軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三人で縁日へ④

マキナさんの提案により、三人で遊ぶことになり、俺とアリスはテンション高めなマキナさんに続くように縁日の屋台に向かっていく。

しかし、こういうまさに縁日って感じの風景は結構懐かしさを感じる。トリニィアでもいろいろなお祭りに参加したし、縁日っぽい雰囲気の出店とかもあった。

ただやっぱり微妙に違うもので、この提灯や出店の灯に照られた独特な雰囲気はまた一味違うように感じられる。

「しかし、結構こういう出店ってのは地域色出るもんですよね……例に挙げると『サメ釣り』とか」

「サメ釣り?」

「おや? カイトさんはご存じないですか?」

「俺が昔いった縁日には無かったような気がするなぁ……あったけど見逃してただけかもしれないけどな。それで、サメ釣りって? まさか本物釣るわけじゃないよな?」

たしかに縁日の屋台ってのは地域や祭りによって様々だ。俺が昔いった縁日ではウナギ釣りってのがあった気がする。値段が高かったので実際にやったわけではないけど、変わった屋台だなぁという風に記憶には残っていた。

けど、サメ釣りというのは聞いたことが無い。まさか、サメを釣り上げて家で飼うなんてできるわけないし、本物ではないのだろうが……。

「サメ釣りは、一種のくじ引きみたいなものだよ。サメのおもちゃを釣り上げて、当たりはずれがあって、当たれば景品がもらえたりって、そんな感じのだね」

「へ~サメのおもちゃを釣り上げるから、サメ釣りですか……」

マキナさんの説明に頷きつつも、なんとなく「なんでサメ?」という疑問も浮かぶが、そういうのは突っ込んでもキリがないのでやめておこう。

サメのおもちゃが安かったとか、たくさん余ってたとか、そんな感じだろう。

「サメ釣りはすぐ近くには無いけど、あそこに型抜きの屋台はあるよ」

「型抜きですか……本とかで見て、そういう屋台があることは知っていましたけど、やったことは無いですね」

「おっ、じゃあせっかくだし挑戦してみよう!」

型抜きというと、最近はあまり見ないらしいがヌキ飴とかって名前の型……模様の付いた薄い飴をピンなんかでチクチク刺しながら模様を抜いていって、綺麗に抜けたらお金とか景品が貰えたはずだ。

かなり割れやすくて難しいとか、そんな風に聞いたことがある。手先の器用さが重要って感じかな?

するとそのタイミングで、アリスが何かを思い付いたような表情で口を開く。

「じゃあ、せっかくですし三人で誰が一番綺麗に出来るか、勝負でもしますか?」

「……どう考えても器用さの勝負でお前に勝てる気がしないんだけど……まぁ、でもせっかくだしやろうか」

「決まりだね。それじゃあ、三人で型抜きをして……店番の 楽園(エデン) に採点させて、一番得点が高かった人が勝利ってことで!」

「!?!?!?」

……簡単に説明は受けたけど、マキナさんが操作していない状態の灰色の目のエデンさん……う~ん、紛らわしいので普段のエデンさんとの区別のために『楽園さん』と呼ぼう。

ともかく、その楽園さんが一瞬『絶望に染まり切ったような表情』を浮かべた気がするんだけど……いまは無表情だし、気のせいだろうか?

少し気にはなったが、とりあえずは型抜きということで、公平な勝負をするために三人とも同じ柄の型を受け取って型抜きを開始する。

……けど、この型って……思った以上に小さい。模様は木のような形だけど……これ、本当に針で綺麗に取れるのか? なんか即割れそうな気がするんだけど……。

初めての挑戦ということでおっかなびっくり、端の方から少しずつ削っていくが……ちょっと油断すると想像以上に割れるので、これはかなり難し……あっ、枝一本折れた。

なんかさっそく一ヶ所失敗したんだけど、これ難しくない? えっと、アリスとマキナさんは――もう終わってる!?

しかも、ふたり共ほぼ完璧と言っていいぐらいに綺麗な形である。いや、駄目だろこれ、スペックに差があり過ぎて勝負にならないんだけど……。

ふたり共俺が終わるのを待ってくれてるみたいだったので、俺は最下位を確信しつつも型抜きを進めていく。

最終的には、まぁ、初めてにしてはそこそこ出来た方じゃないかと思うんだけど……二か所ほど折れたのと、ひびが入ってる個所もあるので、これで景品を貰うことはできないだろうという完成度だった。

「……お待たせしました」

「我が子、初めてにしては凄く上手だと思うよ」

「あはは、ありがとうございます。さすがにふたりには叶いませんが……」

「じゃあ、さっそく採点してもらおうか……それじゃ、初めは我が子のやつから!」

笑顔でフォローを入れてくれるマキナさん……暴走さえしてなければ、優しい方である。そうなんだよなぁ、暴走さえしてなければ、優しくていい人なんだよなぁ……本当に、暴走さえしていなければ……。

そんなことを考えつつ、採点役である楽園さんに視線を向けると、楽園さんは俺の型を見て告げる。

「100点です」

「は? いや、あの……欠けてるんですが?」

「100点です」

「……ヒビとかも――「100点です!!」――あっ、はい」

……有無を言わせない強い口調で100点宣言されたんだけど!? いやいや、さすがにそれはおかしいと思うんだけど、楽園さんの表情は真剣そのものである。

え~と、100点満点とかじゃなくて、もっと上があるとか……そういう雰囲気でもないんだよなぁ。いったいどういうことだ?

「……カイトさん、あんまりいじめないであげてください」

「え?」

「いいですか……その方にとってカイトさんは『絶対的な上司が溺愛してる存在』なんですよ。ケチ付けられると思いますか?」

「……あ、あぁ……なるほど、理解した」

言ってみれば、シロさん同伴で神族に採点を求めているような状況か……なるほど、それでさっきあんな絶望的な表情を浮かべていたのか……。

楽園さんにしてみれば……絶対的な上司、その上司の親友、その上司が溺愛している俺に優劣を付けなければならない役を振られたわけか……そりゃ無理だ。全員満点で逃げる以外の道はない。