軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2-16 商業都市アインズヘイル 決着・中

前回のあらすじ。

白いドレスのウェンディは物凄く美しかった。

シロと三人で幸せになろうと誓った。

「ど、どどどういうことだヤーシス!」

そんな空気をぶち壊す男が一人。

いたのを完全に忘れていた。

それもウェンディの美しさが悪い。

「どういうとは? お客様は既に代金を支払い勝負は決着済みでございますが?」

「何ィ!? こいつが、こんな奴が8000万ノールを用意したとでも言うのか?」

この男にこんな奴扱いされるのは誠に遺憾であるが今はヤーシスに任せよう。

そんなことよりウェンディを見ていた方が楽しいし、幸せだ。

頭の天辺からつま先まで丹念に吟味するとしよう。

「お言葉ですがお客様は優秀な錬金術師様ですよ? 貴方のところに移った元錬金術師ギルドの方々より遥かに優秀なお方です。そんなお方が本気になれば8000万ノールなど容易いことでしょう」

「だがこいつは外に出ていない! 外で金を得ずどうやって……。そうか。レインリヒだな! レインリヒが金を出したに違いない! これはボクとこいつの勝負のはずだ! それは卑怯だろう!」

「っは! 私は正式に取引をしただけさ? そんなことするわけないだろう。ここに目録と実際の商品があるから確かめたいなら確かめさせてやるよ!」

そういってレインリヒが取り出したのは一冊の紙束と魔法の袋。

そこには俺から何を買い取ったのかを事細かく書かれた内容と、実際の商品が入っているようだ。

「それでは拝見しましょうか?」

「ああいいだろう。不正があればこの勝負は無効だからな!」

「ああ構わないとも」

え。勝手に決めないでよ。

そもそもレインリヒに貰ったとしても不正じゃないよね?

そんな取り決めなかったよね?

レインリヒは自信ありげに答えるがこの男は粗探しをするに違いない。

少しするとヤーシスがニコリと笑う。

「これは、完璧ですね。見事といってもいい。『銘』も打ってありますし、どれも適正な値段で取引されています」

「馬鹿な! これでは得などないではないか!」

「ええ。適正な 販売価格 です」

え、レインリヒ様?

得はないって言っていたの本当なのですか?

嘘だ! って言ったら嘘だよって返したじゃないですか。

「その分いいものは貰ったからね」

レインリヒの胸元を見ると俺が作った(記憶無し)針葉樹のブローチがきらりと光っていた。

ぶわっと涙が溢れそうになる。

おおおお……俺は何て愚かなんだ……。

レインリヒが俺の為にしてくれていたのに疑ってかかるなんて……。

俺は畜生だ。いや畜生以下の虫だ。大嫌いな虫と同等の生物だ……。

「それでは4000万ノールは正当な物でございますね」

「だが残りの半分は! 残りの4000万ノールはどうしたんだ!」

「それは私との取引でお支払いしました。間違いはありませんよ」

「なんだと!? ヤーシス貴様! ……なるほど貴様等ボクを嵌めたんだな! 二人で共謀してボクを陥れたんだろう。そんなことしてただで済むと思っているのか!!」

「共謀とは? 私とお客様が勝負とは別のところで商談を交わし、お支払いしたお金でこの勝負を終えただけでございます。それに全く新しい物ですから値段も相応だと思われますが?」

「相応だと? 4000万ノールで一体何を買ったんだ!」

「お見せしても?」

「ああ構わない。好きにしてくれ」

ヤーシスは笑顔で頷くと懐から一枚の丸まった紙を取り出し、ダーダリルに見せる。

「こ、これは国王の捺印。どうしてこんなものが!」

「お客様と取引したものの認可をいただき、国が認めた商品です。これが何よりの証拠となるかと。そしてこちらが、私とお客様の契約書です」

「馬鹿な……。専売特権だと。自らの利を捨ててまでこんなはした金で手を打ったのか?」

「ええ。お客様と私は専属の取引相手です。これから稼がせていただく予定ですので」

「そんな馬鹿な。専売などせず自分で適正価格を決めていればこの何倍も儲けが出るのに」

「それを分かって取引なさっているのです。お客様は不正どころか自分が大きな損をする取引をなさいました」

即金が欲しかったからな。

それにしても、急いで王都に向かった理由はこれか。

そうだよな。別に勝負のあとにゆっくり認可を貰っても遅くはないはずだ。

ここで完膚なきまでに納得させるのが目的だったのか。

こいつら俺の為にどれだけ……。

もうヤーシスにもレインリヒにも足を向けて寝れないじゃないか……。

「ご納得いただけましたでしょうか?」

「……めん」

「なんでしょう? まだ何かありますか?」

「認めん! 絶対に認めん! ウェンディはボクの物だ! お前はボクが手に入れるんだ!」

おい。何俺のウェンディを呼び捨てにした上で物扱いしてんだ。

そう思いながら、ウェンディを抱き寄せ腰に手を回して抱きしめる。

「残念ながら俺の女だ。諦めろ」

「ふざけるなああああああ! ボクを誰だと思っているんだ! ボクは偉いんだ! ウェンディそいつのところを離れてボクのところに来い!」

「お断りいたします。私はもう身も心もご主人様だけのものです。貴方にお仕えする気はございません」

「なんだと!? ボクよりもそいつの方がいいって言うのか!」

「はい。比べようもございません」

はっきりと拒絶を口にするウェンディ。

それを聞いてダーダリルは顔を真っ赤にし、怒り狂ったようにウェンディに近づくがアイナとソルテによってそれは阻まれた。

そういえばこの二人何もしゃべっていないな。

「クソ! クソクソクソ! どいつもこいつもボクを馬鹿にしやがって! もういい殺す! 貴様ら全員殺してやる!」

「はぁ……ダーダリル様お一人でですか? それにそんなことを言って、どうなるかおわかりなのでしょうな」

「馬鹿め! ボクが一人でこんなところに来るわけがないだろう! おい!!」

ダーダリルが入り口に向かって大きな声で呼びかける。

すると、錬金術師ギルドの入り口の壁が壊されて強面さん達が侵入してきた。

「馬鹿な……表には誰もいなかったぞ」

「そうね。つまり嵌められたんでしょ?」

そう。二人は外でウェンディと待機していたのだ。

だからこんな大勢が錬金術師ギルドになだれ込むなんて想定していなかった。

「警戒されていると思ったからな、最初から時間をずらすように言っておいたんだ! ボクはお前らと違って頭がいいからな! お前達よりずっと先を読む男なんだよ!」

「あーあー……派手に壁を破壊しちまって……あんたらどうなるかわかってるんだろうね!」

「関係あるか! お前は、お前達は全員死ぬ! レインリヒ以外の女は犯してから殺す! ここに居る全員でだ! 生きていることを後悔させて、女であることを後悔させて無残に殺してやる! ウェンディ貴様はそいつの前で犯してから殺す! 穴という穴を犯してから殺してやる! そいつの生首の前でな!!」

この野郎……。

「いいなお前達! ウェンディ以外は殺してもいいが生かして捕まえれば好きにしていいぞ。だが男は殺せ、そいつは特に念入りにな。首だけ残っていればそれでいい」

「へっへっへ。たまんねえな。あのチビ猫もいるじゃねえか。腹の借りを返せるぜ」

あいつはこの前シロに殴られて悶絶していた奴か。

どうやらあの時の悪漢連中もいるようだが、シロの強さを忘れたのだろうか。

いや数の暴力で押し切れるとみたか。

確かに数は力だ。

どんなに強くてもこの人数では相手にならないだろう。

「シロ。無理はしなくていいぞ。最悪ウェンディを連れて逃げろ」

「大丈夫。余裕。主もウェンディも守る」

余裕て……。流石にこの人数は無理だろう。

「シロ。私はともかくご主人様を……」

「駄目」

「シロ!」

「主が言った。ウェンディとシロと三人で幸せになるって。だからシロは主の幸せを守る。それに犬もアイナもいる」

「犬じゃない! 狼だって言ってるでしょ!」

「主君。安心してくれ。主君は私が命を賭けて守るから」

「ん。シロだけでも余裕」

「私一人でも余裕だっての! ……ついでだから守ってあげるわよ」

こんな状況でなんとも頼りになる連中だ。

だがいざとなれば俺が盾となろう。

俺は弱い。弱いが、身代わりくらいならなれる。

らしくない台詞だが俺はお前達の誰にも死んでほしくないんだ。

「おーおー泣かせるじゃないか。どいてなひよっこ共」

そういうとレインリヒが俺らの前に立つ。

「若い連中が命を賭けるだのなんだの、何を熱くなってるんだろうね」

「ええ全くです。そういうのは年長者にお任せするべきでしょう」

「言うじゃないかヤーシス。その二人はこの状況を見越して連れてきたんだろうに」

「ええ。どうせこうなると思っておりましたので戦力をと。ですがレインリヒ様がおられるのをすっかり忘れておりました」

「っは! 大方私が動かなかった場合に備えてだろう。いいだろうお前に乗せられてやる。だが、私にただで働かせようってのかい?」

「『超常のレインリヒ』様が動くとなると……支払いは分割で?」

「決まってるだろう。一括だよ」

え? え?

『超常のレインリヒ』ってなに?

二つ名? 二つ名的ななにか?

レインリヒ様そんな風に呼ばれてるの?

「さて、久々の運動だ。あんた達、遺言は済ませたんだろうね。墓には入れると思わない方がいいよ」

レインリヒがホルダーから試験管をいくつか取り出す。

あの中身が何なのか分からないから恐ろしい。

鑑定結果も、俺の鑑定レベルが低いからか

『危険物 DANGER DANGER DANGER』

としかうつらなかった。

怖いよ! 何が入ってるの!

それ絶対この前俺が飲んだ薬よりやばい奴だよ! あれよりやばいってどんだけだよ!

「この場所で一番怒っているのは私だよ。大事なギルドに大穴空けやがって……。ただで済ませる気はないからね」

強面たちもレインリヒの圧力に押されてか動けないで居る。

俺、こっち側でよかったと心底思うよ。

シロ。こっちおいで。ウェンディも。

怖いよなー。うん。あの数を余裕と言ったシロが怯えているんだ。

怖くて当然である。

「何をやっている。相手はたったの7人だ。こっちは何人居ると思ってるんだ! さっさと奴らをぶっ殺せ!」

ダーダリルが強面たちを怒鳴りつけて襲い掛からせようとしたその時だった。

突然入り口付近にいた強面たちが道を空けて一人の男が入ってきた。

「そこまでだ……。何をやってやがる」

片目に眼帯をつけ、顔に大きな切り傷のある男。

その男が今まさに始まろうとしていたレインリヒ様無双を止めたのだった。