軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Xmasだから!! 雪遊び その1

『今年は何もやらないんですか?』

隼人のそんな一言に、俺はすかさず

『寒いし今回はパスで……』

と、返事を返した。

今俺はリビングに用意したこたつでぬくぬくしているところなのだ。

シロもこたつという駄目人間製造機が発する中毒性の高い魔力に引かれ、俺の上でお昼寝中。

やはりあれだ。

冬は暖かい部屋で皆にサンタ服を着てもらい、それを見て過ごすに限るな。

わざわざ寒い中外に出るなどナンセンスというものだろう。

わかるだろうか?

こたつの布をめくり、中を見ればそこには素晴らしい太もも! さらにはさりげなく足を動かした際に見える下着も――。

「主様寒いからめくらないでよ!」

「そうっすよー。暖かい空気が外に出ちゃうっすー!」

……怒られてしまった。

犬は庭を駆け回るはずなのに、ソルテもレンゲもこたつの魔力には抗えなかったようである。

「皆さん。温かいスープを持ってまいりましたよ」

「おー! ありがとう。待ってました!」

ウェンディとミゼラがスープを運んできてくれた。

厨房から廊下を通り、この部屋までの道は寒いのに、俺の期待に応える為だけに二人ともサンタ服を着てくれているのには感謝しかない。

ミゼラなんて、くびれを見たいと言ったばかりにおへそがでているサンタ服なのだ。

恥ずかしがりながらも着てくれる良い子である。

「うう……しかし、寒いのにアイナは元気だな……」

アイナは一人日課の鍛錬をしに庭へと出ている。

サンタ服は鍛錬が終わり、汗を流した後に着てくれるそうだ。

当然全員のサンタ服が揃ったら……むふ。

「はぁぁぁ……去年も楽しかったっすけど、こういうのもいいっすよねえ……」

「だなあ。忙しい日々が多い分、こういうまったりした時間が貴重に感じるよ」

ああ、ウェンディが作ってくれたコーンスープが甘くて美味しい。

「そういえば、孤児院にはプレゼントを用意したんでしょ?」

「ああ。ミゼラと俺でな。あとケーキと料理も用意して渡しておいたよ」

今頃孤児院ではパーティが行われている事だろう。

今回は女の子用のアクセサリーをミゼラが、男の子用の遊び道具を俺が作って贈らせてもらったのだ。

「お、雪か……どうりで寒いわけだな」

窓の外を見ればちらほらと小さめの白い雪が降り始めているようだった。

流石にアイナも風邪を引くんじゃないかと思い、こたつから出たくないという呪いを断ち切って立ち上がりテラスに出る。

「ううううー!! 寒いっ!」

風が吹き一瞬で先ほどまでのぬくさが失われてしまう。

「主様早く閉めてよ! 寒い!」

「おおおおお、頭が冷えるっすうううう!」

寒いのは俺が良くわかってるっての。

いじわるで開けっぱなしにしてやろうかとか考えつつも、しっかりと閉めて庭の方を見下ろした。

すると、正面の通りからなにやら凄い勢いで此方に駆けて来る人影が見えた。

あ、関わりたくない。と引っ込もうと思ったのだが、一足遅かった……。

「兄貴いいいいいい! ちょうど良かった!」

「良くない。お疲れ」

「兄貴!? ちょ、ちょっと待ってくれよ!」

「待たない。アイナ。雪も降ってきたし、風邪を引くから戻っておいで」

「む? そうだな。そろそろ戻るか。というかいいのか? 真が来ているようだが……」

「来てないよ。ううう……寒寒……」

「いや来てるよ!? ここにいるよ!?」

「真。何を騒いでいるんですか? 近所迷惑ですよ」

おっと、今度は隼人までやってきてしまった。

真だけなら適当にあしらって追い返すところだが、隼人が一緒となればそうもいかない。

はあ、仕方ないか。

「隼人ぉ……兄貴がそっけないんだよ……」

「イツキさんが? イツキさんはいつだって優しい人ですよ。気のせいでは?」

「……わかったよ。中で話を聞こう。だから早く入れ。ここで話すのは寒いんだよ」

「ほら。話を聞いてくれるって言っているじゃないですか」

「あ、あれ? 兄貴……?」

ええいうるさい。

だってお前を今家に入れたら絶対うるさくなるんだもん。

「騒いだら追い出すからな……」

「え? そんな騒いだりなんてしないさ!」

はいはい。そういう事は家に入って皆の格好を見てから言ってね。

せっかく俺が一人で楽しんでいたのに……。

ええっと、真と隼人の後ろから皆来てるってことは、合計で8人か。

……こたつ、もう一つ出しておくとするか。

「ふおおおお! ふおおおおおおお!」

案の定部屋の中にいたサンタコスチュームを着たウェンディ達を見て雄たけびを上げる真。

「うるさい。お前テラス行け」

「そんな酷い!」

酷くない。

騒いだら追い出すって言っただろうが。

テラスなだけでも温情を与えている分優しいだろう。

せっかくこたつで温かいスープを味わい、まったりしながら太ももや肩、腰のくびれや胸元を見て楽しんでいたというのに。

「はぁ……いいですねえこたつ」

「ああ。それもともと隼人にあげる用に作ったやつだから、帰る時持っていっていいぞ」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

「兄貴! 俺には!?」

「……お前家持ってるのか?」

「家はないけど……これ魔石仕様だしどこでも使えるんでしょ!? じゃあ欲しい!!」

「……わかった。4人用のでいいよな?」

「あ、ありがとう! 今日はじめて兄貴に優しくされたような気がするよ!」

それは違う。

あくまでも美香ちゃんと美沙ちゃんがほわあっとしているからあげるのだ。

べ、別に真にもあげるために作ったわけじゃないんだからね!

試作用で小さいのを作っていたけど、俺には必要ないだけなんだからね!

ツンデレではない。本当の事である。

「はい。皆さんのスープもご用意致しましたよー」

「おおおー! ウェンディさんの手作りスープ! はっ! サンタの衣装……前かがみになれば……っ!」

「……ウェンディ。真はスープいらないってさ」

「そんなあ!? どうして!?」

言うまでもなくお前がウェンディの胸の谷間を覗こうと口に出したからだよ。

せめて口に出さなければ男として理解出来るというのに、どうしてこうこいつは残念なのだろうか。

「なんか、主様と良い勝負よね」

「嘘だろ……? 久々に傷ついたぞ?」

「兄貴? それどういう意味なんだ? 今日の兄貴は冷たすぎて俺、そろそろ泣きそうなんだけど!」

大丈夫。

お前防御型だし耐えられるよ。

VIT(バイタリティ) だけで MID(マインド) は低いのかもしれないけど。

「で、何しにきたんだよ」

結局アイナが戻ってきたタイミングで真にもスープを出し、皆が冷えを解消して落ち着いたところで俺は本題を聞き出すことにした。

「はふぅ……はっ! そうだった! まったりしている場合じゃない!」

「……こたつの魔力、恐るべしですね」

それがわかるのならばできれば放っておいて欲しい。

数々のトラブルに見舞われた俺の勘が、ろくでもないことが起こるのだろうと察っしているのだ。

だからこそ、あきらめるように冷たくあしらっているのだが……気づく様子がないというね。

ほら見てみろよ。

美香ちゃんはもう3つ目のアマミカンに手を出していて、美沙ちゃんは熱いお茶を啜ってまったりしてるぞ?

レティ、エミリー、クリスもこたつを満喫し、ミィはシロが俺にしているように隼人にくっついて暖を取っているんだ。

無理に何かをする必要なんてないじゃないか。

「兄貴! 雪で遊ぼうぜ!」

「却下。死ね」

「酷すぎる! 死ねはないだろう死ねは!」

「タヒね」

「たひねってなんだよ! 字でしかわからないような事を言うなよ!」

「DIEれ」

「もはやわかんないよ!」

はぁぁぁ……何が悲しくてこのくそ寒い中、雪で遊ぶなんぞやらねばならんのだ。

あれか? 雪合戦か? 雪像でも作るのか?

札幌の雪祭りでも目指すのか?

はは、笑えるなそれ。

「はぁ……だから言ったじゃないですか。今年は何もしないって言っていたと」

「うう、だって去年はしたんだろう? 楽しくパーティをしたんだろう? 俺はいなかったのに……。俺だって兄貴と楽しく遊びたいんだよ!」

「わかった。パーティはしよう。肉を焼いてケーキを出せばいいんだな?」

それなら今日の夕食にそうしよう。

美味しくて温かいご飯を食べれば大満足だな!

「違うっ! そうじゃない! そうじゃないんだよっ! もっとアクティブに! プールの時みたいに思いっきり騒げるような感じがいいんだ!」

力強い否定だな。

気持ちはわかる。はしゃぎたいんだろ?

だがな、こちとらもう10代じゃないんだよ。

20台の半ばも過ぎると寒さに弱いんだ。

雪を見たらわくわくするどころか、電車の遅延を考えてしまうようなお年頃なんだよ。

「はぁ……わかった」

「流石兄貴!」

「美香ちゃんと美沙ちゃん用にサンタ服を作って渡すから帰ってくれ」

「っ……い……いらない!」

おお、耐えやがった。

そこまでの強い思いがあるのか……。

「ううう……兄貴とはしゃぎたいだけなのに……」

あーもう男がしょぼくれても可愛くないんですけど……。

そんな捨てられた大型犬みたいな目をするんじゃないよ。

残念ながら子犬には見えないよ。

とは言いつつ……。

「はぁぁぁぁぁ…………」

「で、でかいため息……」

「わあったよ……やるよ……」

「ほ、本当に!?」

「ああ。遊んでやるよ……」

「や、やったあああああああ!」

子供みたいに喜びやがって……。

まあしょうがないかな。せっかくだし、大人でも楽しめる雪の楽しみ方を堪能するとしよう。