軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7-5 幸せ・願望 予想外

魔法での戦闘を一先ずは諦め、隼人に借りた武器を前に俺は悩んでいた。

「アビス・ツインエッジ」「火龍偃月刀」「オーク王の断首剣」「血吸オーガトゥース」「両爪プルートロア」「マナ・イーター」など、物騒な名前がずらり。

これらは隼人に借りた武器たちの名前だ。

例えばこんなボロボロの傷だらけのショートソードでさえ、「歴戦の強者」なんて名前がついているのだ。

小さな短剣も、「ラグ・マギア・アズール」と、仰々しい。

「さすが英雄ね……。ハルピュイアの鳴き笛なんて、初めて見たわよ……」

ソルテが手に取ったのはハーピーのような鳥人がモチーフに付いている長い槍。

見た目も美しく、芸術的であり、見るからに高そうな一品だ。

「有名なのか?」

「ある意味ではね。武器というより、武踊で使う感じかしら。ちょっと見ててね」

ソルテが俺から距離を取り、腰を落としてハルピュイアの鳴き笛を構える。

その様子から目を離さないでいると、ソルテが一息に高速の突きを放つ。

そして、「キュイ」っと、鳥の鳴き声のような音が聞こえてきた。

そのままソルテは連続突き、頭上での大回転、大払いと次々に技を放っていく。

その度に音の大きさや高さが変わり、それは鳴き声の演奏のようであった。

「っと、こんなところね」

「すごいなソルテ。音もだけど、すごい綺麗だったぞ」

「そ、そう? もっと上手い専門の人もいるから、大したことないと思うんだけど……」

「あー! ソルテずるいっすよ! 説明にかこつけてアピールとか!」

「ち、違うわよ。ちょっと試しただけじゃない」

「自分も何か……。くっ……武器持ちじゃないのが悔やまれるっす……。レグスカタールとかないんすかぁー!?」

レグスカタールとは、脛から膝にかけてつけられた刃で蹴り主体の戦いをする武器らしい。

うん。特殊すぎて試して見るまでもなく俺には合わないだろうな。

「それにしても……凄いな。どれもこれも一級品ばかりだぞ」

「そんなになのか? いや、なんとなくわかるけど……」

「ああ、冒険者ならば喉から手が出るほど欲しいと言うだろうな。全部合わせたら……改装したこの屋敷と同じくらいかそれ以上の値段じゃないか?」

いいい!?

そこまでするのか……!

それはまた……俺みたいな新人以下のぺーぺーが持つのは畏れ多いな……。

とは言いつつも、やはりなるべく強い物を選ぶべきなのだろう。

ただでさえ弱い俺は装備にも頼っていかねばならないからな。

よし! まずは無難に剣から行こうかな。

一番無難そうなショートソードを手に取る。

よろしく頼むなえっと、『エプシロンセイバー』。

……意味はわからないが、君もまた普通のショートソードではないんだな。

「ねえ、受け手が居た方がいいんじゃないかしら? なんだか自分の事を斬りそうで不安なんだけど……」

「そうだな……ここはやはり私が相手をしよう。子供達相手にもなれているからな」

「っすね。避けたらご主人が危ないっすし、アイナなら上手く受けてくれるっすよ」

「いきなり人に振るうとか結構怖いんだが……」

「私を気遣ってくれるのはありがたいが、悪いが武器が良いとはいえ、主君に傷をつけられるほど弱くはないぞ。それに、初めてだと自傷する可能性もあるからな」

「そりゃそうかもしれんが……いや。わかった。じゃあ頼む」

教官であるアイナが言うのだ。これ以上の問答は不要なのだろう。

アイナが俺の前に立ち、自分の剣を抜いて俺に対峙する。

アイナが打ち込んでくるのはないとわかるが、それでも何故か緊張してしまった。

「鎧も着ているし、安心していい。もし当たってもダメージは大した事はないから大怪我もしないぞ。まずは好きに打ち込んでみてくれ」

「わかった……。行くぞ」

アイナの言葉を信じて、行くぞ、てやあああ!

と、意気込んでいた時期が俺にもありました。

「ぜぇー……ぜぇー……ひゅー……ひゅー……」

「主君!? 大丈夫か?」

「全然……だいじょばない……」

無理! 全く無理! ええ!? これ俺の体か!? ってくらい動かない!

一時間どころか30分も耐えられん!

まず、武器が重い! 一度振るのと、振り続けるのでは訳が違うと再認識した!

「スタミナ、無さ過ぎる」

「ちょっと予想外っすね……流石にこれじゃあ全部調べるのも大変っすよ」

「そうね……まずは走りこみからした方が良いんじゃないかしら?」

「それと、主君はすぐに自分用のアクセサリーを作った方がいい。筋力やスタミナを底上げしつつ訓練をした方が効率が良いと思うぞ」

「お、おっけい! そうするわ……」

指輪とネックレス、更にはイヤリングもつけよう。

というか、付けられる物は全部付けよう。

なりふり構わないのなら、そこまでするべきだよね!

正直まだ異世界舐めてました!

ステータスとかスキルがあるからさ、こう……すぐに自分に合った武器を見つけて、アイナ達を相手に特訓しつつ倒されて、もう一回だ! みたいな展開になると思ってた!

でもそりゃそうだよね。俺社会人になってから運動なんて殆どしてないし。

移動は車か電車が基本だし、休みの日はゲームとかカラオケとか飲みに行ったりしてただけだもん!

そんな俺がいきなりこんな重いもの振り回して体力が持つわけが無い!

はい、無難なこの『エプシロンセイバー』君よりも軽い物じゃないと扱えません!

それがわかっただけ、よしとしようか。

「ご主人様、お水です!」

「あり、ありがとー!」

すっかり倒れこみ青空を見上げていた俺をウェンディが抱き起こしてくれて水を飲ませてくれる。

ああ、美味い。汗をかいているせいかもしれないが、いつもよりも更に美味しく感じてしまう。

「ねえ、どう思う?」

「長さは問題なさそう。でも、重いと思う」

「かといって短剣は無理だと思うっすよ? ご主人に超接近戦は流石に……。でもアクセサリーをつければ今のくらいはいけるんじゃないっすかね?」

「余裕があるくらいのほうが良いと思うわよ。次は、槍はどう? 軽い物も多いし、振るから重さで体が持っていかれるのよ。突く一点に絞ればいいんじゃないかしら?」

「中距離という点は悪くないと思うが……重心が安定していない状況だと穂先がぶれるのではないか?」

「それに懐に入られたときに慌てて危なそうっすよ?」

教官たちは真剣に俺のことについて意見を述べ合ってくれているようだ。

今思えばAランクの冒険者と、王都の大会で3位の子に鍛えてもらうのだから贅沢な話だよな。

不甲斐なくてごめんだけど……。

「まあでも、まずはやっぱり問題は体力よね」

「ん。同意」

「そうっすね。地力を固めないと適性もちゃんとわかんないっすよ」

「だがどこを走る? 街中は人が多く難しいし街の外は魔物がいるぞ?」

「あー……できれば俺も街中がいいな。魔物を気にしながら走るとか……多分守られてても集中できないし。早朝ならどうだ?」

「構わないが……この街の朝は早いぞ? 朝市の準備や屋台の準備をしている者たちがいるからな」

んんー……確かに好き勝手に走る訳には行かないか。

それに、走るにしても誰かと一緒なわけだし朝早いっていうのも申し訳が……。

あ……。

「なら……作るか」

「え?」

パンパカパンパンパンパンパーン。

はい。という訳で作りました。

今回は部屋の中でも走ることが出来るルームランナーです。

回転球体をローラー状に加工し、8つのローラーをスライムの皮膜で作られたハードゴムで囲った優れもの。

魔力を注げば自動で足場が動きだし、魔力メーターによる時間設定も可能に!

速度調整はノズルで事前に行えて、スイッチのオンオフで魔力回路を遮断できる上に手すりもついている安全設計です!

お値段なんと、50万ノール。

これは安い! 最近運動不足の貴族のお嬢様や、努力するところを人に見られたくない人に抜群の逸品です!

と、値段を含め冗談でまとめつつも完成である。

試しに走ってみたのだが、うん。悪くないね。

「……主様、また変な物作ったわね」

「そうでもない。これ楽しい」

シロが試走で最高速度を走っているのだが、相当速いにも拘らず笑いながら走っている。

「……ちょっと。替わりなさいよ」

「もう少し」

「次は自分っすよ!」

「私も試したいのだが……」

と、何故か大盛況になってしまったので、もう一台作る事にした。

ちょっと常識外のスピード設定も用意したのだが、普通にこの子達には問題ないのね。流石っす……。

「これは、私達にもいい運動になりそうじゃない?」

「全力疾走を継続するトレーニングになりそうっす!」

「いや、俺の体力向上用だからな? 占領するなよ?」

広くなった間取りの一室に二台とも置き、それだけでは寂しいので他のトレーニング用具も作る事に。

腹筋や背筋、腕力強化用のマシーンなども用意したのだが……。

「ご主人、こんな感じっすかね?」

「宙吊りになって腹筋なんて出来ねえよ……」

俺が用意した傾斜を変えられる腹筋道具を最大傾斜にしても平気で腹筋とかするし。

「主君、これは……こうか? む、結構重いな」

「いや、それ両手で持ち上げるんだけど……」

バーベルは片手で持つ物じゃないんだけど……。

しかも結構重いとかいいつつ、持ち上げてるじゃん。

ダンベルみたいに使えてるじゃん……。

「これは何の為にあるの?」

「柔軟性を促す為に……」

マシンの補助なしで開脚できてるから意味無い……。

ねえ、俺この子達についていけるほど強くなれるのかな!?

なんだかどんどん自信がなくなるんだけど!

それから俺は、毎日走りこみと筋トレを続け、実戦練習の時はアクセサリーを大量に身につけ、体を慣らしながら訓練をすることとなるのだった。