作品タイトル不明
Xmasだから!! 雪遊び その2
「行くぞ隼人おおおおお! 今日俺はお前を超える!」
「たとえ雪合戦でも、あなたには負けません!」
おーやってるやってる。
しかし、雪合戦とは思えない程の迫力である。
隼人が投げた雪球が外れると、扇状に雪が舞い上がる。
しかし、真に直撃しても真はけろっとして投げ返しているのだ。
俺は混じらないのかって?
はっ。無理無理。
雪で寒いとか以前に死んじゃうっての。
チュドーンって、雪合戦の擬音じゃあないと思うの。
で、俺が何をしているのかというと……。
イツキと! ウェンディの! お手軽かまくら作りー!
まずはベースとなる人の入る場所を、『 不可視の牢獄(インビジブルジェイル) 』で確保します。
その周りに雪を集めて力で押し付けて固め、その上からウェンディに水を撒いてもらいます。
その際に、水の撒きすぎに注意しましょう。
最後に、さらに雪で固めて不可視の牢獄を床部分を除いて解除しましょう。
はい完成っと。
寒いから突貫作業だ。
とはいえかっちりと固まっているので、よっぽどの事がない限り崩れる心配もない。
不可視の牢獄を置いたままにしたほうがいいのはわかっているが、それでは風情がないだろう。
そして武闘派以外立ち入りの出来ない雪合戦には混じらず、美香ちゃん、クリスの三人で料理を作る事にしたのだ。
ウェンディとミゼラも手伝うといったのだが、ミゼラが雪を見るのは初めてらしいので遊んでおいでと言ったのだ。
「イツキお兄さん。豚肉これくらいの大きさでいいですか?」
「根菜切り終わりました。お兄さん次はどうしましょう?」
「よし。それじゃあ鍋にいれちゃおうか」
作っているのは豚汁。
やはり寒い日は豚汁だろう。
しかも今回はもう一つある。
「よし。切り身と野菜はこんなもんでいいか」
「はぁぁ……お出汁の良い香りが心地いいですね。寄せ鍋も楽しみです」
そう。鍋を作っているのだ。
きっと外で遊んでいるやつらは腹を空かして帰ってくるだろう。
寒い日にかまくらで温かい鍋……。
これが、子供の頃の夢を叶える大人の雪での楽しみ方である。
「それにしても、真が結構あっさり解放してくれたな」
流石に無理だ付き合いきれんと言うと、それなら仕方ないとすぐに諦め、後で一緒に女の子の雪像を作りましょうと言い残して、隼人と一騎打ちをし始めたんだよな。
あれ? 俺要らなくない? 家でまったりしていても良かったんじゃない? とか思ったわけだけど。
「ギクっ!」
……。
いや、ギクって口で言うもんじゃないよね。
まさかそんなわかりやすすぎて逆に疑ってしまうような事があるわけ……ないよなあ。
「なーんか別の思惑を感じるなー」
「ひゅ、ひゅーひゅー。ナンノコトデスカネ?」
……。
ああ、うん。
あれだ。美香ちゃんって、嘘つけない子だ。
口笛ふけてないのは可愛いけど、片言の外国人キャラの物まねみたいでちょっと笑えるな。
じーっと美香ちゃんの顔を見つめてみると、ちらっとこっちを見ては勢いよく顔を背ける美香ちゃん。
クリスがとても残念そうな顔で美香ちゃんを見ている事にすら気づいていないようだ。
「美ー香ちゃん?」
「ひゃ、ひゃい!」
「何を隠してるのかなー?」
「ナニモカクシテマセンヨ?」
また片言になった。
もう下手を通り越して面白いまできてしまっている。
別に隠している事をそこまで知りたいわけではないが……美香ちゃんをいじりたくなってくる。
「美香さん……もう話してしまっては?」
「クリスさんしぃーしぃー! ばれちゃうよう」
「……もうバレバレです……。というか嘘をつくのが下手すぎます……」
「ううー……そんなに下手かなあ私……頑張ってたんだけど……」
あれで頑張ってたのか……。
美香ちゃんも真に負けず劣らず正直者なのだろう。
その分美沙ちゃんの方が腹芸は得意なのだろうな。
正直、美沙ちゃんから秘密を聞き出すのは苦労しそうだな。
聞き出した情報が真実だとも限らなさそうだし。
うまくバランスが取れてる姉妹だなあ。
「で、何を隠してるんだ?」
「はぁ……えっと、今回の真なんですけど……原因はお姉ちゃんでして……」
「今回の真って……まあ、確かに普段よりしつこかったな」
「一応隼人様のせいでもあるんですけどね……」
「隼人も? どういうことだ?」
「その……事の発端はお姉ちゃんが真に『隼人君に勝負で勝つ事が出来たら、何でも一つ言う事を聞いてあげる』って言い出したんです」
……あー。
言いそう。
それで真はエロイ要求を言いそう。
しかも美沙ちゃんとしてはどっちに転んでも美味しいわけだ。
真が勝てば真にご褒美を。
真が負けても隼人と戦う真を見て楽しむと……。
現に美沙ちゃんは二人の観戦をしているしな。
「ですが、真さんが隼人様にそのまま伝えるものですから、隼人様は付き合いきれないと突っぱねたのです」
そりゃあそうだろう。
美沙ちゃんが何でもお願いを聞いてくれるから勝負してくれなんて、俺だって受けたりしないだろう。
「でも、しつこく。そりゃあもう抱きついて泣き叫ぶ程に、街中で寝転がりだだをこねるほどにしつこくお願いした挙句、ぽろっと隼人君が『イツキさんもいるなら……』とこぼしまして……」
……根本は美沙ちゃん。次いで真。
俺が巻き込まれた原因は隼人と……。
なおさら俺は関係ないなおい。
「あ、でもですね。その……イツキお兄さんとはしゃぎたかった……というのは本当みたいです。去年、隼人君がイツキお兄さんとクリスマスパーティーをしたって聞いて悔しがってましたから。もっと早く出会いたかったって、何度も何度も言ってたんですよ」
「……」
「この世界で、私達もいろいろありました。いろいろありすぎて、三人以外信じられそうもない時も。でも、こんなにも心許せる人たちに出会えて、とても嬉しそうだったんです。もちろん……私も、お姉ちゃんもそうだと思います」
……。
そんな事を言われては、何も言えなくなってしまうじゃないか。
きっとただ真っ直ぐに、真の事を教えてくれただけなのだろう。
なんせ美香ちゃんは嘘が下手だからな。
「はぁぁぁ……」
「あ、大きいため息。ふふ。また良い方向に諦めてくれたんですか?」
「察するのが早いよ。まあその通りだけど……」
なんというか、懐かれてしまったというか……。
これが可愛げのある女の子であれば嬉しいのだが、子犬っぽい可愛さもない大型犬だからな。
「そうと決まれば……本気だすか」
「え? 本気ですか?」
「ああ。二人にも手伝ってもらいたいんだけど……遊べなくなりそうだけどいいかな?」
「はい。構いませんよ」
「私も! イツキお兄さんの本気は凄いって聞いているので見てみたいです!」
一体誰に聞いたんだろうな……って、たぶん隼人か、アイナかな。
結構定期的にアイナとは連絡を取っているのは知っているからな。
「ただいま戻りましたー!」
「ただいま。外は寒いけど、ここは暖かいのね」
お、ちょうどいいところにウェンディとミゼラも戻ってきたな。
二人にも手伝ってもらうためにお願いすると、二人とも二つ返事で了承してくれた。
それじゃあとっととやりますかね。
制限時間はあいつらが戻ってくるまでだからあまりないが、出来る限りの事はしてみせようじゃないか。