軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2-12 商業都市アインズヘイル 仲間達と安らかな眠りを

道具屋からヤーシスのもとに戻ると、どうやら地下に錬金部屋があるらしく通された。

どうせならとヤーシスが目の前で作るところを見てみたいと言ってきたんだ。

もしかしたら覚えて自分の知り合いの錬金術師に……とも思ったが、ヤーシスが俺を信じたように俺も信じることにした。

「ほう……。見事なものですな」

目の前で完成させたバイブレータ(小)を見てヤーシスがそれを手に取り褒めてくれた。

ただ作ってる最中は猫耳少女と、ヤーシスの視線を感じてやりにくかった。

特に猫耳少女だ。女の子の前でバイブレータ(小)を作るなど、羞恥プレイである。

「とりあえず、10個完成……」

精も根も尽き果てて、急速に完成させたそれは上々の出来であった。

実際にマッサージに向けた用に大きめのものなども作り、全部に魔力も注ぐと流石にMPも限界が近い。当然『銘』も打ってある。

「お疲れさまです。こちらが50万ノールでございます。それではこちらは王都に持って行きますね。二日後に帰ってきますので、どうかお待ちください」

「わかった。ウェンディとこの子……えっと名前は?」

「シロ」

「シロか。いい名前だな。信頼できそうだ」

白い毛並みのシロか。

某国民的アニメの忠犬を思い出す。

この子もわたあめとかできるのだろうか?

猫耳少女だが。

「それで二人はまだ預かっていてもらってもいいか?」

「ええ。正式な引渡しは勝負後といたしましょう。代金は既に戴きましたが、お互い準備もございますでしょうしね」

「そうしてくれると助かる」

いきなり二人分の生活費を、となると正直少し困る。

もう少し稼いでおきたいところだな。

「それでは私が戻ってきた時に備えてこれを沢山作って置いてください。制限はかけませんので、いくらでも買い取らせていただきますよ」

「材料が無くなる程度には作っとくよ。あ、魔力を注ぐなら1000ノールプラスな」

「商売上手でございますね。そこはサービスでは?」

「4000万ノール分が終わったらサービスって感じでどうだ?」

「ははは。いいでしょう。それまでは1000ノール多く支払いますので、魔力のほうもよろしくお願いします」

「了解。これからも長い付き合いを頼むぞ」

「こちらこそ。それでは先ほどの10個分の魔力代の1万ノールです。私は急ぎ王都に向かうとします。それまではこの道具の存在を表に出さないよう警戒してください」

さっきのはサービスでもよかったんだが、律儀な男だ。

だがそういった細かい所でも信用を勝ち取っているのかもしれない。

「わかってる。道具屋の親父にも秘密にしてくれって念を押しといたし、あと1つは錬金ギルドから出さないようにするよ」

アイナが持っているが、まあ戻ったら回収すれば問題ないだろう。

「それではよろしくお願いいたします。ああ、護衛は勝負の終わりの日まで続けさせますので、そのままご一緒していただいて構いません。ですが、一度は商館の方に戻していただきますのでよろしくお願いします」

「わかった。これからも頼むなシロ」

「あい」

「それでは入り口までご一緒しましょう。おい! 馬車の手配と留守番を頼む」

地下からの戻りがてらヤーシスが大きな声で安男に言う。

「馬車ですか?」

「そうだ。二日空ける。私のモノに手をつけると承知しないが、その間はお前の担当の奴隷を好きに紹介していいぞ。稼ぎ時だ。私がお前に見た輝きを見せてみろ」

「稼ぎ時……。へい! きっちりやってみせまさー!」

「そうだ。まず人を見ろ。タイプを分けろ。ルールは破るな。この3つだけ気をつければお前は出来る奴だ。焦らずじっくりやってみろ」

「わっかりやした! 旦那様の威信にかけて頑張りやす!」

「よし! では参りましょうかお客様?」

「あ、ああ」

なんだろう、師弟の愛とでも言うのだろうか。

というかあの安男にヤーシスが輝きを見出したというのが一番の驚きだ。

もしかしたら有能な男なのだろうか?

駄目だ、俺はあいつの駄目な部分しか見ていないから想像ができない。

だが頑張れ安男! ヤーシスは本物だ。その本物が言うんだから間違いないだろう。

「駄目な奴はとことん駄目」

「こら、そういうこというんじゃありません」

猫耳少女は辛辣だった。

商館を出ると空は明らんでおり、もうそろそろ太陽がやる気をだし始めるだろう。

だが俺は錬金術師ギルドに帰り次第活動停止だ。寝る。

シロもうとうとしてるし、これは帰ったら寝る。即時寝る。

「それでは行ってまいります。帰り道にお気をつけてお帰りくださいませ」

「あいよー。シロがんばれ」

「あい。頑張る」

眠そうだが両の目をこすり、必死に眠らないように耐えている小さな猫耳少女に頼る俺は情けないだろうか。

否、世の中担当があるのだ。シロは戦闘が得意なようだからその担当をこなす。

俺は……だらだらまったり過ごす。

うん。自分で言ってて相当クズだなって思うわ。

でもしょうがないよね。俺弱っちいし。

ヤーシスを見送ると重い足取りのまま錬金術師ギルドに向かう。

途中、中央広場を通ったがまだ屋台は準備中だった。

一体彼らは何時寝ているのだろう。

一日何時間労働だ? 労働基準法とかないのか?

残業手当なんてないんだろうな……とか、自分でもよくわからないことを考えていた。

錬金術師ギルドに着くと受付のリートさんに理由を話し、どうにかシロと錬金室での就寝を許してもらった。

その代わりまた一つアクセサリーをプレゼントする約束になったのだが、今は眠さが優先だ。

もはや俺の部屋化している錬金室に入り、地面に布を引くとそこに寝転がる。

掛け布団も薄い布だが、ここは体に日差しが当たり暖かいので今の時期は問題ない。

特に朝から寝るなら全く問題ないだろう。

「ぐえ」

お腹のほうに衝撃が走る。

見るとシロが俺の上で丸くなっていた。

「シロー? シロはそっちに布しいて寝な」

「んー……っや。あーぅ」

ぐしぐしと顔を洗いながら大きな欠伸をするシロ。

その欠伸につられて俺も大きく欠伸をしてしまう。

まあいいか。温かいし、眠いし。

シロの上から掛け布をかけると俺も腕を枕にして目を瞑る。

今日はつかれた。錬金錬金錬金錬金……。

錬金スキルに感謝はしているが、もうここ最近ずっと錬金漬けの錬金日和だ。

異世界でスローライフどころか、異世界で錬金生活だよ。

まあいずれ全く錬金をしなくても暮らしていけるほどお小遣いスキルが有能になればいいな。

今はまだレベル2で10万ノールだが、そろそろレベル3になるだろう。

それでどの程度増えるのかは分からないが、ウェンディとシロの分の衣食住程度なら確保できるはずだ。

色々やることも考えることも多いが、今はただ眠い。

「おやすみ」

「zzZZZ」

シロからの返事は無い。

もう既に寝ているようだ。

そして俺もすぐに寝息を立ててぐっすりとまどろみに落ちていった。

目が覚めると目の前の光景を理解するのに時間がかかった。

目の前に突きつけられている槍の穂先。

起き上がることも出来ないまま槍先と、その所持者の顔を見る。

「……サイッテー」

ゴミを見るような目で見下しながら槍をつきつけているソルテさん。

ええー……奴隷の契約どうしたよ……。

こいつにだけかかってないんじゃねえの?

「えーと。一応理由を聞こう。どうした?」

「理由? 目の前の事が全てよ。あんたはそんな奴じゃないと思ってたのに。がっかりよ変態」

目の前……。

俺は視線を槍から周囲に向ける。

すると薄着が乱れたシロが俺の腕を枕にして顔を紅潮させて、横になっているのが目に入った。

はて、シロは俺の上で寝ていたはずなのだが何時の間に横に移動したんだろう。

そしてシロ。お前は俺の護衛のはずだ。今が好機だ。助けてくれ……。

「なに? あんたって幼児愛好者なの? ぺったんこでちっちゃいのが好きなの? 私も許容範囲とか言うんじゃないでしょうね!」

「いや待て。勘違いしている。っていうかお前の早とちりだ。シロはそういうのじゃない」

「んうー……。主うるさい……シロは昨夜主のために頑張ったからもう少し寝たい」

ほう。なんという勘違いを生む発言。

「へえ。夜に頑張らせたんだ。何を頑張らせたの? 私とアイナが必死に夜通し探し回ってる間に? この幼児愛好者の変態が!」

「俺は幼児愛好者じゃねえ!」

「じゃあこれはなによ! 乱れた服! 体を寄せて二人で眠っていたじゃない。それに主? なに? こんな小さい子に主従プレイでも強要させたの?」

「だーかーら勘違いだって言ってんだろ。それにこの子はお前と同じで俺の奴隷だ!」

「私までそのプレイに巻き込まないで!」

「ちげえよ! 本当に俺の奴隷なの。昨日買ったの! そんで俺の護衛役なの!」

あーもうめんどくさい。

っていうか俺もまだ寝たい。

それにアイナは何処に行ったんだ。

この狂犬を止められるのはお前しかいないだろうに。

「問答無用! 死んであんたの罪を数えなさい!」

だから奴隷契約は何処に行ったんだよ。

殺意に反応するんじゃないのか!

振り下ろされる槍。

ソルテに痛んだ様子がないので殺意はないのだろうが、恐怖は当然ある。

あの武器は人を殺せる道具なのだ。目の前で振り下ろされればそりゃ怖いだろう。

キーーン!!!!

「キャア」

だが、ソルテの槍は軌道が大きく逸らされ俺の顔の横へと吸い込まれていく。

ってあぶねえ! 刺さってるじゃん! 殺す気あるじゃん!

「誰? 主の敵は排除する」

いつの間にか目が覚めていたシロが、持っているのは大きめのナイフ。

そのナイフでソルテの槍を弾いてくれたらしい。

更にソルテに蹴りを入れて俺から距離を取らせ、俺を庇うように前に立った。

「あんた何者……。いい腕してるじゃない」

「主の矛。主に仇なす犬を排除する」

「犬じゃないわよ狼よ! 猫風情が大口叩くじゃない!」

「かかってこい。負け犬にしてやる」

ソルテも槍を構えなおし、シロも戦闘態勢を崩さない。

これから始まるのだろうか、二人の戦いが!!って

「いやいや。君達何しようとしてるの?」

ここは錬金室です。

狭いのでやめてください。危ないし。

「主を守る」

「あー分かってる。ありがとなシロ。だけどそいつは敵じゃないから大丈夫だぞ」

「でも槍向けてた。主を攻撃した」

「あー……。ほらまあ犬だしな」

「犬じゃないって言ってんでしょ! 本当にぶっ殺すわよ!」

「な? 本気じゃなかったんだから。まあ許してやってくれ」

「……主がそういうならわかった」

シロは戦闘態勢を解き、ナイフを腰のナイフポーチへと収めると、俺の横にごろんとまた横になる。

「ソルテ。アイナが来たら説明するからお前も槍を収めろ」

「うー……絶対に説明してもらうからね」

「わかったわかった。だからもう少し寝かせてくれ。俺はまだ眠い」

「んー主ー腕ー」

「はいはい」

腕枕が気に入ったのだろうか。腕を投げ出すとすぐさま頭をおいてベストポジションを探し出した。

俺は本来寝るときは横になる派なのだが、こういうのも悪くないなと思えた。

「……ねえ。あんた本当に」

「幼児愛好者じゃねえよ。いいから寝かせろ。さっきのことは忘れてやるから」

「……わかった。ねえ、反対側も腕伸ばしなさいよ」

「は? え、お前も寝るの?」

「悪い? 昨日はあんたを探し回ってたって言ったでしょ? だから一睡もしてないの! 私だって眠いのに、狭いんだからしょうがないじゃない!」

「いや悪くないけど……。なら帰って宿で寝れば……」

「いいじゃない。その子は良くて私は駄目なの?」

そういう問題か?

というか俺は両腕を広げて眠るのか。

とにかく今は言うことを聞こう。

言われたとおりに腕を伸ばすとソルテはもじもじしながら横になり、そっと腕の上に頭を置いた。

「……硬い」

「当たり前だ。嫌なら宿で寝ろ」

「嫌なんて言ってないでしょ。ほら狭いんだからもうちょっとそっち行ってよ」

「あのな、そんなことしたらシロが起きるだろうが」

「……仕方ないわね」

そういって体を寄せるソルテ。

感触は女の子のそれなのだがいかんせん圧倒的にボリュームが足りない。

俺が本当に幼児愛好者なら心の中が お祭り騒ぎ(カーニバル) だろうが、俺はドノーマルだ。

大きな胸も小さな胸も大きなお尻も小さな尻も好きなただのドノーマルだ。

ただ匂いは別だ。

女の子ってのはどうしてこんなに困る匂いをするんだろうな。

フェロモンって凄い。実際禁欲生活を続けざるをえない身としては拷問のようだ。

それでも性欲も睡眠欲も同じ三大欲求だ。今日は睡眠欲を優先しよう。

「んん……zzZZZ」

どうやらソルテも寝たらしい。

俺の腕を枕にしながらもぞもぞとベストポジションを探し、足を絡め合わせてくる。

シロもシロで体を丸めて尻尾がちょこちょこ動いている。

眠いんだがな。寝れるかな。

「主君……。これはどういうことだろうか……」

そんな中にアイナ登場。

君は本当にタイミングがいいね。

良すぎてどこかで監視してるんじゃないかね?

「あー……」

「私が必死に主君を探していたのに」

「すまなかった。話は後でしよう。アイナも休んでくれ」

くい気味に話を終わらせる。

もうね、眠いんだよ。頼むから今日は眠らせてくれ。

これでレインリヒまで来る様なら今日は宿を取ろう。

10万ノールだせばぐっすり寝る場所くらい確保できるだろう。

「主君……その、私は何処で寝ればいいのだ?」

両腕は埋まっている。

床に三人も横になればほぼ空間はない。

仕方ないとばかりにシロを俺の上に乗せる。

シロは嫌がっていたがこればかりは仕方がないだろう。

アイナを上に乗せるなどしたら俺の自制心がもたない。

あのたわわな双宝玉が俺の胸の上で潰れるかもしれない。

あの桃尻ピーチが俺の股間にオンザヘブンするかもしれない。

そうなったらたがなんてターボエンジンをつけてはずれてしまう。

付属品が二人いようが関係なくおっぱじめちまう自信がある。

黙示録のビーストが如く獣のようになってしまうだろう。

「私が主君の上でもいいのだが……いやでも主君を下に敷くなんて、背徳的すぎるだろうか」

そーいうこといわないの!

こっちがね、どれだけ我慢してると思ってるの?

ゆっくりとアイナが俺の横に来る。

「私には、その、腕枕はしていただけないんだろうか?」

上目遣いでそんなことを言われては断れるわけもない。

こうして俺は左腕にソルテ、右腕にアイナ。そして体の上にシロを乗せて就寝をする。

傍から見たら奴隷を侍らせる悪徳主人だろうな。

だが今日くらいはいいだろう。

嵐が過ぎた。問題解決。勝利の安息とでも言おうか。

願わくば俺が起きる前にレインリヒが訪ねてきませんように。