軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 リートさんと二人の新米錬金術師

さてさて、今日のお仕事はこれくらいにしておきますかね。

まったくもう。

レインリヒ様がいらっしゃらないから錬金室で作業が出来ないんですよ。

独立の日はどうせ誰も来ないだろうと引っ込んでましたけど……。

危ない煙が出てしまう実験が出来ないのははっきり言って困りますね。

というか、この街にとって大事な独立の日にもいないなんて、ちょっと素材を取りにどこまで行っているのやら……。

というか、御老体のはずですのに元気ですねえ……。

ご本人の前では決して言えませんが!

……で、どうしましょう。

「「じぃぃ……」」

「……楽しいですか?」

「「はい!」」

「そうですか……」

監視……?

いえ、懐かれましたかね。

双星の美姫であるお二人。

後輩君の生徒さん達でしたね。

そのお二人が好奇の視線で私の錬金を見ています。

あとたまに私の顔を見ています。

「あのう……私の種族はもうご存じですよね? 怖くはありませんか?」

「「全然!!!」」

そうですか……。

私は子供が好きですが、子供から見れば魔物だと思われても仕方ないのですが……。

やはり、助けた事で懐かれたのでしょうか?

これが後輩君の言うフラグ? というやつですか?

どうせならイケメンの男の子の方が……ああ、いえ何でもありません。

別に私好みに少しずつ育成していき、依存させて……なんて考えてはいませんよ。

ええ勿論です。私は倫理観に満ち溢れていますからね。

まあ、お二人が見ているから尚更危険な実験は出来ないので、今日はお手本になる様に香りの抽出実験にしておきました。

香りの抽出方法は一つではありませんからね。

軽く炙ってみたり、乾燥させてみたり、水から抽出してみたりと様々です。

本当に、香りは奥深いので極めていくには面白いテーマだと思いますよ。

まあ、私のメインテーマである美容にはアクセントでしかありませんから、手順などは見られても構いませんが……。

「リートさんリートさん」

「はい? なんですか?」

「あのねあのね、これ、リートさんにプレゼントなんだよぉ」

「これは……香水ですか?」

「うん。私達が作った香水なんだよー」

ふむふむ。

香りは……ああ、自然のお花畑にいるような優しい香りですね。

良く出来ています。

「ありがとうございます。大事に使いますね」

「うんー! 恋人とのデートとかで使ってくれたら嬉しいんだよー!」

「普段と違う香りにイチコロなんだよぉ!」

……恋人? いませんけども。

デート? もう何年も行っていませんけど?

ええ。ええ。悪気が無いのはわかっています。

だから笑顔は崩しませんとも。

「……ありがとうございます。そう……ですね。ええ、いずれ、必ず……お相手が見つかり次第……」

「「えっ!?」」

おっと、つい心の声が漏れてしまいました……。

違うんです。あの、ほら! 私は理想に見合うお相手が中々見つからないだけなんです。

「リートさん恋人いないのぉ!?」

「え、ええ……」

「さ、最近別れちゃったとか!?」

「いえ……その……ずっとおりませんが……」

悪気……ないんですね。

そうですか……無いんですか……。

せめて興味本位が少しでも含まれていれば貴方達を嫌いになれたかもしれませんのに、無いんですね……。

純粋な視線を向けられるととても反応に困ってしまいます……。

「リートさんとっても大人で素敵なのに……」

お?

「美人だし、優しいし、強くて可愛くて格好いい最強なのにぃ……」

おお?

「お肌もつるつるでとっても綺麗だよ!」

「髪もサラサラだよぉ! 憧れるよぉ!」

「絶対素敵な恋人がいらっしゃると思ったよぉ!」

「お似合いの凄く格好いい恋人がいると思ったよ!」

……んふふ。

なんですかなんですかこの子達は。

そんなに褒めても何も出せませんよ?

後輩君から貰ったとっても美味しい高級なお茶しか出せませんよ?

もう。こんなに可愛い良い子達に褒められたら照れてしまうじゃないですか。

えへ。えへへへ。そうですかそうですか。

純粋な貴方達から見たら私はそんなに素敵ですか。

あまりに恋人が出来ないので自信を無くしそうでしたがそんな事はなかったんですね!

「……何をニヤニヤしているんだい。気持ち悪いねえ」

ぐはぁ。

「……レインリヒ様……お、おかえりなさい……」

「ただいま。はぁぁ……疲れたよ」

「お疲れ様です……。どこまで行っていたんですか?」

「ちょっと山二つ超えた先の火山地帯さ。そこに住むナマズの髭が欲しくてね」

山二つ超えた先の火山地帯に棲まうナマズ……。

ワァ……デスマグマナマズですね。

超危険地帯じゃないですか……。

毒性のガスが充満するので専用の装備が必要なのに思わず脱ぎたくなってしまう程熱いうえに、装備を脱いだ瞬間に倒れるような環境で冒険者ですらいくら報酬が高くとも避ける場所ですよ……。

別名、火龍の溶岩風呂。

たまに火龍の長が入浴に来るという私なら絶対に行きたくない場所です。

でも、デスマグマナマズの髭は欲しいです……。

お土産……期待してもいいですか?

「……なんだいその顔は。デスマグマナマズの髭は数が少ないからあげないよ」

「えええ……お土産無しですか? お留守番してたのに? 色々レインリヒ様がいなかったから大変だったのにですかぁ?」

「……はあ。火夜宝を拾ったからそれをやるよ」

「火夜宝!! ひゃっほう!」

火龍の溶岩風呂地帯にある消えぬ火が月の光を浴びて結晶化した超レアアイテムじゃないですか!

わあ! わああああ! 何を作りましょう!

削った粉を混ぜてお薬を作れば軽く病原菌は瞬殺ですからね!

いや……でもどうせならアクセサリーを作って、永続効果のある代物を作った方が良いかも……。

販売用ではなく、私用で……ちょっと高級品みたいな感じで!

「……ところで、そいつらは誰だい?」

「「ひぃ!」」

おっと、トリップしかけてしまいました。

いけませんね。ついついレアアイテムを貰えると分かると興奮してしまいます。

後輩君が持ってきてくれた地龍の素材の時もそうでした。

「この子達は後輩君の生徒達ですよ。あーあー。レインリヒ様のお顔が怖いから怯えているじゃないですか。大丈夫ですよ。この方はレインリヒ様。アインズヘイルの錬金術師ギルドのギルド長であり、貴方達の先生の先生です」

「せんせの……せんせなんだよぉ?」

「せんせーのお師匠なんだよー?」

「……なんだい。別に大したことは教えてないよ。基礎の錬金を教えたくらいさ」

おお、純粋な尊敬の瞳に珍しく困っています。

レインリヒ様は子供のお相手が苦手っと……メモメモ。

いつか何かあった際に役に立つ情報は覚えておきませんとね!

殺されかけちゃうこともあるかもしれませんからね!

「……私は部屋で実験をしてるから、入るんじゃないよ」

「はーい。お二人も近づいてはいけませんよ? 本当に危ないですからね」

レインリヒ様の実験は……うん。

アレは見てはいけないものです。

というか、デスマグマナマズの髭を使う実験となると、耐性が無ければ部屋に入るだけで死んじゃいますよ?

恐らく、後輩君でも無理でしょう。

「あぅぁぅ……行っちゃったぁ……」

「せんせーのせんせーにせんせーのお話をもっと聞かせて欲しかったよー……」

「おやあー? そんなに後輩君が気になるのですか? もしかして、もしかして……?」

まさかまさかですか?

いやーでも……あはっ。後輩君ならまさかでもないのでしょうか?

「ち、違うよ? リートさんが思っているような事じゃないよー!?」

「ええー? 私が何を思っているかわかるんですかー?」

「ただ、せんせのお話を聞きたかっただけだよぉ? クラスの皆にお土産話になると思っただけだよぉ!?」

んふふふ。

冗談のつもりだったのですが、お顔が真っ赤ですよ?

私も女の子。色恋沙汰のお話は大好きです。

というか……クラスの皆さんへのお土産話になるのですね。

え? もしかしてもしかする感じですか?

いやいや、流石にこんな少女たちに手は……出してませんよね?

ええ勿論。私は信じていますよ。

後輩君は自制心が効く倫理観に溢れた男の子だと。

あんなに愛情ムラムラなシロちゃんに手を出していないのですし、勿論信じていますとも。

「……そういうリートさんも、せんせーの事が気になるんじゃないのー?」

「そうだよぉー! せんせに種族を知られたくないみたいだったよぉー!」

「え? そうですね……嫌いではないですよ」

「「ずるいよー!」ぉー!」

「ええー? だって、本当に嫌いではないですもの。好きかどうかと聞かれたら勿論好きですよ? でもそれは、貴方達と同じくらいかどうかはわからないというお話です」

「ずるいよずるいよー!」

「大人は! そうやっていつもはぐらかすんだよぉー!」

そうなんです。

大人はずるいんですよ。

それに、秘密が多い程女は魅惑的なのですよ。

「うるっさいよあんた達! 静かにしないなら出ていきな!」

「「ひゃー!!」」

おっと、騒ぎ過ぎましたかね。

うーん。ギルドにはレインリヒ様がいらっしゃることですし、もう帰ってもいいですよね?

……せっかくですし、お二人を連れて後輩君のお家へお邪魔しに行きましょうか。

生徒さん達にかこつけて、美味しいご飯を頂きに行くことにしましょうかね。

目の前の事以上に楽しい光景が見られる気がしますしね。

うふふ。レインリヒ様に怯えている姿も可愛いですねえ。