軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9-9 砂の国ロウカク 魔力球の使い方

俺は今、ご機嫌である。

これから地竜という恐ろしい敵に向かっているというのに上機嫌なのだ。

「はあぁぁぁ……」

先ほどからエリオダルトに貰った魔道具を眺めてはうっとりと見つめていた。

無骨なデザインながらも、レトロでシンプルな重厚感のある黒い金属の質感がたまらない。

流石はエリオダルト。見た目にもこだわりを感じる逸品じゃないか。

「ねえ、主様。そんなにうっとりと見つめてちょっと気持ち悪いわよ……」

「悪い……。はぁぁ……でも、いいわあ。これいいわあ……」

思わず頬ずりしてしまいたくなるな。

虫ゾーンを走っていることなど気にならないくらいだ。

いやむしろ、気にならないで済んでいるのはこの魔道具のおかげといっても過言ではない。

それだけでも最高じゃないか!

「ご主人ー! そろそろ虫ゾーンを抜けるっすよ! アイナとシロを回収したら、今日中に乗り換えの街にまで行くっすからね!」

「おーう」

馬車で砂漠は渡れないらしい。

なので、途中の街で専用の乗り物に乗り換えるそうだ。

砂漠と言えばラクダか? やはりラクダなのだろうか?

違った……。

ちっちゃい恐竜と、ソリのような荷台だった。

デザートパラサウロというらしいのだが、あれだ。ティラノサウルスに良く追い掛け回されているイメージの強い、草食の恐竜に良く似ている。

二本足で走り、頭の後ろがにょいっと出ている可愛らしい感じで、怖くないやつだ。

しかも人懐こく、頭を撫でてやろうとしたら舌でぺろりと舐められ、頬ずりまでしてきた……。

もふもふではなく、鱗のような爬虫類系の肌触りなのだが、ひんやりしていてこれはこれで気持ち良い。

だが、気持ちが良いのはここまでの話。

これから進むのは砂、砂、砂の砂漠地域。

そうなると当然……。

「あづいー……死ぬぅ……」

太陽がギラギラと輝き幌が張ってある荷台なのだが意味あるの? というくらい暑い暑い暑い……。

「主だらしない……」

「この暑さは仕方ないだろ……。むしろシロは尻尾や耳があるのに、なんで大丈夫なの?」

服を肌着まで脱いで腹を出しても、汗がとめどなく出てくる俺をたしなめるシロは余裕の表情だ。

レンゲは地元故に慣れているだろうし、アイナも暑さは問題ないらしく、鎧も着込んだまま周囲の警戒をしつつ走りこんでいる。

「耐性がある。それにエルデュークの森はもっとじめじめした不快な暑さ。それに比べたらカラッとしててだいぶ楽」

「お風呂は熱いの苦手なくせに……」

「お風呂には耐性が効かないの。謎……」

確かにそれは謎だな。なんだろう。環境や効果に対する耐性なのだろうか。

しかし、この暑さがだいぶ楽とか、シロはそんな過酷な環境の森で育ったんだな……。

熱帯林ってやつかな? よしよし。これからは安心して衣食住を満たし続けてやるからな……。

「ご主人様、こちらは少し涼しいですよ。私の近くにいらしてくださいな」

「本当!? すぐ行く!」

言われたとおりウェンディの近くに寄ると、少し冷っとしていて涼しく感じる。

なぜここだけが……と考えていると、ウェンディから薄らと水色の魔力が溢れているようだった。

「魔法はその……加減というか……、あまり得意ではないのですが、水の魔力を練るくらいならば出来ますので。どうでしょうか?」

「ああ……涼しくて気持ちいいな。そうか。水の魔力か……なるほど」

そういえば先ほどの 魔力球(マジカルボール) で出した火の球体は少し暖かかったもんな。

という事は……だ。

俺は即座に荷台を 不可視の牢獄(インビジブルジェイル) を薄めの板状に展開したうえで囲い、魔力球に水の魔力をこめる。

少ない魔力で、ソフトボールくらいの魔力球を大量に作っていき、いつしか重なり合うくらいにまで数を増やしていく。

「ふふふふ……早速役立つじゃないか!」

水の魔力球が増える事により、周囲の温度がどんどん下がっていき、心地よい環境になるまで調整をしたら完成だ!

「ああー……いいね。過ごし易いわぁ……」

あれだ。

足首が埋もれる程度の高さだが、子供用の遊び場にあるボールプールみたいになったな。

しかもひんやりしてて感触がぽよぽよで、不可視の牢獄を薄板状に張ったことによって外には出なくなっているので飛び込んでも、上に乗っても問題がないだろう。

「むう……ご主人様に抱きしめていただき、涼を取っていただくはずでしたのに……」

「悪いなウェンディ。……流石に汗だくでくっつくのは俺が気にするからさ」

「それはそれで……。あ、いえなんでもないです。わあ、冷たくて気持ちいいですね」

いや、うん。流石にね。

時と場合によるけど汗でべたべたするのは良くないと思うんだよ。

さて、風邪をひく前に汗をぬぐってから飛び込むぞ!

「主、これ楽しい!」

「あ、ずるいぞシロ。俺も混ぜろ!」

先にシロが魔力球に全身を預け横たわっていて、ぽよぽよと跳ねていた。

すごいな軽めのトランポリンのようにもなるのかと俺も試してみるが、意外と難しく、跳ねそうなのに俺は弾まない。

むう。少し大きめのものも出してみるか。

今度はバランスボールくらいの大きさになるように魔力をこめる。

魔力の消費も多くなく、注いだ魔力でそのまま膨らむので無駄なロスが無いのもいいなこの魔法。

そして無事完成。

「おおおお……。バランスボールそのままだな……」

何も考えずに出した魔力球とはほんの少しだけ感触が違い、反発力が強くゴムに近い気がする。

感触、大きさ、抵抗、どれをとってもバランスボールそのままだった。

どうやらある程度ではあるが、柔らかさや抵抗なんかは俺のイメージも反映してくれるようだ。

「バランスボールですか?」

「そうそう。こうやって座って手を離してバランスを取ったり、座ったまま弾むんだ。元の世界で流行ってたダイエット方法だな」

「ダイエット……あの、別に太ったというわけではないのですけど、ちょっと試してみてもよろしいですか?」

「いいよいいよ。じゃあもう一個作るな」

ウェンディ用に同じくらいの大きさの物を作ると、シロもじーっと見ていたのでシロにも作ってあげる。

三人で小さな魔力球に囲まれつつ、大きな魔力球のバランスボールで遊ぶ事になった。

「ん。楽勝」

流石シロさん。

バランスボールの上で片足立ちしながらも、ふらふらとさえしていない。

というか、ボールの上で宙返りとか足を離して片手バランスとかピエロでも難しそうなことを平然とやってのけている。

「これも楽しい」

今度は手を離し体でうまい事弾んだと思ったら、バランスボールを掴み、逆立ちしたままバランスボールごと跳ねていらっしゃる。

もう、この子に関しては何も言うまい。

何でも出来る万能シロさんだ。

「んっ……んっ……確かに、結構、激しい運動になりそうですけど……。ん、ぅん……体力も使って、痩せられそう……っ、ですねっ!」

「お、おう……っ!」

ウェンディさんがバランスボールに座り、ぽんぽんと弾んでいると、ウェンディさんの魔力球がぽんぽんと弾んで、目で追っているといつの間にか俺もリズムよく弾んでしまっていた。

いいじゃないかバランスボール。

いい弾力じゃないかバランスボォォオオオル!

涼しい環境の中で行う熱いバランスボールのなんと楽しい事か!

触って気持ちよく! あって涼しく! 更には見ても楽しいなんて素晴らしいぞエリオダルト!

「ご主人ー! あんまぽんぽん跳ねられると荷台が揺れてデザートパラサウロが走りづらそうっす!」

「ああー! ごめん! 下にも不可視の牢獄張るのを忘れてた!」

唯一道を知っているレンゲが御者をしてくれているのだが、デザートパラサウロの事をすっかり忘れて揺らしてしまっていた。

ちなみに、アイナとソルテは外を警戒しつつダッシュで横を走っている。

アイナが、砂場はいい鍛錬になると熱い事を言っていたのだが、暑すぎたので俺は参加しなかった。

「シロ、そろそろ交代しましょう……って、何この状況……」

荷台の後ろに回ったソルテが、額に汗をかきつつこの状況に呆れたように言う。

まあ、水色の小さな魔力球が大量に散乱し、大きな水色の魔力球に乗ったウェンディが体を反らせてあお向けに乗り、バランスを取っていればそうだよな。

「んーもう少し遊びたかったけど、わかった。行って来る」

シロとソルテが交代するらしいので不可視の牢獄を解除。

その際に何個か魔力球が落ちてしまうのだが、シロとソルテが掬って投げ入れてくれた。

「うわ、涼しい」

「へっへーん。いいだろう?」

「そうね。外は暑いから、助かったわ……。あー疲れた……」

ソルテはだらーっと魔力球の上に仰向けで寝転がったので、ぱたぱたと手で顔を仰いであげる。

「ああ……気持ちいい……」

ソルテはシロやアイナ、レンゲほど暑さに強いわけじゃあないらしい。

顔も少し赤くなっているし、俺よりは当然強そうだが意外だな。

「それにしても、これ気持ちいいわね……それに……」

ソルテが仰向けのまま一つ魔力球を取るとむにむにと揉みしだいていた。

球体からは大分かけ離れた形になるが、それでも手を離せばすぐに球体へと戻っていく。

「……ね、ねえ。もう少し柔らかいのは出せないの?」

「んんー出せると思うぞ。ちょっと試してみるか」

んんん……柔らかいー……冷たいー……。

柔らかさにも意識を裂きながら、水の魔力をしっかりとイメージする。

……意外と、同時って、難しい……だが、なんとか出来そうだ。

「大きさはこれくらいでいいか?」

「ううん。もう少し……そこっ! それくらいで!」

ゆっくりと魔力を注いでいき、ソルテの指示どおりの大きさにすると、小玉すいかくらいの大きさになった。

さらに、なぜかもう一つ要求されたので同じくらいのものを作ると、ソルテがひったくるように二つとも持っていってしまう。

……まだ俺感触確かめてないのに……。

ソルテは俺に背中を向け、なにやらごそごそとしだしたんだが……あー……うん。そこまで広い荷台ではないので隠れていない。

何をしようとしているのか丸分かりである。

まあ……そうなるよなあ。というか、ぽよぽよを大量に作っていた時点でシロがやるかなあ……と思ってたというか。

そうか……ソルテがそれをするのか……。

「ん……割れないわよね……。もう、ちょ……っとぉ……、頑張って装備のリサイズ……出来た!」

「ソルテ……」

「え、きゃあああああ!」

ぽんと肩に手を置くと、すごい勢いで後ずさりをするソルテさん。

その際に小さな魔力球が舞い上がって視界を見えづらくしたのだが……はっきりと、俺は一点を見つめていた。

「ちがっ! せ、成長したらどんな感じになるのかが気になっただけで!」

「……」

ソルテの胸部が、異常に盛り上がっている。

体を揺らすたびに不自然にふよふよと揺れているのだが……。

「ほ、ほら。これから先どうなるかなんて女神様にだってわからないし……。もしかしたらこうなる未来もあるかもしれないから、ちょっと体験してみようかな……って……」

「ソルテ……」

「やめて! 可哀想な子を見る目でみないで! ちょっと試すくらい別にいいじゃない! 夢くらい見たっていいじゃない!」

「元の世界の文字でさ、人の夢って書いて……儚いって読むんだよ」

「そんな世界嫌よ! なんでそんなに酷い字を作るのよ!」

うん。俺もそう思う。

でも、でもさ……違和感しかないんだ……。

『おっぱい』なソルテとか、違和感しかないんだよ……。

ちょっとだけ水色の魔力球が服の隙間から見えているからとかではなく……ただ単純に合ってないんだ……。

ロリ巨乳枠にもなってないんだよ……。

それに、第二次成長期も過ぎているはずだ。

だから……。

「諦めよう……。現実を……受けいれて、前向きに生きようぜ」

「嫌よ! まだ成長するもの! 前向きに生きるなら、希望くらい持たせてよ!」

「俺は、ソルテのちっぱいも好きだぞ」

「それは……ちょっと嬉しいけど。でも……騙されないわよ! 『も!』なんだもん! 『大きいのが好きだけど!』が、絶対前に入るのを知ってるんだから!」

ソルテは意地になったのか一向に魔力球の偽乳を外そうとしない……。

どうしたもんか……ここは、満足するまで好きにさせてやるしかないのだろうか。

「主君、不可視の牢獄を解除してもらってもいいだろうか?」

「ん? ああ」

外からアイナに声を掛けられたので不可視の牢獄を一旦解除する。

「ふう……シロ一人で足りるようなので私も休憩をいただくことにしたよ」

「アイナ……」

アイナが走行中にもかかわらず手を縁に掛け荷台に乗ると、ソルテの胸部よりも足元に目がいったらしく、ふみ心地が楽しいのか笑顔をこぼしている。

「すごいなこれは。それに涼しくて、火照った体に気持ちいいな。それと……ウェンディ? どうしたのだ?」

「ふっ……ん……バランス中で……あわわわ」

ウェンディはいままでずっとバランスをとり続けていたのだが、集中が切れたのか小さな魔力球の中に飛びこんでしまう。

「む? また新しい遊びなのか?」

ウェンディが立ち上がり、またバランスをとり始めると、アイナはゆっくりと腰を下ろして鎧を外した。

すると、むわっと可視化したような熱気がインナーから上がる。

そして……。

「あ……」

ソルテが小さく声を漏らした。

何を見て声を漏らしたのか。

それは……汗でぐっしょりと濡れて透けて張り付いてしまったアイナのインナーだ。

普段見慣れてはいるだろうが、この状況下でくっきりと、ばっちりと、アイナの本物の『おっぱい』を見てしまったのだ。

更に……。

「ふう……この涼しさだと風邪を引きそうだな。流石に着替えねばならないか……。主君……その……汗もかいているので、あまりこちらを見過ぎないでくれよ?」

残念ながら今日は俺以上に凝視しているのはソルテだ……。

俺はソルテとアイナを交互に見なくてはならないのだ。

「んっ……くっ……おっとと……」

汗で水を吸ったシャツを脱ぐのに苦労しているのか、なかなか脱げずに悪戦苦闘しているアイナ。

アイナが悪戦苦闘するたび、本物の弾力とはこれだと言わんばかりに揺れる『おっぱい』。

そして、揺れるたびにソルテは自分の物と見比べ、ソルテから色が消えてしまっていくように感じてしまう。

「…………」

やがて、ソルテは……悲しげな表情を浮かべ、そっと自分の胸元から魔力球を取り外しはじめた。

その顔は消え入りそうで、胸がキュウと締め付けられるような感覚になり、俺は思わずソルテに駆け寄り強くぎゅっと抱きしめるのだった。

せめてもの救いは、俺以外誰も見ていなかったことだろう……。そう願いたい……。