軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5-16 (仮) 王都一武術大会チーム戦 - 一回戦 -

チーム戦一試合目の試合は散々なものであった。

登場時から仲良しトリオが既に喧嘩をしている。

男2、女1の構成からなる『幼馴染トライアングル』なのだが、もうチーム名から予想も立つであろうがまさしくトライアングルであった。

今回は副隊長がマイク(仮)をつけたまま縦横無尽にリング上を駆け回るので音声も入ってくるのだ。

曰く、

『おい、この大会で優勝したらキサラとデートをするのは俺だ!』

『約束したんですか? 僕はしっかりと約束を取り付けましたよ』

『なにー? キサラ、本当か? お前、アイズティが好きなのか?』

『もーリングルスもアイズティもやめてよ! 確かにアイズティとは約束したけど、好きとかは……まだ決められないもん』

と言った感じで仲良しの面影はどこへやら本来ならば仲良し特有の連携などを期待したのだが見るからに無理そうであった。

一方『 俊足の牙(ソニックファング) 』はチャラそうな見た目だが流石はBランク冒険者。

鍛えられた腹筋を露出させ、自信が表面に出ているような若者達であった。

盾と片手剣を持った男が一人、弓を持った男が一人、槍を持った男が1人の近中遠バランスの取れた男だけの構成で、『幼馴染トライアングル』のいざこざをにやにやしながら笑ってみているようだった。

案の定試合は『俊足の牙』の勝ち。

チーム名通りの速さを生かした戦い方で、バラバラな動きの『幼馴染トライアングル』を一人ずつノックアウトさせて試合は終了。

彼らはキサラの耳元で何かを呟くと、遠目で良く見えないが何かを渡し笑いながら帰っていった。

そして、次の試合は我らが『 紅い戦線(レッドライン) 』と同じくAランク冒険者である『 槌精の使徒(ドワフル) 』の戦いが始まろうとしていた。

配られた資料によると『 槌精の使徒(ドワフル) 』はドワーフ三人で構成された冒険者らしい。

全員が槌を握り攻撃的なチームなのだという事が見るからにわかるだろう。

『これまたべっぴんさんじゃのう』

『そうじゃな。アインズヘイルに名を響かせる 紅い戦線(レッドライン) と戦えるとは生きてて良かったのう』

『こちらこそ熟練の 槌精の使徒(ドワフル) と戦えるなんて光栄だ』

『ほう、わしらを知っておるのか』

『当然でしょ。むしろ冒険者として知らないほうがおかしいわね』

『っすね。自分達と同じ地域密着型っすけど、有名人っすからこっちまで活躍は届いてるっすよ』

どうやら『 槌精の使徒(ドワフル) 』も有名な冒険者らしい。

知り合いでは無いが、お互いの事はよく知ってはいるみたいだな。

ドワーフの年齢が見た目どおりなら60歳は超えてそうなんだが、現役で冒険者なのか。

「 槌精の使徒(ドワフル) は王都から南東の果てにあるドワーフと鍛冶の街『ブラックロック』のAランク冒険者じゃな。離れてはいるが『土地喰らい』討伐などの功績は昔から王都にも轟いている」

「土地喰らい?」

「うむ。読んで字の如く土地を喰らう魔物じゃ。土喰らいという蜘蛛が突然変異した姿と言われているのじゃが。まあ、サイズは桁違いじゃがな」

「良くやった 槌精の使徒(ドワフル) !」

「な、なんじゃあいきなり!?」

槌精の使徒(ドワフル) さん大きな蜘蛛を退治してくれてありがとう!

俺が出会う前に退治してくれて有難う!

その調子で蜘蛛を滅ぼしてくれ!

「主は虫が大の苦手。だから大きな蜘蛛を倒したと聞いてテンションが上がってる」

「なるほどな……。それにしても、いきなり叫ぶから驚いて座り心地が変わってしまったではないか」

もぞもぞと座り心地のいい場所を探すアイリス。

シロはさすがのバランスで、俺が大きな声を出しても位置が変わるような事はなかったようだ。

『……ねえ、なんか主様が 槌精の使徒(ドワフル) を褒めてるんだけど』

『ふふ、おおかた土地喰らいの話でも聞いたんじゃないか?』

『なるほど、そういうことね』

『なんじゃ、お主ら奴隷となったと聞いたが本当だったのか』

『ああ。今日は私たちの主君が見ているからな、悪いが勝たせてもらうぞ』

『ふむ、思ったよりも待遇は良いようじゃな』

『当然っす。ご主人は優しくて立派なお人っすから!』

『そうか。まあ酷い扱いを受けておれば、そんな笑顔はできんだろうからな。良い主なようで良かったよ』

『心配ありがと。でも、前よりもいい生活をさせてもらっているわよ』

『そうかそうか』

なにやらお互い笑いながら談笑しているようだ。

ちょっと心配していたんだが、ソルテも緊張が解けているように見える。

『さて、正々堂々全力でぶつからせていただこう』

『こちらこそ、若さに刺激をもらおうかのう』

『それでは、試合開始ぃぃいいい!』

副隊長の号令と同時に『 槌精の使徒(ドワフル) 』が中央に一人を前にして密集し、しっかりとお互いをフォローできるようにフォーメーションを組む。

『まずは自分からっす!』

フォーメーションが出来上がるとほぼ同時に速攻をしかけたレンゲが中央のドワーフに拳を振るうが、槌の柄で楽々と防がれた。

そして、すぐ側にいる二人がレンゲをめがけて槌を縦に振るうとレンゲはバックステップで避ける。

避けられた事によって地面に落とされた槌が地面を少し砕くと、すぐさま陣形を崩さぬように元のポジションに戻っていった。

『あっぶなっす。あれ当たったら一撃でアウトっすよ』

『むう、はずしたか。やはり重さが足らんな』

『それはあっちも同じじゃろうて、じゃがあの拳娘は注意せねばならんな』

『じゃな。リーチの差はあれど、拳娘は普段どおりの力を出せておるようじゃ』

レンゲの一撃を槌で受けたドワーフが槌から一度手を放し、痺れたのか手首をプラプラと振るう。

レンゲは元々攻防を備えたガントレットなので、模擬戦用の物を使用していない。

刃先がついているわけでもないので防具扱いとなっているようだ。

『開幕は油断するかなって思ったんだけどね、まあそこは流石に経験が違うわよね』

『っすね。一人叩ければ楽だったんっすけどね』

『まあ、そううまくはいかんさ』

作戦は失敗したようだが、焦っている様子はない。

むしろ噂どおりの実力だとわかり気を引き締めなおしたように思える。

『速くは動けんからな。後の先を取らせてもらうぞ』

『随分と硬そうだがそれでも押し通らせていただこう』

『はっはっは。そう簡単にはいかんぞ?』

アイナは剣を中心に構え、相手の真正面に立つ。

そのサイドをソルテとレンゲが意気揚々と駈け進んでいく。

少し遅れてアイナが駆け出し、正面のドワーフに剣を振るう。

その一撃は易々と留められ、押し返されるが追撃は来ない。

『……ふむ。まずいの』

見ればいつの間にか一対一の状況になっていた。

レンゲがステップインで向かって左側にいるドワーフに近づくとボディの辺りにフックの要領で拳を横に振るい、槌によって防がせるとその槌を掴んで投げ飛ばし距離を取らせていた。

ソルテは、槌の距離より遠い位置から優位を保ったまま槍で強烈な一撃を放つ。

この攻撃自体はいなされてしまうのだが、そこからは猛火の勢いが如く連撃を繰り返していた。

相手を防御一片に固め徐々にフォーメーションを崩していくのが上からは良く見えた。

『じゃがな、一対一に持ちこまれたとはいえわしらもやるもんじゃぞ?』

『ああ、わかっている油断はしないさ』

アイナは今度は腰の横で剣を構えそのまま近づくと横に振りぬく。

受け止めろといわんばかりに丸わかりな一撃だ。

そしてその一撃に対して自分も槌を横に振るい剣にぶつけてきたドワーフが力比べといわんばかりにニヤリと笑う。

だが、その顔はすぐに驚愕へと変わり、ドワーフはバランスを崩して数歩分吹き飛ばされる。

『かぁ! なんという馬鹿力か』

『私は器用ではないからな。ならば一撃に重きを置けばいいだろう?』

『そうだな。わしもそう思う』

ニヤリと楽しそうにドワーフが笑い、アイナも答えるように微笑んだ。

『じゃがわしらは大地の民であるからな。大地の上に立つ以上、わしらが有利じゃ』

アイナが相対しているドワーフが他のドワーフに目配せをすると、他の二人は力いっぱい槌を振るいレンゲとソルテに距離を取らせる。

そして三人が手を上にあげると、大きな声で叫んだ。

『『『 母なる大地の加護(マザーアース) 』』』

すると大分前、隼人の『 光の聖剣(エクスカリバー) 』で街道を破壊した後、街道を直していた際にエミリーの側で見た土色の光が三人を包み込み始める。

それに伴い、アイナ達三人は警戒をしたように構えを取り直した。

「なんだ? 魔法か?」

「 母なる大地の加護(マザーアース) ……。ドワーフの固有スキル。母なる大地に宿る土精から加護を受けて身体能力を大幅に向上させるスキル」

エミリーがぽつりと呟いて教えてくれる。

どうやら魔法ではなくドワーフ族だけが使えるスキルのようだ。

「同時に発動するドワーフの数が多ければ多いほど土精の加護を多く受けられる。だからこそ、彼らはドワーフの街では大きな力を発揮しているの。でも……」

エミリーが見つめる先を見ると確かに先ほどよりも強くなって……るのか?

相変わらずレンゲもソルテも攻め手を緩めず、二人の相手をしているドワーフは防御一辺倒に思えるのだが。

「やっぱり、土精が減っているから加護が足りてない」

「減ってる……?」

「そう。少し前から精霊の数が激減しているの。私は隼人と旅をしながらその原因を探しているのよ」

エミリーの顔は前を向いたままだがその眼差しは真剣そのものであった。

この問題は相当に根が深く、原因はまだ判明していないのだろう。

『かぁー! これでもまだ力負けするか! 一体どんな馬鹿力なのだ!』

アイナとドワーフは何合も武器を合わせているのだが、アイナが力負けする事はなく逆に加護を得たはずのドワーフがバランスを崩しているようであった。

『ふむ。だが、決定打には至らないな……』

『お前さん真面目だろう? 攻撃もフェイントも正直すぎるぜ』

『そうだろうな。だがまあ、私は私の役目をこなすまでだ』

『役目……』

『ああ、行くぞソルテ、レンゲ』

『っす!』『当然でしょ!』

『なっ! アル、フレドリック! やられたのか!!?』

ああ、これでお仕舞いか。

一人と二人に挟まれた形となったドワーフが挟撃を受けて倒れる。

レンゲは早い段階で相対していたドワーフを投げ飛ばして場外に落すと、ソルテが相手をしていたドワーフを背後から襲いノックアウトさせていた。

そして残った一人を三人で……といった結果である。

「うむ。先ほどの試合と比べて見ごたえのある試合であったな」

「だな。三人とも格好良かった!」

勝因としてはレンゲがノックアウトではなく場外を狙った事だろうか。

頑丈なドワーフを倒すのではなく場外へと放り出し、数の優位を確保した判断が良かったのかもしれない。

『勝者! 『 紅い戦線(レッドライン) 』!!』

『『『『『『うおおおおおおおおおおお!!!!』』』』』』

副隊長による宣言を受けると歓声が沸き立ち、それに答えるように手を上げるアイナ。

ソルテとレンゲも手を上げて答えると俺と目が合い、レンゲは飛び跳ねて自分をアピールしているようであった。

俺はよくやったという意味を込めてサムズアップでこたえると、三人はハイタッチを交わしてから一礼し、リングを去っていった。