軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

究極の神②

人界や魔界では深夜と言っていい時間帯でも青空の広がる神界、その神域ではシャローヴァナルとエデン、ふたつの世界の頂点が向かい合っていた。

「それで、シャローヴァナル? 話というのは?」

「一応貴女にも伝えておこうと思いまして……快人さんの家に、番犬を作ることにしました」

「番犬を作る?」

「ええ、快人さんがいる時ならば私やアリスも注意しているでしょうが、快人さんが不在の際に家を守るものが居てもいいのではないかと思いまして」

「……ふむ、なるほど、言いたいことは分かります」

正直、快人が不在であっても手を出そうとするような愚か者がいるとも思えなかったが、それでもシャローヴァナルの理屈は一応理解できたエデンは頷いた。

そして同時に、ソレをわざわざ己に伝えるということは、不意に見つければエデンが警戒するようなレベルの存在を作るということだろうとも予想した。

なぜなら、快人の屋敷にはエデンやシャローヴァナルから見れば大したレベルではないものの、世界基準で言えば屈指と言っていい実力者が揃っているので、その実力以下の番犬を作る意味はない。

「丁度快人さんの家の庭に世界樹があるので、それに精霊という形で番犬を宿らせました」

「もうすでに作った後なのですね。貴女が新しく創造した存在ですか?」

「いえ、違います」

エデンの質問に対して首を横に振ったあと、シャローヴァナルは少し間を開けてから告げる。

「…… 物語の終わり(エピローグ) で終わらせた存在は、私であれば復活させることができます」

「ええ、かつて貴女から聞いたことがありましたね。なるほど、つまり過去に 物語の終わり(エピローグ) で終わらせた存在……過去に貴女が消した数多の存在の内から、適任を選んだというわけですか……それは……大丈夫なのですか?」

「と、いいますと?」

「私や貴女もそうですが、世界の創造主……いえ、創造主でなくとも全能級などの存在は、その力故に我の強い……よく言えば個性的な、悪く言うなら身勝手な者が多い。その番犬にした者は大丈夫なのですか?」

「実力は申し分ないと思いますよ。私が明確に自我を獲得する前に終わらせた存在の中でも、記憶に残っていた存在です」

シャローヴァナルのその言葉を聞いて、エデンは少々驚いたような表情を浮かべた。

「……かつての貴女が? あの何者にも興味が無かったころの貴女が覚えていた相手? いったい……何者ですか?」

「ネピュラという名前ですね」

「…………………………は?」

シャローヴァナルが告げた名前を聞いて、エデンは唖然としたような表情を浮かべる。

「……ネピュラ? そ、それはまさか、数多の多重世界を統べ、究極神と呼ばれた……あ、あの、ネピュラですか?」

「さあ、そこまでは知りませんが、印象に残るほど飛びぬけて強大な力を持っていたことは間違いないです」

「……」

エデンは現実を受け入れないかのようにこめかみに指を当てて天を仰いだ。彼女自身も常識外れの存在ではあるが、そんな彼女をもってしても理解に時間を要するほど衝撃的な内容だった。

しかし少しして、エデンはなにかに気付いた表情を浮かべて、少し慌てて口を開く。

「ま、待ってください! この世界は、他の世界と比べてかなり小規模です。仮に私の本体をこの世界に持ってきたら、その力に耐え切れず世界の方が潰れてしまう。ネピュラは私よりさらに桁違いの力を持っています。コップに海を入れるようなものです! 到底この世界が耐えられるとは……」

「ああ、それは大丈夫です。『格落ちさせた』ので」

「……はい?」

「いえ、ですから、ネピュラの力を『準全能級』レベルまで落として、固有の能力に関しても、制限を加えました」

「………………えっと、ちょっと待ってください。理解が追い付かないので……そ、そのようなことが可能なのですか?」

頭痛を抑えるように頭に手を当てながら聞き返すエデンに対し、シャローヴァナルはあくまで淡々とした様子で告げる。

「 物語の終わり(エピローグ) は一度終わらせた存在を復活させる際に、『好きなように書き換える』ことも出来るので、調整しました……言ってませんでしたか?」

「初耳です……というか、なんでもありですか……貴女のソレは……」

どのような存在でも、どのような能力を持っても抗うことのない絶対的な終わりの力というだけではなく、一度終わらせた物語はシャローヴァナルの望むままに改変できる。しかも究極神ネピュラの存在を改変できる程ということは、その改変に関しても誰も抗うことはできないのだろう。

エデンは遠い目をして、神界に広がる青空を見上げた。

「……もうやだこの論外……まったく自重しない」

「うん?」

首を傾げるシャローヴァナルを無視して、エデンは疲れ切った表情で青空を見つめ続けていた。

(……この件が終わったら、アリスとなんか美味しいもの食べよう。あの時の縁日を再現して、一緒にたこ焼き食べよう……あぁ、そうだ、愛しい我が子も呼ぼう……癒しが、癒しが欲しいよ)