軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10-15 アインズヘイルで休息を 空間魔法レベル7

日差しは温かく、風はやや冷たいとある日のお昼過ぎ。

俺とソルテは外からは見られる事がない庭の木陰で体を寄せ合い語りあっていた。

「……でね。集合霊の精神攻撃を受けちゃって、そこで主様が出てきたんだけど――」

「ほーう……」

目を瞑り二人で横になって寄り添いゆっくりと語らいあうにはいい気候だ。

お昼ご飯を食べた後ということもあり、思わず眠くなってしまいそうな程に気持ちがよく、温泉とはまた違うリラックス効果を感じている。

「……にしても、おっぱいバタフライってなんだよ」

今日は少しだけ前の話をしており、ソルテ達三人が洞窟に行った際に起こったことを聞いていた。

その中でソルテの話に出てきたのだが、俺がおっぱいの大海原でバタフライをしようと試みたとか……。

一体全体なにがどうなったらそうなるのだろう……。

「知らないわよ……。主様が寝言で言ってたんじゃないの?」

「うーん……そんな夢のような夢を見た覚えはないんだけどな……」

「主様あの頃はいっつもウェンディとアイナの胸が揺れるのを見てたでしょ? だから、そういう印象だったんじゃないの?」

「いや待て。そんな事は……」

あの頃だろ?

っていうことはユートポーラに行く前だから、混浴を妄想して……温泉で、おっぱい……。

「……そうかもしれない」

「私、初めて霊に同情されたわよ……」

「それは……貴重な経験だったな」

っていうか流石ファンタジー、 霊(ゴースト) も普通にいるのか。

しかも話しかけてくるのか……俺なら年若い女の子のような甲高い悲鳴を上げて卒倒しそうだな。

「そうね……。主様は私のちっぱいも好きみたいだから、もうそんな想像をする事も無いでしょうしね」

「まあ……そうだけど、もうちっぱいって自分で言うんだな……」

あ、遠い目をして空を見上げた。

「……もうね。主様が愛してくれるならいいかなって思ってるの……。今更大きくなっても、アイナやウェンディどころか、レンゲにも敵わないだろうし、下手したらシロにも……ね。それなら小さいままでもいいかなって……。まだ少しだけ大きいのに憧れはあるけどね……」

「憧れ……ああ、魔力球で胸を――」

「それは忘れて!」

はっはっは。

あんな悲壮感が漂う可愛いソルテを忘れるわけ無いだろう?

10年後もふとしたタイミングで掘り返して、恥ずかしがるのを楽しませてもらう予定だぞ?

「で……さ、それよりも……」

「ん?」

「……暑くないの?」

「いんや。ちょうどいいくらい」

「でも……獣毛よ?」

「それがいいのです!」

そう。

今のソルテの姿は狼の姿なのだ。

俺は上半身だけ日陰に入り、下半身は温かい日差しにさらしてソルテに寄りかかっているのである。

そしてソルテの尻尾が俺の上に乗って掛け布団のようになっているので、今俺はモフモフパラダイス。略してモフパラ真っ最中なのだ!

「主さまがどうしてもって言うからこの姿になっているけど、本当はあまり見られたくないんだけど……。特に街の人に見られでもしたら主様にも迷惑がかかるのよ?」

「んー? 忌むべき力……って言ってたやつか?」

確かアイナがロウカクで力を使った際に言っていたな。

『私達の――』って。

だから、ソルテのその力も忌むべき力なんだろうとは思っていた。

「そう……。この前は……死ぬわけにはいかないから仕方なく使ったけど、本来は使えない力。使うべきじゃない力なのよ」

「……こんなにモフモフなのに?」

「モフモフは関係ないでしょ……」

「こんなに肌触りが良くて一本一本が細いのにボリューミーだから繊細かつふわっとした感触で極上なのに?」

「……はぁ。褒めてくれてありがと。でも、あのね……主様にはもう何も隠し事をしたくないから全部言うわね」

ソルテの声色が変わる。

おそらく、これから話されるのは真剣な話なのだろう。

俺は空気が読めるのでおふざけはここまでにして、口を噤んで大人しくモフパラの後頭部に意識の半分を持っていった。

「私ね……半分、魔が入ってるの」

「魔?」

「ハーフだとか、炎人族なんて比じゃない、大陸の大敵である魔族の血が入ってるのよ」

「魔族の血……。半分って事は、魔族とのハーフってことか?」

「……うん。私の父親が、狼魔ハーフェンテって言う魔族だったのよ。母親は人間。……どっちも、死んじゃっているけどね」

ソルテが俺のほうを向き、悲しそうな瞳を揺らす。

「狼魔とのハーフだから、この姿になれるって事か?」

「そう……。普通の獣人は、私みたいに完全な獣のようにはなれないの。私のこれは、ハーフェンテの力。忌むべき魔族の力なの……」

「……」

「だから、私は狼人族として生きてきた。狼人族であると自分に言い聞かせて生きてきたの……。誰かに知られたら……もう普通には生きられないから」

「そうか……」

ソルテがそっと俺に顔を寄せて瞳を瞑るので、俺はその頭に手を乗せてそっと撫でる。

撫でれば当然耳があり、大きく柔らかさと硬さの入り混じった感触が指に触れた。

『犬じゃない! 狼だって言ってるでしょ!』

狼である誇りか……。

なら……。

「忌むべき力であっても、父親の事は嫌いじゃないんじゃないか?」

「……うん。良くわかったわね。母さんは父さんを愛してた。魔族でも愛するところがあったんだと思うし、私にとってはいいお父さんだった。それに、父さんは母さんを守るために、母さんは私を守るために死んだの……。二人とも、大好きだった。その後で師匠に助けられたの。ごめんって、間に合わなかったって謝ってた。だから、師匠も父さんと知り合いだったみたい」

だから、とソルテは続ける。

「母さんと、父さんの子供で良かったとは思ってる。でも、魔族の血自体は嫌いよ。父さんみたいなのは特殊で、魔族は人類にあだなす者なの。平和を乱し国家を歪ます人類の敵、忌み嫌われる存在だもの。私もそう思うし、私が同じに思われるのも嫌。……それで主様に迷惑をかけるのは一番嫌なの」

「そっか……」

頬を寄せ、ソルテの顔と触れ合うと優しく柔らかい感触が訪れる。

きっと、本当はこの姿も嫌いじゃないんだろう。

もし嫌いなら、わざわざ狼であることにこだわりはしないだろう。

でも、この姿を見られたら普通には生きていけないから必死に隠し通してきたんだろうな。

狼に変わる姿を見られれば言うまでもなく、危険だと判断され冒険者ギルドや兵士が動く事態になるだろう。

もし、アインズヘイルでそのような事態が起こったりすれば知り合いが襲ってくるかもしれないと……。

「だから今日で終わり。今日だけは主様の夢を叶えるためにって事で特別だけど、もう駄目よ?」

「うーん……」

「なに? そんなにこの姿気に入ったの? でも、主様だって危ないんだから駄目なものは駄目」

「……ようはばれなきゃ、その姿になるのは構わないんだろう?」

「え? それはまあそうだけど……。人の目なんてどこにあるかわからないんだから、仮令家の敷地内でもユートポーラの温泉でも危ないことには変わりないわよ?」

「大丈夫だ。家じゃない。悪いけど、一回解いてもらえるか?」

俺は名残惜しみつつソルテから離れて立ち上がり、お尻についたであろう草っ葉を払って少しだけ離れ、手を前にかざす。

その間にソルテは狼化を解除し、近くにおいておいた大きめの布で体を包み込んでいた。

「空間魔法……レベル7」

「え?」

「『 隔離された小世界(プライベートラウンジ) 』」

出現したのは 座標転移(ポイントゲート) と同じような黒い渦。

だが、辿り着く先はこの世界には無い場所だ。

「いつの間にレベル7になったのよ……」

「ついこの間だよ。使い勝手がわかるまで黙ってたんだ。さあ、行くぞ」

「え? 行くってちょっと!?」

ぐいぐいとソルテの手を引いて黒い渦の中に入っていく。

感覚は転移の時と同じだ。

「……わあ、真っ白な部屋ね。で、ここはどこなの?」

「ふっふっふ。知らん!」

「知らんって……」

知らんものは知らんのだ。

空間魔法のレベルが上がり、このスキルを覚えて入ってみたらこの部屋があったんだもん。

流石に自分のスキルだし、危険はないだろう。

なんか、隔離された小世界らしいけど。

ただ元は真っ白で何もない四角い部屋だった。

今の広さは広めのリビングといったところだろうか。

部屋の広さはある程度広げる事も出来て、走り回るくらい出来る広さにはなる。

ちなみに、トイレはあるがお風呂はない。

ベッドやソファーや机などの使いそうなものは俺が入れておいたのである。

……精神と○の部屋に似ている気がするが、時間の経過は普通通りだった。

ちなみに出るときは入ってきた扉を開ければ元の場所に戻ることができる。

扉を閉めると元の場所にあるゲートが消える仕様で、外の様子は扉から覗くことができるようになっている。

入り口自体は 空間座標指定(エリアポインティング) で指定も可能なので、隼人の目の前に出して一度この部屋に来てもらい、その後こっちの出口で出てくる事も出来る。

俺が入った入り口が、ここの出口になるらしいのだが……呼び寄せるなら俺が迎えに行っても変わらないんだよな。

MP消費が少し抑えられるくらいか。

「まあ超簡単に言うと『どこからでも俺の部屋』だな! ここなら外から干渉も観察も出来ないぞ!」

つまりここなら狼化してもオッケー! ってことさ!

「ふーん……。これで主様は誰にも気づかれずに女の子を連れ込めるわけね」

「いや待って? そんな使い方しないよ……?」

なんでまずそれが思いつくのだろう……。

俺は一人になりたい時なんかに利用しようかなと思っていただけなのに……。

いやでも、確かに誰にも邪魔されずに……って思う時はあるよな……。

あながち間違ってもいないか……。

「ま、まあまあ! ともかく、ここなら問題なくその姿になれるだろ?」

「……そうね。そうなるわね……」

「よしっ! これで好きなだけモフれる!」

「もう……そんなにあの姿が好きなの?」

「いや? ソルテだからだと思う」

普通にそのサイズの狼に出くわしたら怖いもん。

ソルテだからこそ、俺は怖くないしモフりたいのである!

「……せっかく、二人きりなのに。誰にも邪魔されないのに……あの姿をモフるだけで終わりなの?」

「……ぉぉ」

そんな顔を赤らめて瞳を潤ませ、照れながらも頑張った感じの出ている上目遣いだなんて、反則だろ……。

「いや……その……それ以外でも、ゆっくりしよっか……」

「……うん」

このあと、めちゃくちゃしっぽりした。