軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9-11 砂の国ロウカク 再会の肉球ナックル

ドドドドド、っと音を立て、砂煙を上げて全速力でデザートパラサウロが走る。

荷台は普段よりも大きく揺れるが、万遍なく敷き詰められた魔力球のおかげでお尻が痛くなることもなく、暑さに参ることもなく快適に移動することが出来ていた。

「見えたっす! 砂煙!」

レンゲが御者台から叫び、俺達の視線は一点に注がれる。

視線の先では時折、他にはないほどに高く砂煙が舞い上がる。

おそらくクドゥロさんが戦闘中なのだろう。

「このまま行くっすよ!」

「ああ。戦闘中はデザートパラサウロごと空にいるから、安心してくれ」

これは最初から決めていたことだ。

邪魔にならないようにする。

そして、俺にできることをする。

本来であれば最寄の町にデザートパラサウロは置いてくるはずだった。

地竜の前にデザートパラサウロなど置けば、ただの食料にしかならないからだ。

だが、クドゥロさんのもとにより早く進むにはデザートパラサウロの足が必要だったのである。

だから、俺はウェンディとデザートパラサウロと一緒に退避すると決めデザートパラサウロに乗ったまま地竜の元へ走っているのだ。

「んんー……いた! 爺がいたっす!」

レンゲの声に俺は御者台に手をついて前方を確認する。

まだ小さく影のようなサイズだが、どんどん近づいていくにつれて状況がわかるようになってきた。

「あれが、地竜か……」

岩のように硬く大きく頑丈そうな外殻、四足で動き太く短い足には鋭い爪、そして大きな頭と大きな一本角で、ギザギザで肉を食いちぎるためだけにあるような鋭い歯。

竜ではあるようだが、地竜なので翼はないようだ。

はっきり言って、怖い。

実際に見たら肌がざわついてきた。

もともと恐ろしいとは思っていたが、よりはっきりと、より明確に自覚する。

あの爪、あの牙は、俺を楽々と殺せるものだ。

あいつらは、俺を食らう事ができるのだと。

目を離すことができなくなり、少しずつ恐怖心が植えつけられていき体が震えだすと、すっと何かが指に触れビクリと驚いてしまう。

「ご主人。大丈夫っす。自分達が、ご主人を必ず守るっすから」

レンゲの顔を見て、振り返るとシロもアイナもソルテも、更にはウェンディまでも頼もしい顔で頷いてくれた。

「ああ……ありがとう」

「はいっす!」

本当、ありがとう。おかげで震えは止まってる。

まだ怖いのは変わらないけれど、それでも見守るくらいの勇気は貰えたよ。

「よし、御者代わる! 皆も準備して、すぐにクドゥロさんを助けにいってやってくれ!」

「わかったっすー!」

「ん。お腹もいっぱい。シロはいつでもいける! ……地竜の分のお腹の隙間を稼ぐ」

「ねえアイナ、今度の主様との寝所をかけて討伐数で勝負しない?」

「む? かまわないぞ? だが、ソルテの槍であの硬さを捌けるのか?」

「あら、アイナの足で私より多く狩れるのかしら?」

おお……皆地竜の前だというのに余裕そうだね。

つくづくこの子達は強いんだなあ、と思わされるよ……。

でもそれ以上に、アイナが賭け事をするなんてっ! と思ってしまう。

しかも寝所って……俺も少し余裕が出てきたかな。

「じゃあ、行ってくるっす!」

「ああ。気をつけてな!」

「ご主人も気をつけてっす! くれぐれも余所見は厳禁っすからね!」

レンゲがそう言うと、御者台の方から飛び出して地竜の群れへと突っ込んでいく。

続いてシロ、ソルテ、アイナも飛び出していった。

それと同時に俺はデザートパラサウロにブレーキを命令し、停止させる。

更に、足元と側面に『 不可視の牢獄(インビジブルジェイル) 』を張り、ウェンディにデザートパラサウロを宥めてもらって空へと上がり、戦況の見える場所へと移動した。

「でりゃあああ! 破砕肉球拳奥義! 肉球ゥゥゥナックルォォオオオ!」

やはりクドゥロさんが地竜相手に戦っている。

指を軽く曲げ、掌で腰を入れた掌底を打ち込むと、外殻が砕け、地竜の体が曲がってはいけない方にぐにゃりと曲がり、一瞬のタメを経てその場で倒れていく。

クドゥロさんの周りには既に相当な数の地竜が横たわっているが、まだまだ数が多い。

成果だけを見ればとんでもない討伐数だが流石に疲れたのだろう、クドゥロさんも肩で息をするようにしており、疲労が遠目でも見て取れた。

そこに、クドゥロさんのすぐ近くまでレンゲが地竜の群れを飛び越えた。

「爺ぃぃぃいいいいい!」

「む……? 姫様ぁ!? どうしてこちらに!?」

「ご主人に! 許可を貰ったから! 皆で助けに来たっす!」

クドゥロさんに近づきつつ地竜を殴りつけていくレンゲ。

恐らくなんらかのスキルを使ったのだろう。

地竜の外殻は岩のように硬いはずなのだが、殴られた地竜は重量を感じさせずに吹き飛び、倒れてもがき苦しんでいた。

「なんと……あの御仁が……」

「ご主人も来てるっすけどね! 危ないから上で待機っす!」

レンゲがそう言うとクドゥロさんが空を見上げ、俺の方へと視線を向けてきたので軽く手を上げて挨拶を交わす。

こちらは安全だが、あちらはまだまだ地竜が多く危険地帯なのであまり時間をかけさせてはならない。

「ふむ。なかなか硬いが壊せないほどではないな」

と、アイナが上段からの一撃で地竜をたたき伏せ、

「ちょっとシロ! 私の獲物取らないでよ! アイナに負けちゃうでしょ!」

「ん? 早い者勝ち。主、シロが倒したの取っといて。後で食べる」

ソルテが突いた地竜に、止めとばかり硬い外殻の隙間を縫うように器用に首を落とすシロ。

それどころか、所々、 被装纏衣(ヒソウテンイ) を出し力で押し切るなどもしてそりゃあもう元気良く威勢良く狩り進めていった。

だがそれよりも……。

「やっぱり食べるんだな……了解」

魔法球を水の魔力で出し、肉が腐らないように囲っておく。

血抜きはシロがしておいてくれたようで、持ち上げただけで落とされた首から血がドバドバと溢れ出てきた。

とりあえず、一頭あれば十分だろう……。

流石にシロでも一頭丸まるは食べないだろう……。

「おお……お仲間も相当お強いですな」

「自慢の仲間っすからね!」

「心強いですな……。それに、姫様とこうして肩を並べて戦えるとは思ってもみませんでしたぞ……」

「何爺くさいこと言ってんすか? 別に、後は任せて休んでてもいいっすよ。連戦で疲れてるんじゃないんすか?」

「何を仰いますやら。まだまだ行けますぞ! どれ、破砕肉球拳秘伝技『 299(にくきゅう) 連弾』!」

……技名は突っ込み待ちなのだろうか?

声が渋いだけににくきゅうのあたりがとても惜しい……。

クドゥロさんが中腰で両の掌を高速で打ち出すと、明らかにリーチの外にいる地竜にまで攻撃が届いている。

目にも留まらぬ連打の嵐で、いったい何発打ち込んでいるのだろうというほどに、無呼吸での連打をお見舞いしていた。

「そんな大技、また腰悪くなるっすよ……」

「いやはや主殿のおかげで腰も肩も調子が良くてですな! まだまだいけまっ……すっ……あっ……!」

連打中に途端に動きが止まってしまうクドゥロさん。

もしかして腰をいわしたのか、ぴくりとも動かないでいる。

「あーあー……爺、無理するから……。ご主人ー! 爺も上に上げといて欲しいっす! こっちは大丈夫っすから!」

「あ、ああ。わかった」

クドゥロさんを下から掬い上げるように不可視の牢獄を張り、揺らさぬようゆっくりと慎重に持ち上げる。

「おおお……な、なんと!? これはいった……痛たたた」

「じっとしててください。今薬を渡しますからね」

クドゥロさんを馬車の荷台へと寝かせ、貼り薬を用意する。

これは温泉の成分を錬金で分解して薬効を抽出し薬湯を作り、切った布を漬け込ませてメントルを混ぜてすーっとするように作った貼り薬だ。

普段は自分用に肩こりの際に用いるのだが、腰にも効くだろう。

更に、荷台に張り巡らされた魔力球を使い、腰を冷やすようにして寝かせておく。

「はぁぁ……迫り来る老いには勝てませぬな……助かりましたぞ……」

「礼ならレンゲに言ってください。俺はレンゲが心配でついてきただけですから」

「ははっ……そうですか。……本当に、良きお相手を見つけられたようですな……」

やわらかい微笑を見せるクドゥロさんだが、すぐに腰の痛みに顔をゆがませてしまった。

細かい傷もあるようなので、回復ポーションも取り出して飲ませるとふううう……、と落ち着いたようだ。

「それじゃ、レンゲ達の様子を見に行ってきます。何かあれば声をかけてください」

「わかりました。よろしくお願いします……いつつ」

荷台から出て下を見下ろすとあらかた片付いてしまっていた。

っていうか、数十から数百はいる地竜が打ち倒されているって恐ろしいな……。

「後二匹貰うわよ! これで私の勝ちね!」

「くっ……させるかっ!」

「ん。後は任せた。お肉剥ぎ取ってから魔石取って来る」

なんというか……本当大分余裕ね君たち。

もっと大変かなって思ってたんだけど……。

まあでも君達Aランクの冒険者と、シロだもんね……。

「皆がいると楽勝っすねえ」

レンゲも軽々と地竜を屠っているし……。

とか言っている間に最後の地竜が倒されたようだ。

「ご主人ー! もう降りてきていいっすよー!」

「おーう」

不可視の牢獄をゆっくりと下げて地面へと降りる。

デザートパラサウロも、砂の上の方が落ち着くのか少し興奮状態であったのだがようやくと落ち着いてくれた。

「くっ……引き分けか……」

「シロと狙いがかぶらなければ勝てたのに……」

「主、お肉-。料理して!」

「おーう。もう食べるのね……。とりあえず、まだ無理だから、冷やしたまま魔法空間に入れとくな」

砂漠じゃあ腐りやすいだろうし、まだ料理は出来ないので一時保存だ。

っというか、地竜って美味いのだろうか?