげで助かった。

あれ……もしかして、俺が巻き添えになるから放してくれたのか?

「はっはっは! こいつめ! ちょっと硬いからって調子に乗ったな? 私は龍だぞ! 中身の魔力ごと噛み砕いてやろうか!」

「待て待て待て待て待て!!!! 本当に待て! ほら。魔力球だぞー。ちょっと濃いめだぞう! いっぱい作るぞー!」

「グルルルルル。ちぃ。今回は濃いめの魔力球に免じて許してやるよ!」

そう言うと俺から引っこ抜いた精霊樹をふんっと地面へと突き刺すレアガイア……。

深々とまるで伝説の剣のように刺さっているんだが、木刀なんだよなあ。

「とりあえず、これで大丈夫だよ。ここに突き刺して置けば諦めてここに根を張るさ」

「ああ……」

確かにこれで俺にまとわりつかれなくはなったし、恐らくこれが本来の樹としての形なのだけど……どことなく、助けを求めている気がしてならない。

俺の腕がレアガイアの力に引っ張られて痛くならないようにと身を犠牲にしてくれた優しい 樹(こ) なんだよなあ。

それに、ただ俺に懐いてくれていただけという話だし……。

暫し後ろ髪を引かれながらちらちらと確認をしていると、木刀であった姿がしゅるんっと小さな木へと形を変えて本来の姿に戻ったようなのだが枝が元気なさげに垂れていて……ああもうダメだ。見捨てられない……っ!

思わずダッシュで精霊樹へと近づき、小さくなった樹を抱きしめるようにして地面に膝をつける。

「おいおいおい……どうしたってんだよう」

「この樹は……」

「んんー?」

「この子は家で育てます!」

「いやいやいや……今はそんなに小さいけどそれ精霊樹だからね? 君の寿命なんかよりもずっと長い間生きて、君の背丈よりもずっと大きく、君の胴体よりもずっと太く成長するからね? それに、腕にくっつかれ続けられるのも困るだろう?」

う……確かに俺の腕にくっつかれるのも困るし、前の精霊樹のように大きくなられるとアインズヘイルに迷惑がかかるかもしれない……だが!

「そうならないようにしつけます!」

「精霊樹を!? 君は本当にとんでもない事ばかり言うねえ……。はあー……まあいいんじゃない? 時折こうして地面に植えれば、君の魔力を大地に還元して大きさはコントロール出来るだろうし……本当にしつけられるの?」

「出来る。……出来るよな? あんまり大きくなりすぎず、俺の腕にくっつくのは駄目って言ったら聞くよな?」

俺が精霊樹へと問いかけると、精霊樹が先っぽの方を折り曲げて頷いてみせた。

凄い。凄いぞうちの子は!

この子ならちゃんと出来るはずだ!

更に言えば木刀のようになれるということで、シオンに渡した陰陽刀の代わりにもなるかもしれないしな。

「ああー……私の分の魔力はちゃんと残しといてよね」

やっぱりお前が一番気になってた部分ってそこなのな……。

大丈夫だ。今までと変わらず、カサンドラを通してからきっちりと渡させてもらうぞ。

……若干薄めるのは忘れないけどな。

よし。そうと決まればこの子をもう一度手に収めて連れて行くとしよう。

あ、でも一応イエロさんにも話は通しておかないとだよな。

一応精霊樹だし、懐いて離れないし……ん?

あれ? 精霊樹が刺さった周囲にこんな草花が生えてたっけ?

同じ種類のようだが、確か何も生えてなかったと思うのだが急速に成長したのか?

……ん? 見覚えがあるよう……なっ!?

これって、運が良ければ手に入る植物である『イグドラシル』じゃあないですかね!?

え、もしかして精霊樹を地面に刺したら生えてくるんですか!?

そうなのだとしたら、もう絶対に手放せないんですけども……ちょ、確認! 魔力ならいくら吸ってもいいから確認させてくれ!