軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白神祭中層①

フェイトさんからVIPカードを受け取ってから中層に移動すると、そこはそれなりに賑わっているがやはり下層と比べて空いており、移動などにも不自由はしなさそうな感じだった。

そして俺たちの前には、ひとりの女性……おそらく天空神さんと思われる人物が居た。

スカイブルーのセミショートヘアと同色と思われる瞳、スラッとスレンダーな体形で身長は160cm前後といったところだろうか?

民族衣装っぽい……なんというか、アラビアとかその辺りを思い浮かべるような模様の入ったズボンと薄手の上着が特徴的な感じだ。

その天空神さんは俺たちを見て、フッと微笑みを浮かべたあとで口を開く。

「ようこ――」

「「トーレ姉様!!」」

「――そ……いら……しゃ……」

しかしてその発言は絶妙のタイミングで聞こえてきた声に遮られる。

「あ、チェントにシエン、やっと合流で来たね」

「それはこっちの台詞ですよ!」

「あれだけ事前に言っておいたのに、なんですぐにはぐれるんですか!!」

「……」

駆け寄ってきたチェントさんとシエンさんがトーレさんと会話を始め、俺たちに話しかけるタイミングを完全に逃した天空神さんは、なんとも言えない表情を浮かべたあと……サッと視線を逸らして最初に居た位置に戻り、なやらメモ帳のようなものを確認し始めた。

会話に加わり損ね、置いてけぼりにされるという大変恥ずかしいやつである。視線を逸らしながらメモ帳を見ている天空神さんの頬がほんのり赤く染まっているのは決して気のせいではないだろう。

まぁ、チェントさんとシエンさんも悪気があったわけではなく、それだけトーレさんを心配していたのだろうから……間が悪かったと、そう思うしかない。

そんなことを考えつつ、しばらくチェントさんとシエンさんとトーレさんの三人の会話を眺めていると、話はひと段落したみたいだった。

天空神さんもそれに気付いたのか、サッとメモ帳をしまい俺たちの方に近づきながら仕切りなおすように口を開く。

「改めて、よう――」

「お~い、カイちゃん! ごめん、ちょっと言い忘れたことがあってさ」

「……」

再び会話を遮られパクパクと口を動かしたあと、サッと視線を逸らす。

「……よ、よ~し頑張るぞ! う、うん、やっぱり気合を入れておかないと……大事な仕事ですから。も、もも、もっと大きな声で気合を入れたほうがいいかなぁ……よ~し、頑張るぞ~! お~!」

もう天空神さんが可哀そうすぎて見てられないんだけど!? 滅茶苦茶恥ずかしかったのだろう……真っ赤な顔かつ涙目で、誰にでもなく「さっきのは挨拶じゃなくて気合を入れようとしただけ」みたいな言い訳を、虚空にむかって行っていた。

しかも、今度に関しては上司ともいえるフェイトさんなので、文句の言いようもないわけである。

なんとも言えない気分になりつつ、こちらに寄ってきたフェイトさんに顔を向ける。

「それで、フェイトさん……言い忘れたことって?」

「カイちゃんは18時からシャローヴァナル様のところに行くんだよね。その前に時空神たちが渡したいものがあるから15分前くらいに上層に来てほしいってさ」

「上層のどこでもいいんですか?」

「うん、来れば分かるしね」

「分かりました。じゃあそのタイミングで向かいますね」

「よろしく~じゃ、私は戻るね~」

言い忘れていたことを伝えに来たフェイトさんから話を聞き、ようやく天空神さんと話せると思い、そちらを向くと……天空神さんもなんとか、俺とフェイトさんが話しているうちに持ち直したのか、三度微笑みを浮かべる。

「こほん、よ――」

「おっ、いたいた! お~い! カイト、リリア嬢!」

「ラグナ陛下?」

「……」

そして、三度言葉を遮られた。今度現れたのはラグナさんであり、意外な登場にリリアさんたちもくびをかしげているが、俺はそれよりも天空神さんの方が気になっていた。

「……私なんて……どうせ、私なんて……」

て、天空神さあぁぁぁぁん!? 泣いちゃってるじゃん! 膝抱えて地面にのの字書き始めちゃったじゃん!?

なんというか、間が悪すぎる。しかも、今度現れたのも人界の国王であり、立場的に後回しにしにくい相手である。

……とりあえず、先にラグナさんの話を聞くことにしよう

「ラグナさん、どうしてここに?」

「いや、ヒカリからハミングバードで、フォルスがお主らの世話になったときいてな。いや、すまんかった。アヤツを放置する気はなかったのじゃが、少しトラブルがあってのぅ。手間をかけて申し訳なかった」

「ああ、いえ、気にしないでください」

「またこの礼は後ほど必ず……っと、忙しくてあまり時間がないのじゃ、慌ただしくてすまんが、ワシはこれで」

「あ、はい。お疲れ様です」

本当にフォルスさんの件の謝罪に来ただけだったみたいで、ラグナさんは手短に告げたあとで軽く手を振って去っていった。

いや、まぁ、なんというか……どうしよっかなぁ、この空気。

別に誰が悪いわけでもないんだ。天空神さんはまだ俺たちから少し離れた場所に居たし、割り込んだ方たちも気付かなかっただけだろう。

上級神自体あまり見る機会はないと聞くし、フェイトさん以外は天空神さんであると気付いてすらいないんじゃないかと思う。

いや、本当にタイミングが悪かった……それだけなのではあるが……。

「……私なんて……私なんて……」

三度絶妙のタイミングで話を遮られて放置されるという、なかなかにキツイ羞恥プレイを味わった天空神さんのメンタルが多大なダメージを負っているので……どうフォローすべきか、非常に頭を悩ませる。