作品タイトル不明
新人冒険者と伝説の義賊⑥
俺の家を一度経由してからいよいよ目的の場所へ到着した。
そこは人里からは離れた森……というよりは林に近いだろうか? 足場は多少悪いながら、樹などはそれほど密集しておらず、視界は良好といえる。
そこでハプティさんの指導を受けながら、葵ちゃんと陽菜ちゃんは実際に冒険者としての活動を経験していく。
「じゃあ、さっき言ったことに気を付けて実際に魔物と戦ってみようか……って、そんなに緊張した顔しなくて大丈夫だよ。ふたりとも魔法が使えるってことは、魔力障壁も使えるでしょ? ここら辺に生息してるレベルの魔物に魔力障壁を貫ける攻撃力がある奴はいないからね」
魔力障壁というのは、魔法を覚える際の基礎中の基礎でもあり、俺も魔法が使えるようになって一番初めにクロに教えてもらった。
まぁ、魔力障壁は魔法というよりは魔力操作の応用みたいなもので、身体に纏う魔力をできるだけ高密度の状態で維持する技術で、防御力強化といった感じだ。
それほど強固ではないが術式を必要としないので、ある程度練習すれば常時発動していられる。この付近にそれを破れる魔物が居ないということは、葵ちゃんと陽菜ちゃんが怪我を負う心配は無いと言っていい。
そしてハプティさんが広域探知の魔法で魔物を探し実戦が始まった。俺は見学のようなものなので、ハプティさんと一緒にふたりの戦いを眺めている。
魔物ということで最初は緊張していたふたりだったが……アリスが言っていた通り、魔物はそこまで強くはなく、姿も強さも少し大きめの犬といった感じだった。
いやもちろん一般人にとっては野犬だって十分恐ろしいが、魔法ありきでいうとまったく問題にはならない感じだ。
仮に俺が戦ったとしても問題なく勝てるというレベルなので、ふたりのレベルであれば楽勝と言っていい。実際始めは動きが堅かったふたりも、すぐに慣れたのか見事な戦闘をこなしはじめた。
飛びぬけて身体能力の高い陽菜ちゃんはかなり無双気味で、葵ちゃんの方は陽菜ちゃんを避けながら魔法を撃つ必要があるので、若干苦戦気味な感じがする。
ただまぁ、ふたり共凄いけどなんとか俺でも目で追えるぐらいで……なんというか、逆に新鮮である。
「うん、やっぱりふたりともレベルが高いね。いい感じだよ……アドバイスするなら、ヒナは今日の場所は問題ないけど、もっと木が多い森だとか、足元が悪かったり動きに制限がかかるシチュエーションに備えて練習をしておいた方がいいね。アオイの方はどうしても魔法の発動に少し時間がかかるから、咄嗟の反撃用に武器……例えば投げナイフとかをいくつか携帯するといいかもね」
数度の戦闘を終えると、ハプティさんが葵ちゃんと陽菜ちゃんに軽くアドバイスをしていく。
「あとは、装備はしっかり整えた方がいいね。ヒナは足甲とかがよさそうだね。アオイは魔法補助効果のある杖とかがいいかもね。いざというときは鈍器にもなるしね」
そんな風に話をしながら、ハプティさんは休憩のコツ……周囲の警戒方法や、地形的な特徴など冒険者としての活動に役に立つであろう話をしてくれており、葵ちゃんと陽菜ちゃんは熱心にメモを取っている。
するとある程度話が終わったところで、ハプティさんはこちらを向いて口を開いた。
「そうだ、せっかくだしカイトも戦ってみる?」
「え? 俺ですか? いや、俺はそもそも攻撃手段が……」
俺はどうにも攻撃系の魔法が苦手で、これといった攻撃手段になるような魔法が無い。オートパイロットはどちらかというと防御寄りだし、ふたりが俺を魔物使いと呼ぶように俺自身の戦闘力はほぼ皆無といっていい。
それをハプティさん……というか、その中身であるアリスがソレを把握していないはずもない。なのに、なぜこんな提案を?
と、そんなことを考えていると、不意に俺たちの前にアリスが現れた。腕を組み直立しているアリスの肩には『ペット三号』と書かれたタスキが巻いてある。
あれ? どっかで見たぞこの展開……俺が微妙な顔をしていると、アリスはそっとなにかが書かれた紙……以前も渡された攻撃手段と値段が書いた紙を渡してきた。
『アリスちゃんソード 売り切れ
アリスちゃんパンチ 銀貨一枚
アリスちゃんキック 金貨一枚
五体合体グレートアリスちゃんロボ 白金貨一枚』
以前買ったアリスちゃんソードが売り切れになってる以外は変化なし……いや、なにか下に書き足してあるな。えっと……。
『倒せ! 巨大怪獣フェイトン。新たなる力ネオ・グレートアリスちゃんロボ 白金貨二枚』
なんか後継機乗り換えイベントみたいなのが追加されてるんだけど!? くそっ、滅茶苦茶気になる。
でも、これを見るにはまず前提として通常のアリスちゃんロボを見ておかないといけないだろう。となれば今回選ぶべきは……なんか、過去類を見ない無駄遣いのような気もするが、それでも気になって仕方がない。
迷いに迷ったあと、俺は白金貨を取り出してアリスに渡した。
するとそのタイミングでハプティさんがなにかに気付いた様子で顔を動かした。
「広域探知に反応が……これは、ワイバーンかな? 一匹だけってことは、はぐれか……珍しいね」
……どうやらグレートアリスちゃんロボの犠牲になる魔物は決まったらしい。