軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14-21 イグドラ大森林 自由神クロエミナ

ああー…………ううー…………。

「んんーっ! はあっ! 満足したわー!」

ツヤツヤの顔をしてぱあっと痛快な程に明るく笑うアトロス様。

正直申しまして最近のウェンディ達とのあれこれは俺が主導権を握ることが多かったのだが、当然の如く終始アトロス様が主導権を握っていらっしゃいました。

「ほあー…………」

「おーい。生きてっかー?」

「ああー…………」

「駄ー目だこら。おいおい情けねえなあ」

「し、仕方ないと思います……」

だって……だって!

まるで獣だよ! エッチじゃなくて交尾と言った理由が分かるような内容だった!

良い雰囲気など皆無! 貪られたよ!

危険な魅力そのものに襲われた感じで搾り取られた。

違う、搾り取られた何て生ぬるい! こそぎ落とされた感じだったんだよ!

っていうか、脱力感に支配されて体を動かすのがだるすぎる!

あとこれ戻った後はどうなっているのかな?

夢〇的な事になっていたら、下半身がとんでもない事になっているのだけれど!?

エルフの村で密かにパンツを洗いたくはないので、大分気分的に嫌だけど魔法空間に放り投げるしかないんだけど!?

「動けないからってジト目で見るなよな。お前も楽しんでたくせに」

「それは……丸薬とお酒もありましたし……」

そう。アレは危険なお薬だよ!

アルティメットナイト程ではないにしたって、アレはアレで十分危険だった!

もうね。終わらないの!

終わったと思ったらアトロス様が見透かしたように再起を促すテクニックを魅せてくるんだよ!

激しいだけに見えて、技巧派でもあるとか卑怯だと思うの!

「いやあ、女神になったはいいけどここはつまんねえんだよ。男はいねえし、戦いはねえし。そんなところに来られる男がいたら……なあ?」

「だからサービスしてくれたんですね……」

「おう。逃さねえようにな」

うう、実際とても良かったのは事実だし、ありがたかったから何も言えない……。

俺にとっては良いことづくめ過ぎるから何も言える訳がない!

というか俺……女神様と……本当に?

そんなドキドキトキメキな内容ではなかったのだけどさ……。

いや、まあ女神様だけど元々は人……というかエルフなんだし、欲求くらいそりゃあるよなあとは思うんだけどさ。

……ん? そもそも、アトロス様達ってどうやって女神様になったんだろう?

ヒトが神になる……なんて、いくらファンタジーな世界とはいえあり得るのだろうか?

いやでも、実際に目の前にいるんだからありえるのか……。

「それでお前、なんでここ来たんだ? まさか本当に私にサービスするために来たのか?」

「え? サービスしに来たっていうか、 世界に根付く精霊樹(スペリオルイグドラシル) の傍で寝ていたらここにいたというか……そもそも、アトロス様が妖精たちを使ってここに呼んだんじゃないんですか?」

「ああ? そんな事出来る訳ねえだろう。こちとら地上への干渉は本来禁止なんだよ。神のルールって奴でな」

え、でもこの前俺に力を貸してくれましたよね……。

スキルを貸すなんて大分干渉しているんじゃ……。

「まあなんにでも例外はあるけどな。しょっちゅうやってたら流石にアウトってこった」

おおお……つまり、貴重な機会を俺の為に使ってくれたという事ですか。

……サービス、出来て良かったな。

ご満足いただけたのなら良かったな。

「しかし、妖精がねえ。随分と私に都合が……ん? なんだこれ。 世界に根付く精霊樹(スペリオルイグドラシル) が……」

「何かあったんですか?」

「間違いねえな。こいつは……でもまだ時期が……ああ、大精霊がいないからか。大地に力が足りてねえから……ちっ。まだ早すぎるな。これじゃあ分体が……うーん……んんー?」

なにやらアトロス様が裸のまま立ち上がり、彼方を見ながらぶつぶつ言い始めてしまったのだが、大地に力が足りないとか、早すぎるとかってもしかして 世界に根付く精霊樹(スペリオルイグドラシル) がピンチって事であってます?

あ……思案しているようで声が届いていらっしゃらない。

「……ねえ」

「え?」

「貴方イツキよね。どうしてここにいるの?」

「え…………ええ?」

いきなり覗き込むように顔を見せたのは、黒い髪と黒い猫耳を持ったぱっちりお目目で透き通るような瞳を持った女性。

身長はソルテと同じくらいだろうか? しかし、胸の大きさはぎりぎりおっぱいには届いていないぱいといったところ。

黒い猫耳が興味を示しているかの如く動き、しゅるんっと滑らかに尻尾も揺れていらっしゃる。

レイディアナ様ではないというのは間違いないのだが、猫耳……という事は猫人族……? いや、もしかして耳が黒いという事は、アヤメさんが以前話していた黒猫族か? シロが使うスキルの被装纏衣を使って傭兵をしていたっていう……。

そういえば、女神様は三人いるんだったよな。

そんな事をテレサ達が話していて、確か……。

「クロエ……ミナ? 様?」

「そうよ。クロエミナよ」

黒を基調としたゴシックドレスのような服装の女神様……。

自由神……だったっけかな?

テレサ達教会の人間が持つ本の中に神様の絵が浮かぶ物があった中で、動物がシャっと影になったような絵であったクロエミナ様か。

「それで、どうしてイツキがここにいるの?」

「あ、えっと、理由は分からないんですけど……というか、俺の事知ってるんですね」

「ええ当然よ」

「当然なんですか……」

なんで……って、アトロス様がたまに見ていると言っていたし、 視覚共有(シンクロアイズ) で一緒に見ていたとかだろうか。……ぷらいばしぃ。

「それで、どうしてここにいるのか聞いているのだけど……それにどうして裸なの? もしかしてイツキ、アトロスとしたの?」

「え……あーその……」

「したのね。ずるいわ」

ず、ずるいですか。

あ、確かにクロエミナ様もこの世界にいるって事は色々と溜まっていらっしゃる可能性はありますよね。

いやでも、そんなまさかねえ。

「ああー? おうクロエミナか。ここがよく分かったな」

「これみよがしに結界を張っていたら馬鹿でも分かるわ。それで、イツキとしたのね? ずるいわアトロス」

「んーふー? ああ、したぜ? 久々に満足させてもらったよ」

「私もするわ」

…………へ?

するって……するですか?

あの、俺達初対面……。

「残念だったなー! 私が全部搾り尽くしたからそら無理だ」

「大丈夫よ。イツキならまだ出来るわ」

「まだ出来るなら、私がする。今日は私へのサービスだからなあ!」

「ルール違反のね。もういいわ。貴方に用は無いから。実力行使でイツキを私の空間へと連れて行くから」

「へえ……やってみろや!」

ぶおっと、一瞬にしてアトロス様から威圧的な何かを感じる。

長い髪が風も吹いていないというのに浮き上がり、笑顔なのに戦意が見て取れ、目を大きく見開いており凄く怖い……。

対照的にクロエミナ様は冷静というか無……。

薄っすらと微笑んではいるものの、視線をアトロス様から外す事は無い。

そしてそんな二人の間に挟まれている俺!

あわわわ……あわわわわ……。

えらいこっちゃ。早くこの場から脱したいのに体が動かないんです!

お願いします! 今すぐ戻してください!

またはレイディアナ様今すぐ助けてください!

そんな願いも虚しく、アトロス様が腕を上げ手のひらをクロエミナ様に向ける。

それと同時に俺は縮み上がる。

「はっはー! お前気まぐれすぎて戦いたい時になかなか戦ってくれないから上がるなあー! 行くぜおい! 『 鋭敏な一矢(シャープシューティング) 』!」

アトロス様がテンション高くスキルを唱えると同時に、何かが目には見えない程の速度でクロエミナ様の頭を打ちぬ……えええ!?

後ずさるクロエミナ様を大丈夫なのか!? と思っていたのだが……わあ……。

打ち抜かれたと思ったのに、口に矢を咥えており、ぺろっと舌を出して床へと落とした。

え、あの速度で飛んできた矢を、咥えたって事?

それにしたって真っすぐ飛んできた矢の棒の部分を咥えるってどうやって……。

少なくとも頭を振ったような所作は見る事が出来なかったぞ。

というか、弓持ってなかったよなアトロス様……。

「いいねいいなあいいぜおい! 次行くぞ!『 射手なき千の矢(バレルオブサウザンド) 』!」

「うわあ……」

空間が歪み、そこから鏃だけ飛び出したまま待機している。

スキル名から察するに、その数およそ千……。

え、これが全部射出されるんですか……?

誤射して手前に落ちてきたりしませんか!?

「あら。千矢しか出せないの? お得意の速射も速度が足りていなかったようだけど。もしかして久しぶりにしたから足腰に来ちゃってるの? 可愛いわねえ」

「るせえな! 避けてから言え!!」

「今日の貴女の千矢程度なんて、目を瞑っていても踊りながら躱せるわよ?」

言葉通りクロエミナ様が目を瞑り、ドレスの端を優雅に持つと一礼し、それにいらだった様子のアトロス様が放った千の矢をまさしく踊りながら避けている。

千本の矢というだけでも驚異的な上に、その速度は決して遅くはないにも関わらず、だ。

それなのにゆったりとしていたり、突然ステップを刻んでいたり、スキップのような動きを見せたり、更にはくるくると回転をしたりと、優雅でありながら決められたものではない自由な踊りをしつつ躱している。

それでいて、ドレスの端にすら矢はかすっていないのだから驚くのも当然だろう。

「あああー! 鬱陶しい! イツキの前でいいとこアピールかあー!? そんじゃあこいつも目を瞑って避けてみろよ!」

俺の傍にいたアトロス様が苛立ったように叫びそちらに目を向けると、一瞬にして姿を消す。

どこに……と思ったら、いつの間にか宙におり、いつの間にか取り出していた弓の弦を限界にまで引き搾りクロエミナ様を狙っていた。

「あら。それは無理ね」

「じゃあ死ね! すぐ死ね! 『 隕石を穿つただの木矢(メテオブレイカー) 』!」

つがえている矢はただの木の矢……。

なのに、なにやら鏃のほうにカラフルな力が収束していっている。

メテオ……隕石を破るの? 木の矢で……?

ふええ……。

「ふふ。なんて。当たる訳ないじゃない。『 被装纏衣(ヒソウテンイ) ・ 壱被黒鼬(イッピクロイタチ) ・ 脚(キャク) 』」

「へ……」

やはりシロと同じ 被装纏衣(ヒソウテンイ) だ。

しかも 黒鼬(クロイタチ) って事はまんま同じスキルなのだが……黒い靄のような何かは脚にだけかかっていてまるで黒が凝縮された靴を履いたかのように見える。

そして直線的な動きではなく、くねくねと流れるような黒い線だけを残してその場からいなくなった……と同時に、アトロス様の放った矢が地面に触れると同時に大きなクレーターを作り上げる。

その大きさは俺の目の前まで穴がきており、ひゅんってなった。

「使ってきたな! もっと来いよ!」

「あら。イツキを巻き込んじゃうじゃない。本当に戦闘馬鹿よね。周りが目に入っていないのかしら。イツキ。そんな女としていると、イツキのおち〇ちんが壊されちゃうわよ」

「おち……っ」

女神様が!? 女神様がそう言うことをいきなり言わないでくれません!?

「あら? もしかしておち〇ちんと言われて照れているの? 可愛いわね。なんだか新鮮で素敵だわ」

「いちゃついてんじゃねえぞこらあああ!」

「いちゃつくわよ。これからもっといちゃつくのだもの」

「あ、あのぉ……俺の意思とかは……」

「嫌なの?」

「嫌……ではないですが……っ!」

その質問てずるいですよね……。

嫌な訳はないんです。

ただそのまだ会ったばかりですし、そういった抵抗とかってないんでしょうか……。

「大丈夫よ。貴方の弱い所は熟知しているもの」

どれだけ覗いていたんですかねえ!?

これから先俺はそれを気にするようになりそうなんですけど!?

「だあああかああらあああ! 私を無視していちゃついてんじゃねえええ! 『 いずこの(アハト) 世界の(・) 88ミリ砲(アハト) 』」!」

「あれはまずいわね。イツキ。逃げなさい」

「あの、俺動けないんですが……」

「あら。困ったわね」

困っちゃいましたね。

……どころではないんですけども!?

うわああ! なんか空間が歪んでいるんですが!? なにやら収束して出来た弾がかなりでかいんですが!?

え、あれ打ち込んできます? 射線上に俺もいるんですが!?

「仕方ないわね……『 被装纏衣(ヒソウテンイ) ・ 八衣黄鴉(ヤイコガラス) ……あ」

「っしゃああああ! 潰れろぉぉぉおおおお!」

「……ストップアトロス」

「ああああ!? 止まれるわきゃねえ――」

「イツキ、戻るみたい」

え? あ、本当だ。

いつも通り体が消えかけていて感覚的に戻る感じがする。

「おいおいおい……まじかよ。盛り上がってきたところなのによう……」

「イツキがいないんじゃ戦う理由は無いわね。次に期待しておくわ」

「いや、次も私だが?」

いや、まず本人確認が先では……?

あといつ来れるかなんてわからないですからね?

「レイディアナに報告するもの。前回の件と合わせて今回はどうなるのかしらね」

「ちょっと待った。あー……分かった。次はお前でいい。だからレイディアナには言うな」

「どうしようかしら。お魚料理を三回分献上で手を打っても良いけど」

「戦い以外で唯一の楽しみである食事のメインを取る気かよ……。鬼め」

「猫よ。にゃあん」

「ちっ……ああそうだイツキ。 世界に根付く精霊樹(スペリオルイグドラシル) だが、寿命が早まってるみたいだ。なんとかしてやってくれ」

「え、なっ、え、寿命? な、なんとかってどうすれば……」

世界に根付く精霊樹(スペリオルイグドラシル) の寿命!? あの大きくて生命力に溢れていそうなあの樹が!?

もしかして、アトロス様が呼んだんじゃないって事は精霊達の目的ってそれだったのか……?

ただ、俺を呼んだところでどうしろと……。

「お前らが持ってるもんでなんとかなる。せめて分体を作れるくらいにはしておかないと、世界のバランスが崩れかねねえから頼むぞ」

「俺らの持ってるもの……? あ、もう少し詳しく――」

ちょ、あと十数秒だけいさせておくれよ!

俺らの持っているものってだけじゃあ分からないんですけども!? あ――。