軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 夏だ! 5

茫然自失である……。

あれ、俺何してるんだっけ……。

どこからだ? どこから記憶が飛んでいるんだ……。

確かウェンディに抱きつかれたあと、アイナ達も加わりもみくちゃにされて……うっ、頭が。

ところで俺の日焼け止めタイムは!? ぬるぬるでぐちょぐちょのめくるめく時間は? ねえ、なんで皆もうテカテカしてるの?

終わったの? もう終わっちゃったの!? ねえ、覚えてないんだけど!

色即是空を唱え、今回は我慢せねばと煩悩を抑え込めた結果俺の記憶は飛んでしまったらしい。

はは、まじかよ……泣けるわ……。

だが過ぎたことは仕方ない。

なので今は皆で仲良く輪になってビーチボールで遊んでいるのだ。

だが深さは足首程度なのに、何度もやっているとそろそろ脚が重くなってきた。

「ご主人様! いきますよー!」

「お、おーう。よっと、アイナ」

ざばざばと音を立てて歩きながら、弾む胸、ではなくボールを見据え、今度はアイナに打ち返す。

「主君飛ばしすぎだぞっ……と! それ! レンゲ!」

「絶好球っす! いただきっすよー!」

「ちょっと、続けるんじゃないの? 上から打つんじゃないわよ。あっ、シロ取れる?」

「余裕。次はミゼラ」

「……シロの玉は動かなくても良いから楽ね……」

レシーブの構えって水着でやるとエロイんだな。

俺これから大好きな漢字1文字が圧になりそうだ。

「ん。シロはノーコンじゃない」

「あーら『は』って、誰の事言ってるのかしらね」

「自覚症状無しとは恐れ入る」

「言うじゃない! びーちばれえで勝負しましょうよ!」

バチバチと火花を散らす二人。

俺はちょうど疲れてしまったので、少し休憩してくるといいその場を離れる。

「ならば私はソルテのほうに味方しよう。びーちばれえは二人組なのだろう?」

「じゃあ自分がシロの方に行くっすかね」

「レンゲ! あんたもろとも倒すからね! ガルルル」

「あらあら。ミゼラ。それでは私達はあちらで遊びましょうか」

「はい。なにをなさいますか?」

「うーん。そうですねえ。水かけっこしましょうか」

「ウェンディ様に水を……畏れ多いのですけど……」

「ご主人様も、戻ってきたらやりましょうね!」

ああ、と返事をし手を振って、俺は少し離れたところに 不可視の牢獄(インビジブルジェイル) を張って水に浸かりつつ腰をかけ、脚をぶら下げた。

ここはプールの端なので、俯瞰して見えるのだが皆楽しそうにはしゃいでいるようだ。

その光景を見て思わず頬が緩み、俺は魔法空間から冷たいミックスジュースを取り出して金属製のストローを挿して一口。

すると、隼人がこちらに近づいてきた。

「イツキさん。休憩ですか?」

「ああ。流石に体力がもたんよ。年かねえ……」

「なんでお爺ちゃんみたいに言うんですか。そこまで僕と変わらないでしょう」

「馬鹿。お前らぴちぴちの10代と一緒にするなよ。徹夜だって辛いお年頃なんだよ」

俺だって10代や20代前半の頃は徹夜で遊んだり、朝まで~~なんてのもしょっちゅうこなしていたが、段段ときつくなってくるのだ。

「そういうものなんですか?」

「そういうものだよ」

隼人が俺の隣に腰を下ろしたので、俺は隼人の分のミックスジュースを渡すと隼人はお礼を言う。

「あ、美味しいですね」

「だな。この世界の食べ物は大体美味いから困る」

「兄貴も隼人もなにしてるんッスか? もっと遊びましょうよー!」

「休憩だ休憩」

「じゃあ俺も!」

「だーお前までこっち来るなよ。男三人固まって座るとかこの状況で阿呆かっての」

「ひでえ! いいじゃないッスか仲間にいれてくださいよー!」

せっかく女の子たちと水着で戯れる機会だというのに、若人が遊ばずしてどうするよ。

じゃぶじゃぶと豪快に揺らしながらも不可視の牢獄の位置を確かめつつ俺達の横に座り、催促するようにドリンクを見ていたので出してやると、一息で飲んでしまう。

「ぷはぁ! 冷たくて美味いッスねえ! 汗もかいてるし、この甘さがちょうどいい!」

「もっと味わって飲んだ方がいいですよ……。勿体無い」

「ばーかこういうのは男らしくぐいっと飲むんだよ!」

「……これ、高級フルーツ果汁100%だから、一杯一万ノールくらいですよ」

「え…………いやあ。素晴らしい光景ッスよねえ……」

あ、こいつ値段聞いて露骨に話題を変えやがった。

実際はそこまで高くはないが、一杯のドリンクで考えると、ちょっとお高いね。

やはり元の世界で暮らした時間の方が長いせいか、約一万円のドリンクといわれると少し困るよな。

「……だな。見てるだけでも十分なほどだ」

「それにしても……兄貴のところの……その……ウェンディさんはまた別格で凄かったッスね……」

「ロリコンじゃなかったのか?」

「ちが、いやロリコンでもないッスけど、仮にロリコンでもあれは見ちまうッスよきっと」

甘いな。

真のロリコンにとって大きなおっぱいはNGワードだ。

ロリ巨乳というジャンルもあるが、あれはそういったジャンルでありロリコンとはまた別枠である。

「隼人も見てたよな! なあ!」

「……はぁ。はい。思わず見てしまいました……」

否定などせずしっかりと告げる隼人にそれが誠意なのだろうと感じ、そしてあれは仕方ないと同じ男として思う。

それに、俺も彼女たちの水着は見ているのだしお互い様というやつだ。

「はぁ……やっぱり兄貴は羨ましいなあ……」

「まだ言ってるんですか? 変な気は起こさないでくださいよ」

「わかってるっての。あれは悪かったって思ってるよ。でもよう……あんな、浮き輪で抱きついてさあ……」

確かにあれは刺激が強かったとはおもうが、今は憂うよりも楽しむ時間だぞ。

そんな暇があるのなら、遊びに行って自分でも楽しんで来いっての。

「ご主人様! 今からこのしゃち(?)さんで遊ぶのですが、ご一緒にどうですか?」

浅瀬をばしゃばしゃと走って近づいてきたウェンディが俺の作ったシャチさんを抱えて前かがみに聞いてくる。

「いや、もう少し休憩しているよ」

「そうですか……。それでは、あとで一緒にやりましょうね!」

「ああ。一緒に遊ぼうな」

「はい!」

ウェンディは満面の笑みで微笑むと、また浅瀬をじゃぶじゃぶと走り、ミゼラの前に滑りながらシャチさんに身体を預けてすいーっと行ってしまった。

その背中、もとい尻を見送り視線を戻すと、真が俺を恨めしそうに見ていた。

「……なんだよ」

「一緒にやりましょうね☆ミ だってさあああ……羨ましい! 妬ましいいいい!」

「叫ぶなよ……耳がキーンってなったわ」

「だって、だってさあ!」

「真だって美沙ちゃん美香ちゃんがいるだろうが……。彼女達の水着姿だって相当なもんだったぞ」

「そうですよ。それに、ボートで何されてたんですか?」

「いやっ! それは……内緒で……」

真の顔が一瞬で真っ赤になったんだが……本当、一体何をされていたんですかねえ。

もしかして……楽しいことかなぁ?

「……真。俺は協定を破ってないぞ」

そのために一時的に記憶まで飛ばしたのだ。

まさか、まさかとはおもうが貴様……。

「お、おお、俺も破ってないですよ!?」

「僕もですからね。テントでは、塗りあいっこをしただけですし」

塗りあいっこか……それはそれで羨ましい。

俺もしたにはしたらしいが、記憶にないし……。

「あ、兄貴ドリンクおかわりもらってもいいッスか? 叫んだら喉が……」

「ん、ああ。いいぞ」

「あらまーくん。美味しそうな物飲んでるわね」

美沙ちゃんがボートで近づいてくると、真がちょうどストローに口を付けたドリンクをまるでちょうだいと言わんばかりに手を伸ばす。

真は二度美沙ちゃんとドリンクに目をやると、大人しく美沙ちゃんに渡してしまう。

「はぁ、美味しい。ありがとね」

ストローから少しだけ飲んだドリンクを真に返すと、真は困ったように俺を見るのだが……間接キスを気にしているのだろうか。

いや、飲みたきゃ飲めばいいと思うんだが、相手が美沙ちゃんだからな。

あとでからかわれるのが怖いのだろう……。

「せっかくだし、皆にも配るか」

不可視の牢獄の上に並べていき、一つ一つをそれぞれ皆の前へゆっくりと移動させ運んでいく。

するとこちらを確認した後笑顔で頭を下げたり腕を振るなどで感謝の意を伝えられ、それぞれの手に渡っていった。

やっぱり便利だなこのスキル。

「すげえ……。伝説級の魔法で配膳とか、魔術師ギルドの人が見たら卒倒しそうッスね」

「それをいうなら、さっき作った焼きそばだってこれで運んでたろうが」

「ああ、あの美味しくはない。なのに、何故か美味しく感じてしまう不思議な焼きそばッスね」

そう。俺は海の家で出てくるような焼きそばを作ったのだ。

というか、結果的にはできてしまっただけなのだが……。

もとはソースを作ろうとしたんだよ。

で、試作で色々試したんだけど何故か失敗作になったはずの、このソースで作る焼きそばがいいという結論に至ったのだ。

「あれは、微妙でしたねえ」

あはは、と爽やかに笑う隼人。

「でも、満場一致でこれだったッスよね」

「だな。揃った瞬間も笑ったな」

まずいのに!? まずいのに皆これなの!? ってなったし。

女性陣も頭に?を浮かべながら食べてたな。

美味しくはないのに……何故か箸がとまらない状態で思わず笑ってしまった。

ふと準備も楽しかったなあと思い出す。

ばれないように隠れながら三人で話し合って、こそこそしつつも皆で同じ志を目指してさ。

ああ…………。

二人もそう思ったのか、今目の前の光景を嚙み締めるかのように見つめていた。

だがしかし、これが夕方とかなら構いやしないが残念ながらまだ昼過ぎなのだ。

そんな時間からノスタルジックな気分など、若人には勿体無いにも程があるだろう。

「ほーら、まだ終わってないんだから感傷に浸るなよ」

「そう……ッスよね! あ、兄貴俺いいところ見せたいので、飛び込みしていいッスか?」

「おーう。せっかくだし、思いっきりダイナミックに飛んでこいよ」

「じゃあ僕は――」

「……隼人。ボート乗らない……?」

後ろからボートを引いてきたレティ。

真っ赤な髪同様に顔を真っ赤にしながら勇気を出して誘いに来たのだろう。

「勿論。一緒に乗ろうか」

そんな彼女に出来る男の隼人は俺等に一度頭を下げ、二つ返事で手を取って行ってしまった。

「それじゃ、俺も行くかな」

「兄貴。飛び込みも忘れないでくださいよ」

「おう。それじゃあお互いに」

「そうっすね。思いっきり楽しみましょう!」

俺達はそれぞれ別れて歩き出す。

さて。それじゃあ、シャチさんを使って俺も遊びますかね。

「おーいウェンディ、ミゼラ俺も入れてくれー」

シャチさんにまたがって遊ぶ二人に近づくが、残念ながらシャチさんは本来一人乗りだ。

三人乗りのあなごさんを取り出して、三人でまたがりバランスを取りつつも落ちてはしゃいでいると、ビーチバレーを終えた四人もこちらへと来た。

仕方ないなとクジラさんを出し、今日一日、日が傾き世界がオレンジ色に変わるまで俺たちは遊びつくした。

その後、水で遊んだあとの虚脱感から抜け出せず夕ご飯は簡単なものを作って食べようということになり、ウェンディ、ミゼラ、俺、クリス、美香ちゃんの5人で作ると、食べ終わったら各々すぐに部屋に戻ってしまう。

きっと今日は皆気持ちよく眠れる事だろう。

水遊びで奪われた体力のあとの睡眠は、何者にも抗えぬ魔力を秘めているからな。

かく言う俺も……とは、いかないのが大人の事情。

日中が過ぎれば協定外のため、もう我慢しなくていいわけだ。

プールで楽しめなかった部分は、別途楽しませてもらう事にしたわけだ。

つまりここからは大人の時間。

抗えぬ眠気に抗えるのが、修羅場を幾度も越えた大人なのだよ。

徹夜はきついと言ったな。あれは条件によるのだ。

それでは、夏を堪能させてもらいましょうかね!

水着……最高です!