軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3の名を持つ太陽②

立ち話というのもアレなので、三人を応接室に通してイルネスさんに紅茶とお茶菓子を用意してもらった。

ちなみにこの応接室は、恋人たちと両親の顔合わせに使った……アイシスさんの死の魔力を制御できる機能がある部屋とはまた別の部屋である。

家が無駄に広いだけあって、部屋数は多いのだ……ほぼ使ってないけど……。

チェントさんとシエンさんはなんというか、ガチガチに緊張している感じで、背筋をビシッと伸ばして席に座り、傍目に見ても肩に力が入っているのが分かる感じだった。

いや、まぁ、来訪した時点からかなり緊張している感じはしていたが、ちょっと緊張し過ぎな気もする。たぶん、俺がクロの恋人であるという部分が影響しているのだろうが……。

そして、対照的なのはトーレさんであり、こちらは完全にリラックスしている。

「いいクッキーだね! それに紅茶も美味しい!」

「……トーレ姉様、お願いですから、少しは遠慮してください」

美味しそうにクッキーを食べていたトーレさんに、チェントさんが苦言を呈するが、もちろんトーレさんは気にした様子もない。

まぁ、俺としてはトーレさんのように自然体の方がありがたい。

「トーレ姉様、今日なにをしに来たか、ちゃんと分かってるんですか?」

「え? 遊びに来たんじゃないの?」

シエンさんの言葉にトーレさんは不思議そうに首を傾げる。うん、まぁ、トーレさんは最初っから一貫して遊びに来たと言っていたし、ノリも完全に友達の家に遊びに来た感じだ。

その言葉に軽く頭を抱えるような仕草をしながら、チェントさんが口を開く。

「……今回はミヤマカイト様に改めての挨拶と、謝罪に来たんですよ?」

「挨拶は分かるけど……謝罪? なんの?」

「結果としてトーレ姉様の捜索に手を貸していただくことになり、ご迷惑をおかけした謝罪です」

「……う~ん」

チェントさんとシエンさんの言葉を聞いたトーレさんは、笑顔を引っ込め微妙そうな顔をした。

「トーレ姉様も、クロム様の恋人であるミヤマカイト様にご迷惑をおかけしたわけなんですから……」

「違うよ」

「「え?」」

トーレさんが呟いた声は、静かではあったが先ほどまでの緩さはなく……どこか重さを感じる真面目な声で、思わずといった感じでチェントさんとシエンさんが硬直する。

「……『クロム様の恋人であるカイト』じゃないよ。『私の友達のカイトはクロム様の恋人でもあった』……そこはたぶん、間違えちゃ駄目なところだよ」

「……トーレ姉様?」

「もちろん相手の交友関係も、相手を推し量る上で大事なことだとは思う。カイトがクロム様を救ってくれたことには、私だって本当に感謝してる……だけど、クロム様の恋人ってことえ、変えなくていい対応まで変えるのは、間違いなんじゃないかな?」

そこまで告げたあとで、トーレさんは紅茶を一口飲んでから優し気に微笑みつつ、諭すように告げる。

「……カイトは私を探すふたりを手伝ってくれた。つまり助けてくれた親切な相手だったわけだよね?」

「え、ええ……」

「その通りです」

「それが、クロム様の恋人だって分かったとたん……『助けてくれてありがとう』が『迷惑かけてごめんなさい』に変わっちゃうのが……カイトを尊重してるって言えるのかな?」

「「ッ!?」」

トーレさんの言葉にチェントさんとシエンさんは衝撃を受けたような表情を浮かべる。やっぱり、トーレさんは物事の本質をよく見ているというか、相手のことをすごく分かってる感じがする。

たしかに、そこは俺も思っていたというか……いくらなんでも畏まり過ぎじゃないかとは感じていた。

「だからさ、今回は……たまたま助けてくれた相手が、クロム様の恋人でもあったから、改めて自己紹介とお礼ついでに遊びに来たってことでいいと思うな。相手次第な部分もあるけど、今回の件に限っては、ふたりももう少し肩の力を抜いてカイトと接した方がいいよ」

「……チェント」

「うん、どうやら……謝らないといけないのは、トーレ姉様じゃなくて私たちだったみたいだね」

ニコニコと笑顔を浮かべながら告げるトーレさんのアドバイスを聞いて、一度顔を見合わせたあとでチェントさんとシエンさんの肩の力が少し抜け、表情が和らいだように見えた。

そしてふたりは頷き合ったあとで、俺の方を向いて口を開く。

「申し訳ありません、クロム様の恋人と意識するあまり、かえって失礼な態度をとってしまいました」

「……ご迷惑でなければ私とチェントもトーレ姉様のように、友人として貴方と接したいと思いますので、ミヤマさんとお呼びしても構いませんか?」

「はい、もちろんです」

「改めて、昨日はトーレ姉様を探す手伝いをしていただき、ありがとうございました」

「チェントも私も、本当に助かりました」

そう言って話すふたりの表情は先ほどより柔らかく、ずっと接しやすいような気がした。それを見て、満足そうに頷いたあと、トーレさんは再びクッキーに手を伸ばす……ひとりで全部食べちゃいそうなペースである。