軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新人冒険者と伝説の義賊⑧

巨大ロボットに衝撃と感動を受けつつも、その後は特にコレといった事態が発生することはなく、引き続きハプティさんの指導を受けるふたりを見学する感じになった。

勝手なイメージではあるが、RPGのエンカウントみたいに魔物と遭遇するかと思っていたが……こちらからあえて探さなければ、魔物はおろか野生の動物ともあまり遭遇しない。

まぁ、考えてみれば必然かもしれない。魔物も別に人間を見かけたら即襲い掛かるような凶暴な種ばかりではないだろうし、むしろ普通は逃げようとするのかもしれない。

ただ、ハプティさんの説明では魔物は動物に比べて縄張り意識の強い者が多いとのことだ。

例えば先ほどアリスちゃんロボに瞬殺されたワイバーンもかなり縄張り意識は強いらしい。しかも空を飛ぶため行動範囲が広く、なおかつ繁殖力もあって群れを作るのでかなり危険な魔物である。

ただし先ほどのような一匹だけ群れからはぐれたワイバーンなどは、基本的に群れに帰ることを優先するので、こちらから手出しをしない限りはそうそう襲い掛かっては来ないらしい。

ますますさっきの一撃は完全にワイバーンが被害者じゃないか……。

「……さて、魔物や戦闘関連についてはこんなところかな。次は野営とかそういうことをしてみよう。今回は泊りがけってわけじゃないから形だけだけど、休む時とかのコツや避けなければいけない地形とかも詳しく説明するよ」

これもまた冒険者にとっては必須のものといえるだろう。なにせ魔物が生息しているような場所は人里離れた場所が多く、今回のここもそうだがアクセスがいいとは言えない。

となれば野宿とかをする機会も出てくるだろうし、ソレについての知識や経験は絶対に必要になってくる。

俺が持っているような携帯式の住居というものも存在することは存在するが、これはかなり開けた空間が無ければ設置できないし、そもそもかなり高額である。

葵ちゃんと陽菜ちゃんはマジックボックスを持っているので、テントとかを収納しておいて必要に応じて設置するような形が現実的だろうか?

焚火とかに関しては魔法具で補えるし、マジックボックスがあれば食料の携帯は容易、ランダムボックスと同じ素材を使った使い捨てマジックボックスもあるらしい。

そう考えると俺たちの居た世界よりは、サバイバルといっても楽そうではある……まぁもちろん、だから誰でも即出来るというわけではないだろうが。

う~ん、葵ちゃんと陽菜ちゃんの初戦闘も完了したし、時間的に考えてもこの野営の実習が締めになりそうな気がする。

コツ的なものをハプティさんから口頭で教わって、実際にアレコレ設置したり、片付けしてみて終了かな? となると、あと1~2時間といったところだろう。

夕食は家に帰ってから食べることになりそうだと、そんな風に考えつつハプティさんの指導を熱心に受けるふたりを眺めていると……。

(快人さん、お願いがあります)

え? なんですか急に? お願い? どうしよう……滅茶苦茶嫌な予感しかしないんですが、なんでしょう?

(はい。希望なのですが、私も――)

突然話しかけてきたシロさんに戸惑いつつ、目的を訪ねてみると……なんだろう、結論から言えば嫌な予感は当たっていた。

しかし、う~ん……無理難題というわけでもないのが、とても難しいところであり、俺はしばらく悩んだ末にハプティさんの方を向いて声をかける。

「……あの、ハプティさん、すみません」

「うん? どうしたの? カイトもやってみる?」

「いえ、そうでは無くて……えっと、指導中申し訳ないんですが、俺がもう一回魔物と戦ってもいいですか?」

「……えっと……なんだろう、なんか嫌な予感がするね」

「いや、本当に申し訳ない……最近お世話になることが多くて、今回もかなり気を利かせた調整とかしてくれたので……断り辛くって」

ハプティさん……というか中身のアリスも、俺の様子を見てなにかを察したらしくあからさまに嫌そうな表情を浮かべる。

「……近場に魔物の気配はないんだけど?」

「……5分ほどでこっちに来るそうです」

「そっか~、アオイ、ヒナ、いったん中断……また変なこと起こるみたいだから続きはそれ終わってからね」

「はい、了解です」

「快人先輩、フルスロットルですね」

指導を中断して三人が俺の近くに集まってくると、ソレとほぼ同時に感応魔法が魔物らしき気配の接近を捉えた。

「……これは、またはぐれワイバーンだね。はぐれワイバーンとか普通は滅多に見ないんだけど……」

どうやら再び犠牲に選ばれたのはワイバーンらしく、遠目に不自然にこちらに向かって一直線に飛んできているワイバーンが見えた。

あぁ、なんだろうこの気持ちは、相手はいちおう人間に危害を加えることもある危険な魔物ではあるが、この湧き上がる同情の念を消すことができない。

むしろ言葉が通じるのなら、いますぐ反転して逃げろと叫びたい気持ちでいっぱいであるが……まぁ、もうどうしようもないだろう。

せめて身勝手ではあるものの、心の中で冥福だけは祈りつつ……俺はワイバーンにとっての滅びを告げる言葉を口にした。

「……『助けて、シロさん』」