軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10-17 アインズヘイルで休息を 魔力球のお礼

どうやら俺の目はおかしくなってしまったようだ。

エリオダルトの部屋に入り、エリオダルトと挨拶は交わしたものの姿が見えない。

「マイフレェェェエエエンド! その辺りに座ってちょっと待っていて欲しいのデェエエエス! 今このくだらない仕事をちゃっちゃと終わらせマァァァス!」

「お……おう……」

その辺りって、どの辺りだよ。

なんで少し前に綺麗に掃除したはずなのに、こんなにも失敗作と思われる物がまた山のようになっているんだよ……。

まあでも、なんとか避けて座っておくか……。

「……うきゅぅぅ」

「なっ! チェス!?」

俺が腰を下ろしたすぐ横に小さな山があると思ったらそこにチェスが潰れていた。

地面に横たわり顔だけをだしていて、その上には失敗作の小山が出来上がっている。

「はぁ……はっ! た、助かりました……」

「大丈夫か?」

「おお……お水をいただけますでしょうか……。片づけをしていたら、頭の上に大量に降り注いできまして動けなかったのです……。やはり寝不足で片付けはいけませんね……」

いやそういう問題じゃなく、こんな山になるまで放っておいた……むしろ、作ったらポイするエリオダルトが全部悪い。

「エリオダルト……さすがに弟子に全部任せるのは駄目だろう……」

「ああ、いえ、この小山は私のでして……。最近師匠が錬金を本格的に教えてくれるようなったので楽しくて仕方がなく、気づいたらこうなっていました……」

「……似た者師弟だったのか」

「お恥ずかしい限りです……」

手を前にしてぺこぺこと頭を下げるチェス。

一先ずこの山を処理しないことにはどうにもならないだろうとチェスに聞きながら片づけを開始する。

まあ、俺がやれば魔法空間に一度ぶち込んでその後チェスの指示通りに分別するだけなので簡単なんだが……いかんせん今日も量が多い。

「Oh……マイフレンド? どうして片付けなんてしているのデェェスか?」

「それはね、あまりに片付いてなさ過ぎるからだよ……」

本当は 魔力球(マジカルボール) のお礼をしに来たんだが、もうこの片付けがお礼でいいだろうか……。

いやでも、かなりお世話になったしな……それこそ、アレがなければ俺も皆も死んでたかもしれないし……。

砂漠もあれのおかげで快適に過ごせたことを考えれば、この程度ではお礼にもならんな。

「ふむ……。それで、マイフレンドは何しに来たのデェェスカ?」

「魔力球のお礼をしに来たんだよ。凄い助かったからな」

「Oh、そんなの別にいらないデェェス! マイフレンドの役に立ったのなら、私も嬉しいのデェェェス!」

「いやいや、貰いっぱなしってのも嫌だからさ。何かないか? 研究の手伝いでも、欲しい物でもなんでもいいから返させてくれよ」

まあ俺が買えるものならエリオダルトでも買える物だろうし、出来れば何か困っていることなんかがあればそれを俺がどうにかする形が理想なんだけどな。

「ううううむ……何かあったデェェェスかねぇ……」

手を組み、思案モードに入ってしまうエリオダルト。

ぶつぶつと何か呟き始めたので、チェスの方を確認するとお手上げですねとジェスチャーをして教えてくれたので何か思いつくまで待つことにする。

「そういえば、ロウカクに行かれたのですよね?」

「ああ。そうだよ」

「あの、図々しいのですがもしお持ちであれば宝石の原石などをお譲りいただけませんか? 原石から鉱石を取り出す練習をしたいのです」

「あーいいよいいよ。ミゼラ用にいくつかあれば大丈夫だからさ。あの時はチェスも徹夜で頑張ってくれたみたいだし、今も頑張ってるみたいだからお土産ってことで」

「わぁ! ありがとうございます! そういえば、今日はミゼラはいないのですね……」

一目でわかるはずなのに俺の後ろや周囲を見渡すチェス。

ちょろちょろとして、長い耳が揺れておりほっこりするような可愛いさだ。

そしていないのが再度わかると長い耳が垂れて残念そうにしているのがまた可愛い。

「ああ。誘ったんだけど、今日はポーションの発注が多いみたいでな。まだ時間がかかりそうだから、チェスによろしくって、残念そうにしていたぞ」

「おお……ミゼラはもう働いているのですもんね。頑張ってるなあ……。チェスも頑張らないと!」

両手で拳を握り、ふんすと鼻息を荒く吐いて気合十分なチェス。

……その気合を残った掃除で使い切らないことを願うばかりだ。

「しかし、エリオダルトはまだ唸ってるな」

「そうですねえ……これはまだ時間がかかりそうですね。あ、じゃあ待っている間にお願いしたいことがあるんですけど……」

「んん?」

「その……出来ればポーションを作っていただけないかと……」

「なんだ? 怪我してたのか? ポーションなら持ってるけど」

「あ、いえいえそうではなく! その……ポーションの成功率が上がらないんですよ……。良ければ参考にさせていただきたいなと……」

「参考?」

「はいぃ……。師匠はポーション系は苦手でして……や、勿論作れはしますよ? しますけど、最近は 既知の魔法陣(エクスペリエンスサークル) で作るらしく、コツとか聞いてもわからないデェェェス! って言うんです……」

「あー……」

言いそう。

特にエリオダルトは感覚派なところが強そうだもんな……。

やってみたら、できた! みたいな感じ。

「流石にコツを聞くのは申し訳ないので、目で見て盗みますのでお願いできないでしょうか?」

「俺は構わないけど、エリオダルトの弟子なんだろ? 他の人が教えるのはいいのかな?」

「それは大丈夫です。師匠に『それじゃわかりません!』って言ったら、『マイフレンドの方が上手なはずデェェエエス! 今度聞いてみるといいデェェエス!』と、言われましたから……」

「おお……わかった。じゃあ、解説しながら作るかな」

「はいい……お願いします」

きちんとつむじが見えるほどに頭を下げるチェス。

そうなると長い耳がこちらに向けられるのだが、触りたくなる気持ちをなんとか抑え、乳鉢と乳棒、材料を取り出す。

「そういえば、俺も最近は 既知の魔法陣(エクスペリエンスサークル) ばかりだな」

「おお……やはりそうなるんですかね?」

「まあ、時間短縮できるうえに失敗はまずないしな」

既知の魔法陣、または 贋作(マルチコピー) スキルで作ればあっという間に大量に作れるのだからそうなってしまうだろう。

消費するのは自然回復するMPくらいだし、時間と秤にかけるとMP消費が上がるくらいはどうってことないと思ってしまう。

「それじゃあ始めるぞ」

「はい!」

乳鉢に薬体草を入れ磨り潰す。

初めはばらばらな薬体草を纏めるように動かし、まとまりだしたらすぐさま押しつぶして擦りつけていく。

薬体草から液体が染み出てきたら水を足し、少しずつ魔力を注ぎこんでさらに成分を絞るように乳棒を押し付けていく。

「流石早いですね……」

「まあ、エリオダルトほどこっちのやり方から離れているわけじゃないだろうしな。ミゼラに教える時は俺も手作業でやるからさ」

「なるほど……やはり、薬体草を磨り潰すのは早い方がいいのでしょうか?」

「どうだろうな……。個人的には早い方が劣化しにくいと思うが、あんまり早く擦りすぎても熱で変化しそうな気がするし……。だから俺は水は熱が生まれないように冷やす意味でも使ってるかな」

「なるほど……」

話してはいるが、チェスの瞳は俺の手元の乳鉢に注がれている。

俺の一挙手一投足を見逃すまいと集中力を上げて真剣に見て盗もうとしているようだ。

「で、試験管に移して完成っと」

「おおー……。当然のように成功……。ちなみに、何割くらいの成功率なのですか?」

「んー? 基本的にこっちのやり方でも失敗はしないかな?」

粗悪とかは作ったことはあるが、基本的にはミゼラが作った『薬体草汁』のようなものは出来た事が無い。

一度だけ、魔力を注ぎ忘れて出来たくらいだ。

「10割……!? おお……それほどまでに作っていたのですね……」

「まあ、生活の為に沢山作りはしたかな? それじゃ、次はチェスの番だ。横で改善点を見つけようか」

「え!? いいんですか?」

「ああ。せっかくだしな。ちなみにミゼラは最近4割方成功するようになったぞ」

「4……凄い。私はまだ2割なんですよ……。むう、頑張ります!」

やはりライバル関係というのはいいな。

ミゼラにもチェスにも刺激になるようだ。

それじゃ、ミゼラの為にも良いライバルを育てますかね。

「……で、水は少しずつ入れた方が染み出しやすいから」

チェスがポーション作りを始めて俺がその横から口を出して教えていくスタイルだ。

要点と注意点だけを都度教えていくのだが、チェスはしっかりと言うことを聞いて実践していってくれる。

「なるほど……こうですか?」

「そうそう。同じように魔力もゆっくりと馴染ませるように注いで」

「こう……。むう……魔力の調整が難しい……。どちらも量が決まっていれば良いというわけではないのですね」

「慣れだ慣れ。要点を抑えて慣れていけば、すぐ出来るようになるさ」

「はい……。で……試験管に……」

「ああ、もう少し絞った方がいいぞ。基準は髪の毛くらい細い繊維が出てきたらって俺は考えてる」

「おお、わかりました」

うんうん。

素直でいい子だね。

言われたことは寸分たがわずしっかりとこなしている。

「むう……? マイフレンド? 何をしているのデェェスか?」

「ん。ああ気が付いたのか。チェスにポーション作りを教えているんだが、あ、俺が教えて大丈夫か?」

「それは勿論ありがたいデェェスが……ふむ」

「……出来た! 出来ました! しかも成功です! あ、師匠。見てたんですか……」

「ふむ……チェェェス。マイフレンドの教えはどうだったデェェェスか?」

「え、あ、わかりやすくて、覚えやすかったです」

「そうデェェェスか! それではお願いしたいことを思いついたデェェェエエス!!!」

「お?」

何やら満面の笑みのエリオダルト。

しかし、いい年したおっさんの満面の笑みなので、可愛くもドキッともしはしないが、どうやら何か思いついてくれたらしい。

「マイフレンド! 私の代わりに『王都立エルサス学院』の臨時講師をして欲しいデェェェス!」

「……臨時講師?」

「そうデェェェエエス! 正直私は教えるのが苦手だから困っていたのデェェス! 委任状は書きマァァスから、助けると思ってお願いしマァァス!!」

「んんー……それはいいけど。学園でエリオダルトが教えるってことは錬金を習う学生って事だろ? 皆エリオダルトが来ると思って期待しているんじゃないか?」

なんと言っても王国筆頭錬金術師なわけだしな……。

「そんな事は無いと思いマァァスよ? あの子達はあまりやる気もないデェェスし、気楽にで構わないデェェス。どうせならマイフレンドの教えでやる気を出させて欲しいところデェェエス」

「んんー……わかった。でも、エリオダルトから一筆は頼むぞ? 学園に向けてではなく、生徒達に向けたものな」

「わかったデェェエエス! それくらいはやりマァァス!」

うーん……先行き不安だな。

だが、お礼なのだしきちんと仕事はこなそうと思う。

……ひとまずは、まだ片付いていない片づけを終わらせてからだ。

暇そうにこちらを見ているエリオダルトだが、手伝ったら余計に時間がかかるらしいので放置であった。

帰り道、アイリスにたまたま会い学園に行くことになったというと、楽しそうにケラケラと笑い、暇があればわらわが顔を出してやると余計な事を言ってくれたのだった。