軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 ドラゴンダイエット

お昼下がりのティータイム。

ウェンディにより手入れの行き届いた庭で優雅なひと時を堪能する俺の好きな贅沢な時間だ。

ただ……俺のティータイムって、大体誰かしらが鍛錬しているんだよな。

今日も勿論目の前で行われている訳だが……なんというか、今日はちょっと毛色が違う。

「はぁ! はぁ! ひぃぃぃ!」

「ん。逃げないで」

「逃げるよ! なんでなんでなんで襲ってくるのさ! ナイフ片手に小さな子が襲ってくるって猟奇的って奴じゃないかな!?」

「……シロはもっと強くなりたい。失態ばっかりで……もっと、強くなりたい」

失態ばかりだなんて、そんな事はないんだけどな……。

オボロによる攻撃は、誰であってもどうにもならなかったものだと言っているんだが、シロはどうにも納得がいかないらしい。

「レアガイアは強い。シロよりもずっと。だから、戦ってもっとシロは強くなる。二度と……主に傷を付けさせない」

「シロちゃん……」

「だから、狩る。レベルアップ」

「シロちゃん!? うおおおおわあ! 来るなー! シリアスな感じを出したって駄目だからね! 私は必要以上に動きたくないんだよ! 一日10歩も歩きたくないんだよう!」

まあ……もうすでに逃げ回って汗だくだもんね。

服がもう……ぞうきん絞りをしたらびしゃっと落ちそうな程に濡れて滴っているもんね。

ただ……歩いた方が良いとは思うぞ。

「いいぞー。その調子ー。母様もっと走れー」

「ひぃ……ひぃん!」

「……カサンドラ。カサンドラが相手でもいい」

「いやあ、私は盟友とお茶菓子を食べるのに夢中なんだ。んんー……ヒトの食べ物って面白いねえ。ちょっと手を加えるだけで違った味がするんだね。盟友が作っているからかな? 無限に食べられそうだよ」

あーん、っとホールケーキに指を挿して持ち上げると大きな一口で四分の一程を口の中に収めるカサンドラ。

もきゅもきゅと美味しそうに食べているが、それもそのはずそのケーキは魔力球を果物に見立てた龍用のケーキだからな。

「ああー! カサンドラちゃんずるい!」

「んんー? これは盟友からの好意だもの。母様には向けられていないものだよ」

「そ、そんな事ないよね!? お母さんにもくれるよね!?」

「え? あー……シロの相手をしてくれるなら?」

せっかくだし、シロのお願いを叶えておくれよ。

ほら。こんなに嬉しそうにしていて可愛いんだよ?

ぴょこぴょこ耳も動いて、こんなに可愛いシロをがっかりさせたいとは思わないだろう?

「うぉい! また交換条件か! あのねえ君。私地龍だよ? 元とはいえ――」

「んふー! これは牛の乳を使っているのかな? 魔力球そのままでも美味しいけど、初めて食べる味だね」

「……長だよ! 偉大な龍なんだよ! 本来なら君みたいなヒト風情が口をきく事すらおこがましい、圧倒的な生物上の――」

「あ、こっちのくっきー? にも小さな魔力球が埋め込まれているんだね」

「……上位種だよ? そんな私が、たかだか小さな魔力球くらいでいう事を聞くと思ったら……」

「んんっ! ああ、小さな魔力球からとんでもなく濃厚な魔力が溢れて、ぷちぷちって食感が……はああん……」

「ようし! シロちゃんやろうか!」

どうやら切り替えてくれたらしい。

流石はレアガイア、偉大な龍にふさわしいような、小さい事は気にしない大雑把で素敵な性格だ。

「分かってると思うけど、私の分はたっぷりとだよ!」

「あいあい」

「適当過ぎる! 龍は契約を大事にしているんだからね!」

分かってるって。

ちゃんとレアガイアにせがまれた時用にもともと用意してあるからね。

「まったくもう……さあ! どこからでもかかってこい!」

「ん! 行く!」

「……あれ? そういえば私随分と人形態で戦った事ないや。わあ! ちょ、まっ! 待って! 体ってどう動かすんだっけ!?」

シロが嬉々として慌てふためくレアガイアに突っ込んでいき、それに合わせてレアガイアががむしゃらパンチを放つ。

当然そんなものにシロが当たる訳もなく、それを余裕で回避してシロがレアガイアの腹部にナイフを当てる。

更に、連続で何度もレアガイアを切りつけるのだが、レアガイアの体に傷はついていない。

「むぅ。やっぱり硬い」

「と、当然だよ! 脱皮したてとはいえ私の防御は龍族の中でも一番だからね!」

脱皮、とは隼人の『 光の聖剣(エクスカリバー) 』によって焦げ付いた鱗が剥がれ落ち、新たな鱗が生えてきたことを言っているようだ。

ちなみに、脱皮すると人形態になった際に肌艶が良くなるらしい。

……鱗は角質かなにかなのだろうか?

「ん? ちなみに弟達が脱皮すると体がゴツクなって大きくなるけど、私はこれが大きくなるよ」

「お前なあ……それはもっと大事に扱いなさいな」

「んんー? 大事に扱ってるよ? 盟友が好きなものだしね」

これ、と言って持ち上げたのはおっぱいだ。

もうね。カサンドラは無頓着すぎる。

そうやって俺が喜ぶからと遠慮がないのだ。

龍にクーパー靭帯は関係ないのかもしれないが、心配にはなってしまう。

「お前なあ……あんまり乱暴に扱うと、垂れちゃうぞ?」

「大丈夫。おっぱいは鍛えると進化して垂れなくなるんだよ?」

「そうなの!?」

まじかよ。凄いな異世界のおっぱい。

流石はスキルとステータスのあるファンタジーだ!

「いや……冗談なんだけどさ。そんなに目に見えてがっかりしないでよ……。まあでも、本当に大丈夫だよ。龍の体は丈夫だから、そんな風にはならないさ。……試してみるかい?」

「試してって……」

「こういうふうに……」

またしても自分でおっぱいを持ち上げ、上下に激しく揺らすカサンドラ。

今俺の瞳は確実に揺れるおっぱいに合わせて上下している事だろう。

「こらぁー! お母さんが頑張っている時にいちゃつくんじゃないよ! ひぃ、ひぃ、ねえ! もうやめない!? もう十分じゃないかな?」

「無駄口をたたく余裕がある。まだいける」

「どこを見たらそうなるのかな!? ほら見て! 汗だくだよ! つゆだくの汁だくだよ!」

おおお……確かにすさまじく汗をかいているようだ。

というか、レアガイアから熱気が目に見える蒸気のように上がっている。

あと、つゆだくとか汁だくとか言うな。

一応龍の汗って素材になるのだろうけど……んんー……集めたくはないな。

というか、爬虫類だと変温動物だから汗はかかないんじゃ……いや、龍は別という事かな?

それとも、人形態だと汗をかくのかな?

「おお、母様凄いね。それは痩せるよー。これからのダイエットに取り入れようか」

「毎回これをやるの!? お母さん多分息が出来なくなって死んじゃう気がするよ! 何事も急にやるのは良くないんだよ! 体がびっくりしちゃうんだよ!」

「あ、シロ。何? 鍛錬してるの? 混ぜなさいよ」

「ん。レアガイアが相手」

「なんか増えた!」

そうだねえ。

ソルテが槍を持ってシロと同じく嬉しそうにやって来たね。

やっぱり、強敵との鍛錬って言うのは嬉しいもののようだ。

「ほう。それはまた、贅沢な鍛錬相手だな。どれ、私も手合わせ願おうか」

「ボッコボコにするっすよー!」

「いっぱい増えた!! これは契約にない事だよ! 絶対に嫌……だ……」

確かに契約にはない。

きっと今用意してあるお菓子だけでは駄目なんだろうな。

だから、山盛り用意しておこう。

俺はほら……恋人達の願望を叶えなければいけないからね。

「へへ……へへへ。もしかしてそれ全部私のなのかな? それならもう少しだけ頑張ってみちゃおうかなーー!」

ぱんっと拳を合わせてアイナ達四人と対峙するレアガイア。

アイナ達もレアガイアの強さを知っているので、普段の鍛錬用の武器ではなく通常の狩りに使う武器である。

……4人でレアガイアを相手にするのを見ると、なんだか元の世界でやった『魔物狩人』というゲームを思い出すのは、レアガイアの龍形態を知っているからだろうな。

爆破属性の武器等があれば、肉質無視の固定ダメージが入ったりするのだろうか?

「……ねえ盟友。そっちのお菓子って……」

「ああ。一応魔力は抑えてるよ。多分あいつ、一枚一枚食べたりしないだろう?」

「そっか。ありがとね。その量をあの濃さで食べられたら、せっかくの運動が意味なくなっちゃうからね」

カサンドラのダイエットメニューで、出会った頃よりは一回りレアガイアも痩せているからな。

俺としても、レアガイアが痩せて胸肉からおっぱいになるのを見たいのだ。

だから、せっかくの機会だと思っているだろうカサンドラの考えはわかっているとも。

「よっしゃあっ! 行くぞおおおお!!!」

この後、たっぷりとレアガイアは体を動かした。

それはもう汗が滴り落ちるどころか止めどなく流れる程に……。

そのまま水を浴びさせてからたっぷりと魔力球入りクッキーを食べた訳だが、やはり一口で皿からざっと流して食べ、魔力球の濃さには気づかずに美味しそうな笑みを浮かべるのであった。