軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12-20 愛する人の為に 英雄の全力を

よし、準備完了だ。

先ほど公爵が乗ったと思われる風竜も飛んで行ったし、今公爵はあの城に戻っているだろう。

「……先ほども説明した通り、命までは取りません。ですが……次、俺の敵になった場合は容赦しないけどな」

威圧するように、感情をたっぷりと込めて脅しを入れる。

「ガルルルルルッ!」

それに合わせて獣形態のソルテが唸り声をあげると、皆揃ってコクコクと頷いてくれていた。

彼らは……あの城で働いていた者たちだ。

『 隔離された小世界(プライベートラウンジ) 』と、マイク機能付き魔道具を用いて従業員に呼びかけ、隼人は既にこちらの味方になっており、死にたくなければ目の前のゲートに飛び込めと伝えたのだ。

恐らくは全員入ったようだが、もしまだいたらそれは死にたがりである。

死にたがりにまで気をかけられるほど、俺は寛容じゃあない。

ああ、勿論反抗しそうな輩はきっちりと縛ってあるし、アイナ、ソルテ、レンゲ、カサンドラ、レティ、ミィ、クリス、美香ちゃん、美沙ちゃん、真が周囲を固めているので何もできやしない。

恐らく今俺がいる場所は世界で一番安全な場所だと思う。

一応、普通に働いている人もいたであろうし、無用な殺生は望むものではないので、選別している暇もなかったから全員を助けたのである。

まあ、一番重要な輩は確保したので問題はないだろう。

「ほら。さっさとしろよ」

「は、はぃぃぃ! か、解除したらすぐ殺したり……」

「しないから早くしろって……」

「はいぃぃ!! 『 契約解除(コントラクトリリース) 』」

「……無事に出来たようですね」

「よし。良くやった」

これで隼人の奴隷化は解除した。

正当性を証明するために残しても良かったのだが、副作用が起きても困るからな。

「ん。ただいま」

「シロ!? どこ行ってたんだよ」

「野暮用」

「や、野暮用?」

「はあ……はあ……シ、シロさああ~ん……早すぎ……ああ! 脇腹痛い! 息が、ぐるじい……」

「案内人さんも一緒だったのか」

「はあああ……はいぃぃ……はあ……こんな、早さだけを求める走り方は久しぶりでしたよ……はああ……あ、見ないでください! 今の私汗だくで可愛くないんです!」

いや、今可愛さが必要なのだろうか?

ああ、自称乙女心という奴だろうか。

シロは……おお、汗一つかかずケロっとしている。流石だ。

ウェンディに近づいて何やら話すと、頭を撫でられ頬をむにむにされている。

「はあ……全くもう。世の中どうにも思い通りにいきませんね。だからこそここは楽しいのですけど……。せっかくの初仕事をびしっと決めて、『流石だ! 素敵だ! 惚れた!! 抱いてやる!!!』と、序列を上げる予定でしたのに!」

「……えっと、案内人さんも何かしてきたのか? あと、聞こえてるぞ」

「おっと聞こえてしまいましたか!」

恐らくいつも通りわざとだな。

「まあ、アレです。お館様のお悩みはとある筋肉系老騎士によって解決されたとだけお伝えしておきますね」

「それって……」

「詳細は秘密です。乙女は秘密が多い程魅力的なので!」

ミステリアス系を狙っているのなら、ある意味ではそうかもしれないが、妖艶さは足りないな……。

しかし……そうか。

筋肉系老騎士ねえ……恐らくは、あの人だろう。

ちゃんと、生きてたんだな。

まあ、でも二人も帰って来たし準備万端だな。

もし二人があの城にいたら困ったからな。

……解決したんなら必要はないんだが、俺の気持ち的にすっきりさせときたいので実行しよう。

「よし、それじゃあ隼人」

「はい。それでは……全力でいきます」

「おう! やったれ!」

隼人の全開の『 光の聖剣(エクスカリバー) 』により、城を木っ端みじんにするのだ!!

今後、もし俺らにちょっかいをかけてくる奴がいた際の脅しの意味も込めて豪快に。

それに、隼人の全力を見たかったというのもある。

あいつ……全力じゃあなかっただろうしな……。

あいつが全力だったなら、俺なんて速攻切り伏せられて終わってただろう。

やっぱり甘いよな。

でも、それもお前だもんな。

「……『光の聖剣』」

隼人が剣を頭上に掲げ、スキルを発動すると光が収束し集まってくる。

以前見たよりも輝きが強く、そして大きい。

それらは剣を包み込み、やがて刀身全てが光に飲み込まれて光そのものになったようなまばゆい光を放っていた。

「へえええ……凄いもんだね。……あ」

そんな光を皆で眺めていたのだが、カサンドラがいきなり機敏に動き、俺の腕を取ってきた。

その動きに、集中していた隼人も視線を向ける。

「っ……まずいね。盟友! 急いで魔力球を! 凄く大きいの!」

「へ?」

「いいから早く!」

「わ、わかった」

言われた通りに魔力球を作り、カサンドラへと渡す。

こんな時に食べるのか? と思ったのだが、カサンドラは腰を弓なりに反らせて両腕で魔力球を全力投球。

サッカーのスローインのようだが、速度と距離が半端じゃない。

投げられた魔力球はあっという間に小さくなっていき、城に落ちて――。

「ひゃっほおおおおう! いただきまああああああす!!!!」

「…………」

ドゴーン! ガラガラガラガラ!

と、大きな音を立てて城が倒壊していく。

真下から現れた地龍、レアガイアによって。

しかもわざわざ龍形態だよ。

でかいから城のあった部分にまるっとレアガイアが鎮座しているよ。

幸いな事に、城下町の方までは被害はないようだ。

「はぁぁぁぁ美味しい! 大きい! 口に入れた瞬間蕩けるような濃厚な魔力! 長距離移動でお腹空いてたから尚更だ! ああ……お母さん内側から蕩けちゃうよう……。ん? 何? 眩しいんだけど!? あ! カサンドラちゃんとご飯の子がいたー! 酷いよ! せっかくアインズヘイルまで来たのにご飯の子がいないと思ったら、カサンドラちゃんが独り占めしていたんだね! 馬鹿! 阿呆! 食いしん坊!」

「……母様」

「レアガイア……」

「ねえねえもっとご飯頂戴! 私ねえアインズヘイルっていう君の街を守るのに協力したんだよ! なんか話し合いでもういいんだって! それでね! コレンちゃんがご褒美を君から貰えるって言ってたんだ! っていう事でご褒美くださいな!」

え、コレンも来てるのかよ。

というか、勝手に決めるなよ。

アインズヘイルを守るために協力してくれたのなら、気持ち的にはあげてもいいのだが……コレンは後でお仕置きだ。

「あの、イツキさんあれは……」

「ああ、悪い。アレも知り合いだ……」

「そうなのですね……。本当、凄いというか……地龍って懐くんですね……。 あ、それで、その……この光の聖剣はどうしましょう……」

「あー……解除できない感じ?」

「はい……」

「え……ど、どうするんスか?」

まじか……。

それ凄くエネルギー詰まってるよね?

維持しているのも大変そうだし……どうしましょうって……どうしましょう。

「……仕方ない」

「流石兄貴! もう何か考えるなんて頭の回転が速い!」

「おう。賛成か?」

「そりゃあもう! 兄貴が考えた策なら聞くまでもなく賛成ッスよ! ……あれ? なんかこのやり取りつい最近したような……」

「そうか。じゃあ……頑張ってくれ」

ぽんっと真の肩を叩く。

流石は真。 漢(おとこ) だねえ。

「……へ? いやいやいや! 流石に無理ッスよ! ダメージ抑えられても塵も残らなそうじゃないッスか!」

「駄目なのか?」

「一応 難攻不落(ロイヤルガード) はスキルッスから、MPは減るんスよ……」

「そうか……」

じゃあもう本格的にどうしよう……空に向かって打つか?

この世界なら飛行機とか飛んでいないし、一番無難だよな。

でもなあああ……なんか嫌な予感がするんだよなあ。

ヤーシスが人をアインズヘイルのトラブルメーカーとか言うからさあ……。

空に打ったら上空を飛んでた龍だのなんだのにぶつかって……とか起りそうなんだよなあ。

「ああ、いいよいいよ。母様に向けて撃っちゃって」

「え?」「え?」「ええ!? カサンドラちゃん!?」

「大丈夫。私には無理だけど、母様ならそれくらいじゃ死なないから」

「いやいやいや! 確かに死なないけどさ! それ絶対凄く痛い奴だよね! 嫌だよ! 痛いのは嫌! お母さん避けちゃうからね!」

その巨体で避けられるのか……?

いやでも、実際避けられたら被害が……。

「……耐えてくれたら魔力球を満足するまで――」

「よっしゃああああばっちこおおおおい!」

痛みより、食い意地が勝るんだな……。

右手でカモンカモンとこれからとんでもない痛みが訪れるというのに自ら煽る程に……。

いいよいいよ。ご褒美も合わせて沢山食わせちゃる。

「えっと……」

「いいみたいだ」

一応周りへの被害を考えて、 不可視の牢獄(インビジブルジェイル) を使って隼人を上空へと送って打ち下ろしてもらえるようにする。

「わ、わかりました。行きますよ!」

「おらああああ! 魔・力・球ーーーーーーー! ああああああぁぁぁぁ…………」

光に飲まれていくレアガイア……。

断末魔のような声が響き、やがて声が小さくなるとほぼ同時に光の聖剣が残滓を残して光を失い、ただの剣へと戻る。

下手をすると地殻を打ち抜きそうな勢いだったが、レアガイアが受けてくれたおかげで大穴を開けずに済んだようだ。

そして……。

「はあ……はあ……耐えたぞおおおお!!」

ぐっと右腕を掲げるレアガイア。

自慢の鱗も多少剥がれ落ちており、黒く焦げていて傷だらけとなっていた。

「……うわあ」

「……黒焦げ地龍。絶対苦い」

「……私達、地龍の鱗に傷をつけるのも苦労したのにね」

「ああ……流石は英雄。凄まじいな」

「そんな英雄を思い切りビンタしたなんて、いい経験したっすね!」

いやあ……本当、流石と言わざるを得ない。

俺の親友は、やっぱ強いなあ……。

そしてそれを耐えたレアガイアも、やっぱり恐ろしい程に強いんだな……。

「や、約束通り……魔力球……を……」

「あー……悪いんだけど、今は魔力切れだ。アインズヘイルに帰ったら、たんまりご馳走するよ」

「へへ……約束だぞう……がくっ」

「……私は母様を連れて先に戻るよ。流石に……休ませてあげる事にするよ」

「ああ。頼む。ちゃんと魔力を回復させて、魔力回復ポーションも中毒にならない程度に作っておくからな」

「うん。私の分もよろしくね。あと、ロッカスとロックズも来てると思うから」

「……了解。頑張るよ」

これは、帰った後も一苦労だな……。

はあ……でも、とりあえず。

「皆、お疲れさん。帰ろうぜ。俺たちの街へ……とと……」

あれ? 気が抜けたのか腰を降ろしちまったな。

でもまあ、一件落着……かね。

はあ、疲れたぁぁ……眠……。

「ご主人様……」

「……ああ、悪い。少し、寝る……」

「はい……。ゆっくりお休みください……」

ああ……そうするよ。

帰ったら、また一緒に……ゆっくり……。