作品タイトル不明
究極の神⑦
ネピュラが世界樹の精霊となって快人の元に現れた翌日。初日はアレコレと状況整理に忙しかったが、一夜明けて少し落ち着いてからはネピュラについて検証することになった。
やってきた快人に笑顔で挨拶をしたあと、ネピュラは快人の質問に答えていた。
「……世界樹は成長したわけだけど、この世界樹にも果実は生るのかな?」
「果実ですか? こんな感じでしょうか?」
通常とは見た目の異なる世界樹を見上げながら尋ねる快人の言葉を聞き、ネピュラは世界樹の枝を一本伸ばして快人の目の前で果実を作り出した。
この程度のことであれば、格落ちしていようとも問題なく行える。
ネピュラが作り出した世界樹の果実は、まるで星空を閉じ込めたかのような透き通った美しい果実で、それを受け取った快人は興味深そうに見ながら口を開く。
「……この果実は、普通の世界樹の果実とは効果が違ったりするのかな?」
その言葉を聞いて、ネピュラは高速で思考を巡らせる。
(効果? いや、別にそんなものどうとでもできるが? ……そもそも、元の世界樹の果実の効果が分からん。いまの妾には全知の力もなく、調べることも出来ん。まったくなんとも不便な話だ。しかしこれ以上主様――下僕を待たせるわけにもいかない)
そもそもの世界樹の果実の効果を知らない故に悩んだネピュラだったが、僅かの間で考えをまとめて口を開く。
「申し訳ありません、主様。そもそも妾は、通常の世界樹の果実の効果を知らないので……」
「あっ、そっか、ごめん。えっと、普通の世界樹の果実は食べると傷や魔力が回復するって効果があるんだ」
ネピュラは現状はしかと受け止めるタイプであり、全知の力が無い現状では知らない情報を調べるすべはないので、知っている相手に尋ねるという手段を取った。
プライドが高いように見えて、彼女はそう言った部分は柔軟であり、己の落ち度はちゃんと認める性格だ。
(なるほど、治癒効果のある実か……別に同じ効果でもいいとは思うが、主様――下僕の表情や口振りから察するに違う効果を期待しているように思える。であるなら、期待には応えるのが絶対者……同じように身体や魔力に作用する力で、別の効果を付与して……)
快人の説明に頷きつつ、己が渡した世界樹の果実に効果を付与する。
「なるほど、妾の世界樹の果実は『食べると短時間身体や魔力が強化される』というものなので、通常とは効果が異なりますね」
「短時間の能力強化か、それはまた凄そうだね。教えてくれてありがとう、ほかにもいくつか細かいことを聞いても大丈夫かな?」
「はい! 妾に分かることであれば、なんなりと!」
効果を聞いた快人は頷き、検証はあとで行おうと考えながら他にもネピュラに質問を続けていった。
世界樹の突然変異によって生まれた精霊、ネピュラ……最初は驚いたし、リリウッドさんも慌てて駆けつけるほどにバタバタしたのだが、一夜明けるとある程度落ち着いた。
本当に幸いだったのは、ネピュラが素直でいい子で検証などにも協力的だったことだ。果実についても複数作ってもらったので、後ほど検証してみることにしよう。
ネピュラはクロやリリウッドさん曰く凄まじい才能を秘めているみたいで、将来が非常に楽しみである。
現時点では本体である世界樹からあまり離れることはできないみたいだが、リリウッドさん曰く成長すれば徐々に行動できる範囲は広がっていくらしい。
イレギュラーな事態といえばイレギュラーな事態だが、今回は平和的に纏まりそうだとそんな風に考えつつ、ベルのブラッシングをしていると、ブラシを手に持ったネピュラが近づいてきた。
「主様、妾もお手伝いします」
「ありがとう…‥それじゃあ、首の後ろの毛をブラッシングしてあげてくれるかな?」
「はい! 妾にお任せください!」
グッと小さく拳を握って頑張るぞといった感じのポーズをとるネピュラは大変可愛らしく、見ていて微笑ましい。
それにベルをブラッシングする手つきも初めてとは思えないほど見事だ……センスがいいのかもしれない。
「ベルフリード、もう少し頭を低く」
「ガゥ!」
しかし、それとは別に少し驚いたのがベルがネピュラのいうことを素直に聞いているという点だった。これがなかなか珍しい。
というのも、ベルはリンと比べてかなりプライドが高く懐いていない相手の言うことはほぼ聞かない。しかもその懐く相手も少なく、ジークさんとイルネスさん、あとはアリスぐらいにしか懐いていない。
一応事前に俺が言うことを聞くようにと言い聞かせておけば従ってくれるのだが、そうじゃない場合に従う相手は非常に限られる。
特に俺を除いて、自分より弱い相手の言葉に従うのが嫌みたいで、唸ったりすることもある。圧倒的に実力が上の相手に関しては、本能で実力差を理解しているのか割と従順だったりするのだが……。
「主様?」
「ああ、ごめん。ネピュラのブラッシングが思ってたよりずっと上手で驚いてたんだ」
「ふふふ、お任せください! 妾は絶対者ですので、この程度は造作もないことです」
「そっか、頼もしいな」
エッヘンといった感じで胸を張るネピュラを見て、再び微笑ましい気分になりつつ、そっとネピュラの頭に手を伸ばして撫でてみる。
ネピュラは一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに嬉しそうな笑顔を浮かべていた。