軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10-23 アインズヘイルで休息を 食堂に……

「ご主人ご主人。今日は自分達も一緒に王都に連れて行って貰ってもいいっすか?」

「構わないけど……王都に用事でもあるのか?」

「うん。まあそんなところね」

「すまないが頼めるだろうか?」

「それは構わないけど……ウェンディとシロもか?」

「はい。よろしくお願いします」

「ん」

アイナ達三人はクエストかな?

と思ったのだが、ウェンディとシロも行くとなると……誰かにお呼ばれでもしたのだろうか?

MPの消費は上がるが、たいした苦労でもないし構わないのだが……。

「ミゼラは行かないのか?」

「ええ、私はお仕事があるもの。師匠が働いているんだから、私が休むわけにはいかないでしょう?」

「相変わらず真面目だなあ……。好きな時に好きなように休んでもいいんだぞ?」

というか俺ならレインリヒが仕事をしていても休みたければ休むしね。

休みたいときに休めるって素晴らしいと思うの!

「冒険者ギルドからも依頼が増えているからね。必死に作らないと、間に合わないのよ。あ、だからって量を減らすようにとか言わないでよ? 皆に頼りにされるだなんて、とても嬉しいことなんだから」

「……はーい。了解」

どうやら先を読まれていたらしい。

おうおう。ミゼラが休めない程仕事を増やさせるんじゃないよと言おうと思ったのだが、流石だね読まれてたね。

「それじゃ、行ってくるかな」

「ええ。行ってらっしゃい」

と、王都に皆でやってきてその場で解散し、俺は学園へと向かったのだった。

香水作りはいたって順調。

方針が決まってからは既に多くの話し合いを経て数種類の基本となる香水を作り上げ、試行錯誤に時間をたっぷりと割いてより良いものをと皆熱心である。

「ううー……香水単体での香りは強くなくていいのに、だからこそ人の元の匂いで印象が変わっちゃうよー……」

「統一感が欲しいところだよねぇー……でも、人それぞれ匂いや石鹸の香りも違うから難しいよぉー……」

「騎士科のユー君にもリラックスしてほしかったので試してもらったのですが……鍛錬後の汗の匂いなどと混合してしまうと形容しがたい香りになってしまいました……」

と、現在は壁にぶつかっているようだが十分順調である。

さて、基本的に元の匂いというものがある以上、香水の効果が狙ったとおりにいかないという問題だ。

石鹸なんかなら一般的に多く使われる石鹸の匂いをもとにして考えれば問題は少ないだろう。

それこそ、石鹸を自分達で作ってそれに合わせる……なんてのもいいかもしれない。

……リートさんに許可を得てからになりそうだが……。

むしろ、提携するとかどうだろうか?

で、だ。

問題は汗や体臭、年を取ると加齢臭……なんて悪臭だろう。

香水は悪臭を消すために強めの匂いを……って事もあるのだが、生徒達が作るのはあくまでも強すぎず、受け入れやすい香りなのだ。

だが……そこは想定内。ここで先生の出番である。

「なら、この水を使ってみるか?」

「お水ー?」

「ああ。多分これでどうにかなると思うぞ」

「特別なお水なのぉー?」

「その通り。中に石が入ってるだろ? これは『聖石』を漬けた水なんだ」

聖石は浄化作用がある石である。

聖水程に浄化効果は強くはないが、聖石を漬けた水にも浄化効果はあるため、毒や悪臭などを消し去ることが出来るのだ。

ただし、濃度が高すぎると香水の香りまで消してしまうので調整は必要だ。

「せ、聖石って……特別な許可が無いと扱っちゃ駄目なんだよー?」

「ん? 教会の聖女様には許可を取ってあるから大丈夫だぞ」

前回のメイラに作った全自動浄化お風呂は私的利用だから許可は得られず、使ったことにした物をくれたわけだが、今回はテレサに事情を説明し、許可を取ってある。

だが、許可を得るにあたり教会用にも一種作って欲しいそうだ。

なんでも、香りがすっとしてすっきりする香水が欲しいらしい。

祭事などに用いるため……という名目なのだが、ちょうど騎士団がゾンビやスケルトンの討伐に行った際に匂いが気になる、と兵士達から陳情があったところだったそうだ。

教会のためになるからと聖石を譲ってもらう理由にもなりつつ、教会からも仕事が取れるようになるというまさしく一石二鳥の提案に俺は二つ返事で了解した。

「せ、聖女様とも交流があるなんて……せんせーは本当に何者なんだよー」

「だからただのしがない錬金術師だって」

「そんなわけないんだよー……。むうう……何か隠している気がするよぉー」

なんも隠してないっての。

……あー……一つだけ隠してるか。

地龍と良好な関係を結べているってのはあるけど、それは俺が偉いだの大物だのとは関係がないし、説明する訳にもいかないしな。

――リーンゴーン。

「おっと、チャイムが鳴ったな。それじゃあ、午前の授業は終わり。昼休憩なんだから、作業は後にしてしっかり休んでご飯を食べること。わかったな?」

「「「「はーい!」」」」

さーて、俺も飯にするかな。

今日はどうするか……教室で適当に魔法空間に入ってるものでも食べるかな?

「「せーんせ」ー!」

「がふっ!」

サイドアタックが決まり、脇腹に衝撃が走る。

そしてすぐさま4本の腕が絡みつき、がっしりと捕縛されてしまった。

オリゴールのフロントヘッドアタックと対を成すかのような突撃術に、まだ対処法が備わっていない。

「皆でせんせーを食堂に連れて行こうと思うんだよー」

「……食堂?」

食堂か……異世界の学食に興味はある。

あるにはあるんだが……。

「アイリス様が今日は面白いものが見れるって言ってたし、行こうよぉー」

うん。それがあるから行くのが怖いんだよ。

アイリスが言う面白いものだぞ?

どんなとんでもが待ち受けているんだって話だよ……。

「ほらほらー! 可愛い生徒達のお誘いなんだから、先生として受けるのは当然なんだよぉー」

「皆でご飯なんだよー!」

「おいおい押すなって、っていうかまず絡みつくな。ん? 皆で行くのか? 10人で座れる席なんてあるのか? おい、お前らもじりじりと近づいてくるなって! わかった行くから! 行くから全員で囲み始めるなって、転んだら危ないぞ!」

このまま教室から出ると、当然他のクラスもお昼を食べるために各々が行動しているわけで、廊下にも他科の生徒達がいる。

そんな生徒たちが一体なんだとこちらに視線を向けると、身長的に頭一つ飛び出ている俺に注目が集まり、周囲が皆美人な貴族の子達だとわかると形容しがたい視線を向けてくる。

……いや、俺もそっち側にいれば気持ちは痛い程にわかるのだが俺の顔も見てほしい。

どうだろう? おそらく俺の顔は困っているはずだ……。

これがイケメンならば、『モテすぎて困ってます』みたいに見えるだろうが、俺がすると迫真の困ってますにしか見えないだろう?

だからどうか呪詛を呟かないで欲しい……。

「ぁぁぁ……」

「せんせー。こんな美少女たちに囲まれてるのにテンションが低いのは良くないと思うよー」

「疲れたんだよ……。たとえ美少女でも二人に纏わりつかれて、背後からもゆっくりと押されたまま歩くのは疲れるんだよ……」

まだまだステータスが低いんだよ。

もし俺がチートで無双できるような強者であれば、たとえ二人に纏わりつかれ、周囲を囲まれようとも『HAHAHA-! お昼は肉をどれほど食べてやろうかアーハン?』なんて、余裕を持てるのかもしれないが、おあいにく様俺はまだまだ貧弱なんだよ。

冒険者にジャブを放つと謝られるくらいなんだからな。

「あーそれは私達が重いって言いたいのー? 女の子にそういうこと言うのは駄目なんだよー」

「ほらほら、皆がご飯を持ってきてくれるから、大人しく座って待ってるんだよぉー!」

「はいはい。ありがとさん」

10人まとめて座れるのかと心配していたのだが、食堂はかなり広く、科ごとに机が分かれており長椅子も用意されていて座りそこなう事は無いらしい。

しかし、やはりというか利用者が多く、食事を受け取る場所はなにやらセールでもしているのかというほど大盛況だ……何故か一か所だけ。

「なんだ? 人気のメニューでもあるのか?」

「んんー? 日毎にメニューは決まっているから、配膳場所によって違うとかはないはずだよー?」

「ふーん。じゃあ、特別可愛い子が配膳してるのかな?」

塊をよく見たら男ばかりだしな。

おそらく、俺の予想は当たっているだろう。

食堂のマドンナ……といったところだろうか。

「ああー、せんせも受け取りに行きたかったとかぁー?」

「今の気力じゃ無理だ……。早く受け取れる場所を選んじまうよ」

「はい、先生の分をお持ちしました」

「ああ。悪い、ありがとな」

「いえいえ。それにしても、あの行列凄いですね。でもまあ、あんな美人がいるのなら仕方ないのかなー……?」

「ほぉー。やっぱり美人だったのか」

見てみたい……気持ちはあるが、後ででもいいか。

混んでいるしお腹もすいたしな。

一先ずは腹ごしらえだ。

メニューはスープとパン。それに、肉料理とサラダと、果物が少しか……。

シンプルながらも若い学生が満足できるように、パンのおかわりは自由なようだ。

肉料理は煮込みかな?

大きすぎず小さすぎずカットされたお肉が見るからにしっかりと煮込まれているため、味はしっかりとしみ込んで触らずとも柔らかくなっていることから、よっぽど時間をかけて作られたものだとわかる。

「ここのお肉料理にはずれはないんだよー! とろけるような食感がたまらないんだよー!」

「ああ。うまそうだな。それじゃあ、早速頂こうぜ」

いただきます。と心の中でつぶやき、スプーンで切れるほどに柔らかい肉を掬い取って、スープと一緒に一口。

濃厚なシチューのような野菜や肉の旨みが溶けこんだスープに、柔らかい肉の触感がほろほろと解けていくように口の中で溶けていく。

月桂樹の葉が一緒に煮込まれていて肉の臭みはまったくなく、パンに合うような仕上がりだった……だが。

「んんー! 今日のは特別美味しいよー!」

「今までで一番美味しいかもだよー! ん? せんせ、どうしたのぉー?」

「まさか、口に合わなかったー?」

「ああ、いや。相当美味いよ。ただな……なんか食べ覚えがある味付けでな……」

こう……なんというか、日常でよく食べているというか、俺の味の好みを熟知されているというか……。

外食も好きなので外で食べる場合もあるのだが、そのお店のような美味さというよりは家でウェンディやミゼラが作ってくれる料理に似ている感じが……あー。

「うふふふ。流石はご主人様です」

「……なんでここにいるんだよ。ウェンディ」

目の前に立ち笑顔を浮かべていたのは、給仕服を着たウェンディだった。

以前シシリア様の前に立った時に着たメイド服とは違い、裾が長く紺色の衣装と白いエプロンがよくはえていらっしゃる。

さっきまで厨房にいたからか髪を上げているのもGOOD。

なんというか、お淑やかで有能な給仕の子といった印象だ。

だが、よく見なくても美人で立派なおっぱいを兼ねたウェンディなので、これはもうこの子の主は絶対に悪戯をしてしまうだろうと確信が持てる程であった。

そして俺は主なので、後でその恰好をしてもらい悪戯をしたい。

「アイリス様から、ご主人様の仕事ぶりを見に行かないか? とお誘いいただいたんです。ただ、給仕の手が足りないとの事で学園に入る名目として少しお手伝いをすることになってしまいまして……」

「あーそういうことか……でも、それなら朝に言ってくれれば良かったのに」

「それは申し訳ございません。でも……サプライズの方が愛を確かめられるだろうとアイリス様がおっしゃいまして……ご主人様は私の味をわかってくださいましたし……」

テレテレと頬を抑えて顔を赤くするウェンディさん。

よっぽど俺がウェンディの味に気づいたのが嬉しかったらしく、ちらちらとこちらを見ては頬を緩ませてしまっている。

「せ、せんせー! まさかこの人がー!?」

「ああ……俺の大切な恋人だよ」

「おおおー! 凄いよー! グラマーだよー! 超美人さんだよぉー!!」

驚愕に包まれる第二錬金科……だけでなく、食堂にいる一同か。

先ほどまでの行列は、おそらくウェンディが配膳をしていた列だったのだろう……。

塊が固まったままこちらを振り向き、ショックを受けた顔を向けているが……俺はそっちを見れない。

「初めまして生徒の皆様。私はご主人様の奴隷であり、こ、恋人でもあります。ウェンディと申します。以後お見知りおきをよろしくお願いします」

華やかさと慎ましさ、そして可愛らしさをも含んだ挨拶に感嘆と落胆の声が聞こえてくる。

おそらく前者は女生徒の、後者は男子生徒の声だろう。

こんな短期間で既にファンが出来ているとは……ウェンディ我が恋人ながら恐ろしい子っ……。

「可憐だよー……しかも、おっぱいがラズよりも大きいよぉー!」

「お、おっぱいの大きさはいいでしょー! でも、凄いのはウェンディさんの方がせんせーを凄い好きだっていうのが伝わってくることだよー!」

「先生、どうやってこんな美人を……!」

「ん。シロだって主好き」

「「いつの間にかもう一人増えてるよー!」ぉー!」

いつの間にか俺の真横にちょこんと座り、俺にパンを食べていいか目で訴えてきているので頷いてやるがシロがいる。

……いやまあ、いるとは思ったんだがな。

隠密性が高すぎて俺も隣に座られるまで気が付けなかった……。

「ま、まさかこの子もー!?」

「……ああ。俺の大切な人だよ」

「だ、駄目だよー! この子は犯罪だよぉー!」

「可愛いのはわかるけど、年齢的に駄目なんだよー!」

「いや、手を出してるわけないだろ……」

「ん。手を出してくれない……。シロはいつでもウェルカムなのに……」

もぐもぐとパンを食べるシロに、スープと肉をすくってあーんとすると嬉しそうに咥えて肉を咀嚼するシロ。

勿論シロの事は大好きだし、問題のない年齢になってシロが求めてくるのなら……な。

「ほあー……可愛いよー……」

「これはお持ち帰りしたくなるよぉー……」

シロの食べる姿は教会の時といい王都の女性に大人気だな。

まあ、これだけ美味しそうに癒しオーラを放って食べるのだから当然と言えるだろう。

「ん。ちなみに、三人も来てる」

「……まじ?」

「まじ」

「はい。アイナさん達三人は冒険科の臨時講師としておいでになられてますよ」

そうか……三人も来てるのか……。

「ご主人ー!」

「こらレンゲ……生徒達もいるのだからあまりはしゃぐんじゃない」

「だってご主人が見えたんすよー? ねえソルテ……ああ! いつの間にかソルテがもうご主人のそばに!」

「主様。隣座ってもいい?」

「いい……のか? 長椅子は余ってはいるけど……」

生徒達に確認すると、皆どうぞどうぞと席を空けてくれている。

すると、ウェンディを含めて全員が俺の周囲に座りはじめ、生徒達も心なしかこちらの近くに座り食事を開始し始めた。

第二錬金科……もとい食堂はとても静かで、まるでこちらの会話に耳を傾けているようであった。

なるほど……アイリスが言っていた面白いものっていうのは、針のむしろ状態の俺の事か。

生徒達の視線が興味を隠そうともせず、その通りだと物語っているようであった。