軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14-23 イグドラ大森林 精霊樹ピンチ!

「さて。 世界に根付く精霊樹(スペリオルイグドラシル) の寿命のことだったね。考えてみれば精霊の全体数が少なくなっているのだからその可能性は十分にあるだろうね」

すごく真面目に答えてくれているのだけど、鼻の穴に布を詰めて鼻血を止めるエルフの姿は見たくなかったな……。

あと凹んだ顔って丸薬で治るんですね。

妻の愛が効いているからって言っていたけど、そんな理由で治るわきゃないと思うの。

「えっと、でも寿命ってことは枯れちゃうんじゃないのかな?」

うん。鼻血に気をとられていたけれどイエロさんからは全く緊迫した空気を感じられず、むしろ閑やかな雰囲気すら感じてしまっているからシアンさんの疑問は当然だろう。

アトロス様はかなり心配しているように見えたんだが……。

だってエルフの村がここにある理由なんだろう?

あの精霊樹を守る人までいるのだから、枯れたりしたら大問題なんじゃないのか?

「まあ精霊樹といっても樹だからね。当然寿命で枯れることもあるさ。私たちも独自に調査して本来数千年はあるはずの精霊樹の寿命が縮まっているのは分かっていたんだよ。ただ、調査結果よりも短いとは思わなかったから驚いたけどね」

「調査? お父様? 私守り人なのに調査したことも調査の結果も聞いてないのはどうしてなのかな?」

「え? べ、別にいざその時になった際の娘の慌てふためく姿が見たかったとか、そこで博識なところを見せてお父様凄い! と思わせたかったとかそういうことじゃないよ? 本当だよ?」

……この人は。

多分相手がシアンさんでなければ随分前にお父様嫌いと言われていることだろう。

いや、いくらシアンさんでもそろそろ言うんじゃなかろうか。

「はあ……お父様はまったくもう。しょうがないかな」

あ、それで済んじゃうんだな。

なんか俺もそんな感じで許してもらった手前言いにくいのだけれど、シアンさんの事が心配になってくるな……。

本当に俺が言うことではないのだが、悪意が無ければ何でも許してしまっていいわけではないと思うの……。

「はああぁぁぁ……うちの娘は可愛いなあ。どうだいご主人様様。うちの娘は最高だろう?」

「可愛いけど心配ですよ……。悪い男に騙されなきゃいいですけど……」

「はっはっは。心配ご無用さ。悪い男なんて私が燃やしてあげるからね!」

うぉ、怖っ!

レティにたまに燃やすわよって言われるが、イエロさんの燃やすはまじなやつだよ。

目が、目がマジなやつだった。

「そんな事してくれなくても精霊が教えてくれるから騙されないよ。それで? どうして精霊樹が枯れても大丈夫なのかな?」

「ああ、それはね。精霊樹は枯れても無くならないんだよ」

「何を言っているのお父様? また私の事を騙そうとしているのかな?」

度重なるイエロさんからのからかいと、俺でも疑問が浮かぶ解答に流石に疑いの眼差しを向けるシアンさん。

そうだ。その調子だ。疑う事も覚えた方が良いと思うぞ。

「いやいやいや! 今回の話は本当だよ?」

「樹は枯れたらお終いなんだよ? 確かに枯れ木は残るけど、大丈夫な理由になってないよ?」

「いやいやそういうことではなくてね。精霊樹は樹ではあるから寿命はあるけれど、特別な樹だからね。精霊樹は寿命を迎える前に分体という自分の新たな苗を幾つか残すのさ。そうして何代にもわたって精霊樹はこの世界にあり続けているんだよ。あの精霊樹も初代という訳ではないという訳さ」

「分体? そうなんだ……じゃあ、精霊樹は新しく生まれ変わるって事かな?」

「そうだね。サイズは小さくなるけれど成長すれば今と同じくらいの大きさまで育つし、今まで通り精霊達の拠り所のままのはずさ」

え、分体って……。

「だから問題はないという訳さ。ところで、どうしてご主人様様はアトロスと――」

「あの……アトロス様の話だと、その分体が今のままだと生み出せないと言われたんですが……」

「話を……え?」

うん。確かそう言っていたはずだ。

最後の方で慌ただしかったけれど、せめて分体を作れるようにしないと世界のバランスがどうのと言っていたと思う。

「分体を生み出せない程に弱っているって事かい!? それはまずいな……! アトロスがそう言っていたんだね?」

「ええ、かなり焦っているようで、どうにかしろと……」

「そうか……あれでも神童と言われてはいたからなあ……。どうしてご主人様様がアトロスと話が出来たかは気になるけれど、これは早急に調査をしないといけないね。悪いけど、今日は忙しくなるからまた後日という事で!」

「あ……」

「ごめんね! ちょっと行ってくる!」

一応俺の所有物でどうにかなるらしい……と、伝えようと思ったんだが何が必要かは分からないので言葉に詰まってしまった。

まあ、どちらにしても状態を知ることが出来ないと対処法は分からないだろうし、結果を待ってからの方が良いのか。

「ご主人様様。ごめんね。私もちょっと行ってくるかな」

「ああ。分かった。アトロス様の話だと一応対処法は無くはないみたいだから、終わったら結果を教えて貰えるか?」

「そうなの? 良かった……。うん分かったよ。それじゃあ行ってくるかな!」

という事で、シアンさんと二人で外に出る。

すると日が射しており屋内から屋外へ出たことで眩しいと感じるが、すぐさま大きな影に覆われた。

上を見ると……巨大な鳥?

「っ! ゼノハクイドリ! こんな時に……っ!」

「ゼノハクイドリ……?」

ヒクイドリではなくハクイドリ……?

人が数十人は背に乗れそうな程にでかい鳥のようで、シアンさんが焦りを見せているという事は、良好な関係という訳ではなさそうだ。

「 世界に根付く精霊樹(スペリオルイグドラシル) の葉を食べる厄介者だよ……。私達守り人の最大の敵かな。これは……お父様の後を追うよりやることが出来たかな。ちょっと行ってくるよ!」

そう言うと精霊樹の方へと駆け出して行ってしまったシアンさん。

俺も……と思ったのだが、俺が行っても足手まといになるだけかも……。

いや、不意の一撃を 不可視の牢獄(インビジブルジェイル) で防ぐなど何かできる事はあるはずだと駆け出そうと思った時。

「主」

「シロ? どうしたんだ?」

「主がいなかったから探してた。それよりも、大きな鳥がいた」

「ああゼノハクイドリと言うらしい。シアンさんが対処しに行ったんだが、俺も行こうと思ったところなんだが」

「……ん。分かった。シロも行く」

「助かる。それじゃあいっしょに行こう」

シロがいると安心の度合いが違うからな。

いつも頼りにしております……。

「ん。これは主に成長したシロを見せるチャンス」

「いやシロ? あのサイズだぞ? 専門の守り人の皆さんに任せた方がいいんじゃないか?」

「問題ない」

ふんすっと鼻息を荒くしたシロ。

なんかもうやる気満々のようなのだが……ご迷惑をかけないようにな?

と、シロが俺にペースを合わせながら走ってくれて共に向かうと、精霊樹の手前辺りで人だかりが出来ていた。

「はああ……ひぃぃ……はああああ……」

全力疾走はきつい……っ!

きついのに速度を落とすとシロが『終わっちゃうかも』と背中を押すので最大級にきつかった。

体力は結構ついたと思うのだが、全力疾走をずっとは続けられないよ……。

「イツキさん? 良かった。探していたんですよ。って、大丈夫ですか?」

「だ、だいじょばない……無理ぃ……。はあああ……ああ、隼人達も来てたのか……」

「ええ。皆でイツキさんを探していたのですが、大きな鳥が見えたのでもしかしてイツキさんがいるかもしれないと思いまして……」

「あんたトラブルメイカーみたいだからね」

いやいやいや。そんな噂を真に受けないでくれよレティさんや。

俺がトラブルを起こした事などほぼないんだよ。

今度事細かくお前達が納得するまで出来事のきっかけを話して差し上げよう。

そして、精霊樹から少し離れていた理由だが、近づきすぎると上の方が見えないからのようだ。

どうやら今現在は守り人の皆さんがハクイドリと戦っており既にシアンさんもいるみたいだが……押されているように思える。

というか、本当にでかい鳥だな……。

地龍のレアガイアやカサンドラ程ではないにせよ、ロックズとロッカス程にはでかい鳥がシアンさん達守り人の攻撃を鬱陶しそうに羽根で払いのけながら、精霊樹の上の方の葉を啄んでいるようだ。

押されていると思ったのだが、ゼノハクイドリはシアンさん達を気にせずに食事をとっており、シアンさん達の攻撃は分厚い羽毛に阻まれている感じだろうか?

「ん。隼人は行かないの?」

「ええっと、僕が行くと世界樹の枝ごと切ってしまいそうで……」

「ん。じゃあシロがやるね」

「ちょっと待ってくれるかな!?」

「ん?」

シロを止めたのは慌てた顔で駆けてきたイエロさん。

その後ろには数人のエルフの方々もいるのだが、もしかして調査チームの方々だろうか?

「あ、あのね? 今精霊樹は弱っているんだ。だから傷つけられるととても困るんだよ」

「大丈夫。シロは隼人と違う。主にいいとこ見せるの」

「僕だってやろうと思えば樹を傷つけずに倒せますよ……」

何故か対抗しあう二人。

シロはどちらかというと隠密性の高いアサシン系。

対して隼人は高火力の剣士系で、より周囲の被害を少なく倒すというのであればシロに軍配が上がるだろうか。

ただ、隼人だって英雄と呼ばれている男。

周囲に被害を出さずとも倒すことが出来るだけの実力はあるだろう。

とはいえ、貴重な精霊樹に何かあればと慎重を期していたのだろうな。

「いやいやいや。二人が自信満々のように樹を傷つけずに倒せるとは思うんだよ。でもね、ゼノハクイドリは食事が終わるまで絶対に動かないんだ。つまり、あのままゼノハクイドリを倒されるとあの巨体が精霊樹へと落ちてきてしまうんだよ! 枝が何本も折れるのは流石に……っ!」

「ん。大丈夫。魔石を壊せば落ちてこない」

「え? 空中であの巨大な鳥の魔石を破壊できるのかい?」

「ん。主が足場を作ってくれれば余裕」

足場? ああ、 不可視の牢獄(インビジブルジェイル) でか。

オーケーオーケーそれくらいならば可能だとも。

「う、うーん……それじゃあ頼もうかな? ああやって葉を食べられ続けるのもまずいだろうし……ただ、本当に頼むね?」

「ん。マカセロリン」

それ、昨日取った野菜の名前だよな?

マカなのかセロリなのか味が良く分からなかった野菜だな?

確か男性機能の向上に役立つ成分が含まれており、ウェンディが喜んで採取していたようだが……疲れていたせいかあまり記憶にないんだよなあ……。